順天堂医学
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30 巻, 2 号
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目次
Contents
特集 塩川優一教授・加藤英夫教授定年退職記念講演
  • 塩川 優一
    1984 年 30 巻 2 号 p. 128-135
    発行日: 1984/06/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    この10数年間における膠原病の研究, 診療の進歩はめざましいものがある. 私たち順天堂大学膠原病内科も発足以来, この領域の研究, 診療にたずさわり, 数多くの成果を挙げて来た. 今回, この機会に診療患者数の統計を年度別, 疾患別にまとめ, 報告した. 次に膠原病の代表的疾患として, 全身性エリテマトーデスの臨床研究につき当科の現況を述べた. さらに新しい治療法の1つとして注目され, しかも当科が全国でも中心的実施施設の1つとなっている血漿交換療法につき, その適応および成績につき言及した.
  • 加藤 英夫
    1984 年 30 巻 2 号 p. 136-155
    発行日: 1984/06/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    順天堂大学医学部小児科学教室の比較的最近の研究成果の主なものを列挙して解説した. 1) 成長・発達に伴う分子レベルの変化, 小児の生化学的個体差 (素因) の双生児相互の類似性と成長に伴う変化をLDH-isozymesおよびamino acid patternsなどによって示した. 2) 中枢神経系のGOT, GPT, GAD (グルタミン酸脱炭酸酵素) およびamino acid patternsからアミノ酸代謝について検討した. 3) 消化管ホルモン, 特にガストリン, セクレチン, モチリン, CCK分泌能の発達を明らかにし, 幽門狭窄症, 消化管潰瘍, 乳幼児下痢症, 冬季下痢症などにおける血漿値を示した. 4) 胆汁酸代謝の発達を流産児 (胎児) から学童まで明らかにし血液, 胆汁および肝内の胆汁酸パターンの正常値から新生児肝炎および先天性胆道閉鎖症における異常値と比較し, これらの疾患の病因についての私見を述べた. 5) IgEおよび補体成分の発達を明らかにし, アレルギーおよび免疫性疾患, 特に川崎病, アナフィラクトイド紫斑病, 気管支喘息, アトピー性皮膚炎の発症について述べた. 川崎病はこれらの成績からある特殊な溶連菌 (変異株) の感染による免疫複合体症 (immune complex disease) である可能性が大きいと述べた. 6) 冠動脈のアンジオグラフィによる川崎病児の経過および先天性心疾患の冠動脈の分布型について, また, 小児の心筋のタウリン代謝について触れた. 7) 白血病のCFU-Cなどについて述べた.
原著
  • 中山 秀英
    1984 年 30 巻 2 号 p. 156-161
    発行日: 1984/06/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    肺炎球菌C多糖体 (CPS) に対する抗体応答に及ぼすヒトCRPの影響について検討した. 肺炎球菌3型ワクチンで免疫されたBALB/CマウスにおけるCPSに対する抗体応答が血清凝集抗体価で評価された. 免疫に先だつCRPの投与はCPSに対する抗体応答を有意に阻止した. この阻止に必要とされる最少CRP量は50μgであった. CRPの効果がparticulate抗原の処理に関係しているかどうか決定するため, マウスはCPSでコートされたウマ赤血球 (HE) で免疫され, HEあるいはCPSのそれぞれに特異的な抗体応答が測定された. CRP投与はHEに対する抗体応答に影響を及ぼすことなく, CPSに対する応答のみを阻止した. これらの所見は, 細菌上に存在する抗原決定基へのCRP結合がこの基による有効な免疫を妨げることによりもたらされることを示唆している.
  • -糖尿病性心筋疾患の検討-
    清水 満
    1984 年 30 巻 2 号 p. 162-177
    発行日: 1984/06/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    成人型糖尿病剖検心60例と, 非糖尿病剖検心30例 (正常血圧20例, 高血圧10例) を対比し糖尿病に特有な心筋の病理組織学的所見を追求した. 糖尿病例は冠状動脈硬化の程度により, 無冠状硬化群, 一枝病群, 二枝病群, 三枝病群に分け, 別個に高血圧合併群, 心不全合併群, 心電図異常群を分けて心病変を比較した. 剖検心は肉眼的に大きさ, 冠状動脈病変を評価後, 両心室を含む横断面の心筋を切り出し, 通常の方法にて7μmに薄切し, H. E. azan, elastica-van Gieson, P. A. S. の各染色を施し光顕的に観察した. 心筋病変は心筋線維症の態度に注目し, 心筋細胞周囲線維症, 血管周囲線維症, 巣状線維症に大別し各群毎に半定量的に評価した. 心筋細胞周囲線維症は自動画像解析装置を用いて面積率を測定し, また内径30-40μmの心筋内細小動脈内腔狭窄度も算出した. 糖尿病性腎病変も合せて検討した. その結果, 冠状動脈硬化は糖尿病例で有意に強く, その促進因子として糖尿病と高血圧の合併が重要であった. 心筋内細小動脈では内皮細胞下P. A. S. 陽性物質沈着が糖尿病例で増強していたが心筋虚血を発生する程の内腔狭窄は認められなかった. 心筋線維症は心筋細胞周囲線維症のみ糖尿病心で有意に増強していた. その程度は主要冠状動脈病変や心筋内小動脈病変, 腎病変とは無関係で, 早朝空腹時血糖値と良い相関を示し, 虚血因子よりも糖尿病に直接関連した心筋・結合織の代謝障害と小血管の透過性亢進が病因と推定された.
