順天堂医学
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38 巻, 2 号
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目次
Contents
特集 竹内・横田・池本・飯塚・高田 五教授定年退職記念講演
  • 竹内 宣子
    1992 年 38 巻 2 号 p. 154-162
    発行日: 1992/08/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    順天堂大学医学部生理学教室は, 昭和27年, 坂本嶋嶺教授, 真島英信助教授という先生方で, 当時の三号館一階に発足しました. お二方の先生共今は亡く, 発足当時より教室員としてお世話になりました者として, 古い記憶をたよりに, 生理学教室での主として当時の電気生理学と研究用電気機器について簡単にまとめました. その後シナプスの伝達機構を専門に研究してきましたので, その仕事の一端を報告させていただきます.
  • 横田 健
    1992 年 38 巻 2 号 p. 163-171
    発行日: 1992/08/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    十億年を超える生物進化は複雑かつ巧妙である. 感染症は人体と病原体との相互関係でおこるので, 社会環境や抗菌剤の変遷とともに変貌する. これに病原体の環境適応力が大きく関係する. 細菌には表現形の変化, つまり非遺伝的適応能力と, 子孫に伝えられる遺伝的適応能力とがある. 非伝的適応能力の鍵になっている物質がサイクリックAMP (cAMP) である, cAMPは細菌では遺伝子レベルで効率的代謝調節を行っている, 近年のコレラの病態変化はcAMPの代謝調節に突然変異が加わったものであることを明らかにした. 教授在職の後半の主要研究課題としたのは, メチシリン・セフェム耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) の耐性機構の解明と, それから導き出された予防および治療法である. MRSAの耐性の仕組みは, β-lactam剤に親和性の低い細胞壁合成酵素, PBP2'の新生のほか複数の遺伝子の突然変異であることを発見した. MRSA深部感染症の予防には, 術後感染予防にはブドウ球菌に抗菌力の強い薬剤を使う配慮と, 院内感染予防対策の確立の2つを併行させる必要があることを提唱した. またその治療には, MRSAにも抗菌力を示し得る抗菌剤の併用療法を早めに行うことが肝要なことを強調した.
  • 池本 秀雄
    1992 年 38 巻 2 号 p. 172-182
    発行日: 1992/08/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    内外の医学術雑誌に掲載される論文の数からも分かるように, 系統的ないし内臓真菌症は多くの医家の関心の的になっている. 今回は気管支肺アスペルギルス症の一病型である肺アスペルギロームの自家症例45例を中心に, 諸々の角度から検討を加えた. すなわち診断時年齢, 性別, 原因Aspergillus属菌種, 先在疾患, 誘因, 菌球・空洞・周辺肺組織・胸膜の病理所見, 既存空洞内に菌球が芽生えてから略完成する迄の期間とその進展様式, これに関連して試験管内・家兎胸膜腔内での人工的アスペルギルス菌球の作製, 臨床症状, 血痰・喀血の原因, 菌球の発生初期および完成期の胸部X線所見, 気管支造影法による菌球を擁する空洞と誘導気管支との間の交通性, 喀痰および喀出菌塊の真菌学的所見, 沈降反応・間接赤血球凝集反応などによるA. fumigatus抗原に対する血清中抗体の検出, 合併症・偶発症, 自然史, 特に死因, 抗真菌剤の経気管支的空洞内注入療法の効果, その他について検討し, 得られた成績の概略を記述した. 最後に内科領域における深在性, 系統的真菌症に関する今後の課題についても聊かの考察を試みた.
  • 飯塚 禮二
    1992 年 38 巻 2 号 p. 183-191
    発行日: 1992/08/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    本文はすでに「精神科治療学」5巻873-881 (1990) に, ほぼ同様の内容が発表されており, 従って原著ではない. 平成三年度P5医学心理学の同じ課題の講義が, 私の最終講義となったのでここに掲載させていただくこととした. なお, 平成4年3月25日の講演会当日の講演内容は, 未だ学会で未発表のものであるため本稿を掲載した.
  • 高田 道夫
    1992 年 38 巻 2 号 p. 192-201
    発行日: 1992/08/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    臨床の研究は, それが基礎医学的性格が強い場合でも, 必ず, その成果が実施臨床にfeed backされることが望ましい. 私が過去40年間にわたって行ってきた研究は, その類のものである. 生殖医学・周産期医学・腫瘍学・その他 (感染症・子宮内膜症) に分けて, その経緯・足跡をふり返ってみた. 臨床の研究は患者が対象となることが多い. その病態を詳細に検討しながら, 診断・治療・予後に役立つような独創性の高い研究を行うためには, 日常の臨床をおろそかにすることなく, 特に, 患者数とその質を重んじることが大切である.
