順天堂医学
Online ISSN : 2188-2134
Print ISSN : 0022-6769
ISSN-L : 0022-6769
42 巻, 2 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
目次
Contents
特集 岡田・吉良・大塚 三教授定年退職記念講演会
  • --その歴史と現在--
    岡田 光太郎
    1996 年 42 巻 2 号 p. 162-169
    発行日: 1996/07/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    大学においては, 高度化する医療技術の発展に対応するためにカリキュラムの改善にせまられ, 一方では広い見識を持ち基礎学力を十分に身につけた学生の養成がますます望まれるようになっている. また, 経済の発展と科学技術の発達変化にともない高校教育も大幅に移り変わり, 医師の人材を供給する高校教育が変化している. このような状況の下で, 多くの医学部では教育課程を6年間一貫として行い, 一般教育と基礎教育・専門教育の融合を図ろうとしつつある. 医学教育において生物学を専門の基礎科目として位置づけられるのは, 一般教育としての曖昧さを避けるための方策であってはならない. 一般教育の理念・目標は重要であり, 今後一層充実した形で実現されなければならない. 医学部の生物学として自立的学習の能力を身につけ, 基本的学問についての理解力を発展させることを求めて, 自然史を軸とした生物学を提唱する. これは自然界のありのままの姿のなかに, 自然界の秩序ある構成を探ろうとするものである.
  • 吉良 枝郎
    1996 年 42 巻 2 号 p. 170-181
    発行日: 1996/07/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
  • 大塚 親哉
    1996 年 42 巻 2 号 p. 182-190
    発行日: 1996/07/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    終戦後間もない1947年から2年間, 第一次ベビーブームといわれた. 第二次ベビーブームは1971年からの3年間で, それ以降の出生数は減少の一途をたどり, 1995年の出生数は最盛期の4割強である119万人になってしまった. 小児科はその影響を受けることになる. 1959年からの大学院を含めれば37年間, 1963年, 助手として勤務開始以来33年間, ベビーブームから少子時代への変遷の中に身を置き, 教育・診療・研究の日々を過ごした. 診療実績・研究成果, 思い出はさまざまであるが, 勤務開始以来の33年間を, 1) 紛争のdecade 2) 粛々のdecade 3) 浦安のdecadeの3つに分け, 私の感想と共に回顧したいと思う.
原著
  • 王 偉
    1996 年 42 巻 2 号 p. 191-199
    発行日: 1996/07/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    ラット心臓に由来するクローン化細胞株H9c2の外向きK+電流の性質を, 未分化の筋芽細胞と分化した筋管細胞期においてホールセル・クランプ型のパッチクランプ法により特徴づけた. 500msの脱分極ステップパルスでK+電流を誘発した. 単核の筋芽細胞では速い上昇と遅い減衰を示し, 保持電位の脱分極によって不活性化される電位依存性外向きK+電流 (IKV) が活性化された. このIKVはテトラエチルアンモニウムによって抑制された (50%抑制濃度1.9mM). 筋管細胞では遅く上昇し, 再分極で遅い尾電流に伴われる別のK+電流が生じた. この遅いK+電流は, 無Ca2+タイロード液の潅流や細胞内への10mMEGTAの適用によって完全に消失することから, Ca2+活性化K+電流 (IKCa) と結論された. IKCaの阻害剤charybdotoxin (CTX) とapaminは, 最大上濃度の100nMで全体のIKaを各々単独で57.0と43.0%抑制し, 同時適用で完全な抑制をもたらした. IKVの性質とIKCaの発現は, クローン化されたH9c2細胞株が外向きK チャネルの性質に関して心筋よりも骨格筋に近いことを示した. IKCaチャネルの遺伝子発現は細胞の分化に伴い調節されていた.
