順天堂医学
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30 巻, 4 号
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目次
Contents
特集 プロスタグランジンの基礎と臨床
  • MAKOTO KATORI
    1984 年 30 巻 4 号 p. 403-410
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    プロスタグランジンは, 生体内で作られる極めて薬理活性の高い不飽和脂肪酸の一種である. 生体の多くの細胞の膜の燐脂質に前駆体のアラキドン酸が貯えられており, 細胞が情報を受けとると, 膜内の他の生化学的変化と共に遊離され, 共通のシクロオキシゲナーゼ及び細胞固有の酵素によって細胞にもっとも適したプロスタグランジン (PG), トロンボキサンが作られる. またリポキシゲナーゼによってロイコトリエンが作られることもある. これらの代謝物は構造が僅かに異なるにすぎないが, 薬理作用は極めて異なり時に反対の作用を示す. これら代謝物は, 調節因子として細胞の機能を微妙に調節している. 従って多くの生理的現象にも病態にもアラキドン酸代謝物が関与する. これに対し, 外からPG及びその誘導体を薬物として投与し治療することがあり, また, 生体内のアラキドン酸代謝を薬物によって調節することもある. シクロオキシゲナーゼを阻害する鎮痛解熱薬のアスピリンはその代表といえるが, 他にも多くの薬物が開発されつつある. 病態におけるアラキドン酸代謝物の役割を充分知ると共に, これら薬物によりその代謝を上手に制御することは治療上極めて大切である.
  • FUMIO HIRATA
    1984 年 30 巻 4 号 p. 411-416
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    すでに, プロスタグラシジン (PG) は, primary PG (PGE1, PGE2およびPGF) が市販され, 一部臨床領域で高い評価を受けているが, より広い領域で, しかも経口剤として使用するためには, その化学安定性, 生体内代謝, 作用選択性に問題を残し, これらを克服するための構造修飾と活性スクリーニングが行われて来た. また, 血液-血管系における血小板由来で血小板凝集性と動脈血管収縮性を持っTXA2と, 動脈内皮産生で血小板凝集抑制性と動脈血管拡張性を持つPGI2の陰陽バランスの変化によって起る病態に対し, これら両者の量的または質的バランスの維持安定により治療しようとする考え方があり, 例えば, PGI2または安定PGI2誘導体, TXA2生合成酵素阻害剤またはTXA2拮抗剤などの開発が待たれる.
  • TOYO MIYAZAKI
    1984 年 30 巻 4 号 p. 417-423
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    63例の末梢動脈閉塞症に対してPGE1の点滴静注または持続動脈内注入を行い, その結果について検討を行った. その結果, PGE160ugを点滴静注した42症例62肢のうち, ASO11例, 15肢では約46.7%の有効率が得られ, TAO31例, 47肢では約55.3%の有効率であった. 両者を合計すると, 点滴静注法の有効率は約53.2%であったが, 種々の条件により持続動脈内注入の不可能な症例には是非試みるべきであると考えられる. また, 持続動脈内注入を行ったTAO32例, 33肢では約81.8%と高い有効率が得られた. この事は, 観血的なカテーテル挿入, 感染予防に関する注意, 患者の行動制限などの問題はあるが, 積極的な保存療法として本法を多いに活用すべきであることを示す結果であると考えられる.
  • MICHIO NUKARIYA, MIKIO WATAMABE, YASUYUKI HOSODA
    1984 年 30 巻 4 号 p. 424-430
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    人工心肺装置は心臓外科領域では不可欠の補助手段であり, その装置の人工材料は改善され, その運用法も飛躍的な進歩をとげてきたが, あくまで非生理的な体外循環法であるために, 現在尚多くの問題が残されている. 例えば, 開心術後にみられる血小板数の減少もひとつの重要な解決されるべき問題であり, プロスタノイドと血小板機能との関連が明らかにされるにつれ, 人工心肺におけるプロスタノイドの応用研究がすすめられている. 本稿では人工心肺使用時の血小板, プロスタノイドの変化, 及びこれらに及ぼす薬剤の影響について紹介したい.
  • 清田 明憲
    1984 年 30 巻 4 号 p. 431-439
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    prostaglandinsは, 生体内に広く分布し, 細胞レベルでの代謝調節因子として, 様々な生理作用発現に関わりを持っている重要な物質である. 産婦人科領域では子宮内膜, 月経血中, 脱落膜, 羊水, 胎盤, 分娩時母体血中, 精液などに分布し, 妊孕現象発現と密接な関係が示唆され盛んに検討報告がなされている. またわが国においてPGF製剤が昭和49年にPGE2製剤が昭和51年に発売されて以来, 現在に至るまで主として妊娠末期の陣痛誘発, 促進剤として広く臨床応用されており, さらに昭和59年8月よりPGE1膣坐剤が発売され, 妊娠中期の流産例に使用されるようになった. そこで産婦人科領域とPGとの関連性について解説を加える.
