順天堂医学
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28 巻, 4 号
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目次
Contents
特集 脳血管障害の諸問題
原著
  • 石井 廣重
    1982 年 28 巻 4 号 p. 499-507
    発行日: 1982年
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    ICR系妊娠マウスにテストステロンプロピオネート (TP), またはジエチルスチルベステロール (DES) を連続または1回皮下注射し, 雌雄新生仔を生後第1日目に剖検して内性器の形態的変化およびこれらと神経線維連絡を持つと考えられる神経節, 雌では旁子宮頸神経節, 雄ではそれに対応する神経節の神経細胞数を調べ比較した. 無処置の雌雄マウスを第1群とし, TP1mgを胎生9日目から16日目まで投与したものを第2群とした. 後者の雌の内性器には, 本来の雌性性管系に加えてウォルフ管 (WD) 由来の精管や精嚢を含む雄性性管系が出生後も存続し, 旁子宮頸神経節の神経細胞数は対照群 (第1群) の雌より有意に多かった. しかしTP2.5mgを妊娠12日目に1回投与した第3群の雌では, 内性器は形態的に第2群の動物と差を認めない程度に雄性化したにもかかわらず, 旁子宮頸神経節の神経細胞数には正常の雌 (第1群) との間に有意差は認められなかった. 一方, DES4μgを胎生9日目から16日目まで投与した第4群の雄の内性器には本来の雄性性管系に加えて, ミュラー管 (MD) 由来の子宮を含む雌性性管系が出生後も存続した. この群の雄新生仔では対照群の雌に見られる旁子宮頸神経節とほぼ同じレベルに認められる神経節の神経細胞数が第1群の雄より有意に多く, その数は雄と雌の神経節中の神経細胞の数の総和よりも多かった. また第4群のDESを連続投与された雌でも内性器には対照の第1群の雌と比べて形態学的変化は認められなかったが, 旁子宮頸神経節の神経細胞数は第1群の雌より有意に多かった. しかし, DES32μgを妊娠12日目に1回投与した第5群の雄では, 第4群と同様内性器の形態における雌性化が認められるにもかかわらず神経節中の神経細胞数は, 対照群との間に有意差は認められなかった. したがって本実験の結果は, 旁子宮頸神経節を含む性管の自律神経支配に関与する神経細胞数は性管の分化異常によって誘起された標的器官数の多寡によって変化することが判明した. また第4群の雌の結果よりDESが神経細胞へ直接作用する可能性も考えられ, これらの神経節の神経細胞数が雌雄間で遺伝的にあらかじめ決められているものでないことが示された. 更に妊娠12日目の性ホルモンの1回投与実験結果は胎生期における標的器管形成時期と神経細胞の神経連絡形成時期との間にずれがある可能性を暗示し, 性器, 神経系の発生, 発達過程の考察に1つの示唆を与えるものである.
  • --視索前野破壊による偽妊娠中絶--
    渡辺 博志
    1982 年 28 巻 4 号 p. 508-514
    発行日: 1982年
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    雌ラットの偽妊娠を維持するには, 持続的なプロラクチン (PRL) の分泌を必要とする. PRLの分泌調節機序に関して, 内側底部視床下部 (MBH) や正中隆起がPRL抑制因子であるドーパミンの産生ニューロンの働きを介して, 主として抑制的な役割を果していると一般的に考えられる. 本研究では, MBHよりさらに前方に位置する部位からMBHに入る神経性入力がPRL分泌に関与すること, そしてその起源を明らかにしようと試みた. その結果, 視索前野 (POA) のうちPOA底部の脳室周囲の吻側部を側つけると, 有効に偽妊娠が中絶することが判明した. これに対してPOA背側部やPOA外側部, POAよりさらに前方のBrocaの対角帯およびその核や側坐核につけた傷では, 偽妊娠の中絶が起こらなかった. 前交連のレベルでPOAの上縁から前方へL型Halaszナイフを用いて, 水平に神経線維群を切断して背側からPOAに入る神経性入力を除去しても, 偽妊娠の中絶は起こらなかった. したがってMBHのPRL分泌抑制機序の他に偽妊娠のPRLの分泌調節機構において, POA前部脳室周囲部がPRL分泌促進に重要な役割を果していることがわかった. 偽妊娠中絶に有効なPOAの傷をもつラットにカテコールアミン合成阻害剤のα-メチルチロジンを投与すると偽妊娠が維持されたことは, POA前部からの神経性影響はMBHにあるドーパミンニューロンの活動を抑制するように働く可能性を示唆している. さらに同様なPOAの傷を有するラットに5-ヒドロオキシトリプトファンを投与すると偽妊娠中絶が回避されることから, PIFであるドーパミンの放出抑制機序にセロトニンニューロン系が関与している可能性も考えられる.
  • 勝田 康夫
    1982 年 28 巻 4 号 p. 515-528
    発行日: 1982年
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    大腸癌の治療成績を向上させるために, 癌の早期発見は肝要なことである. 早期大腸癌の大部分は隆起型である. したがって, 大腸隆起性病変を見つけ出すために, 臨床症状ならびに注腸二重造影法によるX線所見について研究し, 以下の結果をえた. 1. 合理的で能率のよいX線検査を行うためには, 年齢, 症状, 疾患の罹患部位の特徴を知り, 検査前に病変を推定することが重要であった. 2. ルーチン検査では, 12枚のフィルムを使い, 仰向けの正面と両斜位が撮影の基本体位であった. 3. 隆起性病変の質的診断は, 大きさ・高さ・病変の立ちあがり・輪郭の性状によった. 4. X線検査では3mm位の小さな隆起性病変まで描出できた. 5. 初回X線診断で大腸ポリープのfalse positive率は38.3%であり, 見直しで23.4%であった. 今のところ内視鏡検査による補正がいるし, 今後, 前処置の新しい工夫と改良が必要である. 6. 直腸とS状結腸の集検と全大腸を検査する注腸X線検査との間に, まだ, 大腸隆起性病変の発見率で大きな差があった.
  • 吉田 博
    1982 年 28 巻 4 号 p. 529-537
    発行日: 1982年
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    人水晶体が蛍光をもち加齢とともに増強することは良く知られているが, その分布はほとんど報告がない. 今回は蛍光強度および吸収度分布とその特性を正常および老人性核白内障水晶体で検討した結果を報告する. 正常人水晶体と, 混濁と核硬化の程度により分類した老人性核白内障水晶体を0.5mmの薄切り切片として, アミンコ社自記分光光度計と日立社蛍光分光光度計で蛍光および吸収測定を, オリンパス社マルチ測光顕微鏡で蛍光強度分布と吸収度分布をおこなった. 紫外部吸収スペクトルでは正常人水晶体の280nmの吸収極大は, 核白内障進行とともに変化はないが, 340nm-390nmの長波長側に吸収極大が形成された. 励起光395nmにおける蛍光強度も正常人水晶体で示す465nmの極大は, 核白内障形成とともに減少していくと同時にやや長波長の500nmに新しい吸収極大が表われ, 495nmに等放射点を形成した. 励起光400nmにおける蛍光強度は正常水晶体核部から次第に核白内障の進行につれて核部周囲に強く分布した. 紫外部および可視部吸収度分布は核部中心に変化がみられた. 正常人水晶体で低い吸収を示す核部は, 核白内障の進行とともにその吸収度を増し逆に山を形成した.
特別講演
抄録
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