順天堂医学
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37 巻, 3 号
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目次
Contents
特集 各種外科領域における再建手術の進歩
  • 梁井 咬
    1991 年 37 巻 3 号 p. 333-355
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    マイクロサージャリーの発展によって, 各外科領域における再建手術の幅が広がりつつある. 形成外科学は, 従来より体表の再建手術を専門領域のひとつとしてきたが, 最近のマイクロサージャリーの発展とともに, 形成外科領域における再建手術の進歩にも目を見張るものがある. マイクロサージャリーによる再建が可能になったことにより, 従来の方法では再建できなかったような組織欠損をも修復することができるようになった. その結果, 皮膚悪性腫瘍に限らず, 諸外科領域で扱われる各種悪性腫瘍の摘出も広範囲に行うことが可能となり, 悪性腫瘍に対する治療結果も格段に良好になっている. 本稿では, マイクロサージャリーを利用した再建手術の原理と, 現在, 形成外科領域において行われているマイクロサージャリーを利用した再建術について述べる. なお, 頭蓋底の再建および舌口腔底部の再建の詳細については, 本特集の別項に述べられているので割愛した.
  • 伊藤 昌徳, 佐藤 潔, 新井 一, 和智 明彦, 梁井 皎
    1991 年 37 巻 3 号 p. 356-365
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    前頭蓋底腫瘍摘出術 (8例) ・下垂体部腫瘍摘出術 (58例), および眼窩内容廓清術 (12例) を施行した後, 頭蓋底眼窩再建術を施行した. 各摘出術の接近法および摘出術式を概説し, 前頭蓋底眼窩再建術の手術手技とその手術成績を述べた. 頭蓋底再建にはまず硬膜欠損部の完全閉鎖が前提となるが, water-tightな硬膜閉鎖が困難な症例もあり, 硬膜は筋膜・筋肉片・人工硬膜などを用い, まず可及的water-tightに閉鎖すべきである. 前頭蓋底欠損部の再建には頭蓋骨骨膜弁 (pericranial falp) ・側頭筋弁などの血行が保持された筋皮弁を第一選択とした. 再手術あるいは放射線照射によって頭皮, または側頭筋に萎縮性変化が起きているためにこれらの筋皮弁が利用できない場合は, 顕微鏡下血管縫合による血管付き腹直筋弁・前腕筋皮弁を用いた. 骨欠損部には遊離骨移植は必須であり, 頭蓋冠より採取した遊離骨移植を用いた. 腫瘍摘出後に生じる腫瘍腔や副鼻腔などの組織欠損部 (死腔) の充填には脂肪組織が最適であると考えられた. 頭蓋底再建術の要点は多層性閉鎖 (multilayer-closure) に尽きる. 術後の合併症の発生を防止し頭蓋底再建術の成績を向上させるためには, 簡便かつ確実な再建術式を選択するとともに, 脊髄髄液ドレナージ・内分泌学的管理・電解質管理などの脳神経外科術後管理を適切に行う必要があることを強調した. また, 形成外科・耳鼻咽喉科・眼科などの関連各科との密接な協力体制も必須である.
  • 桜井 淳, 市川 銀一郎, 芳川 洋, 梁井 皎, 吉方 りえ, 瀬野 久和, 井上 雅博, 村石 世志野
    1991 年 37 巻 3 号 p. 366-376
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    舌・口腔底悪性腫瘍の治療に当たっては, 悪性腫瘍の根治性とともに機能保全が重要な問題となる. 近年われわれは舌・口腔底悪性腫瘍の切除術後に, マイクロサージャリーによる再建術を取り入れることにより, 拡大手術が可能となり良好な手術成績を得た. 1989年から1991年までの8例の再建例の検討では, ほぼ満足のいく結果であった. 本稿では舌癌・口腔底癌の症例をそれぞれ1例ずつ提示し, 実際の手術法について紹介した. また, 現在に至るまでの舌・口腔底再建の変遷に対しての文献的考察を加え, また, 現在最も多用されている遊離前腕皮弁による手術の特徴にっいての検討を行った.
