順天堂医学
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35 巻, 2 号
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目次
Contents
特集 浪久教授・河村教授定年退職記念講演
  • 浪久 利彦
    1989 年 35 巻 2 号 p. 161-166
    発行日: 1989/07/30
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    昭和30年 (1955) に順天堂大学医学部に赴任してから34年を経過したが, この間の研究を博士論文を主として回顧した. 肝性昏睡についてはアンモニア代謝とアミノ酸代謝を研究し, 肝関連酵素としては, イソクエン脱水素酵素・ソルビット脱水素酵素・ピルビン酸脱水素酵素などについて研究し, 肝の色素移送としてはICGやBSPについて各種肝疾患, とくに体質性色素排泄異常症について研究し, 肝組織の細胞骨格蛋白では, 肝細胞のアクチンやミオシン, 伊東細胞のデスミンなどについて研究し, 胆汁うっ滞では毛細胆管周囲のマイクロフィラメントと収縮機構との関連について研究し, 薬剤性肝障害では臨床像や発症機構について研究し, 原発性胆汁性肝硬変では抗ミトコンドリア抗体の対応抗原蛋白を同定して合成した. これらの研究結果により54名の博士が誕生した.
  • 河村 正三
    1989 年 35 巻 2 号 p. 167-170
    発行日: 1989/07/30
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    乳幼児の難聴の早期発見のためには他覚的聴力検査が必要である. 研究の初期には検査の指標として, 脳波上にみられるk-complex・振幅抑制・覚醒反応などを使用していたが, 反応の判定の困難なこと, 反応出現が不安定であることなどに問題があった. コンピュータの進歩に伴って検査の精度が高まると共に, 脳幹反応と中間反応が発見され, 研究はその方向に大きく変換した. その後は検査方法の改善, 判定の自動化を目標にした反応波形の分析, 病巣部位診断を目標にした反応各波の起原の研究を行ってきたので, その経緯を記載した.
原著
  • --特にEERの反応について--
    旗山 藍, 簗島 謙次, 中島 章
    1989 年 35 巻 2 号 p. 171-175
    発行日: 1989/07/30
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    光覚を感知する義眼を作成する目的で基礎的な実験を施行し, その可能性を検討した. 正常者および盲人の目の誘発電位 (EER: Electrically evoked response) を探知するため, 3種類の刺激電極 (角膜-皮膚・角膜-結膜・結膜-結膜) を新しく考案した. 実験の結果: 1. 異なった刺激方法・刺激強度に対して, 正常者の眼では同様なパターンの誘発電位 (EER) とphospheneが得られた. 2. 種々の原因による失明眼において, いずれもphospheneまたは誘発電位は認められなかった. 3. 適当な電流刺激によって, 失明眼に眼球叩打痛が自覚されることが判った. 以上のことから光刺激を電気刺激に変換し, 失明眼を刺激することにより, 光覚の無い盲人も眼球叩打痛により光覚を自覚することが判り, 光覚を感知する義眼は臨床的に可能と考えられた.
  • 武田 政博, 富野 康日己
    1989 年 35 巻 2 号 p. 176-187
    発行日: 1989/07/30
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    IgA腎症は, 糸球体メサンギウム領域にIgAと補体C3の顆粒状沈着を特徴とする. 組織学的にはメサンギウム基質の増生が主体であるが, 一部では糸球体係蹄毛細血管壁の肥厚, 糸球体の硝子化・硬化が認められる. 今回われわれは, IgA腎症での糸球体病変の進展と糸球体細胞外構成蛋白 (Type IVコラーゲン7SドメインならびにNC-1ドメイン・ラミニン・フィプロネクチン・Goodpasture症候群患者血清中の抗体で検出される基底膜物質 [Goodpasture基底膜物質]) の変化との関連性について蛍光抗体法的に検討した. 正常ヒト糸球体では, Type IVコラーゲン7Sドメインとラミニンはメサンギウムと糸球体係蹄毛細血管壁に認められたが, Type IVコラーゲンNC-1ドメインとGoodpasture基底膜物質は糸球体係蹄毛細血管基底膜にのみ, フィブロネクチンはメサンギウム領域にのみ分布していた. lgA腎症では, 組織障害度が進行するに従い, メサンギウムに限局していたIgA, C3の沈着が糸球体係蹄毛細血管壁にもみられ, これと並行してフィブロネクチンがメサンギウムに増加すると共に, 糸球体係蹄壁にも認められた. Type IVコラーゲン7Sドメインとラミニンの増加は, 主として糸球体係蹄毛細血管壁沿いに認められた. 蛍光抗体二重染色法およびelution studyの結果では, これら構成蛋白の増加は糸球体外で形成された免疫複合体の沈着したものではないと思われた. 以上より, IgA腎症の進展増悪は, 糸球体におけるIgA型免疫複合体の沈着の広がりに誘発されて, 各種の糸球体細胞外構成蛋白の産生亢進が起こることと深く関連しており, これが糸球体の硝子化・硬化の一つの重要な要因となっていると考えられた.
