順天堂医学
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38 巻, 1 号
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目次
Contents
特集 癌性疼痛管理
  • 宮崎 東洋
    1992 年 38 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    有効な手段の無くなった癌性疼痛は少なくとも軽減されるべきであり, これらの疼痛で苦しむ患者に対して, われわれの行い得る治療としての最終目的は, 疼痛の完全な消失以外には考えられない. 近年, 特に終末医療の観点から, 死にゆく患者のQOLの保持・改善が良く云われるが, 癌性疼痛を持っている患者では, そのなかでも特に身体的な痛みを消失させないかぎり, QOLの改善などは望み得ないのである. 癌末期患者の訴える痛みは, 身体的・社会的・宗教的など様々であるといわれるが, 癌の浸潤や転移による身体的痛みがその大部分であり, 最も重要な問題である. その十分な管理は, 医療に携わるわれわれに期待されるところが大である. 癌性疼痛の管理法としては多くの方法が挙げられるが, 全ての医師が行え, 第三者の手助けを必要としない最も簡単な方法は何といっしも内服薬投与による管理である. そのような観点から, 癌性疼痛の特徴などを述べ, WHO (世界保健機構) 方式を含めた癌性疼痛に対する内服療法について紹介する.
  • 赤沢 滋
    1992 年 38 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    癌性疼痛患者の心理的問題の実態を調査するため, 葛南病院外科病棟に入院した進行癌・終末期癌患者を対象に半構造化した面接と心理テストを施行した. 対象患者の身体的愁訴としては, 疼痛が77%と最も多かった. 精神症状としては抑うつ気分, 不安・焦燥, 不機嫌などの症状が高頻度にみられたが, これらの症状は「死にゆく患者がたどる心理過程」のある段階を示しているものと考えられた. 心理テストとして実施したうつ病自己評価尺度とフェイススケールの得点が, 疼痛の程度と相関がみられたことから, 抑うつ状態と痛みが密接な関係にあることが考えられた. フェイススケールは極めて簡便な検査法であり, 終末期癌患者の痛みの程度や精神状態を把握する指標として有用であると考えられた. 癌性疼痛が心理的要因により増強される可能性があることを述べ, 癌性疼痛患者に対する心理的援助が重要であることを強調した. 最後に癌性疼痛患者に対する心理的援助と向精神薬療法の実際について述べた.
  • 町 俊夫
    1992 年 38 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    古来, 悪性腫瘍と思われる疾患に対して漢方方剤 (いわゆる漢方薬) が用いられていたが, 現代では漢方方剤や生薬は化学療法や手術療法に併用して生活機能の回復のために用いられている. 漢方方剤の作用機序は十分に解明されてはいないが, 漢方方剤自体が腫瘍免疫を促進し, 抗腫瘍作用を示すことも研究されてきている. 漢方医学では生体の偏向状態を病気と見なし, 治療はその偏向状態を漢方方剤によって修正することであるという学問体系をとっている. 一方, 癌性疼痛は癌病変がかなり進行した段階で併発してくるものであり, この段階では身体・精神ともに漢方でいう偏向状態, 特に消耗状態への偏向がいちじるしい場合が多い. この状態は漢方医学的には『寒虚症』といわれる状態にあり, このような証に用いられる漢方方剤は, たとえば補中益気湯・十全大補湯が適応になる. そしてその上で疼痛に関して〈附子〉を併用する. 附子には鎮痛・強心・利尿・抗炎症・代謝賦活などの作用があり, 上記漢方方剤に併用することで心身の偏向状態を治しつつ疼痛管理が可能になる. 漢方方剤による癌性疼痛管理に関しても, 神経ブロックやモルフィンなどによる西洋医学的な治療法との併用が不可欠であり, 今後はQOLや在宅管理に関して, 漢方方剤や附子を用いた漢方療法は欠くべからざる治療法であると考える.
