順天堂医学
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31 巻, 4 号
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目次
Contents
特集 薬剤の適正使用―抗生物質を中心として
  • 横田 健
    1985 年 31 巻 4 号 p. 479-487
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    感染症の化学療法は, 選択毒性の明らかな抗生物質, 合成抗菌剤を全身投与し, 疾病を治すことである. しかしその歴史が半世紀近くになるので, 耐性菌の増加等による難治感染も増加した. 耐性菌の増加は多彩な遺伝学的現象の結果なので, それを薬剤で防止することはできない. 薬剤を耐性菌にも効くように化学修飾するのが対策となるが, まだ同一臨床症状を示す総ての病原細菌に有効なものすら完成していない. 現時点では各種感染症に最適の薬剤を選択し得る見識が要求される. 起因菌の分離, 同定, 薬剤感受性試験の結果が待てない時の薬剤選択の基礎は患者の免疫状態である. さらにMRSAのような強毒菌の耐性株に対してはあらかじめ治療法を確立しておく必要がある.
  • 林 康之, 西園寺 克
    1985 年 31 巻 4 号 p. 488-496
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    抗生物質の生体内動態の推定法と問題点について記した. 血中濃度の測定と薬動力学的解析法, 蛋白結合, 抗生物質の排泄経路などをまとめて述べた. 血中濃度測定法に関しては, 方法論とその誤差, 利用上の問題, 血中濃度曲線の解析法におけるサンプリング時間とPharmacokinetic facter変動の実例をあげて解説を試みた. 血中濃度, 吸収, 排泄のモデル化によるシミュレーションはサンプリング時間と測定技術の正確さ, 精密さによって変動が大きく, 方法論の統一は無理としてもsurveyによりデータに普遍性を持たせる必要がある. 蛋白結合率の測定法, 測定値の解釈と利用に関しても抗菌活性の測定が定量的厳密さを求め得ないことと併せて検討すべき問題である.
  • 池本 秀雄
    1985 年 31 巻 4 号 p. 497-501
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    感染症を大別すると, 第一線の臨床医にとってごく日常的な市中感染, それに大病院に勤務する内科医等がしばしば遭遇するであろうcompromised hostに合併する日和見感染の2つをまず挙げることができるかと思う. 前者については実地医家に対するアンケート調査, 後者については米国NIH等の肺炎の統計をもとに, それぞれにおける抗菌薬選択指針について解説した. いわば“古典的”感染症と“近代的”感染症を対比して検討する形になったが, 病気の重要性は甲乙をつけがたいとしても, 少なくとも診断や化学療法計画の設定は後者のほうがはるかに困難であり, 今後に残された課題が多い.
  • 松田 静治, 鈴木 正明
    1985 年 31 巻 4 号 p. 502-510
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    婦人の性器感染症は近年弱毒菌感染の増加など, 起炎菌と病態面でかなりの変貌がみられている。化学療法の進歩も起炎菌の変遷から骨盤内感染症をみると, 嫌気性菌を含むグラム陰性桿菌が分離されることが多く, さらに好気性菌と嫌気性菌との複数菌感染の頻度が高い。本項では, 骨盤内感染症に対する化学療法の一般的方針を示し, 薬剤選択ではβ-ラクタム剤が一次選択剤であることを指摘し, 子宮内感染, 子宮付属器炎などの疾患別に抗生剤の使い方を述べた. 要は薬剤の特徴を把握し, 適応を選び適切な使用法を心がけることである.
  • 岡田 淳
    1985 年 31 巻 4 号 p. 511-520
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    抗生物質の開発は感染症の治療に大いに貢献した. とくに1979年以降に登場した第3世代セフェム剤はグラム陰性菌による難治感染症患者を数多く救命した. その反面第3世代セフェムに無効のグラム陽性球菌, 非発酵菌, 一部の腸内細菌の耐性菌が増加し, 化学療法に新たな局面をもたらした. 本稿では各種病原細菌の耐性化について, 現在耐性化が問題とされている菌種 (黄色ブドウ球菌, 肺炎球菌, インフルエンザ菌, 緑膿菌, バクテロイデスなど) を主体に各種薬剤に対するMICを測定し, それらの成績をもとに過去5-6年間の耐性菌出現状況として記した. さらに抗生物質開発と耐性化との係り合いや将来展望について私見を述べる。
  • 渡辺 一功
    1985 年 31 巻 4 号 p. 521-530
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    近年は抗生物質をはじめとする抗菌剤の研究・開発は目覚ましいものがあり, 本邦でも世界各国が注目する新規の薬剤が開発されている. 本邦における細菌感染症に対する化学療法の普及率は世界第1位に属しているが, しかし, 化学療法の現況をみると, 化学療法が極めて安易に, また無計画に行われているきらいが多く, 反省すべき点のあることも事実であり, 抗菌剤の適切な選択と使用, 乱用には注意が必要である. 化学療法を医療保険の面からみると, 査定率は本学ではγ-グロブリン製剤に次いで多く, その理由として, 適応症, 有効菌種の問題, 用量, 用法の問題, 併用の問題, 術後感染予防における抗菌剤の投与の問題などが考えられてはいるが, 実際の臨床の立場との間にはいくつかの問題点があることも事実である. 今回は汎用されている抗菌剤を中心に医療保険の立場からみた問題点を指摘してみたい.