原著
  • 菅野 勉
    1992 年 38 巻 2 号 p. 202-209
    発行日: 1992/08/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    消化器癌の肝転移症例を対象に抗癌剤であるAdriamycin (以下ADR) を, 肝動注後に血漿交換療法を併用することにより全身に拡散させADR濃度の低減をはかった. 肝動脈内にADR30mgを投与し, ADR投与後120分まで経時的に末梢静脈のADR濃度を測定した. ADR投与後30分を変曲点として, ADR投与後30分までは急速に濃度は低下する分布相を示し, ADR投与後30分よりなだらかに低下する消失相を示した. ADR投与後120分での末梢ADR濃度は, 0.021μg/mlであった. 台形法を用いて薬学的に検討したところ, 前期薬剤分画は6.252μg/ml/min, 後期薬剤分画は, 4.226μg/ml/min, 全期薬剤分画は10.478μg/ml/minで, 後期薬剤分画が全期薬剤分画に占める割合は40.3%であった. つぎに変曲点のADR投与後, 30分以内より血漿交換療法を併用し末梢血ADR濃度を調べた. ADR投与後120分での血中ADR濃度は検出不能のレベルまで低下していた. 前期薬剤分画は5.672μg/ml/min, 後期薬剤分画は1.476μg/ml/min, 全期薬剤分画は7.148μg/ml/minで, 後期薬剤分画が全期薬剤分画に占める割合は20.6%となり, 血漿交換療法併用によって末梢血ADRを除去することができた.
  • 形井 秀一, 北川 龍一
    1992 年 38 巻 2 号 p. 210-219
    発行日: 1992/08/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    著者らは慢性前立腺炎 (非細菌性前立腺炎およびProstatodynia) 患者100例に対し, 前立腺局所およびその周囲の循環改善を目的として, 低周波鍼通電療法 (EAT) を行った. 検査は尿検・前立腺直腸診・超音波診断・東洋医学的体表触診・心理テスト・自覚症状の自己採点等を行った. EATによるEPS中のWBC数, および前立腺直腸診時の圧痛の改善率はそれぞれ64.7%・82.1%であり, またEPS中のWBC数の陽性群は, 陰性群に比べて有意に (P<0.05) 有効率が低かったが, 70.6%の有効率であり, EATが慢性前立腺炎の炎症の改善に一定程度影響していることが示唆された. またSTDの既往の有無で有効率の差はなく, EATは器質的病変のある可能性を持つ病態にも一定の効果があることが示唆された. 自覚症状の出現率および改善率は部位間に差はなかった. さらにEATは, 慢性前立腺炎患者のうち, 炎症所見や消化器症状・神経症・うつ傾向が強くない症例に対して有効率が高かった. 自覚症状と他覚所見の両者に対する総合評価では, EATの有効率は79.3%であった. 以上のことより, EATは薬物が無効であったり, 通常の泌尿器科的治療法では効果の現われにくい慢性前立腺炎の治療に有用であると考えられる.
  • 前田 国見
    1992 年 38 巻 2 号 p. 220-228
    発行日: 1992/08/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    ダイナミンはキネシン, cytoplasmic dynein (MAP1C) に次いでATPase活性をもち, 第3の微小管上のモーター蛋白として発見された. その後, 明らかにされた塩基配列によりGPT結合蛋白のコンセンサスシークエンスをもつことがわかり, 全く新しいG蛋白として注目を集めた. 著者は新しい方法を用いて, ラット脳より高純度のダイナミンを効率良く大量に精製し, これが今まで報告されていたダイナミンであることを同定した. 微小管存在下において, 微小管が存在しない場合より約4倍に促進されるATPase活性 (Km値=1.0) と, 170倍に促進されるGTPase活性 (Km値=0.07) をもつことを示した. さらに急速凍結デイープエッチ法を用いてダイナミンと微小管の結合の様式を電顕にて詳細に観察し, ダイナミンが螺旋状に微小管を装飾することを明らかにした.