  • 野田 久代
    1992 年 38 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    ペインクリニックでは, 癌性疼痛に対して薬物療法から外科的手技を要する療法まで, 多種多様の除痛法を用いてその管理を行っている. その中心となる手段はやはり神経ブロックであるが, その中でも癌性疼痛管理に用いられる代表的なものは, 硬膜外ブロック (含む鎮痛薬注入) ・腹腔神経叢ブロック・くも膜下フェノールブロック・三叉神経ブロックである. 硬膜外ブロックは, とにかく痛みを止めるという目的では癌性疼痛の第一選択と云えるし, 痛みに対する根治的手段のない患者では, 死亡までの間, 最も重要な疼痛管理法となる. 腹腔神経叢ブロック・くも膜下フェノールブロック・三叉神経ブロックは, 痛みの診断を正確に行い, 確実な手技で施行すれば癌が治ることはないが, その痛みに対しては根治的である. 順天堂大学附属医院麻酔科外来 (ペインクリニック) では, 年間ほぼ100例の癌性疼痛患者の治療を行っているが, 全患者の90%以上が前述の手段の組合せによって管理されている.
  • 直居 豊, 片山 仁
    1992 年 38 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍に対する姑息的放射線治療で最も多いのが癌性疼痛の除去である. 癌性疼痛には種々の原因があるが, 一般に放射線治療が適応になるのは腫瘍の増大に起因する痛みであり, 照射により腫瘍を縮小し周囲への圧迫を除去することで痛みの軽減が可能である. 腫瘍の容積を縮小させるには局所への照射のみで十分であり, 線量も30Gy程度と少なくて済む場合が多い. つまり病巣周囲の正常組織への放射線障害もほとんど心配なく, しかも非観血的に治療が行えるのが最大の長所といえる. 今日, 末期癌患者のquality of lifeが重要視されるなかで, 除痛目的の放射線治療がどの程度有用であるか紹介し, いくつかの症例を供覧して具体的治療法を述べる.
  • 柳田 尚
    1992 年 38 巻 1 号 p. 37-47
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    下垂体に1ml以内のアルコールを, X線透視下に鼻孔から篩骨蝶形骨洞を通して注入する除痛法を下垂体ブロックと称する. この除痛法は, 癌性疼痛のなかでも常時存在する境界不鮮明な鈍い痛みに対して有効であり, 限局した部位に体動時などに放散する鋭い痛みに対しては無効である. この除痛機序は, 下垂体に存在する下垂体抑制系がアルコールによって賦活されることによるものであるから, 初期の頃のように下垂体を破壊する必要はない. したがって, 下垂体破壊にともなう種々の副作用・合併症の可能性はほぼゼロと考えてよい. 筆者の施行した1,772症例を中心に, 下垂体ブロックの手技・除痛成績・副作用・合併症について述べる.
  • -看護の立場から-
    本間 ヨシミ
    1992 年 38 巻 1 号 p. 48-51
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    1990年1月1日より12月31日までの1年間に, 癌で死亡した277例の患者の痛みの有無, その状況, その治療結果などについて, 看護記録などを参照したアンケート調査を行った. アンケート送付先は本院の15病棟の看護セクションであり, 回収率は96%であった. その結果, 277例のうち痛みを有していたのは144例, 52.0%であり, 一般に云われている末期癌患者の有痛率よりは低値であることが分かったが, これは年度内に本院で死亡した患者についてのみの結果であり, 癌患者の真の有痛率を示すものではないと考えられた. 一般的に癌性終痛に用いられる鎮痛法が使用されていたが, その効果は十分であったとは云えず, 系統だった段階的な鎮痛法の施行が望まれる結果であった. また, 精神的援助をも踏まえた治療法の確立が必要であるとの印象を強く受けた.