  • 長浜 真人
    1984 年 30 巻 2 号 p. 178-195
    発行日: 1984/06/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    ヒトHirschsprung病は先天的に下部消化管の腸蠕動運動が欠如し, 組織学的には腸壁内神経節細胞を欠くことが知られている. しかしながらヒトHirschsprung病解析のための検索材料は比較的限定されるため, この疾患の全体像は十分に把握されていない. 最近, 筏井らによって発見された先天性aganglionosis (ag) ラットはヒトHirschsprung病類似の症状を示し, 同疾患のモデル動物として適当であると考えられている. 今回この先天性agラット腸管のAuerbach神経叢 (A-神経叢) を, 伸展標本を用いた組織化学的および免疫組織学的染色, 通常切片による光学顕微鏡的観察, 走査電顕および透過電顕観察により検索した. 全ての検索した先天性agラットは腸管内容物を充満し異常に拡張した腸管を有していた. 拡張した腸管に続いて狭小腸管を必ず有しており, 狭小部はヒトHirschsprung病に比べ著しく長いのが特徴であった. 対照ラット腸管ではA-神経叢は十二指腸から直腸まで比較的規則正しい格子状像を示したが, 先天性agラットでは, 肉眼的に全く異常が認められない十二指腸でもA-神経叢は不整な配置をとっており, ganglion strandは平均して短小で, 対照ラットのそれと比べ明らかに差異があった. 拡張した部位では, A-神経叢は肛門側に向かうに従い徐々にその密度を減らし狭小部に移行する以前に消失していた. 結腸においては, 対照ラットでは見られない径大小不同の不規則な神経線維束からなる神経線維網が存在したが, 神経節細胞は認められなかった.
  • 提坂 敏昭, 奥山 輝明
    1984 年 30 巻 2 号 p. 196-206
    発行日: 1984/06/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    胎盤の胎児発育に関する調節機構のうち, 特に胎盤絨毛のc-AMP dependent protein kinase活性の動態と胎盤の発育および機能との関連について検討するため, 妊娠各期のヒト胎盤絨毛c-AMP dependent protein kinase活性を測定した. またヒト胎盤絨毛c-AMP濃度, 蛋白質生合成の一端を担うとされるRNAおよびDNA濃度, さらにステロイド生合成に関与するAromatizing enzyme活性を併せ測定し, 検討考察した. 1. ヒト胎盤絨毛c-AMP dependent protein kinaseのspecific activity (p moles ATP/mg protein/minute) は, 正常妊娠のfirst, secondおよびthird trimesterで, おのおの44.67±5.29, 45.24±9.13および34.19±4.95であった. 2. ヒト胎盤絨毛c-AMP濃度は正常妊娠の各trimesterで, おのおの56.45±9.26, 59.90士15.51および22.54±4.59 p moles/mg proteinであった. 3. ヒト胎盤絨毛のRNA濃度 (mg/g wet tissue) は各trimesterにおいて, おのおの2.48±0.20, 2.57±0.58および2.63±0.42, DNA濃度 (mg/g wet tissue) は, おのおの1.62±0.34, 2.49±0.34および2.92±0.45であり, そのRNA/DNA比は, おのおの1.61±0.10, 1.08±0.17および0.89±0.15であった. 4. ヒト胎盤絨毛のAromatizing enzyme活性 (products n moles/flask/30mimutes) は核を含むtotalhomogenateでは各trimesterにおいて, おのおの2.75±0.70, 3.40±0.11および4.86±0.85であり, 核を含まないcell free homogenateでは, おのおの1.16±0.30, 0.90±0.33および1.80±0.70であった. 以上の成績より, 妊娠の進行に伴い個々の胎盤絨毛細胞は小さくなり, その重量も減少する傾向にあるが, 組織の機能としては必要に応じて増大し得ると考えられる. さらに, c-AMP-c-AMP depedent proteinkinase系は物質の能動輸送あるいは蛋白質代謝を介して, 胎盤の発育, 成長および維持に重要な役割を果たしている可能性が強く示唆された.
抄録
てがみ
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編集後記
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