順天堂医学
Online ISSN : 2188-2134
Print ISSN : 0022-6769
ISSN-L : 0022-6769
32 巻, 3 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
目次
Contents
特集 癌の集学的治療
  • 奥村 康
    1986 年 32 巻 3 号 p. 271-274
    発行日: 1986/09/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    腫瘍抗原に反応して, 腫瘍排除に働く免疫系と, 非特異的に腫瘍細胞を除去に働く免疫系の二つが知られている. それらの反応に関与する細胞群は, T細胞B細胞をはじめとし, NK細胞マクロファージ等いくつかの細胞群が知られている. 最近これらの細胞群, 特にT細胞の標的認識から標的破壊に至るまでの過程, NK細胞の標的破壊の過程の一部等が, リンパ球機能分子の役割の解明に従って解明が進んできた. ここでは, いくつかのリンパ球機能分子の役割と, その標的認識から融解における間における, それらの分子の働きを考察してみたい.
  • 森田 新六
    1986 年 32 巻 3 号 p. 275-281
    発行日: 1986/09/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    進行期癌や, 難治性癌に対する新しい放射線治療方法としての, 医用サイクロトロンによる速中性子線, および陽子線治療を検討した. 速中性子線の生物学的, あるいは陽子線の線量分布上の特徴を生かして, 合計で1300例以上の治療が行われた. 結果として, 1) 速中性子線では, 一般に局所制御は少なくともX線よりは良い, しかし副作用は少し高い. 各臓器ごとの成績をみても, ランドマイズド・トライアルを行った子宮頸癌では, 速中性子線の有利を示せなかったが, 症例は少ないが, 声帯上部癌, 耳下腺癌, パンコスト型肺癌, 食道癌, 術前照射の悪性黒色腫, 化学療法併用の骨肉腫に優位を認めた. 2) 陽子線の治療成績は高い局所制御効果と, 低い障害発生に特徴づけられている. 最近, 陽子線の最も良い適応例である眼球メラノーマの照射を開始した. この治療のための照射技術開発は, 将来の重イオン粒子線治療のために欠かせないものであり, 今後の発展が重要である.
  • -Interleukin 2依存性腫瘍特異的キラーT細胞株を用いて-
    北原 聰樹
    1986 年 32 巻 3 号 p. 282-291
    発行日: 1986/09/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    脳腫瘍患者において, 自己腫瘍特異的CTLを誘導できた. それらのCTLをIL2添加培地で, 培養することにより, 高いkiller活性を有する, IL2依存性CTL継代培養株 (IL2-CTL) を樹立することができた. 8例の患者に, IL2-CTLを脳腫瘍局所に, 投与するlocal adoptive immunotherapyを施行し, 3例に, CT上腫瘍縮小率50%以上という良好な結果を得た. この療法の副作用としては, 1例に急性期一過性の頭痛・嘔気・発熱・軽度意識障害が, 慢性期にOKT4+細胞減小, Leu7+細胞増多, リンパ球幼若化能の低下, ツベルクリン反応の陰性化, 低ナトリウム血症の出現を見たが, 投与を繰り返すうちに, 諸症状は出現を見なくなり, 検査上の諸変化も正常化した. 他の7例においては, 全く副作用を認めなかった. 今後, IL2-CTLによる脳腫瘍のlocal adoptive immunotherapyは, 症例・投与量・投与法等に考慮を払うことにより, 腫瘍治療の有力な手段となりうるであろう.
  • -特に感染症を中心に-
    富田 倫代, 阿部 総太郎, 堀江 誠一, 石山 泰二郎, 宮山 龍雄, 菅谷 直樹, 若林 芳久, 広瀬 俊一
    1986 年 32 巻 3 号 p. 292-297
    発行日: 1986/09/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    1981年1月より1986年1月までの約5年間に, 順天堂医院に入院した急性白血病49例, 成人T細胞白血病2例について, 特に感染症を中心に, 治療上の問題点について検討を行った. BHAC-D (A) MP療法の導入後, 初回寛解導入は80%以上に改善した. しかし依然として, 感染症と出血が, 直接死因の54%を占め, 感染症では, 敗血症・敗血症疑い, および呼吸器感染症が90%以上であった. 感染症の起因菌は, 不明が49.2%, 起因菌が明らかになった中では, グラム陰性桿菌が53.0を占めた. また, 感染症発症時の好中球数は500/mm3未満の症例が59.4%, 1,000/mm3未満では69.3%であった. γ-グロブリン製剤の予防的投与についても検討を行ったが, 有効性はみとめられなかった.
