順天堂医学
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40 巻, 1 号
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目次
Contents
特集 肝疾患の治療―最近の進歩
  • -インターフェロン療法の実際-
    飯島 敏彦, 金子 和弘
    1994 年 40 巻 1 号 p. 2-10
    発行日: 1994/05/23
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    C型肝炎ウイルス遺伝子の発見と診断系の確立によってC型ウイルス性肝炎の治療が可能となった. 根治的治療法としてのインターフェロン (IFN) 療法を, C型慢性活動性肝炎60例で行い, その有用性を検討した. IFN療法による平均GPT値の推移では, IFN投与開始後4週目で低下する. 投与終了後一過性に上昇し, 12週目をピークに再び低下する傾向を示した. 投与終了後24週目でのIFN療法の効果を評価すると, 33例中18例 (54.5%) で著明改善を得た. しかし, HCV-RNAも陰性化した者は81.8%であり, 残りの症例から肝炎の再燃の可能性を残した. 治療効果に影響をおよぼす要因として, 肝組織・Genotype・ウイルス量の面から検討するとウイルス量の多寡が第一の要因と考えられた. C型急性肝炎に対するIFN療法は絶対的適応であり, その診断と治療の実際について, 症例を呈示した.
  • 林 泉彦
    1994 年 40 巻 1 号 p. 11-13
    発行日: 1994/05/23
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
  • 須山 正文, 有山 襄, 小川 薫, 佐藤 一弘, 長岩 治郎, 窪川 良広, 崔 仁煥, 若林 香, 山中 晃一郎, 浅原 新吾, 岡田 ...
    1994 年 40 巻 1 号 p. 14-17
    発行日: 1994/05/23
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌830例を対象にして, US・CTおよびMRIの診断能と, 肝障害の程度別 (Child分類) および治療法別の累積生存率を算出した. 単発HCC309例で腫瘍径が3cm以下では, 低エコーあるいは高エコーを示すものが多く, 腫瘍径が大きくなるに従い, 混合型やhaloを伴うようになっていた. 鑑別困難な例では超音波誘導下に針生検を行い診断を確定した. CT・MRIの腫瘍描出率は腫瘍径1.5cm以上の例で良好であった. 治療法別の生存率でChild Aで手術例の累積生存率が最もよかった. ついでTAEとPEITの併用療法, PEITの生存率がよかった. これら3療法とTAE単独群とに有意差を認めたが, 3治療法それぞれの治療法群間には有意差はなかった. Child BでPEIT・TAE+PEIT, およびTAEの各治療法群に有意差はなかったが, 1年, 2年および3年の生存率はPEIT・TAE+PEITの治療法の成績が優れていた.
  • 松本 俊治
    1994 年 40 巻 1 号 p. 18-20
    発行日: 1994/05/23
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
  • 児島 邦明, 吉本 次郎, 太田 仁, 須郷 広之, 藤沢 稔, 藤原 典子, 三輪 健, 中野 一永, 松本 力男, 鈴木 州美, 渡辺 ...
    1994 年 40 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 1994/05/23
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    1979年以来, 396例の原発性肝細胞癌入院症例を経験し, 切除例は153例39%である. 切除例の中, 肝硬変症例は82%を占める. 耐術例での5年累積生存率は49%であり, 5年累積無再発生存率は21%である. 肝癌切除後の残肝再発は, 肝硬変症例における多中心性発生例も含め高率であり, 長期生存を得るためには再発巣に対しても再切除をはじめとした積極的な治療が必要である. 再発に関与する因子としてもっとも重要なものは, 肝内転移の有無 (im因子) や治癒切除が行われたか否かである. また, 細胞核DNA PLOIDY PATTERNも予後に影響する重要な因子の一つである. 本論文では, 教室の肝細胞癌に対する治療方針とその適応・成績について自験例を中心に概説した.
  • 大浦 慎祐, 田中 岳史, 奥山 耕一, 渡邊 勇, 児島 邦明, 深澤 正樹, 別府 倫兄, 二川 俊二
    1994 年 40 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 1994/05/23
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
  • 大谷 俊樹, 藤本 隆夫, 福永 研, 宮野 武
    1994 年 40 巻 1 号 p. 34-36
    発行日: 1994/05/23
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
  • 黒田 博之
    1994 年 40 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 1994/05/23
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    最近の肝臓病治療の進歩は目覚ましく, 安静療法の時代から対象療法, さらに原因療法へと進んできている. 今後さらにQuolity of Lifeを求めた治療法が開発されていくものと思われる. 現在進行中の治療法として以下にあげる. 1) 肝炎ウイルスに対してはインターフェロンを用いた抗ウイルス療法とワクチン療法である. 突然変異株への対処が今後も検討される. 2) 肝癌の根治療法はまだ遠い将来であり, 予防薬・制癌剤・腫瘍抗体・免疫療法などの開発は進むが, しばらくは局所療法と手術であろう. 発癌遺伝子・癌抑制遺伝子・サイトカインを用いた遺伝子療法はスタートしようとしている. 3) 門脈圧亢進症に対して経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術 (TIPS) が最近行われ始めている. 腹水にたいして腹水濃縮再注入・利尿剤・Le-Veenシャントが, 静脈瘤にはプロプラナロールが用いられ, 硬化療法は待機的にも行われている. 4) 黄疸では透析膜の開発によるビリルビン吸着や抗オピウム剤による痒みの治療が進められている. 5) 代謝性疾患は遺伝子治療と移植を頼りにしている. 6) 移植は社会的同意が何時得られるかである. 7) 人工臓器は機能を限定して開発され, 全体的な肝臓は夢とも言える. 9) アルコール性肝障害は最後まで残る肝臓病かもしれない. 近い将来, 実行されるものもあれば, 技術的・学問的レベルでさらに先送りになるものもあり, 治療法の進歩には社会的同意も必要である. 学問としての展望に多くの興味をもたれることは, それに反比例して患者さんには近い将来での治療が難しいことになる.
