陸水物理学会誌
Online ISSN : 2435-3043
3 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 鈴木 健史, 知北 和久
    2021 年 3 巻 1 号 p. 3-20
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,樹幹の樹液流測定法の一つであるヒートパルス法を用い,流域にある代表的な樹木50 本を選びその樹液流速を測定した。また,ヒートパルス法の測定原理に対する3 次元数値実験による補正に基づいて,流域蒸散量を評価した。対象流域は,札幌市の豊平川上流にある冷水沢支流流域(1.16 km2)で,流域面積の56%は針葉樹のトドマツ林,他は広葉樹との混交林である。ヒートパルス法による観測期間は,2001 年7 月9 日~9 月20 日である。先ず,ヒートパルス法によって代表的な針葉樹木と広葉樹木の深さ方向の樹液流の流速分布を求め,樹木の辺材部で積分して各樹木の蒸散量Tr1 (L day-1)とした。このTr1値の無降雨日の平均値Trmは,樹木の胸高直径DBH(cm)をパラメーターとしてTrm=c(DBH)d (c, d は樹種ごとの定数)の関係があることがわかった。この関係式に対する決定係数R2は,トドマツで0.93,広葉樹としてイタヤカエデ,シナノキ,オヒョウなどをまとめた場合0.71 と求められた。ヒートパルス法によって,観測期間中の無降雨日での流域全体の平均蒸散量は0.72 mm day-1と求まった。他方,ペンマン-モンティース法による蒸発散量は2.03 mm day-1 と見積もられた。林床からの蒸発散量を考慮しても,前者の値は後者よりかなり小さく,その理由として,センサーの直径が2 mm であるにも関わらず,樹液流の速度を“センサーの体積が無限に小さい”という仮定の基で求めたためと考えられた。そこで,辺材部での樹液流の阻害パターンとしてセンサーを挿入した時の辺材部のキズの幅を考慮し,樹液流に関する3 次元数値実験を行った。その結果,キズの幅2.8 mm のとき流域の平均蒸散量1.76 mm day-1 と求まり,クマイザサによって覆われている林床からの蒸発散量を考えると比較的妥当な値が得られた。
  • - 浮島の浮沈との関係 -
    岡田 操
    2021 年 3 巻 1 号 p. 21-40
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/03
    ジャーナル フリー
    筆者はサロベツ湿原にある小湖沼である瞳沼(面積約7,000 m2)で長期間にわたり,沼の凍結過程や水温特性などの観察・計測を行なった。この沼には浮島がある。調査の過程でこの浮島が冬季には沈んでしまうことが分かった。そこで浮島の沈下過程を理解するために,絶対圧水位計を浮島に取り付け,その浮沈の様子を連続計測した。これと同時に,水深方向に等間隔の深度で水温を連続計測した。この一方で,これまでのシミュレーションモデルに改良を加え,夏冬の湖沼の境界条件を明確に区別することにより,冬期間の水温挙動と湖面の凍結との定量的なメカニズムを説明する新しいモデルを構築した。このモデルを用いて,湖沼の熱的変動を把握し,更に湖面の凍結過程を再現した。これに基づいて瞳沼の凍結過程と浮島が沈下するメカニズムとの関係を明らかにした。
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