順天堂医学
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39 巻, 3 号
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目次
Contents
特集 在宅医療
  • -その導入から現在までの歩み-
    吉良 枝郎
    1993 年 39 巻 3 号 p. 291-300
    発行日: 1993/11/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    各種の有効な抗生物質の導入, 呼吸管理の進歩で, 昭和50年の前半頃より酸素吸入さえ出来れば入院することなく, 自宅で家族と, いやさらに社会に復帰することも可能な, 病状の落ち着いている慢性呼吸不全患者が増えてきた. この傾向と期を一にして, これら患者の治療に有用な, 患者でも操作できる安全かつ便利な酸素濃縮器も開発されてきた. 在宅医療の先駆けと言える在宅酸素療法の保険適応, わが国での普及はこれらの動きにマッチしたものである. 自験例を紹介しながらそのはじめからの歩み, そして厚生省特定疾患“呼吸不全”調査研究班の全国調査を通じての, 急速に普吸したわが国の在宅酸素療法の実態について紹介した.
  • 糸氏 英吉
    1993 年 39 巻 3 号 p. 301-309
    発行日: 1993/11/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    我が国では, 世界に類を見ない早さで高齢化が進んでいる. 今後の高齢社会における国民のニーズとして在宅医療がある. 在宅医療は, その費用の問題, 介護者および住居の問題, 法的責任等, 解決しなければならない多くの問題を抱えている. しかし, 今まで親しんできた人達との人間関係を保ちつつ, 住み慣れた環境のなかで自由とプライバシーを享受しながら人生の終焉を迎える療養は, 21世紀の療養のあり方としては理想的であり, 今後国民の選択肢の一つとしてできるだけ提供できるように考えていかなければならない. 今後激増するであろう在宅医療は, 病診連携をベースとしながら主として患者のかかりつけ医が担うべきであろう. 第一線の在宅医療を担うかかりつけ医には, 国民のニーズに応えるための全人的な対応と近代医学を修得するための生涯教育が求められよう. また, 地域医師会あげての在宅医療に対する強力な支援体制も, 必要不可欠のものとなってくるであろう. 地域医療の実践の中で若い医師たちに医師としての誇りと生きがいを感じてもらい, 国民の信頼に応えていくためにも新しい時代の《かかりつけ医》理念を研究確立していく必要があると考える.
  • 石館 敬三
    1993 年 39 巻 3 号 p. 310-320
    発行日: 1993/11/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    21世紀初頭の超高齢社会に備えるべく, 平成元年12月には「高齢者保健福祉推進10カ年戦略」が示され, 今世紀中に達成すべき保健・医療・福祉の各分野におけるサービスの目標量を提示し, 関係者の努力を喚起している. そのキーワードは「キュアからケアへ」, 「施設から在宅へ」であり, こうした潮流を地域で支える体制としての保健・医療・福祉の新たな連携が今求められている. 本稿では先ず都内の要介護高齢者の実態についてふれ, 次いで昭和62年に創設された老人保健施設, 平成3年に創設された老人訪問看護ステーションに対する東京都における取組みの概要を紹介した. これらの施策は緒に就いたばかりであるが, その重要性に鑑み, 今後の充実発展が望まれる.
  • 川村 佐和子
    1993 年 39 巻 3 号 p. 321-328
    発行日: 1993/11/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    近年わが国で制度化されている「訪問看護」における医師と訪問看護婦とのチームプレーに関して論じた. 「訪問看護」業務は「在宅医療管理」とともに, 近年, 医療保険制度上診療報酬を請求できることになった. 現在, 訪問看護は未だ介護を中心とする看護や看護指導の提供であるが, 今後は医療依存度が高い状態や在宅ターミナルケアを担当すると予測される. この場合には, 看護婦は医師と協力して患者宅で医療を行うことになる. その場合, 看護婦は医師と緊密な関係でケア提供することが必要となり, 医療行為など医師の指示で行うケアは医療機関内と同様, 医師の指示を正確に受け, 実施報告を行う責務がある. しかし, 医師は在宅療養者を直接観察する機会が少なく, 看護婦は医師から適切な指示を得にくいため, 予測的で, 客観的な観察結果や家族介護状況の評価を医師に伝達する必要がある. そこで, (1) 侵襲が少ないモニター類や検査器具の活用, (2) マニュァルの作成, (3) 情報伝達方法の開発が必要となる. また. 在宅看護の歴史が浅いため, 技術体系が未成熟であるから, これを開発, 充実する研究とその普及が重要かつ急務である.
