日本のエレクトロニクス市場は2000年代以降成長が止まっており,プロダクトイノベーション,プロセスイノベーショ ンとしてのプリンテッドエレクトロニクスに対する期待が高まりつつある.IoT,ウェアラブルなど今後成長が期待される業際領域での成長機会を実現する上でプリンテッドエレクトロニクスが果たす役割は今後ますます大きくなろう.2000年代前半のブームとその後の落ち込みを受け,プリンテッドエレクトロニクスの本格的な市場立ち上げに向け,アプリケーション,プロセス,材料の全ての領域でイノベーションが進みつつある.今後のプリンテッドエレクトロニクスの市場発展に向けては技術進歩を加味したアプリケーション開拓のステップが求められよう.
プリンテッドエレクトロニクスは次世代産業候補として欧州,北米,アジアで研究開発が精力的に進められ,事業化への 期待も大きい.本稿では,プロセス技術やデバイス技術と共に重要な役割を担う材料に関して,フィルム基板を中心に概括する.また,東洋紡のプリンテッドエレクトロニクスへの取組を紹介する.
Printed Electronics用に用いられる有機半導体の研究開発はこの10年の間に大きく進展し,低分子材料,高分子材料と もに,10 cm2/Vsを超える移動度を示すトランジスタが作製されるまでになった.本稿では実用的な有機トランジスタ材料に要求される特性を整理し,これまでの取り組みを紹介すると共に,Printed Electronicsの実現に向けて,現状の課題を議論する.
全印刷有機TFTを実現するために独自開発した印刷手法について解説する.フレキシブル印刷TFTアレイと電子ペーパーと組み合わせることで,縦横比1:45の異型ディスプレイを実現し,レール型電子棚札のデモンストレーションを行うことに成功した.
光による高効率潜像形成機構に照らして,40 nmのハロゲン化銀(AgX)微粒子による暗黒物質の検出過程を分析した. ニュートリノと物質の衝突で発生する最小電離粒子により上記粒子中に生成する電子正孔対はわずか〜6個であるのに対して,暗黒物質によって生成すると期待される反跳原子核は〜10 fsの短時間で〜1000個もの電子正孔対を発生させる.後者では高効率潜像形成は,その必要条件であるクーロン力が高密度の電子と正孔で遮蔽され,格子欠陥や増感中心は圧倒的な数の電子と正孔を処理できず,再結合抑制に有効なイオン過程は電子過程に圧倒されるので機能し難い.しかしながら多数の電子の生成により高効率の潜像形成とそれに必須の化学増感は暗黒物質の検出には必要ないものと分析した.最大の問題は高濃度の電子正孔対の生成で再結合が著しく速くなる上に,高エネルギーの電子と正孔がもたらす外部光電効果とAuger効果により正孔を粒子に留めたまま多くの電子が粒子の外に飛び出し,正孔に比して電子が少なくなることである.検出感度の向上には,再結合と再ハロゲン化の強い抑制を主眼とし,潜像退行と経時かぶりにも留意した総合的な設計が必要である.