小腸炎症性疾患のX線診断学を研究するため次の検討を行った.
まず, 手術および病理解剖を行いえた小腸炎症性疾患45例284病変において, 潰瘍の形, 病変の分布および好発部位と潰瘍の深さを検討し, X線診断の基礎とした.
次に, 小腸二重造影法の, 小腸各部位の描出能, 潰瘍性病変の描出能を検討した. さらに, 小腸疾患の臨床症状からX線検査の適応および方法の選択についても考えてみた.
そして, 小腸二重造影法によるX線の理論診断学 (変形, 潰瘍の性状判定, 炎症性疾患の鑑別診断) について考察した.
以上の検討結果から, 次の結論を得た.
1. 各炎症性疾患に特徴的な潰瘍の形, 分布様式が認められ, 潰瘍の深さおよび好発部位も参考になった. 小腸の炎症性疾患の診断では, 点・線・面の理論を駆使し, さらに病変の分布の仕方を考えた.
2. 小腸二重造影法は, 小潰瘍 (3, 4mm) の一部の診断能に問題はあるが, 小腸炎症性疾患の診断および鑑別診断には有効な手段である. 小腸炎症性疾患の検査は, 二重造影法で行い, 圧迫法で補足した.
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