日本写真学会誌
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66 巻, 4 号
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  • 米澤 義朗, 山口 敦, 米谷 紀嗣
    2003 年 66 巻 4 号 p. 307-319
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    色素凝集体の分光学的性質, 励起動力学, 光化学の最近の研究を紹介する. 代表的な5種類の色素を中心に取り上げた. それらは長鎖アルキル基をもっオキサシアニン (S9) とチアシアニン (S11), メロシアニン (MC), 長鎖アルキル基をもたないプソイドイソシアニン (PIC), ベンズイミダゾロカルボシアニン (BIC, TDBC), メソ位エチル置換チアカルボシアニン (TDC, THIATS) である. J凝集体 (JA) はPIC水溶液で発見され, つづいてBIC, TDBC, TDC, THIATSなど多くのシアニン色素も水溶液, 低温ガラス, 吸着層中でJAを形成することが明らかになった. KuhnのグループはLB膜中でS9, S11, MCなどのJAを作製し, LB膜の光物理学, 光化学の研究分野を切り拓いた. 今日ではLB法, 交互吸着法, スピンコート法などを用いて, 長鎖をもたないPICなどのシアニン色素のJAを有機薄膜 (LB膜, SA膜), ポリマー膜に担持することが可能になり, 分光学的研究, 線形・非線形光学材料開発が活発に行われている. 電子顕微鏡, 走査プローブ顕微鏡SNOM, 蛍光顕微鏡などの発達の結果, 水溶液, 吸着膜, 有機薄膜, ポリマー膜中のJAの多様な超分子構造, 形態が明らかになってきている. なかでも水溶液中のPIC, TDBCJAの超構造形成は注目される. 低温ガラス中のPIC, BIC, TDBC, TDC, THIATSの超高速分光, 非線型分光測定と理論解析にもとずくJAの励起動力学の研究が進んでいる. 色素凝集体との関連から, 光合成細菌のアンテナ系におけるバクテリオクロロフィル (BChl) の環状凝集体についても言及した.
  • 薮下 彰啓, 川崎 昌博
    2003 年 66 巻 4 号 p. 320-325
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    氷は地球表面上では雪として, 地球大気中では夜光雲と呼ばれる氷の微粒子として, 宇宙では星間塵として存在している. その表面や内部には様々な分子が吸着しているため光が照射されると光化学反応が起こる. このことは, 直接的に大気環境化学, 宇宙化学に関連している. 北極南極圏の大気汚染, 地球高層大気中のオゾン濃度減少, 地球の生命の発生などにおいては, 氷や雪が関与する光化学反応が重要な役割を果たしている. このような現象を引き起こす新しいタイプの不均一光化学反応の最近の話題について述べる.
  • 由井 樹人, 高木 克彦
    2003 年 66 巻 4 号 p. 326-340
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    有機/無機複合体は, 有機物と無機物固有の特徴に加えて, 新規な化学的・物理的特徴を創出しうる材料としてこの分野の研究は著しく増加しており, 多くの注目を受けている. 特に無機物の熱・化学的安定性, 規則性, 配向性, 堅牢性, 表面活性などの物性に注目した有機ホスト/無機ゲスト系の研究は数多い. 中でも, ラミネート型の無機ホスト化合物は, 層自身の厚さが数オングストローム程度の板状無機ナノシートが積層した構造をとっており, 層間距離を変化させながら, 様々な化学種を取り込むという特徴を有している. 本総説では, 粘土や層状半導体などのラミネート型有機/無機複合体の構造と光化学特性を重点に解説する. 1章では有機/無機複合体の一般的な特性を, 2章ではラミネート型無機ホストの代表である粘土鉱物の構造・特性について, 3章では有機物/粘土複合体の構造について, 4章では有機色素粘土複合体の光化学特性について, 5章では層状半導体の光化学的特性について, 6章ではその他のラミネート型有機/無機複合体の光化学特性について, それぞれ解説する.
  • 中戸 義禮
    2003 年 66 巻 4 号 p. 341-348
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    二酸化チタン (TiO2) は太陽光水分解, 環境浄化用光触媒, 色素増感太陽電池などいろいろな分野で光機能の基本材料として広く研究されている.これらを含めて機能開発や実用化を成功に導くためには性能向上が必須であり, このためにはTiO2表面の構造制御とこれによる光電子諸過程の機構解明ならびに制御が必須である.本稿では, これらの基礎的諸問題について, 筆者らが最近明らかにしたn-TiO2 (rutile) 電極の光エツチングによる表面構造制御と光酸素発生反応の機構解明を中心に紹介する.
  • 新留 康郎, 山田 淳
    2003 年 66 巻 4 号 p. 349-354
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    金や銀のナノ粒子は, 自由電子の表面フラズモン振動に基づく特有の吸収バンドを紫外~近赤外域に示す. そのため青や赤といつた鮮やかな色を呈する. また形状 (球状, 棒状) や凝集状態で分光特性が大きく変化する. このような金・銀ナノ粒子を含有するフィルムをフォトニクス素子として利用する試みがさかんに行われるようになった. ここでは, 金・銀ナノ粒子含有フィルムと偏光 (二色性) 機能の付与について, 応用例をまじえて解説する.