原著
  • 柚本 和彦
    1994 年 40 巻 1 号 p. 43-51
    発行日: 1994/05/23
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    5-9代継代のヒト大動脈由来培養内皮細胞を用いATP誘発性細胞内Caイオン ([Ca2++] i) 上昇に対する塩素チャネルの関与を, fura-2を用いた [Ca2++] iの蛍光測定により検討した. 10μM ATPを投与すると [Ca2++] iは細胞内ストアからの放出による急速な上昇 (初期相) に続いて, 緩やかに減少する持続した高値 (持続相) を呈した. 投与前の [Ca2++] iは60±7nM (mean±S. D. ), 投与直後のピーク値は309±30nM, 5分後の持続相値は170±29nMであった (n=17). 持続相は細胞外液のCaの除去で消失したため, 細胞外からのCaイオンの流入によると考えられた. 細胞外Ca存在下でも, 持続相中に細胞外液の塩素イオン濃度を146mMから20mMに減少させると (低Cl溶液), [Ca2++] iは速やかに減少した (n=8). また低Cl溶液中で10μM ATPを投与すると, [Ca2++] iは投与直後のピークでは不変であったが, 持続相を示すことなく速やかに減少した (前65±6nM n. s., 投与直後308±40nM n. s., 5分後85±10nM p<0.01n=8). さらに低Cl溶液中ではATP反復投与時の2回目以降の [Ca2++] iの上昇はいちじるしく減少した. 塩素チャネルブロッカーであるniflumica cid 300μMの100μM ATPとの同時投与は, ピーク値に影響を与えず, 持続相のみを著明に抑制した (5分後63±2nM p<0.01n=8). 以上より塩素電流はATP誘発性 [Ca2++] iの上昇に際し, 過分極によって細胞外からのCaイオン流入による持続相を維持すると結論された.
  • 濱田 千江子, 窪田 実, 富野 康日己, 小出 輝
    1994 年 40 巻 1 号 p. 52-60
    発行日: 1994/05/23
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    骨新生が行われる微小環境下でのlipopolysaccharide (LPS) とヘパリンの骨吸収促進効果は, まず破骨細胞に隣接する骨芽細胞や骨髄の単核細胞からのサイトカイン産生を促し, この分泌されたサイトカインが直接的に破骨細胞の骨吸収活性を刺激することを, 雛鶏の骨髄からの分離破骨細胞を用いて検討した. LPS (5μg/ml) は, 血清成分非添加培養下で効果を示し, その作用はシクロスポリンA (0.1μg/ml) で抑制され, インドメサシン (10-5M) では変化がなかった. ヘパリンは血清成分の有無にかかわらず破骨細胞の骨吸収活性を促進し, シクロスポリンA (0.1μg/ml) で抑制され, インドメサシン (10-5M) でも抑制される傾向がみられた. サイトカインの各種抗体を使用したところ, LPSおよびヘパリンの効果は抗TNF-α抗体で有意に抑制された. あらかじめLPSで処理した骨芽様細胞株であるbone marrow-derived stromal cell (ST2) やclonal osteogenic cell (MC3T3-E1) と破骨細胞をco-cultureすると, 破骨細胞をLPSで直接刺激したのと同様に骨吸収は促進され, この効果は抗TNF-α抗体で抑制された. 以上の結果より, LPSおよびヘパリンの破骨細胞への効果は, 骨芽様細胞や骨髄の単核細胞から産生されたサイトカインの1つであるTNF-αの分泌促進を介するものであることが示された.