  • 川地 義雄
    1991 年 37 巻 3 号 p. 377-384
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    膀胱全摘除術に際しては, 尿路変更 (向) ないしは膀胱置換などの尿路再建術が必要となる. 腎瘻や尿管皮膚瘻のほか, 腸管を利用した尿管S状結腸吻合や回腸導管造設術などの歴史はもうかなり長い. 最近はとくに生活の質の向上が重視される時代となってきたこともあって, 無カテーテル尿管皮膚瘻術や腸管を利用しての自己導尿型禁制尿路変更術, さらに温存した尿道から自排尿可能な代用膀胱造設・膀胱置換術などに様々な工夫が試みられている. なかでも特筆すべきは, 腸管の管状構造を破壊して袋状に縫い直し, 低圧状態が持続する尿リザーバーが考案されたことで, これを用いて様々なデザインが試みられつつある. 順天堂医院および順天堂浦安病院において1988年9月からの1年間に行った右半結腸パウチと, 回腸終末部縫縮導管による自己導尿型尿路変更術12例の評価を含めて, 最近の手術における種々の改良・工夫・手術適応選択の重要性などについて述べる.
  • 野沢 雅彦
    1991 年 37 巻 3 号 p. 385-394
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    関節機能再建手術は関節自体に処置を加えるもの・関節および関節の周辺組織に処置を加えるもの・ペ関節には処置を加えないものがあるが, 対象となる関節は四肢関節のほとんどであり, 特に多いのは股関節と膝関節である. ここでは特に股関節に的をしぼって述べた. 股関節機能に影響をおよぼす疾患としては, 成人では変形性股関節症・大腿骨頭無腐性懐死などがあり, 小児では先天性股関節脱臼による遺残性亜脱臼・ペルテス病などが多い. 変形性股関節症の自然経過を検討すると, 初診時年齢が30歳以下で骨頭・ペ臼蓋の適合性が良く, さらに臼蓋骨頭インデックス (Acetabular Head Index-AHI) が60%以上, CE角が10°以上のものであれば長期間, 股関節の変形が進行しない可能性が高い. 股関節の再建手術としては, 人工股関節全置換術・人工骨頭置換術・カップ関節形成術・大腿骨骨切り術・骨盤骨切り術・臼蓋形成術をあげることができるが, 手術を行うにあたっては, 各々の疾患の自然経過を知るとともに長期的な経過に注目することが重要である.
  • 忽滑谷 通夫
    1991 年 37 巻 3 号 p. 395-403
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    当科で経験した症例を供覧し、内科治療と協力して行う近年のAC Bypass術につき紹介した. また, 冠状動脈血行再建術の発達の歴史について簡単に触れ, 心筋保護・グラフトの変遷について述べた. 最後に, 以前はHigh riskと考えられて, 敬遠されがちであった興味ある手術症例を供覧し, 現在のこの手術のレベルにつき述べた. 現在のAC Bypass術は待期手術においては相当安全なものとなっているが, 一方患者においても年々高齢化がみられ, より重症な症例, また数々の合併症を持った症例が増えてきている傾向があり, さらに手術の安全性, および質の向上が追求される必要がある.
  • 坂東 正士
    1991 年 37 巻 3 号 p. 404-411
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    乳癌の治療は外科的手術であり, その後に, 程度は様々であるが変形を残すことが多い. この変形は衣服によって隠れる部分であるが, 精神的な影響と日常生活の不便は患者個人個人にとって非常に大きなことがある. 筆者は1973年よりこの変形の治療を始め, 初期には年間数例と症例数は少なかったが, この10年くらいの中に乳房再建についての患者・医師双方の知識が広まったため, 現在までに約190例になっている. ここでは乳房の再建の手術法を中心にその適応・時期・結果について考えてみたい. この手術は肉体的バランスを改良するのみで, 機能を復旧させ得るものではないが, 患者の率直な意見を聞くために行ったアンケート調査では, その『心・気持』に与える好結果は大きく, 心療外科的手術とも考えられる. 乳癌治療成績の向上と共に, 今後は乳癌の治療の一環として考えられるべきであろう.
