日本写真学会誌
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76 巻, 1 号
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特集:画像保存
一般論文
  • 野口 侑佑, 内田 孝幸, 佐藤 利文
    2013 年 76 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    分散型無機Electroluminescence(EL)の蛍光体層に有機色素を添加した有機色素分散型ELの発光輝度の有機色素濃度依存性について検討した結果,有機色素添加量が0.1 wt%の時に最も高い輝度を示した.0.5 wt%添加した時のEL発光スペクトルの積分値は,有機色素未添加の素子の約44%と低い値を示した.これは蛍光体層内の有機色素含有量が多くなることで,無機蛍光体の光を吸収するだけで発光しない色素が現れる,いわゆる濃度消光が起ったと考えられる.有機色素添加量が最適な0.1 wt%添加の場合,添加前後のスペクトルの積分値の比が95%と高い値を示した.また,この添加量ではスペクトルの半値幅が従来の分散型ELよりも狭くなった.このような無機ELから有機色素への高効率な色変換でも無機蛍光体の発光スペクトルが有機色素の吸収帯全体をカバーすることが重要である.
  • 内田 孝幸, 柴崎 正明, 勝山 祐作, 松崎 龍矢
    2013 年 76 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    我々は透明有機EL素子(TOLED)と電気化学素子を組み合わせた,新奇な調光可能な透明電気化学素子を作製した.この素子は(a)透明,(b)鏡,(c)黒,(d)両面発光,(e)鏡を伴う片面発光,(f)黒を伴う片面発光の6状態にすることが出来る.これらの状態は直流電圧のオンオフならびに調節によって変化させることが可能であった.この素子は600 nmにおいて透明状態では55%の透過率,ミラーの状態では35.7%の可視域平均反射率を示した.
  • 大槻 理恵, 横田 朋宏, 坂巻 剛, 富永 昌治
    2013 年 76 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    本論文では,顔画像から「しみ」として知覚される色素沈着領域を検出する方法を提案する.はじめに,色素沈着の要因と特徴を述べる.次に,顔の色素沈着部位と色素沈着がない部位について,分光反射率からメラニンとヘモグロビンを含む皮膚内部色素濃度を算出し,色素沈着はメラニンとヘモグロビンに起因することを示す.次に,カラー画像から色素沈着領域を検出するアルゴリズムを提案する.まず顔画像の計測系を述べ,皮膚科専門医の診断に基づき色素沈着の領域を決定する.顔の肌領域について,肌領域の主成分分析により,肌のヒストグラムを特徴付ける2次元平面が決まる.この平面上ではヒストグラムは正常部位と色素沈着部位の2つのクラスタに分割できることがわかる.このクラスタを検出することによって色素沈着領域が効率よく検出できる.実験では,4人の女性の顔画像から色素沈着領域を検出し,これらの検出結果は皮膚科専門医による診断と良好に一致していることを示す.
  • 邓 珮, 青木 直和, 小林 裕幸
    2013 年 76 巻 1 号 p. 63-69
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    前報において報告されている日本人が一番好きな色白の肌色,中国人が一番好きな赤味がかった肌色,そして近年中国人に人気が高まった小麦色の肌色について,中国および日本の若い世代20代と30代の男女の印象をSD法により調査し,どのような印象をもっているのかを明らかにすることにより,肌色に対する印象を形作る要因について論じた.その結果,日本人は肌の色を色味として意識しているが,中国人は意識していない.色白の肌色は全てのグループに好感をもたれている.赤味がかった肌色は中国人に健康的で好感がもたれている.小麦色の肌色は20代では女子が強く反応し,日本女子からは好感がもたれているが,中国女子は感じが良いとは思っていない.30代では日本男子が強い嫌悪すら感じている.ここで得られた結果を,肌色に対する印象は長い時間をかけて形成される文化的な要因が影響されるだけではなく,ファッションや流行といったその時代の要因にも影響されることで説明した.
