表面プラズモンやメタマテリアル分野の研究では金属の微細構造の光学応答の計算が欠かせない.ここでは,研究に用いられる計算方法についてまとめた.数値計算法と解析的な計算に分け,それぞれの特徴を記した.計算手法は様々であるが,対象とする構造に適した計算方法を選択することが重要である.
トップダウン加工技術が有する高スループット性と,ボトムアップ技術が示す高解像性を併せ持つ微細加工技術,ナノコーティングリソグラフィー法について紹介する.薄膜の塗布と被膜の選択的除去のプロセスからなるこの手法は,ナノフィン構造やナノピラー構造など,金属ナノ構造体配列の簡便な作製を可能にする.ナノ構造体は金属であるため,導電性を有し,また形やサイズに応じた特定の波長域にプラズモン共鳴を示す.本稿では,ナノコーティングリソグラフィー法による金属ナノ構造体の作製と,電気・光特性を利用した応用例について述べる.
銀ナノ粒子に代表される銀ナノ構造体の劣化と対策に関する基本的な考え方を,銀塩写真フィルムで得られた知見を参考にしてまとめた.劣化の要因として酸化と銀イオンの移動および硫化を取り上げ,それらの第一段階である表面の銀原子の酸化と銀イオンの生成を抑制するために,バインダー(ゼラチン)の調整,自己組織化単層(Self-assembled monolayer;SAM)およびAgI被膜の形成により銀ナノ構造体の仕事関数を制御した.
金属と誘電体の多層膜(Metal-dielectric-multilayer:MDM)は透明電極に相応しい高導電性と高可視光透過性を備え有機ELや有機太陽電池へも応用され注目されており,ここに最近の進歩を解説した.また,研究の具体例として我々が取り組んでいるMoO3/Ag/MoO3の諸特性と有機ELへの応用の結果を紹介する.
超微粒子原子核乾板はハロゲン化銀結晶サイズを数10 nmまで小さくすることで,サブミクロン以下の粒子飛跡を記録することができる世の中で最も高い空間分解能を有する固体飛跡検出器である.記録された粒子の飛跡は,数10 nmの現像銀から構成され,まさに局在表面プラズモン共鳴(LSPR)が観測されるサイズとなる.このLSPRの効果を粒子飛跡解析に用いるという新たな手法開発を行い,その偏光特性を組み合わせることで10 nm以下の情報を引き出す超解像顕微技術を開発した.現在,LSPRによる光学特性を用いた新たな粒子飛跡解析手法およびシステム開発を行っており,これまでにない原子核乾板の方法論を展開している.
高周波数領域の測定限界をラジオ波領域である2 GHzまで広げた誘電損失測定系を開発し,沃化銀微粒子のイオン伝導度を初めて詳細に評価した.銀塩写真感光材料の熱現像システムにおいて,沃化銀微粒子は熱現像時に定着できることが見出されたことから,高感度化へむけてその物性が注目された.十四面体沃化銀微粒子の誘電損失応答は,臭化銀八面体粒子同様に2つのピーク成分を含んでいた.粒子のイオン伝導度を反映した低周波数側ピークから得られる沃化銀粒子のイオン伝導度の活性化エネルギーは,0.42 eVであり,この値から求めた表面ポテンシャルは,-0.18 eVであった.