順天堂医学
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38 巻, 3 号
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目次
Contents
特集 めまい症例へのアプローチ
  • 水野 美邦
    1992 年 38 巻 3 号 p. 327-336
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    めまいを主訴とする患者へのアプローチのしかたについて解説した. 主訴から回転性のめまい, 失神・平衡障害, その他のめまいにわけて鑑別診断・検査・治療を進めることの重要性を指摘した. 回転性のめまいの場合, 責任病巣は末梢, あるいは中枢の前庭神経系のどこかにあり, 失神の場合は心・循環器系に問題のあることが多い. 平衡障害の場合は運動失調・深部知覚障害など神経系に障害のあることが多い. その他のめまいの原因としては過去における前庭系疾患, 慢性の前庭系疾患, 眼疾患・頸椎疾患・神経症・過呼吸症候群など原因が多岐に及ぶことを述べた. 検査としては回転性めまいの場合, 頭部CT・前庭機能検査などが重要であり, 失神の場合は心電図・起立血圧試験・血液生化学・血糖などが重要である. その他のめまいの場合はどこに原因があるかまず確かめてから, 検査計画を立てることが重要である.
  • 徳増 厚二
    1992 年 38 巻 3 号 p. 337-347
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    メニエール病は, 反復するめまい発作, 変動する聴覚障害を特徴として, 既知の疾患・中枢神経系疾患を除外し, 検査では, リクルートメント現象陽性の内耳性感音難聴と, 末梢性前庭性平衡障害が発作期・発作間歇期で変化することから診断される. 病理学的には特発性内リンパ水腫であり, 臨床的には低音域の聴力障害の変動, グリセロールテストなどで内リンパ水腫が推定される. 北里大学病院めまい外来の最近7年間の初診患者総数3222名に対して, メニエール病初診患者数の比率は約10%, メニエール病確実例は7.8%であった. 既知の疾患ならびにメニエール病以外の『いわゆるめまい症』患者数のめまい外来初診者総数に対する比率は約43%であり, メニエール病のほぼ4倍に達した. 炎症・腫瘍・血管障害・中毒・外傷などを除外しためまい患者のうちでメニエール病は, その一部に過ぎないことを報告した.
  • 坂田 英治
    1992 年 38 巻 3 号 p. 348-356
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    めまいはそれ自体で直接死に至ることはないが, 「生命維持への警戒警報, あるいは黄色信号」ということができる. つまり, 神が与えた警告である. 素早く適切な処置をとって, その後に来るかもしれない大発作を未然に防がなければならない. 大発作の前の小発作のうちに正しい治療や予防的措置をとることが何よりも大切である. めまいは一過性であったり, 自然に治ってしまうことも少なくないので, ややもするとその治療は対症的になりがちである. また, その場限りの一時しのぎの治療では再発を繰返し, だんだん重症になってゆくことも多いので, 根本的な治療によって「いまあるめまい」ばかりではなく, 再発予防策を講ずる必要がある. また, 精密検査をおこなっても原因や診断が明らかにならない場合, <異常なし>とは断定せず, 経過を追跡することがぜひとも必要である.
  • 市川 銀一郎, 石川 正治
    1992 年 38 巻 3 号 p. 357-367
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    めまいと耳鳴・難聴などの蝸牛症状につき検討した. 解剖学的に聴覚系は非常に接近して存在するため, 前庭症状と蝸牛症状の両症状が同時に出現することが多いと考えられ, 特に末梢性障害の場合その傾向が強く認められる. 末梢性疾患・中枢性疾患のそれぞれ代表的なものにつき, めまいと蝸牛症状の関連につき検討した. めまいの責任病変を診断して行くに当たり, めまいと蝸牛症状の出現状態を詳細に検討することは非常に重要であると考えられた. また, 小児および高齢者のめまいの特徴につき検討した.