  • 岩崎 保治
    1992 年 38 巻 1 号 p. 52-55
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    平成2年6月麻薬取締法の一部が改正され, 麻薬および向精神薬取締法となった. この改正により向精神薬の規制が新たに設けられると共に, 医療機関における麻薬製剤の管理の煩雑さが幾分解消された. WHOから癌患者を痛みから解放するためにの治療薬として, 強い痛みに対するモルヒネ等の医療麻薬の使用が提示され, モルヒネ製剤の使用が増加したが, 麻薬であるがための取り扱いの煩雑さがあり, 積極的な使用を控える医師もあったので, 幾分管理を改正して癌患者の疼痛管理の促進を図るためとも言われている. しかし, あくまでも麻薬としての管理は実施しなければならないので, 麻薬施用者として管理上の要点を記載し, 麻薬施用者としての医師の方々の管理上の参考にしたい. 近年麻薬の剤形も, 徐放性の硫酸モルヒネ錠 (MSコンチン錠) や, 今年11月から塩酸モルヒネ坐薬 (アンペック) も発売され, 在宅患者の疼痛管理のため, 外来処方で麻薬の増加が予想されるが, その性質上, 死亡あるいは中止等の場合により残薬が出る事が多いので, 処方箋交付時には慎重な服用指導をして, 残薬を他人が利用することのないよう呉々も注意が必要である.
原著
  • -NGF脳室内投与によるラットの体重増加の抑制-
    江渡 江
    1992 年 38 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    神経成長因子 (NGF) を成熟ラットの側脳室内に2週間持続投与し, ラットの体重変化に対するNGFの影響を調べた. NGFの濃度による影響を観察するため, 20μg/ml (0.01μg/hr, 総量3.36μg) と100μg/ml (0.05μg/hr, 総量16.8μg) の濃度を変えたNGF投与群を作製した. 投与前後におけるラットの体重を測定したところ, いずれのNGF投与群においても対照群に比べて体重増加が有意に抑制されていた. またNGF20μg/ml投与群と100μg/ml投与群の体重変化の程度に違いは認められなかった. 次にNGF1OOμg/mlを持続投与したラットの体重変化と一日あたりの摂食量を経時的に測定した. 体重変化は投与3日目からすでにNGF群と対照群の値に有意な差を認め, 経時的に両群の体重差が大きくなっていくことが明らかとなった. しかし, NGF投与群と対照群の摂食量に有意な差は認められなかった. 近年NGFが脳内コリン系ニューロンの機能維持に関与することから, アルツハイマー型痴呆 (SDAT) の治療としてNGFの投与が注目されているが, 成熟動物の体重増加をNGFが抑制することは未だ着目されておらず, NGFの全身作用の一つとして今後解析する必要がある.
  • 四蔵 朋之
    1992 年 38 巻 1 号 p. 62-70
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    癌悪液質患者では低栄養状態と免疫能の低下が認められ, この状態では能動免疫療法の抗癌効果は期待できないことが知られている. 他方, 宿主の免疫状態を介す必要のない受動免疫療法ではどうかということに興味がもたれる. この問題を解明する一助として, 受動免疫としてlymphokine activated killer cells (以下LAK細胞) を用いて実験的に検討した. マウスC57BL/6を用い, まず普通栄養マウスおよび低栄養マウスを作成し, 背部皮下腫瘍の増殖と宿主の栄養状態との関係を観察した. つぎに普通栄養マウスと低栄養マウスの両群に、マウスメラノーマ細胞BL6 5×105個を尾静脈から静注移植し, 肺転移モデルを作成することにした. これら対象をBL6移植直後にLAK細胞l×107個を静注したLAK治療群と非治療とに分け, 肺転移結節数および生存日数を比較検討した. またLAK療法が宿主におよぼす影響をみるために, 体重・血清総蛋白量・血清アルブミン量・末梢血のリンパ球サブセットについても比較検討した. 背部担癌モデルでは, 普通栄養マウス・低栄養マウスともに腫瘍の増殖に差はみられなかった. また肺転移モデルでは, 普通栄養マウス・低栄養マウスともにLAK治療群は非治療群に比し肺転移結節数が少なく, 生存日数の延長が認められた. さらにLAK治療が宿主に及ぼす影響としては, 低栄養マウスではLAK治療群は非治療群に比し体重の維持が認められた. 血清総蛋白量とアルブミン量, および末梢血リンパ球のサブセットについてはLAK治療による影響は認められなかった. これらの結果, LAK細胞移入療法は担癌宿主が低栄養状態であっても抗癌効果を発揮する治療法の一つとなる可能性のあることが示唆された.
