正常尿を100-1000倍に濃縮すると, アルブミン, α1-抗トリプシン, トランスフェリン, γ-グロブリンなどが出現する. 腎疾患の患者尿中には上記の蛋白が正常人に比較し多量に出現するが, 腎臓の障害の部位によりその出現する蛋白の種類や量が異なる. 腎糸球体の障害により起こる糸球体性蛋白尿では中分子量 (60,000-160,000) のアルブミン, トランスフェリン, IgGなどの蛋白が主体となり, 疾患としてはネフローゼ症候群, 腎炎, 高血圧性腎症, 糖尿病性腎症などがある. これに対し近位尿細管障害による尿細管性蛋白尿では低分子量 (10,000-50,000) のL鎖, β
2-ミクログロブリン, 血清酵素などが出現し, 疾患としては慢性カドミウム中毒, Fanconi症候群, ウイルソン病などがある. この他糸球体と尿細管がともに障害されることによって起こる尿毒症性蛋白尿では低および中分子量蛋白が同時に出現し, 尿毒症の時にみられる. 著者は糸球体性蛋白尿をきたした慢性腎疾患患者尿中の低分子量γ-グロブリンとアルブミンについて物理化学的および免疫学的検索をした. 尿中低分子量γ-グロブリンの分子量は約12,000でIgGのH鎖フラグメントであるFcとFabおよびL鎖を含んでいた. 尿中低分子量アルブミンは分子量約10,000のminialbuminが出現し, 免疫原性を有した.
抄録全体を表示