原著
  • 劉 星漢
    1993 年 39 巻 3 号 p. 329-337
    発行日: 1993/11/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    胃上部の早期癌73例 (噴門部早期癌26例と噴門部を除く胃上部早期癌47例) を対象として, 粘膜下異所腺の病態と癌巣の生物学的因子, ならびに粘膜下層浸潤形式との関係について検討した結果, 噴門部早期癌は噴門部を除く胃上部早期癌に比して, 特徴的性格をもつことがわかった. すなわち, 噴門部早期癌は20mm以下の比較的小さな癌巣径の分化型腺癌が多く, 粘膜下層癌の比率は80.8%と高く, その粘膜下層浸潤の形式は間隙型が52.4%を占めた. 癌巣下, あるいはその周囲には粘膜下異所腺が73.1%と高率にみられ, とくに癌巣下にみられた異所腺が多かった. これら異所腺の胃上部における分布は主として噴門部に密集していた. 癌巣周囲には腸上皮化生を伴うことが多く, 腸上皮化生の程度が高度であった症例の91.7%に異所腺が認められた. さらに, 粘膜下層浸潤形式が間隙型を示した11例はすべてに異所腺を併存していた. 以上より, 噴門部は異所腺が好発しやすい環境にあることがわかった. このことは噴門部の粘膜筋板には多くの間隙が存在することを示唆している. 噴門部に発生することが多い分化型腺癌は, 比較的早期にこの間隙を通って粘膜下層に浸潤することと考えられる.
  • 石井 るみ子
    1993 年 39 巻 3 号 p. 338-347
    発行日: 1993/11/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    難治性緑内障に対する濾過手術の成功率を向上させるために, 5-Fluorouraci1 (5-FU) の結膜下注射が有効であるが, 角膜障害や頻回注射による苦痛も問題になっている. 今回5-FUの投与量を減らし, 投与法を簡便にする目的で3種類のdrug delivery system (DDS) を考案した. (1) コラーゲンに10%5-FUを混ぜて棒状にしたコラーゲンロッドによるもの (2) 5-FU坐剤をリボンガットに包んだもの (3) 架橋したコラーゲンチューブに20%5-FU坐剤を封入したもの3種類の材料を作成し, 白色家兎の球結膜下に埋め込み, 投与後4週までの結膜 (投与部および対側) ・強膜 (投与部および対側) ・角膜・前房水・虹彩・水晶体・硝子体・耳朶血の5-FU濃度をバイオアッセイ法またはHPLC法で測定し, 徐放効果を調べた. (3) の方法で5-FU2mg投与4週後に投与部結膜には2.70μg/gの5-FUが検出できた (有効濃度は0.2μg/g). 投与2週後に腫膜切開部のfibroblastはコントロール眼に比べて少なく分布していた. スペキュラーマイクロスコープによる観察では, 投与2週後には角膜内皮細胞の細胞数が減少していたが, 4週後には有意な差は認められなかった.
  • 山下 兼一
    1993 年 39 巻 3 号 p. 348-355
    発行日: 1993/11/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    5'-deoxy-5-fluorouridine (5'-DFUR) は5-fluorouracil (5-FU) のpro-drugであり, 癌巣で高い活性を示すpyrimidine nucleoside phosphorylase (PyNPase) により5-FUに変換されるため, 癌巣内に5-FUが集積し制癌効果を発揮する. 本研究では胃癌症例に5'-DFURを投与し, その生体組織内動態からどのような胃癌に5-FUの癌巣内集積性が高いのかを検討した. 進行胃癌切除症例47例を対象とし, 術前5'-DFURを1日1200mg2日間, さらに手術開始4時間前に400mgを経口投与した (総量2800mg). 胃切除後, 癌巣・非癌胃粘膜・転移陽性および陰性リンパ節内の5-FU濃度, PyNPase活性を測定した. 5-FU濃度は非癌胃粘膜に比べ癌巣で有意に高かった. 癌巣内5-FU濃度のとくに高値であったのは, 肉眼癌型の浸潤型, 癌巣径8cm以上, 未分化型腺癌, INFγの症例であった. リンパ節内の5-FU濃度は転移陰性リンパ節に比べ転移陽性リンパ節で高く, とくに未分化型腺癌の転移陽性リンパ節で高かった. PyNPase活性値は癌巣・転移陽性リンパ節で高かった. 以上より5'-DFURは大きな癌巣を有し, 浸潤型に増殖する未分化型腺癌の胃癌症例で, より有効であろうと思われた.
