順天堂医学
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31 巻, 3 号
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目次
Contents
特集 脳・腸管ペプチドの基礎と臨床
  • 矢内原 昇
    1985 年 31 巻 3 号 p. 331-340
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    脳・腸管ペプチドの研究は, 最近驚くべき展開がみられ, 生化学・組織化学・薬理学・生理学などの基礎科学のみならず, 臨床医学の場においても, その重要性が次第に認識されるにいたった. 一方, その種類の多様さ, あるいは受容体認識機構の複雑さから, その機能の解明は今後の問題として残されているものが多い. しかし, 脳・腸管ペプチドが神経・内分泌生理に重要な関与をしていることが明らかであり, さらに多方面からの研究が必要であろう.
  • 視床下部を中心として
    井端 泰彦
    1985 年 31 巻 3 号 p. 341-351
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    視床下部に多くの種類のペプチドニューロンが分布しているが, それらのペプチドは機能のうえから幾つかのグループに分けられる. 本論文では視床下部の諸神経核のうち, 多くのペプチドニューロンの細胞体が分布する室傍核, 視交叉上核, 弓状核におけるペプチドニューロンの分布パターンの特徴とそれらの多くのニューロンの終末投射領域である正中隆起でのペプチドニューロンの終末形態について免疫細胞化学法を用いて形態学的観点から述べた. また, ペプチドニューロンは一般的にミトコンドリア, 粗面小胞体, ゴルジ装置などの細胞内小器官が良く発達する以外に免疫陽性反応を示し, 暗調を呈する分泌顆粒を含むが, ペプチドニューロンの免疫電子顕微鏡的細胞化学法による所見も併せて述べた. 視床下部にはカテコラミンやインドールアミンの線維分布も密に認められるが, それらの大部分の線維は脳幹より上行性に投射するものである. 室傍核に分布するニューロテンシンニューロンへの脳幹よりのノルアドレナリンニューロン及び視交叉上核に分布するVIPニューロンへの脳幹よりのセロトニンニューロンの投射による影響についても概述した.
  • 町 俊夫
    1985 年 31 巻 3 号 p. 352-359
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    血液および脳脊髄液中のエンケファリン, エンケフアリン分解酵素, エンケフアリン分解酵素阻害物質などは疼痛機序に関与していると考えられているが, それぞれの関連を含めてなお詳細は不明である. さらに最近では血液中にエンケファリンと結合する蛋白が発見され, この物質の変動も影響する可能性がある. われわれは独自にエンケファリン測定法を考案して検討した結果, 血液中に明らかにエンケファリンが存在し, 急性疼痛時には血清中エンケファリン濃度が正常より有意に高値になることがわかった. 一方, エンケファリンおよびエンケファリン前駆物質が副腎髄質に多量に含有され, カテコラミンと平行して分泌されるといわれているが, 急性疼痛をストレスと考えるとこのストレス状態においてエンケファリンが副賢髄質より血液中に分泌されるのかもしれない. 従来よりエンケファリン関連物質は中枢神経系や腸管に含まれるといわれてきたが, その後末梢神経系や副腎髄質などからも発見され, 疼痛機序を含めて生体防御機構の制御全般にかかわっている可能性も考えられる.
  • 山城 雄一郎
    1985 年 31 巻 3 号 p. 360-367
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    消化器の形態的および機能的発達は胎児の発育に伴って進行し, 形態的には胎生20週からほぼ成熟している. これは発育に十分なエネルギーと栄養を腸管を通して吸収しなくてはならない子宮外の生活に備えているためである. 子宮外の生活すなわち, 出生に伴い種々の変化が起るが, 重要なものの1つに栄養摂取法の変化がある. 子宮内で胎児は母親から胎盤を介して継続的に“経静脈栄養”により栄養されているが, 新生児は生後空腹期間が介在する間欠的“経腸栄養”に移行し, 摂取した栄養物の代謝を自力でコントロールすることに適応していかなければならない. 本稿では, 生後, 経腸栄養に適応して消化器が発達していく際に重要な役割を果たす腸管ペプチド (消化管ホルモン) について, 教室の研究データを中心に総論的に述べる.
  • 渡部 洋三
    1985 年 31 巻 3 号 p. 368-380
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    対象は消化性潰瘍146例で, 最高酸分泌量 (MAO) が20mEq末満のnormosecretor (N) 群が68例 (胃潰瘍35例, 十二指腸潰瘍33例), 20mEq以上のhypersecretor (H) 群78例 (胃潰瘍20例, 十二指腸潰瘍58例) に分けて検討した. 術後の症例は, SV+Pが12例, SV+Aが11例選ばれた. 方法は空腹時血中gastrinおよびsecretin, 各種刺激後のgastrin反応 (IGR) およびsecretin反応 (ISR), 幽門洞粘膜内gastrin含有量, 十二指腸球部粘膜内secretin含有量および細胞数などの測定のほか, G細胞の電顕学的検索を行った. その結果十二指腸潰瘍およびH群の胃潰瘍はfunctioning G cell massが多く, かつ迷走神経の関与が大きいことが分り, これが壁細胞に対する迷走神経の関与の大きいことと相俟って潰瘍発生の一病態となっているものと思われる. SV+P後のG細胞は術後1カ月目よりhyperplasiaとhyperfunctionの状態にあり, 肉汁エキスによく反応した. 一方secretinに関しては, 消化性潰瘍群でその産生障害が示唆され, ことにH群ではこの傾向が強かった. これも潰瘍発生の一因となっているものと思われる. SV+A後はsecretin反応, secretin細胞数ともに著変はみられなかった.
