日本写真学会誌
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67 巻, 6 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • オペラ実験に使用するニュートリノ検出用原子核感材
    桑原 謙一, 西山 伸吾
    2004 年 67 巻 6 号 p. 521-526
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    オペラ計画 (OPERA=Oscillation Project with Emulsion-tRacking Apparatus) は, 素粒子物理学の分野で最大問題のひとつであるニュートリノに質量があるかどうかを, ミューニュートリノからタウニュートリノへの振動を捉えることによって検証することを目的とした, 日欧国際共同プロジェクトによる実験計画である.原子核乳剤を用いたECC (Emulsion CloudChamber) 検出器により, ニュートリノ振動vμ →vτ で出現するタウニュートリノの反応から生成するタウ粒子を直接捕らえようとするものである.そのECC検出器に用いられる新規な原子核感材 (OPERA Film) を開発した.富士写真フイルムは, 要求された最小電離粒子感度と, 乳剤膜厚を達成するため, 複屈折のないTA, Cベースの両面に交互4回塗りの塗布技術を確立し, 大量生産できる原子核感材の供給を可能にした.新規開発したオペラフィルムは一般写真フィルムの製造ラインですでに本格生産されている.乳剤層に5-メチルベンゾトリアゾールを導入することで, 高湿度下に数日間置くことにより, 所期感度を損なわずに製造過程で蓄積された宇宙線の飛跡を消去し, リセットできる技術を確立した.ニュートリノ検出の邪魔になる不要な飛跡を実験前に消去してから使用するこの方法は, 原子核感材の新しい使用技術として期待されている.
  • 藤井 正美
    2004 年 67 巻 6 号 p. 527-531
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    プラスチックなどの絶縁性固体に荷電粒子が入射するとその飛跡に沿ってミクロの損傷が残る.この損傷を化学エッチングで拡大して検出する固体飛跡検出器の原理と応用について述べる.なかでも感度の高いプラスチック飛跡検出器CR-39による, 高分解能オートラジオグラフィーについて紹介する
  • 井浜 三樹男
    2004 年 67 巻 6 号 p. 532-537
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    80kVp-X線ならびに60Co-γ線に対する八面体臭化銀乳剤の感度を解析した.単純な仮定の下で, これらの電離放射線の吸収により発生する2次電子が臭化銀粒子中に生成させる電子/正孔対の数を求めた.この値と可視光に対する10-5秒露光の特性曲線を用いることにより, これらの電離放射線に対する感度を定量的に予測できることを示した.この結果, 電離放射線による潜像形成の機構が明らかになった.
  • 歳藤 利行
    2004 年 67 巻 6 号 p. 538-543
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ニュートリノの研究は日本が世界をリードしている.2006年開始予定のオペラ実験によってニュートリノが質量を持つか否かという問題に最終決着がなされようとしている.オペラ実験では4×5サイズの特殊な写真フィルム1200万枚を使用し鉛とともに組み上げ総重量1700トンの検出器として使用する.本稿ではオペラ実験の準備状況について紹介する.
  • “NAGARA event”の発見
    仲澤 和馬
    2004 年 67 巻 6 号 p. 544-549
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    「二重に奇妙な」原子核 (ダブルハイパー核) を, 存在が示唆されてから40年ぶりに原子核乾板を用いて同定した.“NAGARA event”と命名されたこの事象をはじめとするダブルハイパー核は, 原子核物理学の新しい領域を切り開くだけでなく, 中性子星の内部やクォーク星の存在の可能性を論じる上で, 貴重な情報を提供するものと期待されている.本解説では, ダブルハイパー核にまつわる物理を紹介するとともに, 原子核乾板の取扱い手法,“NAGARA event”, および今後の計画について紹介する
  • 藤高 和信
    2004 年 67 巻 6 号 p. 550-555
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    宇宙放射線によって受ける被ばく線量の見積もりを, ビッグバンに遡って論じる.また航空機被ばくについて現状を述べる.
  • 檀原 徹, 岩野 英樹, 吉岡 哲
    2004 年 67 巻 6 号 p. 556-560
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本稿では地質学・考古学試料に用いられるフィッション・トラック年代測定法を解説する.岩石の中にはジルコンやアパタイトといったウランを濃集する鉱物が含まれる.238Uには自然に核分裂 (自発核分裂) する性質があり, 鉱物の中にはその際生じた傷 (フィッション・トラック) が蓄積される.フィッション・トラックは化学試薬で拡大・固定され, 光学顕微鏡で観察できる.この方法は, 時間とともに増す傷の密度から岩石の年代を求める測定法である.
  • 丹羽 公雄
    2004 年 67 巻 6 号 p. 561-568
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    写真乾板を放射線の飛跡検出器に特化した原子核乾板は素粒子・原子核・宇宙線などの放射線を3次元的な飛跡としで記録する検出器である.最近になっで, 光学顕微鏡による観察時間の障害が自動飛跡読み取り技術によっで克服された.
    ミクロンの空間分解能で放射線の飛跡を捉える能力を活用した素粒子・原子核・宇宙線などの実験を紹介し, 今後の原子核乳剤自身の改良すべき課題についでも議論する.
  • 船生 望, 小川 誠, 内藤 明, 大野 信
    2004 年 67 巻 6 号 p. 569-578
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本報では, デジタル写真システムの階調特性を, 直接, 電子的に評価する方法論に関する研究の結果を記す.本研究は, 銀塩写真システムで培われた調子再現特性を論ずるためのCamera-Through Sensitometry (CTS) の手法をデジタル写真システムに応用し, Digital Camera Through Sensitometry (Digital-CTS) 法の確立を目指して行った.Digital-CTSでは, デジタル写真システムが全電子画像システムであり, 調子再現特性も全電子的にOn-lineで得ることが求められる.本報は, 調子再現特性を全電子的に得る方法論の確立を目指して進めた研究の結果を記す.検討のためには, デジタルスチルカメラ (DSC) による撮影のターゲットとして測色値による等明度ステップチャートを試作し, DSCからの出力データをグラフィックソフトウェアを導入したPCによりモニター画面上のチャート像を画像解析した.更にPCにデジタルプリンタを接続し, DSCの出力データからプリントを制作してそのチャート像も画像解析した.この結果, 撮影されたチャート像におけるステップ毎の明度変化は, PCのモニター画面における再現像においても, PCに接続したプリンタからの出力プリント像の場合においても直線性が保たれることがわかった.更に再現像における明度変化の直線の勾配は, DSCの機種によって明らかに異なることも分かった.このDSCの撮影によって得られるチャート像の明度特性について, PCにおいて直接電子的に階調評価する方法をSoftcopy Evaluation法とし, プリンタによる出力像の階調性を計測する従来法に準ずる方法をHardcopy Evaluation法とした.二種の評価法において明度変化の直線の勾配に関するDSCの機種の効果は, Softcopy Evaluationの場合の方がHardcopy Evaluationの場合より明確であることが分かった.また, DSC機種の効果について, 明度特性によって表されるチャートの再現像の階調性と被写体の実写像における主観的な階調性を較べた.その結果, 明度変化曲線の勾配がきつくなる結果を示すDSCの場合程, 実写像の階調変化が急であってコントラストも明確で硬調的な特性を示すことも明らかになった.以上の検討の結果, 本報におけるSoftcopy Evaluation法は, 階調特性の評価を全て電子的に行うDigital CTSを確立するために有用な解析法となることが分かった.
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