日本写真学会誌
Online ISSN : 1884-5932
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76 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
特集:フレキシブル・プリンテッドエレクトロニクスと画像形成技術との接点
  • 竹谷 純一
    2013 年 76 巻 4 号 p. 296-304
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル フリー
    有機トランジスタは有機半導体を活性層とする,MOS型の電界効果トランジスタである.有機半導体の中には,溶媒によく溶ける化合物があるため,溶液を塗布して半導体薄膜を形成することが可能で,印刷技術を応用し,低コストかつ大面積のデバイスをプラスティックフィルム上に生産する革新的な産業に期待が寄せられている.本解説では,高性能な有機トランジスタを実現するキーとなる,分子間に広がった電子状態によるキャリア伝導について紹介し,アクティブマトリックス液晶パネルへの実装例を示して,移動度10 cm2/Vsを超える印刷可能な単結晶有機半導体の産業応用への展望と課題について述べる.
  • 小田 正明
    2013 年 76 巻 4 号 p. 305-317
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル フリー
    量産規模のガス中蒸発法により,個々に独立分散している,金,銀,銅,及び,ITOのナノ粒子が製造されている.ガス中蒸発法では,生成された粒子は生成直後に有機層に被覆され,個々に独立分散した状態で有機溶剤中に分散している。ナノ粒子のサイズは10 nm以下である.このナノ粒子が分散しているインクはナノメタルインクと呼ばれ,インクジェット印刷に適した材料である.ナノメタルインクを用いたインクジェット印刷はスパッタ,ホトリゾグラフィーによる工程を代替するものと期待されている.ナノメタルインクによる薄膜の特性,インクジェットプロセスのスピード,コスト,及び,その応用分野についても取り上げる.
一般論文
  • 谷 忠昭, 飯野 裕明, 内田 孝幸, 半那 純一
    2013 年 76 巻 4 号 p. 318-323
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル フリー
    電極と液晶性有機半導体の界面の電子構造に関する一連の研究の一環として,電極の表面分析をXPSで行い,仕事関数を種々の条件下で大気中光電子分光とケルビン・プローブ法で測定し,結果を分析した.大気中では,CrおよびAlは表面に酸化被膜が形成されていたが,Pt,AuおよびITOでは酸化被膜の形成は認められなかった.Pt電極について調べたところ,真空中で調製し大気に移した直後(~1分後)は本来の仕事関数(5.65 eV)に近い値を示したが,調製しGlove boxに移した直後(~3分後)では4.4 eVとなり,これを大気中に移すと約10分の間に5.1 eVにまで増加した.Pt電極の仕事関数は,電極表面への汚染炭素化合物被膜の形成がもたらすPush-back効果などにより4.4 eVとなり,大気成分の吸着で5.1 eVへと増加することが分った.
  • 白山 眞理, 仲原 孝史, 青木 直和, 小林 裕幸
    2013 年 76 巻 4 号 p. 324-332
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル フリー
    土門拳の写真集『筑豊のこどもたち』は,多くの人が手に取ることができるようにとの目的で100円写真集として出版された.それはB5サイズのザラ紙に75線で印刷されたものであった.土門にとって,やはり当時100円で売られていた岩波写真文庫の一冊として出版することも可能であった.これはB6サイズのコート紙に150線で印刷され,『筑豊のこどもたち』に比べ写真はより小さく,また1ページに多くの写真がレイアウトされている.また,付けられたキャプションはより詳細なものとなっている.本研究では,『筑豊のこどもたち』を岩波写真文庫のような画質,装丁,レイアウトに編集した新装版を作製し,それから受ける印象をSD法によって調べ,『オリジナル』と比較することで,土門がなぜ岩波写真文庫の1冊として出版せず,『オリジナル』のデザインにこだわったのかを検討した.その結果,岩波写真文庫風のレイアウトは,詳しく説明的だという印象を与え,第1因子は「写真集の印象」であり,本に対する印象が先行していること,一方,『オリジナル』は内容をストレートに伝えることができ,「子どもたちへの共感」が第1因子であることを示し,土門の意図を明らかにした.
  • 井浜 三樹男
    2013 年 76 巻 4 号 p. 333-340
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル フリー
    ハロゲン化銀乳剤を用いた原子核乾板は宇宙線や素粒子の反応の研究に広範に活用されており,これらの飛跡を解析,解釈する上で,電離放射線に対するハロゲン化銀乳剤の潜像形成機構を理解することは極めて重要である.前報において,電離放射線に対する潜像形成機構を提案した.この機構の適用範囲と限界を明確にするため,分光増感を施し固有感度を大きく変化させた乳剤に実験を拡張した.その結果,分光増感を施した乳剤の電離放射線に対する相対感度も,極端に量子感度が低い場合を除いて,可視光に対する10–5秒露光の特性曲線から定量的に予測できることがわかった.すなわち,電離放射線に対するハロゲン化銀乳剤の潜像形成機構は,2次電子がハロゲン化銀粒子を通過した時に生成する電子/正孔対数に等しいフォトン数の可視光が,10–5秒間の短時間で吸収された場合の潜像形成機構と基本的に同一である.
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