  • 伊藤 匡
    1992 年 38 巻 1 号 p. 71-83
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    心因反応を生じた境界知能および軽度精神遅滞者46名を対象に, その男女差・学歴・臨床経過・心理検査の面から検討した. 対象は昭和59年4月1日から平成2年12月31日までの期間に, 順天堂大学医学部附属順天堂医院と順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院の入院患者34例と外来患者12例である. その結果1) 男女比は女性が多かった. 2) 平均初発年齢は男女ともに21歳台であったが, 初発年齢と知能間に有意な相関はなかった. 3) WAISの下位検査で単語問題が算数問題を除き, 他の下位検査と比べ有意に低かった. 4) 学歴と知能では, 高校卒業以上の群は中学校卒業までの群に比べ有意に知能が高かった. 5) 心因は対人葛藤・学業不振・身体疾患と事故が多かった. 6) 状態像は短絡行動, 心気・不安状態, ヒステリー状態, 妄想状態の順であった. 心気・不安状態の方がヒステリーに比べ知能が有意に高かった. 7) 予後と知能間には有意な相関はなかった. 8) 心因反応の成立には社会環境要因が大きく関係していることが考えられた. また知的制限が大きいほど, より未熟な状態像を呈しやすいこと, 抑うつ状態が持続せず各状態像間の移行が頻繁に認められることが判明した.
  • -定量脳波学的手法を用いて-
    浦上 裕子, 住江 寛俊, 岡田 滋子, 久留 裕
    1992 年 38 巻 1 号 p. 84-94
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    非イオン性水溶性造影剤Iotrolの中枢神経系に及ぼす影響を, 臨床症状の観察・定量脳波学的手法・頭部CT検査を用いて評価した. 対象は頚部脊髄造影を施行された25例 (男16例・女9例 平均48.6歳) であり, 頭蓋内にIotrolが浸透したことが確認されている. 脊髄造影直後に4例に脳波異常が出現した. そのうち2例は24時間以降に臨床症状 (1. 幻視2. 頭痛) が出現し, 脳波異常の出現は症状の発現より先行した. 定量脳波学的手法による解析では, 左後頭葉に電気生理的反応の中心があることが示された (α波の減少p<0.05・δ波の増加p<0.05-0.10). Brain-CSF interfaceは様々な因子によって左右され個体差が大きいが, そのわずかな影響がneuronの電気生理的反応として出現するとすれば, その解析のために定量脳波学的手法は, 重要な役割を担っている.
  • 菅野 勉
    1992 年 38 巻 1 号 p. 95-102
    発行日: 1992/06/01
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    Adriamycinを用い静脈投与時と肝動注投与時との末梢血中濃度を比較した. さらに肝動注療法後に模擬血漿交換を併用し, 全身に移行したADR濃度の軽減を試みた. 雑種成犬9頭を用い静脈投与群・肝動注単独群・模擬血漿交換併用群に分けて検討した. 薬学的動態の検討は台形法によった. 前期薬剤分画 (以下AUC5→30) は肝動注単独群では平均3.66μg/ml/min, 静脈投与群では平均4.89μg/ml/minと肝動注単独群のほうがやや少なかった. 後期薬剤分画 (以下AUC30→120) は肝動注単独群では平均3.33μg/ml/min, 静脈投与群では平均2.85μg/ml/minと逆に肝動注単独群の方が多かった. 全期薬剤分画 (以下AUC5→120) は肝動注単独群では平均6.98μg/ml/min, 静脈投与群では平均7.74μg/ml/minとほとんど同程度の量であり, よって静脈投与群では前期に肝動注単独群では後期に薬剤分画が多いものの, 肝動注単独群では薬剤が肝臓を通過後かなりの量が全身にleakされていた. また模擬血漿交換併用群では, AUC5→30は3.66μg/ml/minと肝動注単独群とほぼ同じ量であったが, AUC30→120は3.33μg/ml/minとかなり少なく, 模擬血漿交換によって約2.3μg/ml/min (AUC5→120の約44%) のADRが除去しえた.
症例報告
抄録
てがみ
編集後記
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