教授定年退職記念講演
  • 川北 祐幸
    1991 年 37 巻 3 号 p. 412-415
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    病院の歴史は, 洋の東西を問わず医師対患者の個人的医療として存在したが, 科学的理論の導入により組織的な医療へと発展し, 現代社会では単に患者の治療だけでなく, 疾病の予防やリハビリテーションにまで拡大し, 社会的機能にまで進展している. わが国の病院は, 明治維新と第2次世界大戦後の2回に渡って大変化をきたしたが, 病院管理の立場からは, 特に後者の変化が重要である. わが国では占領軍の指導と, Northwestern大学のDr. マック著Hospitalmanagementが病院管理学発祥の契機となり, 昭和24年, 厚生省に病院管理研修所が開設され, 今日では大学に病院管理学講座が設置されるまでになった. 従来, 病院管理学は, 病院内部組織の管理面等を中心とした実践的な研究が進められてきたが, 今日では法規・医療経済・医療制度・医療の倫理等にまで及ぶ研究・教育が行われるようになった.
原著
  • 齊藤 十一, 淡路 正則, 西村 裕之, 鶴井 博理
    1991 年 37 巻 3 号 p. 416-424
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, Polymerase Chain Reaction (PCR) とドットブロット法を応用することにより, 泌尿生殖器感染症の原因となるChlamydia trachomatis (CT) 感染を検出し, そのCTの血清型 (D-K型, 8種類) を簡便に診断する方法を開発した. 各CTは菌体外膜蛋白をコードする遺伝子領域内の4つのvariable domain (VDI-IV) の一部に型特異的塩基配列を持つ. そこでPCRの標的DNA領域としてこのVDI-IVを含む領域を選び, このDNA領域を増幅するために, その前後を挟むプライマーとしてCTの全ての型, およびChlamydia psittaci (CP) に共通する塩基配列を選びDNAを合成した. 各型のCTおよびCP感染培養細胞より抽出したDNAを用いた場合, PCRによりこれら全ての試料で特異的増幅が認められ, Chlamydia感染が証明された. 実際に子宮頚管粘膜材料94例について検討した結果, この方法で調べたCT感染陽性率 (35.1%) は従来のChlamydiazyme法 (25.5%) に比べて高く, より高感度であった. 続いてD-K型のCT8種類を識別するために, PCR増幅後の標的DNAとわれわれが合成したDNAプローブを用いたドットブロット法を行った. 用いたDNAプローブは, 8型のCTのVDI-IV遺伝子領域内から7箇所の型特異的核酸配列領域を選び合成した. 各型のCT感染培養細胞より得た標的DNAを検討した結果, D-I・K型の7種類で既知の核酸配列から予想される結果と一致するドットハイブリッド形成を認めた. 一方, J型においては予想外の結果が得られたが, これについては, 用いたJ型CTに突然変異が存在するためか, 報告された核酸配列に問題があるのか, なお課題を残した. 以上より, PCRを応用することで高感度にCT感染の診断が可能となり, さらにドットブロット法を組み合わせることで従来の方法に比べてより簡便, かつ信頼性のある型別診断ができることが示された.
  • --組織計測学的・免疫組織化学的検索--
    平井 周
    1991 年 37 巻 3 号 p. 425-435
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    3種の腫瘍マーカー (CEA CA19-9 Du-Pan2) を用い, 早期癌7例を含む胆嚢癌49例と慢性胆嚢炎20例について, 癌巣・癌周囲粘膜・胆嚢固有粘膜における各腫瘍マーカーの発現性と細胞の形態学的変化との相関について検索を行った. その結果, 癌細胞の核面積・N/C比は癌周囲粘膜上皮細胞・胆嚢固有粘膜上皮細胞に比して有意に大であった. また病理組織標本上では, 3種の腫瘍マーカーのうちCEAに対する免疫組織化学染色が胆嚢癌の描出に最も適していると考えられた (非癌部, 対照例で共に0%). 更にCEAにおけるL (Luminal) 型陽性像は各例各部位で, 全陽性例に対しほぼ同程度の出現頻度を示し偽陽性を示すものとは考え難かった. これに対しCA19-9とDu-Pan2は癌巣以外からもその産生が確認されたが, これらにおけるL型陽性像には, 偽陽性が少なからず含まれていると考えられた. また各腫瘍マーカーでの陽性群・陰性群の比較では, CA19-9陽性群は同陰性群に比して核面積が有意に大であり, CA19-9の発現は細胞異型に関係があると考えられた.