  • 青木 勝三郎
    1992 年 38 巻 3 号 p. 368-379
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    実地医家の知っておくべきめまい疾患をその病因と障害部位から分類し, さらに予後から命に関わるめまい, 早期診断と早期に適切な治療を行わないと機能障害を残す可能性のある危険なめまい, 予後良好なめまいに分け, とくに留意すべき疾患を例示した. 脳と体のバイタルサインが正常であっても, 重篤な頭蓋内病変を見逃す危険のあるめまい疾患を列挙し, 診断の決め手は詳細適確な問診にあることを強調した. 病巣診断には問診と併せて一般神経学的諸検査, 聴・平衡機能検査を中心とした神経耳科学的検査が重要であり, 多忙な日常診療において手軽に行い得る検査の手順と, それぞれの検査の診断学的意義について述べた. めまいをきたす末梢性疾患と中枢性疾患を症状と所見からその鑑別の要点を述べ, これらのめまい例につき対応上の問題点を取り上げた. 専門医への紹介のポイントと搬送時の注意を具体的に挙げて述べた. 末梢性めまいの治療の原則を述べたが, 主として薬物療法の基本と, 病因・病態に則した治療が大切であることを強調し, 使用薬の不適確な投与は検査成績を変貌させ, 逆にめまいの回復を遅延させる原因となり得ることを述べた.
原著
  • 文元 秀雄
    1992 年 38 巻 3 号 p. 380-392
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    DSMIIIRに従って診断された精神分裂病 (以下分裂病) 患者10名について, BPRS, SANS等で臨床症状を詳細に評価しながら, odd-ball課題での事象関連電位 (Event-Related Potentials: ERP) を向精神薬未服薬の時点から記録し, 臨床経過とN100成分, P300成分の変化について縦断的に検討した. 緊張型と妄想型の各2名は, 症状の軽快とともにP300振幅が増大する傾向が認められたが, 解体型と残遺型の計6名では, P300振幅の変動は症状の変化と一定の関係を持たず, 概して低振幅であった. また, 社会適応度の中間群ないし不良群では, 社会適応良好群に比べ, 非目標刺激時のERPにおいてP300成分が高頻度で出現した. また最も適応の悪い群では, 目標・非目標の両刺激ともにP300成分は認められなかった. 分裂病の認知障害において, 緊張型と妄想型では治療反応性が高いが, 解体型と残遺型には治療抵抗性の要素があり, 病態が前2者と異なると考えられた. そして非目標刺激時のP300の検討から, 認知構造の解体度が社会適応状況に影響する可能性が示唆された.
  • 長谷川 進, 宇津野 博, 石 和久
    1992 年 38 巻 3 号 p. 393-400
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    子宮頸癌において, その発癌過程にHuman Papilloma Virus;HPVが密接に関連していることが近年注目されている. 今回, 339例の子宮頸部におけるHPV検索により, HPV DNAが検出された48例 (14.2%) のうち異形成を認め, しかも一年以上の長期にわたり経過を観察し得た16例について, HPV type・その消長, さらに細胞診・コルポスコープ診・組織診における所見の推移を検討した. HPV DNAの検出はSouthern blot (SBH) 法・Dotb lot (Vira pap, Vira type) 法・in situ hybridization (ISH) 法によった. Low risk groupであるタイプ6 11はほとんどが慢性頸管炎あるいはCIN (cervical intraepitherial neoplasma) から検出され, 経過観察しえたCIN6例中persistance 2例・regression 2例で, progressionは認められなかった. high riskあるいはintermediate risk groupであるタイプ16 18 31 33 35は, 良性から悪性まで病変の程度と無関係に検出され, 経過観察しえたhigh risk groupであるタイプ16 18検出例のうち, 経過を観察しえた7例ではpersistance4例・regression 1例・progression 2例であり, progressionの2例はいずれも扁平上皮癌に移行した. intermediate groupであるタイプ31 33 35検出例のうち, 経過を観察し得た3例ではregression 2例・progression 1例であった. HPVのみが子宮頸癌発症の要因とは考えにくいが, 今回の経過観察成績からタイプ16 18は発癌と密接に関連していることが明らかにされた.