  • 須山 正文, 有山 襄, 小川 薫, 猪狩 功遺
    1986 年 32 巻 3 号 p. 298-303
    発行日: 1986/09/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌・胆道癌の予後を, 治療法別に検討した. 肝細胞癌では, 切除・TAEの成績が良く, 肝機能, および画像診断で切除可能と診断できる例は, 積極的に切除, あるいはTAEを施行すべきと考えられた. 胆道癌は, 進行したものは切除しても予後が悪い. 進行した癌は, 閉塞性黄疸を伴なう例が多く, そのような例に, PTCDに引き続きPTBEを行うと, 減黄率も良く, 悪性胆管狭窄例ではPS, および予後の改善が得られた. PTBEは胆管狭窄に有効な治療法である.
  • 林田 康男, 大坊 昌史
    1986 年 32 巻 3 号 p. 304-309
    発行日: 1986/09/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    胃癌治療に対する診断技術, 手術をはじめとする全身管理の向上により, 近年, その成績はあがっている. しかし, 十分な手術が施行されたにもかかわらず, 短期間のうちに転移・再発がみられる症例も少なからずみられる. このような問題に対し, 手術後の癌に対する補助療法, すなわち化学・免疫・内分泌, あるいはその他の新しい治療法を集合し, 治療にあたるという, 集学的治療multidisciplinary treatmentが必要となってくる. 今回この集学的治療の一つである, 胃癌に対する補助化学療法, とくに, 多施設共同研究によるMMC・FT・PSK・OK-432の効果について, また本邦における補助化学療法の歴史の一部分を, 文献的考察を加え述べてみた. また同時に, 胃癌術後補助療法としてMMC+FT補助化学療法にPSK, またはOK-432併用の有用性が示唆された.
  • -局所動注・放射線照射・手術併用療法-
    芳川 洋, 市川 銀一郎, 安藤 一郎
    1986 年 32 巻 3 号 p. 310-316
    発行日: 1986/09/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    上顎癌に対して, 遠隔成績, および患者の社会復帰の点から, 制癌剤の局所動注法・放射線照射, および手術療法の併用が現在主軸をなしており, 当科においても, 早くからこれを採用し治療を行ってきた. そこで, 症例を提示し, 当科における併用療法の概略を紹介し, さらに, 1974年から1985年までに経験した症例を対象にその背景因子と, 本治療法による遠隔成績を検討した.
  • -特にhuman tumor clonogenic assayを用いた制癌剤感受性試験とその臨床応用-
    平山 博章
    1986 年 32 巻 3 号 p. 317-324
    発行日: 1986/09/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    卵巣癌は婦人科悪性腫瘍の中で子宮癌についで頻度が高く, 最も予後不良な疾患である. さらに発生母地の特殊性から, 早期発見が困難であり, また治療法も確立されていない. 最近では卵巣癌の治療に対して, 手術と化学療法のcombination therapyが主流を占めているが, 同じ臓器で同じ組織型を示す腫瘍であっても制癌剤に対する感受性が一定ではなく, したがって, その効果にも相違があり, 制癌剤感受性試験の重要性がクローズアップされてきている. ここでは卵巣癌の集学的治療の概略, および当教室で実施している制癌剤感受性試験の一つであるhuman tumor clonogenic assay (HTCA) の実際と, その結果の一部を報告する.
  • 引地 功侃
    1986 年 32 巻 3 号 p. 325-333
    発行日: 1986/09/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    著者は, 肉眼的血尿を主訴として来院した17歳女子に発生した, 膀胱浸潤を認める巨大な骨盤内腫瘍に対し, 1) 抗癌剤を用いた化学療法, 2) サイクロトロンを用いた速中性子線照射, およびリニアックX線照射による放射線療法, 更に3) 外科的治療法 (骨盤内臓器全摘除術・人工肛門造設術・両側尿管皮膚瘻術) などの集学的治療法を行うことにより, 治癒せしめ得た子宮原発のmalignant leiomyoblastomaの一症例を報告する. これらの治療法のうち, 化学療法は, 腫瘍縮小効果を認めることができず, 放射線療法は著効し, 巨大な骨盤内腫瘍は縮小した. その結果, 骨盤内臓器全摘除術を施行し, 腫瘍の摘除を行うことができた. 病理学的検査の結果, 子宮体部に発生したmalignant leiomyoblastomaであり, これが膀胱壁へ浸潤し, 肉眼的血尿を惹起したものと診断した. 著者が内外文献上に集め得た報告では, 自験例は39例目であり, 本邦3例目であった.