  • 邓 珮, 武 克寧, 青木 直和, 小林 裕幸
    2013 年 76 巻 1 号 p. 70-76
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    好ましい肌色は記憶色と大いに関連があり,女性の画像を対象に研究してきた.しかし近年,中国の特に上海のような大都会の男性の化粧は一般的になりつつある.このような中国の若者の生活スタイルの劇的な変化が,日本と中国における男性の好ましい肌色を調査した本研究のきっかけとなった.その結果,日中間で差がみられ,日本の方が,明度が低く,彩度が高い,また,従来の女性画像の結果と比較すると,明度が低く,黄味がかっていて彩度が高いことがわかった.好ましい女性の肌色と比べ,男性の肌色については,日本人はより明度の低い,より黄味がかった,そしてより彩度の高いものが好まれた.中国人についても明るさや色味についての傾向は同じであったが,クロマについては男女のサンプルの間で差はなかった.日中ともに,観察者の男女間の差は観られなかった.SD法による評価結果の因子分析によって抽出された男性の好ましい肌色の決定因子は,日本では「前向きな性格」であるのに対し,中国では「良い人柄」第1因子であった.このような日中における好ましい男性に求める印象の違いが,好ましい肌色の違いの原因になっていると考えられる.
  • ラクパイトゥーン カナカーン, 青木 直和, 小林 裕幸
    2013 年 76 巻 1 号 p. 77-87
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    タイの壁画の題材は宗教画,民衆の風俗,そしてそれらと並んでその時代の王朝の栄華を描いたものも多く,各王朝それぞれの時代背景を反映した特徴を有している.タイの王朝はアユタヤ王朝(1351-1767年)とバンコク王朝(1782-現在)から成る.文化や海外との外交関係は各王朝期で異なる.また,利用できる顔料の数も各王朝期で異なり,壁画の特徴は各王朝期の時代を反映していると言える.ほとんどの壁画は仏教寺院で制作されており,色使いは同じフレスコ技法を用いた西欧の壁画とはことなる特徴が観られる.本研究は,タイ各王朝期の壁画に使われている色を,スキャナを用いて画集から取得し,L*a*b*空間にプロットした.その分布からTwo-stepクラスタリング法とK平均クラスタ法を用いて代表色を求め,ポンペイやルネサンスのフレスコ画と比較して議論した.さらに,配色カラーイメージスケールを用い,各時代の配色の印象を求めた.
  • ラクパイトゥーン カナカーン, 青木 直和, 小林 裕幸
    2013 年 76 巻 1 号 p. 88-98
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/28
    ジャーナル フリー
    タイ王朝はアユタヤ王朝(1351-1767)とバンコク王朝(1782-現在)よりなる.文化や海外との交流といった特徴はこの二つの王朝で大きく異なる.タイのほとんどの歴史的な壁画は寺院の中に描かれてきており,そのテーマのほとんどが宗教や人々の風俗習慣,そしてその時代の王様の隆盛を描いたものである.前報においてはタイ各王朝期の壁画の代表色を調べ,色使いの特徴を西洋の絵画と比較することで確認した.さらにこれらの絵画の配色の印象を,カラーイメージスケールを用いて求めた.本研究はタイ壁画の遠近感表現技法について調べたもので,近景,中景,遠景の明度,クロマ,コントラストの差から大気遠近法の使用についての情報を取得し,また,描かれている対象物(人物に限定)の大きさの画家からの距離依存性から線透視図法の使用についての情報を取得し,これらの技法を巧みに利用していることが知られているルネサンス,バロックの絵画の情報と比較して議論した.その結果,ルネサンスやバロックのような明瞭な線透視図法はRama 4世時代のKhrua In Khongの壁画でのみ用いられており,他の王朝の壁画では見出すことができない.鳥瞰図法を導入したRama 3世時代本堂の壁画では,明瞭な線透視図法を導入したルネサンス時代の絵画に比較しても強い遠近感を与えている.Rama 3世時代のWat Borvornnivet本堂の壁画と,Rama 9世時代の壁画では,アジアの絵画特有の高低の効果により,Rama 4世時代の壁画と比較し,強い遠近感をもたらしている.一方,大気遠近法の導入がRama 3世時代の回廊およびRama 4世時代の円柱壁画に見出された.
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