  • 浜田 洋志
    1991 年 37 巻 3 号 p. 436-447
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    下肢アラインメントの研究は, 従来1平面 (前額面ないし水平面) の解析が多くなされているが, 矢状面に関する詳細な報告はみられない. 立体としての下肢を説明するには2方向の解析が必要である. そこで著者は, 骨端線の閉鎖した15歳から85歳までの健常日本人280人の下肢の片脚起立2方向 (前後方向および側方向) 撮影を行い, X線写真を年齢層別・男女別に, 20下肢ずつ14群に分け下肢アラインメントを計測検討した. さらに, 任意に抽出した内側型の変形性膝関節症症例40下肢と比較検討した. 結果として, 1) 大腿骨脛骨軸角・下肢機能軸偏位度の決定因子は大腿骨脛骨両者の要素が認められた. 2) 内側型変形性膝関節症の危険因子として, 膝の伸展制限 (屈曲拘縮・大腿四頭筋筋力の低下), 大腿骨外弯・大腿骨軸および脛骨軸の外方偏位が関与していると考えられた. 以上より, 内側型変形性膝関節症の病因として, 下腿の捻れ (回旋) のほか側面のアラインメント, 大腿の捻れも重要な要素と示唆された.
  • 藤原 康昌
    1991 年 37 巻 3 号 p. 448-455
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    ラット灌流心を用いて心臓のロイコトリエン (LT) 産生およびその産生細胞について検討を試みた. 灌流心にカルシウムイオノフォアA23187を投与すると, LTB, およびLTC, の産生が著明に増加し, 10分後に最大となった. 30分間に産生された総LT量は, LTB, では39.1±8.0・LTC4では143.5±18.4ng/g・heartであった. A23187刺激により産生されたLTは灌流液中のカルシウムに依存していること, および5-リポキシゲナーゼの選択的阻害剤AA861の投与により有意に抑制されたことから, 細胞外からのカルシウムの流入が5-リポキシゲナーゼ経路を活性化し, LT産生をひきおこすことが示唆された. またカフェイン投与およびカルシウムパラドックスによるカルシウム過負荷では, LTは産生されなかったことから, 心筋細胞はLT産生にあまり関与していないことが示唆された. 一方, 心組織内の小血管周囲には肥満細胞が観察され, 肥満細胞阻害剤のクロモリンがLT産生を有意に抑制したことから, LT産生に肥満細胞が関与していることが考えられた.
  • 宮崎 紳一郎
    1991 年 37 巻 3 号 p. 456-468
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    最近, 三叉神経痛の病因論として神経血管圧迫説が広く受け入れられ, 後頭蓋窩神経血管減圧術が決定的治療法として確立された. 著者は, 過去12年間にこの手術を1826例に施行する機会に恵まれた. 1826例中168例 (9.2%) の三叉神経痛例で, 原因として脳腫瘍が発見された. 内訳は, 類上皮腫89例・髄膜腫42例・聴神経腫瘍28例・三叉神経鞘腫6例・類皮腫1例・脂肪腫1例・橋神経膠腫1例である. これらの各腫瘍群の手術所見を検討し. 腫瘍が三叉神経根と如何なる関係にて三叉神経痛の発現に関与しているのかを分析したところ, 各腫瘍それぞれに, 特徴的な所見が明らかになったので報告する. またこの研究により, 三叉神経痛の本質は, 三叉神経根の神経血管圧迫という所見にあるのではなく, 原因は血管であれ腫瘍であれ, 神経根に長期間にわたって軽い圧迫が加わることから生じたであろう脱髄によることが推定された.
総説
  • 浪久 利彦, 北見 啓之
    1991 年 37 巻 3 号 p. 469-477
    発行日: 1991/11/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    わが国において同所性肝移植の機運が高まりつつあるが, 症例の選択と手術の時期の決定, さらには術直後と長期にわたる移植肝の管理には肝臓専門医の参加が必須である. 今回肝臓学を専門とする33名の医師が集まり, 日本肝移植適応研究会を結成し, 肝移植の適応基準に関する項目について広範に研究し, 数回にわたり検討会を開催し, 一応の結論を得た. その内容を総論的に紹介すると共に, 今後の展望について論じた.
症例報告
抄録
てがみ
編集後記
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