原著
  • 山下 秀光
    1985 年 31 巻 4 号 p. 531-539
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    慢性糸球体腎炎 (CGN) 患者37例, 健常者11例について, furosemide (FM) 投与前後で尿中遊離dopamine排泄量, 尿中kallikrein排泄量および尿中Na排泄量を検討し, 以下の結果を得た。 1) FM投与前後共に尿中遊離dopamine排泄量は高血圧のあるCGN患者 (境界域高血圧と高血圧を含む) で健常者に比べて有意に低下していた. 2) 尿中遊離dopamine排泄量/creatinine clearance (Ccr) は高血圧のあるCGN患者でFM投与前では正常血圧のCGN患者より, FM投与後15分では健常者より有意に低下していた. 3) FM投与前後の尿中遊離dopamine排泄量と尿中Na排泄量は健常者, CGN患者において正の相関があった. 4) 尿中遊離dopamine排泄量は, FM投与前およびFM投与後15分でCGN患者において平均血圧と負の相関があった. 5) FM投与前後で尿中kallikrein排泄量は高血圧のあるCGN患者と健常者とで有意差を認めなかった. 以上の結果より, CGN患者ではdopamineが血圧の調節と腎でのNa排泄調節に重要な役割があることを示唆している.
  • 金光 俊尚
    1985 年 31 巻 4 号 p. 540-552
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    Adriamycin (ADR) の至適投与法を検討する目的で, 原発性肺癌患者48例に対してADR30-60mg/body (0.5-1mg/kg) を気管支動脈内に注入 (BAI) し, 血清中のADRの濃度推移, 気管支動脈増生度, 治療効果について検討した. またADR注入後肺切除を行った5例については腫瘍組織内濃度を測定し, 病理組織学的効果も合わせて検討した. ADR30mg注入群の血中半減期は平約8.5min (fast phase), 60mg注入群のそれは5.8minであり, ともにADRは血中より速やかに消失した. 血中濃度の減衰曲線と組織型および治療効果には有意差は認めなかった. 腫瘍組織内濃度を測定した7例中3例に0.6-3.07μg/gのADRが検出された. BAIによりX線上では, 全例の34%に著効・有効例がみられ, 臨床症状の改善を含めると60%の症例に改善がみられた. BAI後の組織学的効果の検討では4例中3例に効果が認められたが, 変性細胞の分布や変性程度はそれぞれ異なっていた. BAIによる副作用は全身投与に比し明らかに少なく, 上述したごとくADRの組織へのとり込みが良好で他臓器への移行が少ないためと推察された. ADR30mgのBAIにより, 副作用が少なく充分な腫瘍組織内濃度と高い改善率が得られることが判明し, ADR (30mg/body) のBAIは有用な肺癌化学療法の手技の1つと考えられた.
  • 小林 茂雄
    1985 年 31 巻 4 号 p. 553-564
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    小腸炎症性疾患のX線診断学を研究するため次の検討を行った. まず, 手術および病理解剖を行いえた小腸炎症性疾患45例284病変において, 潰瘍の形, 病変の分布および好発部位と潰瘍の深さを検討し, X線診断の基礎とした. 次に, 小腸二重造影法の, 小腸各部位の描出能, 潰瘍性病変の描出能を検討した. さらに, 小腸疾患の臨床症状からX線検査の適応および方法の選択についても考えてみた. そして, 小腸二重造影法によるX線の理論診断学 (変形, 潰瘍の性状判定, 炎症性疾患の鑑別診断) について考察した. 以上の検討結果から, 次の結論を得た. 1. 各炎症性疾患に特徴的な潰瘍の形, 分布様式が認められ, 潰瘍の深さおよび好発部位も参考になった. 小腸の炎症性疾患の診断では, 点・線・面の理論を駆使し, さらに病変の分布の仕方を考えた. 2. 小腸二重造影法は, 小潰瘍 (3, 4mm) の一部の診断能に問題はあるが, 小腸炎症性疾患の診断および鑑別診断には有効な手段である. 小腸炎症性疾患の検査は, 二重造影法で行い, 圧迫法で補足した.
症例報告
  • 戸叶 嘉明, 上原 直樹, 飯田 昇, 清水 一夫, 内藤 聖二, 廣瀬 俊一
    1985 年 31 巻 4 号 p. 565-569
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    我々は気管支喘息経過中に潰瘍性大腸炎の発症をみた1例を経験したので報告する. 症例は12歳の男性で, 2歳より気管支喘息に罹患し, 増悪と寛解をくり返していた. 昭和59年3月より突然血便出現, 大腸ファイバーや注腸造影で潰瘍性大腸炎の診断を受け, Salazosulfapyridine2g/日とPredonisolone25mg/日の投与で軽快した. 気管支喘息と潰瘍性大腸炎との合併は, 米国での報告はあるが, 本邦ではまとまった報告はない. 両者ともアレルギーが関与している点で注目すべき症例と思われる. なお, 潰瘍性大腸炎ではLeu 2aが活動期で低下する報告があるが, この症例でも, 治療前にLeu 2aの低下が認められた.