  • 野澤 慎吾, 徳重 克年, 西村 裕之, 広瀬 幸子
    1992 年 38 巻 2 号 p. 229-238
    発行日: 1992/08/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデスのモデルマウスであるNZB×NZW F1 (NZB/W F1) マウスにおいては, 双方の親系マウス由来の複数の遺伝子が自己免疫疾患の発症に関与している. 特にマウスの主要組織適合遺伝子複合体 (MHC) であるH-2がH-2d/H-2zヘテロ接合性であることに加えて, NZWマウス由来のT細胞レセプター (TCR) β鎖遺伝子がIgGクラス抗DNA抗体の産生, ループス腎炎の発症に重要な遺伝的因子であることが示されしいる. このことからMHCの遺伝子産物およびTCRによる抗原の認識が, このマウスの自己抗体産生の亢進に重要であると考えられる. しかしどのようなTCRが, どのような機序でこの現象に係わっているかは現在のところ不明である. 本研究ではTCRβ鎖に加えて, もう一つのTCRの構成要素であるα鎖がこのマウスの自己抗体産生に関与するかどうかを, NZB/W F1×NZB退交配マウスを用いて解析した. その結果, NZWマウス由来のTCRα鎖遺伝子の存在は, 単独では有意な自己抗体産生の増強効果を示さなかったが, MHCのヘテロ接合性とNZWマウス由来のTCRβ鎖遺伝子のとの相互作用において, IgGクラス抗ds DNA抗体産生およびIgGクラス抗ヒストン抗体産生を亢進することが明らかとなった. この事実は, NZB/W F1マウスにおいてはNZWマウス由来のα鎖β鎖よりなるTCRが, F1マウスに特有なH-2d/H-2zヘテロ接合性に由来するclassII分子によって, 提示された抗原を認識することにより自己抗体産生を増強し自己免疫病態を亢進させる可能性を示唆している.
  • 滝浦 文明, 岡田 隆, 徳重 克年, 広瀬 幸子
    1992 年 38 巻 2 号 p. 239-248
    発行日: 1992/08/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    自己免疫疾患の発症が主要組織適合遺伝子複合体 (MHC) と相関を示し, また自己免疫疾患患者家系にリンパ系悪性腫瘍が好発することが知られている. さらに最近, ある種の自己抗体を産生することからCD5+B細胞が注目されているが, このCD5+B細胞はBリンパ系悪性腫瘍, 殊にB細胞性慢性リンパ性白血病 (B-CLL) の発症母地とも考えられている. これらのことから自己免疫疾患とBリンパ系悪性腫瘍の発症機構に何らかの関連性があることが示唆される. 今回, われわれは全身性エリテマトーデス (SLE) のモデルマウスであり, しかも脾臓中にCD5+B細胞数の増加の認められるNew Zealandマウス系を用いて, この両疾患の関連性を検討した. New ZealandマウスのSLE病態の発症は, マウスのMHCであるH-2のハプロタイプに強く規定されており, H-2d/H-2zのヘテロ接合性が必須であることをわれわれは今までに見い出している. 本研究ではH-2-congenicマウスを用いて, 脾臓CD5+B細胞数がH-2ハプロタイプによって影響をうけるか否かを検討した. その結果H-2z/H-2zハプロタイプを持つマウス系において, H-2d/H-2dあるいはH-2d/H-2zハプロタイプのマウスよりも, 脾臓CD5+B細胞比率が非常に高いことが明らかとなった. しかもこれらの増殖CD5+B細胞は最終的にはoligoclonalになり, 中にはmonoclonalなB-CLL到る例も認められた. 一方, 腹腔におけるCD5+B細胞比率は脾臓の場合とは異なり, いずれのH-2ハプロタイプのマウス系においても違いは認められず, 脾臓と腹腔におけるCD5+B細胞増殖は異なる機序で制禦され, また異なるcloneが増殖していることが判明した. 以上の結果から, New Zealandマウスにみられる脾臓CD5+B細胞のクローナル増殖および, B-CLLの発症にはNZW 系のもつH-2z複合体に隣接して存在する遺伝子座がホモの状態で存在することが必要であることが示された. このことは自己免疫疾患とB-CLLの発症が異なってはいるが, いずれも関連性のあるMHCによって規定されていることを示しており, ヒトにおいて両疾患の発症が, 家族性に発症することの原因を解明する一つの糸口となると考えられる.
症例報告
抄録
てがみ
編集後記
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