順天堂医学
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43 巻, 3 号
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目次
Contents
特集 現代病:糖尿病・脂肪肝
  • -血清生化学ならびに画像診断-
    横井 幸男
    1997 年 43 巻 3 号 p. 358-368
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    脂肪肝とは, 中性脂肪が肝細胞内に過剰に蓄積した状態で, 組織学的には肝小葉の1/3以上に肝細胞の脂肪化を認めた場合を指す. 栄養過多 (肥満) ・アルコール・糖尿病によるものが大部分である. 男性では, 年齢が増すにつれ減少し, 逆に, 女性では増加する. 肥満度が増すと脂肪肝の合併頻度が高まるが, 脂肪肝症例のうち, 肥満 (>20%) は31.5%に過ぎず, 肥満の一症状ではない. 軽度-中等度のトランスアミナーゼ値の上昇, T-CHO値・T-G値・ChE値の上昇がみられる. 肥満・糖尿病性ではGPT>GOTで, 更に肥満ではChEの上昇が, アルコール性ではGPT<GOTで, γ-GTP上昇が特徴的である. 脂肪肝では高インスリン血症がみられ, BMIや中性脂肪値と正の相関を示し, 脂肪肝発症に関与することが示唆される. 特徴的な超音波所見が, 複数得られれば診断は確実. CTでは, 肝CT値/脾CT値比が0.85未満になれば診断は可能. MRIによる脂肪肝の描出能は低く, 一般的でない. 不規則 (まだら) 脂肪肝は, 病変の局在や形状に特徴があるが, 悪性腫瘍との鑑別が必要な場合には超音波下での吸引生検を要する.
  • 飯島 敏彦, 坂本 静男, 金子 和弘
    1997 年 43 巻 3 号 p. 369-376
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    生活様式の変化と診断技術の進歩に伴い脂肪肝は増加・重症化の傾向を示している. 成人病検診によると脂肪肝の頻度は10-20%程度と考えられる. その成因として, 肥満型, アルコール性, 糖尿病性脂肪肝が大部分である. 脂肪肝の原因として, 主な因子として肥満度, アルコール摂取, 年齢があるが, 肥満度が最も脂肪肝と関連している. 性別では男性が女性に比べて4-5倍と高率である. 原因として, 近年, 男性は肥満傾向にあるが, 女性は50歳代までは痩身傾向にあること, アルコール摂取量のちがいが大きい. 年齢別では, 男性は30歳代から, 女性は50歳代から急激に増加する. 食事と運動療法による過体重の是正が脂肪肝の著明な改善をもたらすが, 肝機能成績が正常化しても組織学的には脂肪肝が残っている症例もあり, 食事・運動療法の継続が必要である. 脂肪肝自体は, アルコールやウイルスの関与がない限り肝硬変へ進展することはほとんどない. しかし, 「脂肪肝は他の成人病との合併や発生の第一シグナル」であることを認識し, 放置せず積極的な生活習性の変容に目を向けるべきである.
  • 坂本 静男, 田中 健毅, 中嶋 佳子, 田中 洋子, 飯島 敏彦
    1997 年 43 巻 3 号 p. 377-385
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    対象は, 脂質代謝異常や糖質代謝異常を有する患者32名であった. すべての対象は, 呼気ガス分析を含めた運動負荷試験を2回受けた. そして最大脂質燃焼量時心拍数とカルボーネンの式より求めた運動時目標心拍数の両者を考慮した運動強度が求められた. その運動強度を含めた運動処方が, すべての対象に作成され, 説明された. 運動トレーニングを実践した20名は運動実施群, 運動を実践しなかった13名は運動未実施群と2群に分けた. そして体組成・血清脂質・血清酵素・血糖・呼気ガスデータなどの測定を, 2回の運動負荷試験の時期に一致させて行った. これらの値の変化を各群内で, これらの値の改善度を2群間で比較検討した. 総コレステロール・HDL-コレステロール・動脈硬化指数・γ-GTP・最大脂質燃焼量などの多くの測定項目で, 好ましい変化が運動実施群で認められ, 運動未実施群では認められなかった. 以上より, 最大脂質燃焼量を考慮した運動強度で運動トレーニングを実践することは, 脂質代謝異常に有益な効果をもたらし, また脂肪肝に対しても効果のあることが示唆された.
  • 島田 美貴, 富野 康日己
    1997 年 43 巻 3 号 p. 386-392
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    近年, 糖尿病性腎症から, 慢性腎不全へ進行する患者数は増加の一途をたどり, 新規透析導入患者の原因疾患第2位を占めるに至り, 社会的にも大きな問題となっている. 腎死に至った糖尿病性腎症例の生命予後は極めて不良であることから, 糖尿病性腎症の診断をできるだけ早期につけ, 腎症の進展予防, 更には, 発症予防を図ることが重要である. 本症の主な病態は, 蛋白尿の持続・腎機能の低下・高血圧の出現である. 本症の治療の基本は, (1) 厳格な血糖コントロール, (2) 良好な血圧コントロール, (3) 食事療法であり, より早期から腎機能の低下を予防することにある.
