IgA腎症は, 糸球体メサンギウム領域にIgAと補体C3の顆粒状沈着を特徴とする. 組織学的にはメサンギウム基質の増生が主体であるが, 一部では糸球体係蹄毛細血管壁の肥厚, 糸球体の硝子化・硬化が認められる. 今回われわれは, IgA腎症での糸球体病変の進展と糸球体細胞外構成蛋白 (Type IVコラーゲン7SドメインならびにNC-1ドメイン・ラミニン・フィプロネクチン・Goodpasture症候群患者血清中の抗体で検出される基底膜物質 [Goodpasture基底膜物質]) の変化との関連性について蛍光抗体法的に検討した. 正常ヒト糸球体では, Type IVコラーゲン7Sドメインとラミニンはメサンギウムと糸球体係蹄毛細血管壁に認められたが, Type IVコラーゲンNC-1ドメインとGoodpasture基底膜物質は糸球体係蹄毛細血管基底膜にのみ, フィブロネクチンはメサンギウム領域にのみ分布していた. lgA腎症では, 組織障害度が進行するに従い, メサンギウムに限局していたIgA, C3の沈着が糸球体係蹄毛細血管壁にもみられ, これと並行してフィブロネクチンがメサンギウムに増加すると共に, 糸球体係蹄壁にも認められた. Type IVコラーゲン7Sドメインとラミニンの増加は, 主として糸球体係蹄毛細血管壁沿いに認められた. 蛍光抗体二重染色法およびelution studyの結果では, これら構成蛋白の増加は糸球体外で形成された免疫複合体の沈着したものではないと思われた. 以上より, IgA腎症の進展増悪は, 糸球体におけるIgA型免疫複合体の沈着の広がりに誘発されて, 各種の糸球体細胞外構成蛋白の産生亢進が起こることと深く関連しており, これが糸球体の硝子化・硬化の一つの重要な要因となっていると考えられた.
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