  • 渡辺 晴子
    1996 年 42 巻 2 号 p. 200-206
    発行日: 1996/07/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    糸球体濾過障壁の微細構造を, 成体および生後発達期のラットにおいて, 低温脱水法を用いて観察した. 成体では, 内皮細胞の細胞質は扁平で, 多数の孔をもち, その孔に隔膜はなかった. 糸球体基底膜は, 1層の緻密板とその両側の透明板から構成されていた. 足細胞の足突起は, たがいに細隙膜で結ばれ, 緻密板との問は, 多数の結合線維によって結ばれていた. 足突起の細胞膜の細隙膜および結合線維につながる部分の直下には, 電子密度の高い裏うち構造が見られた. 生後発達期では, 浅層の糸球体を観察した. 生後5日では, 糸球体の濾過障壁の構造は未熟で, 内皮細胞には孔がなく, 糸球体基底膜は足細胞側と内皮細胞側に2枚の緻密板を含み, また足細胞は足突起を十分に形成していなかった. 15日ではほぼ完全に成熟型の濾過障壁に置きかわっていた. また糸球体の成長過程において糸球体基底膜の拡大装置と考えられる張り出し構造outpocketsは, 10日 15日 20日の糸球体で数が多かったが, 40日と60日のラットでは, いちじるしく数が減少した. また張り出し構造に柱状のものとループ状のものが観察できたが, ループ状のものの方が数が多かった.
  • --多細胞スフェロイドを用いた研究--
    楠 正恵, 中澤 詠子, 甲能 直幸
    1996 年 42 巻 2 号 p. 207-216
    発行日: 1996/07/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    シスプラチンと5-フルオロウラシルを併用する, いわゆるCF療法は臨床的に頭頸部扁平上皮癌に効果があるとの報告が多くみられる. 一方, 近年この2剤の投与法に対する再検討が行われ, その作用機序より少量連日投与法が効果が高く副作用が少ないことが報告されている. そこでわれわれは固形癌のin vitroモデルである多細胞スフェロイド (multicellular tumor spheroid;MTS) を用いてこの理論的な裏付けを確認する意味で基礎的研究を行った. MTSはヒト喉頭癌由来細胞株HEp-2を用いて作製した. この結果以下の知見を得た. 1) シスプラチンは作用時間を1時間から24時間に延長すると殺細胞効果の増強が得られた. 2) 5-FUは6時間から24時間・72時間と作用時間の増加に伴い時間依存的に殺細胞効果の増強が得られた. 3) 5-FUとシスプラチンの併用では5-FUの1μg/ml以上とシスプラチンの0.1μg/ml以上の濃度で相乗効果が認められた. MTSは固形癌の細胞特性と類似しているため頭頸部癌のin vitroにおける良い実験モデルであると思われた.
  • 高浜 浩輔, 森 大輔, 増村 年章, 河村 哲, 岩本 典彦, 一宮 洋介, 井上 令一
    1996 年 42 巻 2 号 p. 217-224
    発行日: 1996/07/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    近年, 身体疾患で入院中に精神症状が認められ, 精神科医がコンサルテーションやリエゾンを求められる機会がますます多くなっている. われわれは前回, 1986年4月から1989年3月までの3年間の順天堂大学医学部附属順天堂医院 (以下当院) における精神神経科 (以下当科) 兼科患者延べ91名の実態について調査し報告したが, 今回はその後の6年間 (1989年4月から1995年3月まで) の兼科患者延べ328名の実態について, 前回の結果と比較し検討した. 兼科患者数は前回調査時の年平均30.3名と比べ, 1994年度では72名と倍増し, 兼科依頼科は全診療科に亘っていた. また兼科患者の平均年齢は51.5歳と前回 (47.8歳) に比べ若干上昇した. 兼科依頼理由は〈不穏・興奮〉がもっとも多く, 「以前より精神神経科受診中」は大幅に減少していた. 診断別内訳は前回同様, せん妄がもっとも多く, またうつ病の増加が目立った. より具体的なリエゾン活動を明らかにするために, せん妄患者・臨死患者 (末期癌患者を含む) ・慢性疾痛患者, 自殺企図・念慮を示す患者への対応を取り上げた. 今回の結果は, 当院におけるコンサルテーション・リエゾン活動の重要性の高まりを示し, 一般科と当科のより積極的な連携の必要性が認められた.