  • 早川 むつ子
    1997 年 43 巻 3 号 p. 393-401
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    糖尿病網膜症 (網膜症) は糖尿病に特有な細小血管症の一つで, わが国の後天性失明原因の第一位であり, その対策は急務である. 網膜症は単純から増殖前, さらに増殖性へと進行し, 主要な病態は, 網膜毛細血管壁の異常に血管の閉塞が加わり, 網膜の虚血によって新生血管が出現することである. 網膜症は高血糖による非酵素的蛋白糖化, ポリオール代謝経路の充進, 細胞内酸化還元状態の変化, プロテインキナーゼC活性化, 酸化的ストレス亢進などが, 複雑に絡み合った状態で発症・進展すると考えられている. 中でも非酵素的蛋白糖化の後期終末産物 (AGE) が, 血管内皮増殖因子を介して, 病態の進展に大きな役割を果たしていることが解ってきた. AGEの抑制には糖尿病発症後早期からの高血糖の改善とその維持が必要であり, 持続性の厳重な血糖の是正が網膜症の発症・進展の抑制をもたらすことを, インスリン依存型糖尿病を対象とした調査 (DCCT) が裏付けた. また急速な血糖是正後に網膜症の悪化が見られることも示された. 血糖是正で網膜症の改善が期待できるのは単純網膜症までであり, 進行した網膜症では, 光凝固治療や硝子体手術が適応となる. DCCTの結果から, わが国に多い非インスリン依存型糖尿病患者にも厳重な血糖是正が望ましい. しかし, 糖尿病歴が不明な患者や長期間コントロールが不良な患者では, 血糖の急激な是正後の網膜症の悪化で回復困難な高度障害に陥らないよう, 眼科医と内科医の綿密な連携が特に必要である.
  • --糖のながれからみた治療の理論と実際--
    河盛 隆造
    1997 年 43 巻 3 号 p. 402-409
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者数が激増しているのみならず, 進展した糖尿病性血管合併症を有する患者が増えていることが, 大きな問題である. 未だ血管合併症が発症していない, あるいは軽微である患者において, 決して血管合併症を発症・進展させないことこそがこれからの臨床糖尿病学であろう. いま, 一滴の血液が, 短期的・長期的な血糖管理状況を詳しく示してくれる. 血管合併症の進展度を知る多くの臨床的指標がある, さらに作用機序の異なった種々の薬物を手にしていることを勘案すれば, ほぼ全ての糖尿病患者において, 優れた血糖管理を維持しうる状況に私どもはいる, と考えるべきであろう.
原著
  • 鈴木 祐介
    1997 年 43 巻 3 号 p. 410-418
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    IgA腎症におけるIgAやIgA免疫複合体の役割を解析する目的で, ヒト培養メサンギウム細胞 (MC) のFcαRに着目し, 検討した. RT-PCRおよびサザンプロッティング法にて, MCのFcαR遺伝子の発現を確認した. 2種類の異なる転写産物を確認し, その塩基配列を決定した. 約900bpの主産物の塩基配列は, 既に報告されているものと完全に一致していた. 一方, 約600bpの産物は, 細胞外第2ドメインに対応するExon2 (288bp) が完全に欠失しており, MCにおいてalternative splicing formが存在することが明らかになった. また, われわれが作製した, IgAの結合と競合するマウス抗ヒトFcαRモノクローナル抗体でMCを刺激したところ, FcαR mRNA発現が増強されることを確認した. 今回の検討では, MCにおけるFcRのシグナル伝達分子であるFcRγ鎖の遺伝子発現も確認された. さらに免疫沈降法により, 高濃度熱凝集IgA刺激下において, MC上でのFcαRとFcRγ鎖の分子的会合をはじめて証明した. 以上の結果より, 多量体のIgAもしくはIgA免疫複合体は, IgAそのものの分子的構造に関わらず, FcRγ鎖と会合したFcαRを介して, MCを直接的に活性化しうることが示唆された.