原著
  • 鈴木 不二彦
    1986 年 32 巻 3 号 p. 334-343
    発行日: 1986/09/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    膵・胆管合流異常症が先天性胆道拡張症や, 他の種々の胆道疾患の病因となることは知られているが, 近年膵疾患との関連性についても注目されつつある. 本研究では, 雑種幼犬60頭に総胆管副膵管端側吻合を行い病理組織学的に検討した. この共通管過長症の実験モデルでは, 人の先天性胆道拡張症と類似の所見を呈し, 拡張した胆管や胆嚢には, 炎症や上皮の過形成が長期経過例の数例に認められた. 膵については, 60例中16例に膵管周囲の線維化を伴う膵管上皮の変性, 60例中3例に著明な膵実質の変性崩壊が見られた. これらは共通管による胆汁酸や, 膵液と胆汁の混合液の膵管への大量の逆流, あるいは胆道系の比較的強い炎症が膵病変の重要な要因となると考えられ, 膵・胆管合流異常が, 急性膵炎・慢性膵炎の病因となることが示唆される.
  • 松川 正明
    1986 年 32 巻 3 号 p. 344-352
    発行日: 1986/09/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    大腸のsm癌は, 0.6cmの大きさからあるので, 大腸癌の早期診断は転移の可能性のあるsm癌から拾い上げる必要がある. 早期大腸癌の発見には, X線・内視鏡検査がある. X線検査の精度を注腸二重造影法8,236例で, 内視鏡検査の精度を大腸ファイバースコープ2,395例で調べた. X線検査は全腸的にみると, 0.6-3.0cm以上の392病変では3.3%のfalse negativeがあり, その内の84.6%が下部大腸であった. 一方, 下部大腸は内視鏡検査が容易であり, 発見能も優れている. 深部大腸のfalse negativeは, 内視鏡検査もX線検査も明らかな差はなかった. 下部大腸は内視鏡検査で, 深部大腸はX線検査で行うのがよい. 被検者の前処置が1回ですむので, 両検査を同日に行うのが効率的である. 同日併用検査法の診断能を828例の成績で検討した. この検査法の精度をみると, sm癌の出現する0.6cm以上の病変の発見能は, 下部大腸も深部大腸も92.4%と高く, 効率のよい信頼のおける検査法といえる.
  • 鹿島 佳代子
    1986 年 32 巻 3 号 p. 353-368
    発行日: 1986/09/10
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    Nd-YAGレーザーの熱作用および光破壊作用を応用して, 光凝固装置および切開装置を開発し動物実験を施行した後, 臨床的に応用するに至る6年間の実験成果を報告した. Nd-YAGレーザーの1060nmの波長は, 眼底に照射されると網膜色素上皮層に吸収され, その熱作用は視細胞層および脈絡膜層におよぶが, 網膜内層は正常構造を保っていた. この作用は, アルゴンレーザーとは著しく異なり, 脈絡膜腫瘍の破壊治療および新生血管黄斑症の進行防止に臨床的に応用された. またQスイッチモードにより1010W/cm2のエネルギー密度を作成することが可能で, その作用は瞳孔領において眼底に光を透過することを防げる膜様物の切開に応用された. その作用は, 膜様物の硬さとエネルギーにより変化するが, 色調には関係がなく, これは熱作用における性質とは異なるものであった. この切開装置は, 実際に臨床的に多数例に応用され, 有効な視力回復の手段となった. また閉塞隅角緑内障に対する虹彩切開は, 熱作用を用いても切開作用を用いても可能であり, 治療手段の巾が拡げられた. 新治療の際に考えられる副作用についても検討がなされた. これらの眼科的な新しい治療手段の開発は, レーザーの技術開発と眼科的光学機器の技術の発達なくしてはもたらされなかったものである. 我々眼科医は, さらに治療可能性の拡大のために, 広く他の分野との関連をもちつつ研究を進めてゆかなければならない.
抄録
てがみ
順天堂医学投稿規程
編集後記
feedback
Top