  • 角岡 正弘, 陶山 寛志, 岡村 晴之, 白井 正充
    2003 年 66 巻 4 号 p. 355-366
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    光酸・塩基発生剤とその新規フォトポリマー設計における活用について, 我々の研究室での成果を中心に最近の動向を述べる. 光酸発生剤については1) 光カチオン重合における増感剤, 2) F2用フォトレジストの設計における光酸発生剤の利用, 3) 熱的分解ユニットをもつ光架橋型フォトポリマーについて, 光塩基発生剤については1) 光塩基発生剤の現状, 2) 三級アミンを生成する光塩基発生剤とその光架橋システム設計における利用および3) 高分子型光塩基発生剤とその応用について述べる.
  • 上田 充
    2003 年 66 巻 4 号 p. 367-375
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    感光性, 絶縁膜および保護膜の機能を併せ持つ感光性ポリイミドは半導体分野における配線部分の層間絶縁膜, 保護膜およびその形成プロセスを簡略化するための重要な役割を果たしている. この感光性ポリイミドの分子設計について, これまでの報告例を用いて紹介する.
  • 中村 賢市郎
    2003 年 66 巻 4 号 p. 376-383
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    リソグラフィーに利用されるレジストには感度, 解像力, 対エッチング性, 透明性など多くのレジスト特性が要求される. ナフトキノンジアジド型レジストは, 特に優れた対エッチング性のためにUVレジストとして長く使用されたが, 化学増幅型レジストの出現と共に, 新しいレジストにその座を譲つている. レジストの改造性の向上のためには使用光源波長を短波長化する必要があり, そのためエキシマーレーザーを使用したリソグラフィーが急速に発展している. 化学増幅レジストは応用範囲が広く, 200nm以短のどのレーザーリソグラフィーにも使用できる. ArF (193nm) のレジストの実用上の問題はほぼ解決されているが, F2 (167nm) レジストには, 高解像性を実現するために, 透明性の確保と対ドライエッチング耐性の達成が要求されているが完全にはまだそれらが解決されていない. しかしその解決の方向性が示され, EUV (13nm) までも指向されている. ここではこれら分野で使用される微細加工用レジストについて概説する.
  • 柴 史之
    2003 年 66 巻 4 号 p. 385-389
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    単分散かつ高いアスペクト比を有する平板粒子は, 高感度, 高解像度が期待される, 写真乳剤の理想的な形状である. しかし平板粒子は単分散化の難しい形状であり, このことは速度論的にも裏付けられている. 本報ではこれを克服する, 平板粒子の調製技術の進歩に関して紹介する.
  • 長谷川 朗
    2003 年 66 巻 4 号 p. 390-393
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ハロゲン化銀粒子の電子物性に関する最近の研究を紹介している. 乳剤粒子の電子物性の測定法とその原理, AgCl粒子の電子物性, AgBr1-xIx板状粒子の電子寿命, およびAgBr粒子における光正孔の挙動等についての研究結果を取り上げている.
  • 最近の進歩と理解
    谷 忠昭
    2003 年 66 巻 4 号 p. 394-399
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    感光機構と銀のクラスターの役割に関する最近の進歩を紹介し, 光と還元でハロゲン化銀表面上に形成される銀のクラスターの構造と性質を整理した. 次いで, 還元増感R中心とP中心の作り分け, 還元増感P中心と亜潜像中心の相違, 光伝導による還元増感中心の機能の検証の妥当性, R中心の有用性と2電子増感, および潜像中心の観察について考察した.
  • 増感中心のキャラクタリゼーションとハロゲン化銀乳剤粒子指数面の効果
    御舩 博幸
    2003 年 66 巻 4 号 p. 400-407
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    写真用ハロゲン化銀乳剤粒子の硫黄増感に関する最近の進歩を総説する. 最近の研究成果は, 硫黄増感中心が硫化銀2量体であるとの考えを支持している. また, ハロゲン化銀粒子表面の {111} 面と {100} 面が硫黄増感中心の生成や挙動に与える影響について考察する.
  • 川崎 三津夫
    2003 年 66 巻 4 号 p. 408-414
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    シアニン色素J凝集体による分光増感は, 銀塩感光材料に可視部全域から赤外にわたる広い範囲の感光性を付与するための根幹技術である. この技術の基礎をより深く理解し, また今後の発展の方向性を見出すための一助として, 本解説では, 銀塩粒子表面に吸着したJ凝集体の構造と分子配列, モノマー分子と比較したJ凝集体の電子状態の特徴, および励起J凝集体が関与した高速電子移動ダイナミクスについて, 最近の研究とその進歩を振り返る.
  • 森田 聖和
    2003 年 66 巻 4 号 p. 415-420
    発行日: 2003/08/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    銀塩光熱写真ドライイメージング材料は, 感光性のハロゲン化銀, 非感光性の長鎖カルボン酸銀還元剤および銀イオン・キャリアーよりなる. 従来のウエット系システムと比較して, 大きく異なる点は, 銀画像がハロゲン化銀の銀ではなく長鎖カルボン酸銀より供給される銀イオンを用いて物理現像で形成される点である. 銀塩光熱写真ドライイメージング材料の画像形成の基本的な機構は, 大別すると銀ソースからの銀イオン移動プロセスと, 還元剤 (現像剤) からの電子移動プロセスから成る. ここでは, 最近の研究や文献を参考に熱像機構について概説する.
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