自己免疫疾患の発症が主要組織適合遺伝子複合体 (MHC) と相関を示し, また自己免疫疾患患者家系にリンパ系悪性腫瘍が好発することが知られている. さらに最近, ある種の自己抗体を産生することからCD5
+B細胞が注目されているが, このCD5
+B細胞はBリンパ系悪性腫瘍, 殊にB細胞性慢性リンパ性白血病 (B-CLL) の発症母地とも考えられている. これらのことから自己免疫疾患とBリンパ系悪性腫瘍の発症機構に何らかの関連性があることが示唆される. 今回, われわれは全身性エリテマトーデス (SLE) のモデルマウスであり, しかも脾臓中にCD5
+B細胞数の増加の認められるNew Zealandマウス系を用いて, この両疾患の関連性を検討した.
New ZealandマウスのSLE病態の発症は, マウスのMHCであるH-2のハプロタイプに強く規定されており, H-2
d/H-2
zのヘテロ接合性が必須であることをわれわれは今までに見い出している. 本研究ではH-2-congenicマウスを用いて, 脾臓CD5
+B細胞数がH-2ハプロタイプによって影響をうけるか否かを検討した. その結果H-2
z/H-2
zハプロタイプを持つマウス系において, H-2
d/H-2
dあるいはH-2
d/H-2
zハプロタイプのマウスよりも, 脾臓CD5
+B細胞比率が非常に高いことが明らかとなった. しかもこれらの増殖CD5+B細胞は最終的にはoligoclonalになり, 中にはmonoclonalなB-CLL到る例も認められた.
一方, 腹腔におけるCD5
+B細胞比率は脾臓の場合とは異なり, いずれのH-2ハプロタイプのマウス系においても違いは認められず, 脾臓と腹腔におけるCD5
+B細胞増殖は異なる機序で制禦され, また異なるcloneが増殖していることが判明した.
以上の結果から, New Zealandマウスにみられる脾臓CD5
+B細胞のクローナル増殖および, B-CLLの発症にはNZW 系のもつH-2
z複合体に隣接して存在する遺伝子座がホモの状態で存在することが必要であることが示された. このことは自己免疫疾患とB-CLLの発症が異なってはいるが, いずれも関連性のあるMHCによって規定されていることを示しており, ヒトにおいて両疾患の発症が, 家族性に発症することの原因を解明する一つの糸口となると考えられる.
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