漿膜面浸潤陽性胃癌の治癒切除113例について, 漿膜面露出面積 (E面積) および胃壁内癌浸潤量 (C面積) から予後を検討し, これに及ぼす生物学的因子を統計学的に解析することにより, 生物学的悪性度指標を求めた. E面積は新鮮切除標本の漿膜面露出範囲の長径とそれに直行する短径より算出した楕円の面積 (長径×短径×π/4) を用いた. また, C面積は漿膜面露出部の中心を通る最大割面の面積を自動画像解析装置により求めた. その結果, 漿膜面浸潤陽性胃癌の悪性度指標として以下の知見をえた.
1) 漿膜面露出面積 (E面積) は10cm
2以上で予後が有意に不良となった. 2) 胃壁内癌浸潤量 (C面積) は5cm
2以上で予後が有意に不良となった. 3) E面積とC面積の組み合わせにより検討した結果, E面積が10cm
2未満ではC面積による予後の差はなかった. 一方, E面積が10cm
2以上ではC面積が5cm
2以上で予後不良であった. 予後不良に関与した生物学的因子は組織学的深達度はse, 癌組織型は未分化型であった. C面積が5cm
2未満ではE面積による予後の差はなかった. 一方, C面積が5cm
2以上ではE面積が10cm
2以上で予後不良であった. 予後不良に関与した生物学的因子は組織学的深達度はse, 癌組織型は未分化型, 組織学的リンパ節転移の程度はn
2 (+), 脈管侵襲は高度リンパ管侵襲であった.
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