  • 松村 万喜子
    1992 年 38 巻 3 号 p. 401-406
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    現在, わが国ではヒトが食品として摂るもので直接アフラトキシン (AF) 中毒を起こすことはまず考えられないが, AF産生菌株が存在する限り, 家畜の飼料などが汚染される可能性が残っている. 食物連鎖の観点から特に生もの指向の昨今, ゆるがせに出来ない問題と思われる. そこで家兎を用い, AFを経口的に投与した場合と, AF産生株により感染を起こした場合とに分けて, それぞれAFの体内組織への移行・蓄積について検討した. その結果, いずれの場合も家兎の組織抽出物からAFは検出されなかったが, アスペルギルスの代謝産物の一つであるkojic acid (KA) に近似の物質が検出され, またin vitroでKAを産生する株が数種認められた. 今後, こうした真菌の代謝産物にも着目して行く必要があると考えられた.
  • 鈴木 伸治, 上田 清悟
    1992 年 38 巻 3 号 p. 407-417
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    最近の研究報告によれば, 血管内膜依存性弛緩因子EDRFによる血管の弛緩が自然発症高血圧ラット (SHR) において著明に低下しており, 血管内皮細胞 (EC) の機能異常が示唆されている. しかし, SHRのECにおける機能異常を示す直接的な証明はなされていない. 細胞内Ca2+ ([Ca2+]) i) はEC内の情報伝達においてBradykinin (BK) などの血管作動生物質の受容体のsecond messengerとして重要な役割をはたしており, EDRFやprostaglandin-I2 (PG-I2) の産生を制御する. また [Ca2+] iは細胞内のもう一つの重要なsecond messengerであるinositol1, 4, 5triphosphate (IP3) により調節されている. 今回われわれは, ECの機能異常を直接的に解明するためにSHRの胸部大血管からECを取り出し継代培養し, それらの細胞形態およびBK存在下における単一細胞内 [Ca2+] i, IP3, PG-I2を定量し, SHRと正常血圧Wis-tar Kyoto rats (WKY) で比較検討した. [Ca2+] はCa2+感受性蛍光色素であるfura-2/AMを用いARGUS100CA (Hamaphoto) にて定量した. IP3, PG-I2はRIA法にて定量した. ECの細胞膜BK受容体はradio binding assay法にて計測した. その結果, 細胞形態および細胞膜BK受容体はSHR・WKY各々, Bmax=266±18VS254±20fmol/106cells, Kd=0.39±0.02VS0.40±0.30nMと有意差を認めなかったが, 10-7M BK存在下において [Ca2+] iは580±71vs481±85nM (各々SHRとWKY), IP3は8.6±2.8vs5.4±2.4pmol/106cells (各々SHRとWKY) とSHRにおいて両者共に反応性が亢進していた. しかしその一方で, PG-I2の産生は16.2±6.0VS36.6±8.2pg/106cells (各々SHRとWKY) とSHRにおいて著明に低下していた. これらのことはSHRに於てECそのものに機能異常が存在する事実を示した. ECの生化学的機能異常が高血圧に於ける内皮依存性のPG-I2産生やEDRFに基づく血管反応性の異常を惹起するうえで重要な役割を果たしていると考えられる.
  • 岩佐 剛, 臼井 直行, 鈴木 正明, 高田 道夫
    1992 年 38 巻 3 号 p. 418-427
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    悪性卵巣腫瘍に対するCDDP腹腔内反復長期投与療法の体内動態, 安全性に関する報告は少ない. そこで今回卵巣悪性腫瘍患者に対しCDDPの初回投与と反復投与における体内動態・組織内濃度および, その安全性と臨床効果について検討した. (1) CDDP腹腔内反復投与症例におけるtotal-Ptの血中濃度は投与回数を重ねるごとに投与前値が高くなり, 同程度の差を持って24-72時間後まで推移した. 一方free-Pt血中濃度の投与前値は回数を重ねても検出されなかったが, 投与直後から2時間後までは投与回数を重ねるごとに比較的高値を示す傾向が認められた. また腹水中のfree-Pt濃度推移は, 血中のfree-Pt濃度推移のパターンと類似していたが, さらにいちじるしい傾向が認められた. (2) CDDP初回投与時の卵巣腫瘍組織内total-Pt濃度はiv群で0.19-0.76μg/ml, ip群では1.26-1.84μg/ml, ia群では0.89-4.85μg/mlであった. CDDP腹腔内反復投与後の卵巣腫瘍組織内total-Pt濃度は, CDDP初回投与時の卵巣腫瘍組織内total-Pt濃度に比較して高い傾向を示したが, 必ずしも臨床効果とは一致しなかった. (3) CDDP腹腔内投与を10回以上反復した後でも, BUN・CCr・PSP・NAG・β2-MGなどの腎機能に関するパラメーターが悪化する傾向はなかった. (4) 腹腔内留置チューブよりの菌検出率は40.5% (15/37), 分離菌はほとんどCNSであった. 緑濃菌は検出されなかった. 感染徴候としては2例に白血球の増加が見られたのみであった. (5) 卵巣癌StageIIIにおけるCDDP腹腔内反復投与群の奏効率は8/11 (73.0%) であり, 大きな腫瘍塊でも著効例が認められた. 以上のことよりCDDP腹腔内長期反復投与療法は, 薬理動態からみると抗腫瘍効果のあるfree-Ptが血中・腹水中とも一回投与よりも上昇し, 持続的高値を示す特徴があり, 安全性の面でも支障がなく臨床効果も優れており, 悪性卵巣腫瘍に対する化学療法の投与経路としてきわめて有用であることが明らかにされた.