  • 山村 彰彦
    1993 年 39 巻 3 号 p. 356-366
    発行日: 1993/11/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎は病理組織学的に, 膵実質の脱落・萎縮および線維化に特徴づけられる. 従来, 慢性膵炎のモデル系を樹立することを目的として, マウスやラットでの実験が行われてきたが, これら小動物では膵線維症は形成されても, すみやかに消失するために線維症形成の動態を十分に検討することができなかった. 今回われわれは, 犬にDL-エチオニンを投与量や投与期間を変えて経口的に与え, 膵実質の脱落・萎縮後に出現する線維化について組織学的・電顕的ならびに免疫組織化学的に検討した. 体重kg当たり130mgのエチオニンを7日間, 連日投与すると終了後3日より線維芽細胞の増殖が始まり, 7日には線維芽細胞の増殖と共に膠原線維の増生が見られた. 10mg 50mg 100mgを週1回の割合で10週および20週投与すると, 投与終了後1週には膵に実質の萎縮や脱落と共に比較的広汎に線維化が見られた. また, 75mgを週1回で15週投与すると終了後2週には膵に実質の高度の脱落や広汎な線維化が見られた. 膵障害後の新鮮な線維化にはコラーゲンIII型およびフィブロネクチン, やや陳旧化した部にはコラーゲン1型の増生が関与していた. しかし, 今回エチオニンで犬に誘発した線維症も全て時間の経過とともに減少消失し, 小膵管の集合巣の周囲に限局した軽度の線維化を残すのみであった. エチオニンによる腺房細胞の障害は主として細胞内小器官の障害によるものである. 従って, 高度の線維症を伴うヒトの慢性膵炎では, 恐らくこのような腺房細胞障害に酵素の逸脱による障害が加わり, 不可逆的線維症が誘発されるものと考えられた.
  • --漿膜面露出面積および胃壁内癌浸潤量の定量化による検討--
    溝渕 昇
    1993 年 39 巻 3 号 p. 367-378
    発行日: 1993/11/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    漿膜面浸潤陽性胃癌の治癒切除113例について, 漿膜面露出面積 (E面積) および胃壁内癌浸潤量 (C面積) から予後を検討し, これに及ぼす生物学的因子を統計学的に解析することにより, 生物学的悪性度指標を求めた. E面積は新鮮切除標本の漿膜面露出範囲の長径とそれに直行する短径より算出した楕円の面積 (長径×短径×π/4) を用いた. また, C面積は漿膜面露出部の中心を通る最大割面の面積を自動画像解析装置により求めた. その結果, 漿膜面浸潤陽性胃癌の悪性度指標として以下の知見をえた. 1) 漿膜面露出面積 (E面積) は10cm2以上で予後が有意に不良となった. 2) 胃壁内癌浸潤量 (C面積) は5cm2以上で予後が有意に不良となった. 3) E面積とC面積の組み合わせにより検討した結果, E面積が10cm2未満ではC面積による予後の差はなかった. 一方, E面積が10cm2以上ではC面積が5cm2以上で予後不良であった. 予後不良に関与した生物学的因子は組織学的深達度はse, 癌組織型は未分化型であった. C面積が5cm2未満ではE面積による予後の差はなかった. 一方, C面積が5cm2以上ではE面積が10cm2以上で予後不良であった. 予後不良に関与した生物学的因子は組織学的深達度はse, 癌組織型は未分化型, 組織学的リンパ節転移の程度はn2 (+), 脈管侵襲は高度リンパ管侵襲であった.
症例報告
抄録
てがみ
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編集後記
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