  • 湯川 澄江
    1989 年 35 巻 2 号 p. 188-197
    発行日: 1989/07/30
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    子宮内膜症の治療効果のばらつきの原因を検索するために, 子宮内膜症を発生部位別に子宮筋層・卵巣・漿膜に分類し, その統計的頻度・組織学的特徴・エストロゲン-レセプター局在・ホルモン療法の効果につき検討し, 以下の結果を得た. 1) 発生頻度は子宮筋層59.8% 卵巣・漿膜25.2% 合併15.0%であった. 卵巣・漿膜の発生は他に比較して若年層に多発した. 2) 組織学的特徴では, 子宮筋層のものは正所性子宮内膜に比較的類似した形態であった. 卵巣・漿膜では, 組織破壊が進んでいるものが多かった. 3) エストロゲン-レセプターは核内に局在し, 陽性率は正所性内膜増殖期が100%であるのに, 子宮筋層では56% 卵巣では0%と低下していた. 4) 妊娠では71% 偽妊娠療法では40%にホルモン効果がみられた. 特に妊娠での効用が著明であった. 偽閉経療法による子宮筋層のものへの効果は認められなかった.
  • 松浦 幸子
    1989 年 35 巻 2 号 p. 198-211
    発行日: 1989/07/30
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    卵巣摘出後のマウスの顎下腺を, 微細構造学的・形態計測的・免疫組織化学的に検索し, アンドロゲンの刺激作用を受け, 顕著な性的二型性を示すことで知られている顆粒性曲細管 (GCT) が発達することを認めた. GCTで, 神経成長因子 (NGF) -免疫染色に陽性の顆粒が経時的に増加し, 去勢4カ月後には顎下腺に占めるGCTの割合が雄のレベルにまで達した. これは卵巣摘出マウスの体内に, アンドロゲン様作用を持つ物質が増加した可能性を暗示する. 去勢雌マウスの顎下腺が雄性化した背景を探るため, 卵巣摘出後の副腎皮質の動向とアンドロゲン分泌の可能性を検索した. 副腎皮質最内層のX-zoneが卵巣摘出後肥厚し, この部位で3β-hydroxysteroid dehyrogenase活性が増加し, ステロイド合成が高まっていることが示唆された. さらにアンドロゲン標的器官として知られている包皮腺もまた, 卵巣摘出後発達することを観察した. これらの結果から, 卵巣摘出後, 卵巣からのホルモンの消失と, ゴナドトロピン分泌の亢進, 副腎でのステロイド合成の増加が関与し, 血中のステロイドホルモン動態が変わり, アンドロゲン作用が顕在化し顎下腺の雄性化現象が引き起こされたことが示唆された.
  • 須山 正文
    1989 年 35 巻 2 号 p. 212-218
    発行日: 1989/07/30
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌 (HCC) を伴った肝硬変366例をChild分類にしたがいA, B, Cに分け, さらに治療法を腫瘍切除 (切除群), 血管造影による肝動脈塞栓術 (TAE群), 抗癌剤の動脈内注入 (IA群), および抗癌剤の経静脈・経口投与の全身投与などを行った群 (その他群) の4群に分け, 各々の生存率を比較した. Child A群の生存率は切除群で高く, 他の3群との間に有意差を認め, またTAE群およびIA群とその他群に有意差が認められた. 4種類の治療法いずれにおいてもChild A. B. Cの3群間に有意差が認められた. HCCの予後を規定する重要な因子は肝障害の程度であったが, その治療として肝機能がよい例では切除を, 肝障害あるいは腫瘍進展のため切除不能例にはTAEを行うことにより生存率が延長した.
抄録
てがみ
編集後記
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