漢方学術講演会
  • 鎌野 俊彦
    1985 年 31 巻 4 号 p. 570-574
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    膝関節疾患に多くの漢方医家に使用されてきた防已黄耆湯は, 漢の時代に作られた「金匱要略」という書物に記載されている漢方薬で, 主薬は防已と黄耆でその他に蒼朮, 大棗, 甘草, 生姜の6種類の生薬の組合せにより構成されている. 防已は, オオツヅラフジという植物のツル性の根茎から採取され, 薬効は消炎鎮痛利尿作用を有する. 黄耆は, マメ科の植物で防已と同じように水を逐う作用がある. 使用目標としては, 体表に水分代謝の異常のために下肢に浮腫があり関節が腫脹し痛みがある, 体質的にはやや虚弱で肥満の傾向があり色が白く筋肉の軟かく水太りの人, 多汗で利尿減少があり疲れやすく体が重い足が冷えるといった症状の人に用いる. かかる特性を有する防已黄耆湯を変形性膝関節症3例に使用し, 良好な臨床効果を認めたので, その臨床経過を詳細に記し, かかる漢方療法の今後の適応について考察した.
  • 町 俊夫
    1985 年 31 巻 4 号 p. 575-578
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    いわゆる腰痛症を主訴とする2症例に東洋医学的治療を行い, 有効であった. いずれの症例も整形外科的な診断をうけ, 西洋医学的な対症療法を行ったが著変がなかったため, 漢方薬及び鍼治療を加え, 時間をかけて生活指導・食事療法などの指導を行った結果, 日常生活に支障のない程度に改善した. 漢方薬としては今回の症例では, 疎経活血湯, 桂枝加求附湯, 防已黄耆湯を用いたが, 他に八味地黄丸, 桂枝苓苓丸, 苓羨求甘湯などを患者の『証』に応じて使いわけた. また鍼は三焦兪, 腎兪, 志室, 大腸兪, 次髎, 委中, 陽陵泉などを主に用いた. これら東洋医学的方法を従来からの西洋医学的対症療法に加えていくことにより, 治療の幅が拡がることから, 今後ともとり入れてよい治療法と考える.
  • 蔡 松年
    1985 年 31 巻 4 号 p. 579-583
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    灯〓花 (Erigeron Breviscapus) 抽出液5アンプルを5%葡萄糖液500mlに溶解し, 1日1回静脈点滴注射し, 15回を1クールとし, 若年者網膜脈閉塞症19例を治療した. 有効率は84.2%に達し, ウロキナーゼより有効であった. 灯液は線維蛋白溶解と抗炎作用の2つの作用を持っている可能性が考えられ, また便利でかつ副作用がない. 灯液の有効成分と作用機序については, 更に研究される必要がある.
  • 木村 太紀, 吉池 高志, 坪井 良治, 池谷 田鶴子, 小川 秀興, 荘 国康
    1985 年 31 巻 4 号 p. 584-587
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    各種の湿疹患者に対して十味敗毒湯を投与しその効果をみた. 対象は29例であり, これらの患者に対し12週間十味敗毒湯を服用せしめた. 効果発現は66%にみられた. なお効果発現迄の時期は平均5週であったが, 効果の大なるもの程, 発現時期は早かった. ステロイド剤を服用している患者で効果がみられた患者5名においては, ステロイド剤の内服の中止又は減量が可能となった. 副作用はごく数例にみられたが重篤なものはみられなかった. 以上の結果より, 十味敗毒湯は, 湿疹に対し極めて有効であると思われる.
  • 安井 広迪
    1985 年 31 巻 4 号 p. 588-597
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    日本は千数百年の長きにわたって中国系伝統医学を受け入れ, 発展させてきた. この医学は, 19世紀後半に明治政府の方針によりドイツ医学が取り入れられて以来, 凋落の一途を辿ったが, 近年, 近代医学を補足するような形で再び注目されるようになった. しかし, その基盤となっている科学思想が根本的に現代科学と異っている為に, 現代医学の中に体系づけることは今のところまだ行われていない. 従って, 現状では伝統医学理論・用語をそのままの形で一応把握し, 一旦現代医学的な観点で翻訳して用いなければならない. この理論は陰陽五行説を基本にして成り立っており, これを基礎にした弁証論治という治療システムが存在している. 一方, 伝統医学にはさまざまの流派が存在し, 日本には伝統医学理論を一部しか用いない特殊な流派もある. しかし, それらを含めた, 伝統医学に対する深い理解が, 今後現代医学の中で伝統医学を応用していく際に重要であると思われる.
  • 熊谷 朗
    1985 年 31 巻 4 号 p. 598-603
    発行日: 1985/12/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    漢方医療は現代の医療の中で生きつづけ方剤のカプセル剤の保険適応の中で一見急速に広がっている. 漢方的医療の医療機関の現況を述べると共に, 漢方医療の近代化を進めるための手段と問題点につき述べ, 今後の方向性についても私見を述べた.
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