  • -急性冠閉塞における粥腫破綻の機序-
    鈴木 宏昌
    1994 年 40 巻 1 号 p. 61-70
    発行日: 1994/05/23
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    長期続く先行狭心症がなく突如として心筋梗塞を発症する例では, 再疎通後の冠状動脈責任部位狭窄が高度でない例が多い. この型の心筋梗塞の発症機序を明らかにするため, 急性心筋梗塞急性期死亡40剖検例を, 突然発症した21例 (A群) と安定労作性狭心症歴をもつ19例 (B群) に分け, 各責任冠状動脈病変を病理学的に比較検討した. 両群間には年齢・性別比・冠危険因子・梗塞責任部位・発症時労作の有無に差はない. A群はB群に比し, 狭窄度は有意に低く (A: 81%;B: 93%, P<0.01), 粥腫破綻頻度 (A: 86%;B: 53%, P<0.05) および内膜内脂質占有率 (A: 79%;B: 58%, P<0.01) は高かった. A群の冠状動脈責任部位は比較的内腔狭窄度の低い偏在性粥腫病変で, 豊富な脂質沈着を認め, 線維性被膜の菲薄化部位での潰瘍性破綻・粥腫内出血および血栓形成を認めた. 細胞間基質は破綻部でいちじるしく減少していた. 労作性狭心症の原因とならぬ軽度ないし中等度の狭窄部位でも粥腫破綻により急激な冠閉塞をきたし得ることは, 梗塞予防対策を進める上で特に考慮する必要がある.
  • I.ヒト胎芽におけるLHRHニューロン発生と移動
    阿久津 聡
    1994 年 40 巻 1 号 p. 71-77
    発行日: 1994/05/23
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    近年, 黄体化ホルモン放出ホルモン (LHRH) 産生ニューロンは, 鼻の原基に由来し発生の進行と共に脳内に移動するという仮説が出されたが, ヒトの初期発生に関する報告はない. そこで人工妊娠中絶術により得られたヒトの胎芽を用いて, 免疫組織化学的にLHRH産生ニューロンの発生を調べた. 頭臀長14mmのステージでは, 鼻の部分にも脳内にもLHRH陽性ニューロンは認められない. 19mmになると, 嗅上皮とそこから出て脳に向かう嗅神経・終神経束に沿ってLHRH陽性ニューロンが移動しているのが認められ, 一部は脳内に入りこんでいた. さらに発生が進んで23mmのステージでは, 脳内のLHRH陽性ニューロンの数は増加し前部視床下部に達していたが, 嗅上皮のものは減少してほとんど見られなくなっていた. また, LHRH陽性ニューロンは胎仔型神経細胞接着因子 (NCAM-H) を強く発現していた. 以上より, ヒトにおいてもLHRH産生ニューロンは嗅上皮に由来し, 発生の進行と共に脳内に移動する可能性が強く示唆された. またニューロンの移動にNCAM-Hが関与していることが考えられた.
  • II.ニワトリ胚嗅板切除後のLHRHニューロン発生
    阿久津 聡
    1994 年 40 巻 1 号 p. 78-82
    発行日: 1994/05/23
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    視床下部ニューロンは間脳第三脳室上衣層より発生すると考えられているが, 最近黄体化ホルモン放出ホルモン (LHRH) 産生ニューロンは鼻の原基に由来し発生の進行とともに, 脳内に移動するという仮説が出された. 今回, この仮説を実験的に証明するために, ニワトリ胚の鼻の原基を切除した後のLHRHニューロンの発現を調べた. 鼻の原基である嗅板を完全に切除すると, 非切除側では正常発生と同様にLHRH陽性ニューロンは嗅上皮から嗅神経に沿って脳内に移動する像が観察されるのに対し, 切除側では脳内・脳外のどこにもLHRHニューロンは認められなかった. また, 嗅板の切除が不十分で嗅上皮の一部が残存した例では, LHRHニューロンが脳に到達しない嗅神経と残存した嗅上皮にとどまっているのが見られたが, 脳内には認められなかった. これらの結果から, LHRH産生ニューロンは鼻の原基より発生し, 発生の進行とともに嗅神経という誘導路に沿って脳内に移動する可能性が強く示唆された.
症例報告
  • 小林 滋, 稲吉 達矢, 坂本 一博, 榊原 宣, 山田 聰, 荒牧 長門
    1994 年 40 巻 1 号 p. 83-86
    発行日: 1994/05/23
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    早期大腸癌に対し, ポリペクトミー・粘膜切除 (EMR) など大腸内視鏡による治療は, 根治可能な治療法として確立されてきている. しかし, 早期であっても粘膜下層まで浸潤した癌ではリンパ節転移の可能性があり, 根治治療のため開腹して腸切除を追加する必要のある症例も多かった. 一方, 腹腔鏡下手術は胆嚢摘出術の普及に伴い, 消化器外科領域では侵襲の少ない手術としてさまざまな疾患に対し試みられている. われわれは, 早期癌に対して最小限の侵襲で, かつ根治性の得られる術式として粘膜下層まで浸潤した大腸早期癌に対し, 腹腔鏡下腸手術の適応があると考えている. 今回, 直腸早期癌と診断された33歳の女性に腹腔鏡を用いて, 直腸を切除し腹腔外へ摘出した後, 経肛門的に自動吻合器を挿入して, 腹腔内で腸管吻合を行う, いわゆる腹腔鏡下直腸切除術を行ったので, その手術手技を含め報告する.
抄録
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