原著
  • 白石 正治
    1985 年 31 巻 3 号 p. 381-387
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    Pancuronium bromide 3×10-5M., Vecuronium bromide 3×10-5M., 10-7M. 処置群と無処置群の猫右室乳頭筋におけるノルエピネフリン用量・作用曲線を比較検討した. Pancuromium bromide群の用量, 作用曲線はコントロール群に比して有意に左に移動した. Vecuronium bromide 3×10-5M., 10-7M. 各群の用量・作用曲線もコントロール群に比し有意に左に移動したが, 各群に有意差は認められなかった. これらの機序について考察し, またPancuronium bromideとVecuronium bromideとの臨床上の循環系の作用について検討した.
  • 藤原 直
    1985 年 31 巻 3 号 p. 388-401
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    超音波心断層図にて左室内腔拡張とびまん性壁運動異常を示す虚血性心疾患6例 (I群) と, 拡張型心筋症, 心筋炎後心拡大症およびアルコール性心疾患の26例 (II群) について超音波心断層法による比較検討を行い, さらに5例の剖検心を用いて壁運動異常と心筋病変の対比を行った. 超音波心断層図の左室短軸断面を垂直, 水平に4等分し, 各分節につき収縮期壁厚増加率を参考にして壁運動を定性的に評価した. また両群の壁運動異常の分布の相違を明らかにするために水平2分割による前方2分節, あるいは後方2分節における壁運動異常の不一致性discordanceの有無を検討した. その結果, シネアンジオ検査による冠状動脈病変では, I群の4例が3枝, 2例が2枝病変であり, 全例主要冠状動脈に高度の病変を認めた. Mモード心エコー図ではLVDdの平均値では両群に有意差は認めなかったが, LVDdが75mm以上の著明な左室拡張例はI群には見られず, II群では8例に見られた. 壁運動異常分布では, I群の5例が後方にdiscordanceを示し, 1例はdiscordanceを示さなかった. II群の軽度左室拡張例18例のうち17例がdiscordanceを示さず, 7例はdiscordanceを示したが, うち6例は著明な左室拡張例であった. 前方後方共にdiscordanceを示す例はII群に限られた. 病理学的検討ではI群の1例は壁運動異常と心筋変性, 線維化の程度が良く相関したが, II群の4例中3例では両者に相関が見られなかった.
  • 玉本 文彦, 片山 仁, 直居 豊, 鈴木 賢
    1985 年 31 巻 3 号 p. 402-415
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    Xeroradiographyは寛容度の広さと辺縁効果を特徴とする静電画像技術である. 現在各科の領域で応用されているが, 骨疾患に対するXeroradiographyの意義は今だ確立されているとは言い難い. 本研究では骨標本を用いてXeroradiogramとX線写真の画像上の特徴を示し, 骨病変を有した26症例の呈した病的所見のXeroradiogramとX線写真とを比較検討してXeroradiographyの骨疾患に対する有用性と限界について考察した. 検討した病的所見は, (1) 骨膜反応, (2) 骨皮質破壊像, (3) 骨透亮像, (4) 骨硬化像, (5) 病変の内部構築, (6) 硬化縁, (7) 骨内石灰化像, (8) 軟部組織の異常および骨病変と軟部組織との関係, である. Xeroradiogramでは骨透亮像, 骨硬化像などの濃度の変化を主体とする所見の描出が不良であった. しかし骨硬化, 骨皮質肥厚, 腫瘤などを伴う溶骨性病巣の所見の描出能はすぐれていた. また骨膜反応は, 軟部組織の異常などの傍骨性変化に対する描出能がすぐれていることが再確認できた.
報告
  • 入戸野 博, 渡辺 豊彦, 佐々木 栄一, 中津 典子, 大日方 薫, 新島 新一, 藪田 敬次郎, 宮野 武, 出口 英一, 姉小路 みど ...
    1985 年 31 巻 3 号 p. 416-421
    発行日: 1985/09/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    先天性胆道閉鎖症のマス-スクリーニングの郵送システムを検討するために, 生後25-30日目に採取し, 返送された濾紙に浸染した乾燥尿中の抱合型ビリルビンをHawkinson-Watson法 (Harrison's test) により半定量し, 次の結果を得た. 1. 昭和59年4月1日より昭和60年5月14日までに返送された尿浸染濾紙の総数は983枚であり, 回収率は54.3%であった. 2.983枚のうち, 黄疸 (+) と記載のあったのは78枚 (7.9%) であった. 3. 灰白色便 (+) と記載のあったのは18枚 (1.8%) であり, retrospectiveに調査した結果, これらは全例とも誤記入であった. 4. 濾紙中の抱合型ビリルビンの有無の判定結果は, 便の混入のための陽性が1例だけ存在し, 他の982枚は陰性であった. 5. 一定期間に返送された100枚の尿浸染濾紙で, 尿を付着してから抱合型ビリルビンの有無の判定までに要した日数は1-12日であり, その平均は3.85日で, 4日以上が47%存在した. 以上より, 尿浸染濾紙を用いた郵送による先天性胆道閉鎖症のマス-スクリーニングの試みは可能と考えられたが, 返送されるまでの日数の短縮方法に問題が残された. 本法は比較的鋭敏で安価であり, 手技が簡単であるために, 1カ月健康診断時の閉塞性黄疸のスクリーニングにも適していると思われた.
症例報告
てがみ
編集後記
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