  • 羽鳥 浩三, 近藤 智善
    1996 年 42 巻 2 号 p. 225-232
    発行日: 1996/07/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病早期診断の指標を求めて, L-dopaの吸収試験を施行した. 発症早期のパーキンソン病患者8例, ならびに年齢を一致させた健常成人7例を対象とした. 早朝空腹時にL-dopa 500mgを経口負荷し, 経時的に血中L-dopa, およびその代謝物である3-O-methyldopa, dopamine, dihydroxyphenylacetic acid, 3-methoxytyramine, homovanillic acid (HVA) を測定した. パーキンソン病患者においては, 対照に比し, L-dopaの初期ピーク濃度ならびに8時間までのarea under the curve (AUC) が有意に増大していた. また, 3-O-methyldopaのピーク濃度・AUCも有意に増大していた. 一方, dopamineからHVAへの代謝に関しては両群間に有意差は認められなかった. また同時に施行したアセトアミノフェンによる胃通過時間には, 両者の問で有意差は認められなかった. このことはパーキンソン病におけるL-dopaの血中ピーク増大は, L-dopaの代謝の遅れによるのではなく, 消化管からの吸収の相違によることを示唆する. 3-O-methyldopaの増大と共に, パーキンソン病においては, L-dopaの吸収・代謝に対照と比べて質的な差があることを示唆し, これがパーキンソン病早期診断の指標となる可能性があり, 更に検討予定である.
  • 森近 浩, 篠原 将郎, 鈴木 孝夫
    1996 年 42 巻 2 号 p. 233-239
    発行日: 1996/07/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    高齢化社会において胃切除既往人口の増加にかかわらず胃切除後の骨障害についての研究は少ない. 65歳以上の胃切除既往のある男性32例 (平均72.4歳) ・女性13例 (平均71歳) の計45例を対象にDIP (Digital image processing) 法を用いて骨塩量を測定し, 各年齢骨塩量と比較し, 胃切除後5年以内 (I), 5-10年 (II) と10年以上 (III) の3群にわけ, 胃切除後経過における骨塩量の変化について検討した. また骨塩量測定2週間以内の骨塩量減少例の愁訴についても検討した. 各年齢の骨塩量減少例は男性62.5%・女性69.2%であり, 経年的骨塩量減少例は, 男性I 52.5% II 50% III 76.9%, 女性I・III各60% II 100%で, 骨塩量減少例は各年齢層において胃切除既往症例に, また胃切除後経過年数の長期症例に多い. 骨塩量減少症例における愁訴については, 腰痛では男性・女性とも各71.4%, 四肢の筋肉痛;男性72.7%・女性71.4%, 四肢のこわばり感;男性75%・女性85.7%, 四肢のしびれ感;男性50%・女性83.3%で骨塩量減少例に愁訴が多くみられる. 胃切除既往の高齢者においては原発性骨粗鬆症以上に骨障害に対する配慮が必要である.
症例報告
総説
  • 射場 敏明, 八木 義弘
    1996 年 42 巻 2 号 p. 244-251
    発行日: 1996/07/30
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    敗血症性臓器不全は感染そのものによる侵襲とともに, 感染に対する宿主の過剰炎症反応によってもたらされることが明らかにされた. 臓器不全対策としては, 臓器障害の発生予測と, それにもとずく早期の治療開始が重要であるが, これには血管内皮障害の指標や凝固線溶状態の測定が有用である. これは上記の指標が, これまでの臓器単位の障害指標と異なり, 全身反応を反映していることと, 発生機序から考えて臓器障害発生前から早期に変動することなどによる. 血管内皮障害の指標としては, 重症化に伴いトロンボモジュリンやエンドセリン-1などの上昇がみられる. これらは臓器障害合併例と非合併例の間で障害発生前から血中濃度に差がみられ, 重症化の指標として有用であった. また, 敗血症症例では血管内皮障害によって組織因子の出現からはじまる外因系凝固が活性化されている. そして重症例では線溶能の相対的機能低下が加わり, 血管内腔の抗血栓能が低下する. このため凝固線溶状態の指標である, thrombin-anti-thrombin III complex, plasmin-α2 plasmin inhibitor complex, tissue plasminogen activator, plasminogen activator inhibitor 1の測定を行うことも臓器不全の予測に有用であった.
抄録
てがみ
順天堂医学原著論文投稿ガイドライン
順天堂医学投稿規程
編集後記
feedback
Top