報告
  • 辻 昌宏, 高浜 浩輔, 市川 徳恵, 加藤 知子, 岡田 滋子, 塩浜 直弘
    1992 年 38 巻 3 号 p. 428-434
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    周期性発射periodic discharge (PD) は脳機能の重篤な障害を示す脳波所見であり, 一般に一過性で予後不良の指標とされている. われわれはPDを認めた昏睡患者5例において脳波検査と血清酵素値の推移を追跡調査し, 以下の結果を得た. (1) PDが血清酵素値の増加に先行して出現し短期間で消失する場合, 生命予後は良好であった. (2) PDが血清酵素値の増加後に出現し長期間持続する場合は予後不良であった. 昏睡発症時には血清酵素値の評価に加えただちに脳波記録を施行し, PD出現後は5日前後の時点で再検することが予後の予測に有用と考えた.
症例報告
  • 田島 純子, 榊原 裕司, 小林 圭子, 大道寺 英幸, 美谷島 季彦, 中沢 真人, 黒田 博之
    1992 年 38 巻 3 号 p. 435-439
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    B型肝炎の経過中に肝以外の症状を呈することはよく知られているが, 神経症状を合併することは極めて稀である. われわれは急性B型肝炎の経過中に視神経炎を合併した症例を経験したので報告する. 症例は, 肝炎発症2週目頃より視力障害を訴えるようになり, 視神経炎の診断をうけた. 視力障害は急速に進行したため, ステロイド療法を開始したところ, 肝機能の改善とともに症状は著明改善をみた. 視神経炎発症時の血中および髄液中のImmune Complexはともに陰性であったが, 髄液中のHBs抗原が陽性であり, B型肝炎と視神経炎との何らかの関連性が疑われた. 急性B型肝炎と視神経炎の合併の報告は非常に稀であり, 興味ある症例と考えられた.
  • 秋元 智博, 富田 貴, 坂本 豊吉, 児島 邦明, 二川 俊二, 廣瀬 俊一, 小林 茂人, 直居 豊, 石原 明夫, 本間 候, 松本 ...
    1992 年 38 巻 3 号 p. 440-444
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
総説
  • --経皮経管的冠状動脈血栓溶解療法 (PTCR) を中心に--
    加納 達二, 小林 清亮, 粕谷 秀樹, 尾崎 治夫, 林野 久紀, 相川 由美子, 山中 修, 南部 勝司, 山口 洋
    1992 年 38 巻 3 号 p. 446-451
    発行日: 1992/10/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患の治療の進歩は再灌流療法を中心に目ざましい. 今回当病院での急性心筋梗塞患者270例の入院中の治療成績について検討した. 全体の死亡率は12.2%で, このうち70歳以上の老年者群の死亡率は, 36.5%と非老年者群の4.0%に比し有意に高かった. PTCRは77例 (29%) に施行し, 再灌流成功率は81.8%と良好であった. PTCR施行群の死亡率は, 6.4%で非施行群の14.5%に比し有意に低く, また老年者群に限っても施行群の死亡率5.3%, 非施行群42%であり, 再灌流療法の有用性が示唆された.
抄録
てがみ
編集後記
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