ハロゲン化銀乳剤を用いた原子核乾板は宇宙線や素粒子の反応の研究に広範に活用されており,これらの飛跡を解析,解釈する上で,電離放射線に対するハロゲン化銀乳剤の潜像形成機構を理解することは極めて重要である.前報において,電離放射線に対する潜像形成機構を提案した.この機構の適用範囲と限界を明確にするため,分光増感を施し固有感度を大きく変化させた乳剤に実験を拡張した.その結果,分光増感を施した乳剤の電離放射線に対する相対感度も,極端に量子感度が低い場合を除いて,可視光に対する10
–5秒露光の特性曲線から定量的に予測できることがわかった.すなわち,電離放射線に対するハロゲン化銀乳剤の潜像形成機構は,2次電子がハロゲン化銀粒子を通過した時に生成する電子/正孔対数に等しいフォトン数の可視光が,10
–5秒間の短時間で吸収された場合の潜像形成機構と基本的に同一である.
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