  • 東島 利夫
    1984 年 30 巻 4 号 p. 440-454
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    内科領域におけるPG療法の主体は, レイノー現象, 虚血性皮膚潰瘍, ASO, TAO, 糖尿病性壊疸などの“末梢循環障害”に対するPGE1およびPGI2療法である. 日本ではPGE1が広く用いられ, 最近では, ループス腎炎や糖尿病性腎症などの腎障害, 糖尿病や悪性関節リウマチに伴うノイロパチーの治療にも用いられている. しかしながら, 投与方法はまだ確立されておらず, 異論のあるところである. また, 単に濃度を上げても効果がないことは, 最近, 20ng/kg/minの投与により皮膚漬瘍が悪化したとの報告がなされており, 投与方法および量の確立が望まれる. したがって, 作用機序が問題となる. PGE1は深部体温を上昇させるところから末梢血流量の増大作用については異論はないが, 1ng/kg/minの濃度下では血小板凝集は充進する例が多いにもかかわらず, 臨床効果は, 変らないところから, 血小板凝集抑制効果については, 疑点がある. また, PGE1療法により, 全てのPG前駆物質の基質である血中リノール酸化が低下することや血中6-Keto-PGF値が低下することは, PG需要の低下を示すとともにanoxiaの改善の結果かも知れない.
  • 水島 裕
    1984 年 30 巻 4 号 p. 455-458
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    ある学者によると, 将来の医薬品の50%以上がPGあるいはPG関連物質で占められるという. それだけに, PG療法の将来は明るいと一般に考えられている. 本稿では, PGE1とPGI2を中心に, PG群の臨床応用の問題点と近い将来解決されると思う対策について述べた. 治療薬としてのPG群の問題点は, 薬理作用, 臓器分布の面で非選択的であること, 代謝が速いこと, 不安定であることである. これらに対して, 化学構造の修飾, 剤型上の工夫など種々の対策が現在すでになされている. 今後, これらの研究の進歩により, 他のPG群も含め, PGは種々の疾患の治療に欠かせない治療薬となろう.
原著
  • 松下 和子
    1984 年 30 巻 4 号 p. 459-470
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    リン脂質は細胞膜の主要構成成分であり, それに含まれている脂肪酸は細胞機能において重要な役割を果たしている. 一方prostaglandin (PG) の研究が盛んになるとともに, その前駆物質である細胞膜リン脂質中の脂肪酸を簡便に測定する方法を開発することはその研究においても, また臨床的にも有用である. しかしリン脂質の抽出・分離操作に際しては, 有機溶媒の他に水を加えたり薄層クロマトグラフィ (TLC) 分離の際空気に暴露されたりするため多価不飽和脂肪酸が破壊されやすいという問題がある. そのため抗酸化剤の添加も試みられているが, 手技が頻雑で時間がかかり一般に臨床的にはまだ用いられていない. 著者は, これらの欠点を補うリン脂質の抽出・分離方法を考案した. その特徴は水を使用せず, 空気に暴露しないで, しかも比較的簡便なことである. 血小板リン脂質中の脂肪酸は構成比および含量を測定した. 対象は糖尿病患者16名. 対照は健常者6名である. 本法は簡便でリン脂質の回収率は良好であり測定成績は次のごとくである. 糖尿病患者ではlauric acidおよびarachidonic acid構成比の有意な上昇がみられ, 定量的にもmyristic acid, palmitoleic acid, stearic acid, linoleic acidおよびarachidonic acid含量の有意な増加がみられた. またpalmitoleic acidおよびarachidonic acidは脂肪酸構成比と含量の間に有意な相関を認めた.
  • 佐藤 有規
    1984 年 30 巻 4 号 p. 471-483
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    1979年9月より1983年3月までに経胸食道離断術 (杉浦法) を施行した174例中, 肝硬変104例, IPH16例に対し, 術前後に100g経口糖負荷試験を行い, 血糖値, IRI, IRGを測定した. 1) 耐糖能障害は肝硬変例中90例 (86%) に認めた. これら90例を血糖曲線より, linear, parabolicの2群に分類し, 諸肝機能検査結果につき検討したが, 両群間に有意差は認めなかった. 2) 糖負荷時のIRI値より, 高, 中, 低値群の3群に分類検討を加えた所, 高値群および低値群問にて, 総ビリルビン値 (p<0.05), 直接ビリルビン値 (p<0.025), K1CG (p<0.05) および, Rmax (p<0.005) において有意差を認め, IRI値はよく肝機能を反映するものと思われた. 3) 術前後における経口糖負荷試験の比較では, 胸腔内操作後では, 血糖値, IRI, IRGとも術前とほとんど変化なかったが, 杉浦法I期手術後および, 腹腔内操作後では, 血糖曲線はoxyhyperglycemia型を示し, 又IRI値も高反応を示したが, IRG値は, 術前とほとんど変化がなかった.
  • 津田 裕士
    1984 年 30 巻 4 号 p. 484-489
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    ループス腎炎の治療はステロイド剤・免疫抑制剤の使用により改善をみる例もあるが, 一部治療低抗性の例もあり予後も悪い. 著者の教室では, 以前より血漿交換療法がループス腎炎に有効例も多いと報告してきた. しかし, 血漿交換は代用血漿として新鮮凍結血漿を用いるため, その副作用を無視できない. 二重膜濾過血漿交換療法 (以下DFPE) は他人の血液製剤を用いずに施行できるため, 一定の適応基準及び併用治療法を設定し, 施行した. DFPEをSLE10例に施行し, 7例に有効, 2例にやや有効, 無効1例という結果を得た. 尿蛋白も4週後で8例中7例で改善し, 6ヶ月後でも4例中3例に改善が継続していた。副作用では致命的なものはなく, 発熱2例, 出血傾向, 溶血, 浮腫が1例ずつであったがすべて軽微であった. 以上より, ステロイド剤, 免疫抑制剤の併用下でのDFPEは, ループス腎炎に対し, 高率に有効であることが認められ, 十分効果が期待できると考えた.
抄録
てがみ
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