2013年に東京で開催された 「アンドレアス・グルスキー」 展は,巨大な作品による洗練された展示空間で注目された. 1990年代に台頭したグルスキーら,ドイツ現代写真は,いわゆるビッグ・ピクチャー時代をもたらしたことで知られる.ビッグ・ピクチャーには,作品を印画表面でアクリルにマウントする 「ディアセック」 がよく使われる.ディアセックを含む大型の写真作品の展示と保存をめぐって美術館が直面する課題について報告する.
写真史家のジェフリー・バッチェンが言うように,われわれは 「芸術写真」 の傑作だけでなく,「ヴァナキュラー写真」 にも注意を払う必要があるだろう.写真の民主化は多くの 「ヴァナキュラー写真」 を生み,イメージの分有を可能にした.本稿では「カメラばあちゃん」と呼ばれたアマチュア写真家・増山たづ子の仕事を例に 「ヴァナキュラー写真」 のプルラモニティ(プルラモン性)について考察する.
デジタルデータの保持には,身近なものではデジカメで使用されているSDカード,パソコンで使用のHDD・USBメモ リが利用され,近年ではネットワークを介してのクラウドへと膨大なデータが保存されている.しかし,記録装置には物理的障害または人為的操作によりデータの消失が発生する危険性が潜んでいる.そこで失われたデータを元に戻す作業であるデータ復旧とは何かを,代表的な記録装置であるHDD・Flashメモリの構造を解説するとともに,実際の復旧事例を紹介する.
著者,飯野裕明,内田孝幸,半那純一は貴金属の仕事関数が環境により著しく変化することを実験的に示して分析し,論文賞を受賞した.本解説はその経緯と展開に加え,有機およびプラズモニック・デバイスでの意義を探るためのさらなる分析の糸口を紹介する.
湿板写真時代の1860年,万能の科学者で写真化学の大御所であったHerschel卿は世の中の出来事を動画で記録し子孫に 残す 「瞬間写真」 の構想を提案した.瞬間写真に必要な技術は,1/10秒の 「早打ち」 を可能にする高感度化と1/2~1/3秒で感光板を交換する技術であると述べた.当時は夢物語であったが,1871年Maddoxが発表したゼラチン乳剤と1889年Eastman社が発売した写真フィルムを起点に具現化されていった.そして彼の構想は,レンズ付フィルム 「写ルンです」 に象徴される写真の大衆化と,映像の大衆化である映画産業の創成に繋がった.デジタル写真の今日,一台のカメラに静止画と動画の撮影機能が収められ両者の一体化が着実に進んでいる.