  • 飯島 克順
    1997 年 43 巻 3 号 p. 419-425
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    目的: 胃粘膜損傷の修復過程における各種温度の細胞の遊走能と増殖能の役割を温度感受性細胞を用いたモデルより検討した. 対象: SV40のT抗原遺伝子を遺伝子導入したtransgenic mouseの胃粘膜細胞を株化したGSM06を用いた. 方法: GSM06細胞をDaigo's T培地で37℃, 5%CO2環境下で72時間培養しconfluentなcell sheetを作製した. 既報の方法に従い人工的損傷作製後, 異なる温度環境下で培養を行った. さらに, 同一の人工的損傷を用いて対照群 (33℃), 培養12時間後に37℃に上昇させた群, 同様に39℃に上昇させた群に分けて温度変化の影響を検討した. 評価方法と成績: 損傷修復能の評価は, 位相差顕微鏡下に損傷の修復過程を12時間ごとに48時間にわたり記録し, 損傷部面積を画像解析装置を用いて計測した. 細胞増殖能はBrdUを用いた免疫組織化学的手法に従って, BrdU陽性率を算定して解析した. 各温度において損傷は時間経過とともに修復したが, 培養温度において修復速度には有意差が認められた. 33℃が最も遅く, 培養温度を上昇させるに従い修復速度は増したが, 41℃では, ほぼ37℃と同じ修復過程を示した. 培養経過中の温度変化に対する反応を観察した群では33℃から37℃上昇群, および33℃から39℃上昇群とも上昇後に修復速度の増加が認められた. BrdU染色では, 損傷修復にともなってその陽性率は高値を示した. しかし, 培養時間の経過とともに増殖能には有意差が認められ, 33℃群は37℃群・39℃群・41℃群に比して, 36時間・48時間で有意に高かった. 結論: 正常胃粘膜細胞と同様にGSM06細胞でも損傷修復能は細胞遊走と増殖によって成立していた. しかし, この細胞の遊走, 増殖能は培養温度によりいちじるしく異なり, 損傷修復には33℃環境下では増殖が大きな役割をはたし, 39℃環境下では遊走が大きな役割をはたしていた.
  • 伊藤 喜章, 野沢 雅彦
    1997 年 43 巻 3 号 p. 426-436
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    本邦における変形性股関節症の大部分は先天性股関節脱臼, あるいは股関節形成不全による二次性のものである. 変性のいちじるしくない症例に対しては本邦において開発された寛骨臼回転骨切り術が広く行われている. 本研究では, 当教室において1986-1996年9月まで行われた寛骨臼回転骨切り術220例のうち5年以上経過した53例60関節の臨床成績, およびX線学的な評価, 特に骨切り部の骨癒合の経過およびリモデリングを中心に調査した. 手術は全例, 田川・二ノ宮の方法に準じ, 全例冷凍自己血を用いて行った. 臨床的には股関節痛の著明な改善とX線学的には関節適合性の改善, 良好な骨切り部の骨癒合と移植骨のリモデリングを得ることができた. この骨癒合および, リモデリングの経過とそれに影響を与える因子について解析し, 特に年齢とCenter edge角を考慮に入れて術後療法を決定すべきことを明らかにした.
  • 堀越 健太郎, 小林 弘幸
    1997 年 43 巻 3 号 p. 437-443
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    目的: 外来フォロー中の胆道閉鎖症 (以下, 本症) 術後の患者の線維化マーカー (N-terminal peptide of Type III procollagen (P-III-P) とType IV collagen (Type IV-C) ) の血清レベルについて, 本症患者における予後との相関について検討した. 対象: 本症術後の患者27例を血液生化学検査によりI群 (経過良好群n=11) ・II群 (中間群n=9) ・III群 (経過不良群n=7) に分け, 正常対照群 (n=15) と血清P-III-P・TypeIV-C値を比較検討した. 方法: 患者および正常対照者の血清をP-III-PはRIA-kitを用い, またTypeIV-CはEIA-kitを用いて測定した. 成績: 血清P-III-P値は本症患者では, I群: 1.027±0.212u/ml・II群: 1.356±0.213U/ml・III群: 1.929±0.642U/mlであり, II群・III群はI群・正常対照群 (1.023±0.243U/ml) と比較して有意 (p<0.01) に高値であった. III群ではII群と比較しても有意 (p<0.05) に高値を示した. 血清TypeIV-C値は本症患者では, I群: 170.91±48.05ng・/ml・II群: 228.89±47.29ng/ml・III群: 365.71±68.52ng/mlであり, II群 (p<0.05) ・III群 (p<0.01) はI群・正常対照群 (173.73±56.78ng/ml) と比較して高値であった. 特に, III群はII群と比較しても有意 (p<0.01) に高値を示した. 結論: 血清P-III-P値および血清TypeIV-C値はI群<II群<III群の順に高値を示し, 他の肝機能検査の障害程度と相関し, 本症の経過を予測する指標として有用であることが示唆された.
  • 佐藤 秀紀
    1997 年 43 巻 3 号 p. 444-455
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    目的: 本調査研究は, 高齢者に対する在宅福祉情報を効率的で効果的に提供するための指針を得ることをねらいとして, 在宅高齢者を対象に, 高齢者在宅福祉事業36項目の認知数と彼らの人口学的・社会構造的要因等との関連性を検討した. 対象と方法: 調査対象は, 層化多段無作為抽出法により, 65歳以上の在宅高齢者2,200名を北海道の5地域から抽出した. 有効回答は1,611名 (平均年齢は72.8歳) から得られた (性別構成は男性57.5%・女性42.5%). 調査項目は, 性別・年齢・教育歴・家族形態・所得・地域特性・健康状態 (自覚的健康感・医療機関への受療状況) ・高齢者在宅福祉事業に関する認知の有無とした. 統計解析には, 記述統計・多元配置分散分析および多重分類分析を用いた. 結果: 1人当たりの前記福祉事業に対する認知数の平均は15.5項目, 標準偏差は9.92であった. また, 個々人の前記認知数の違いは統計学的には年齢・教育歴・所得・地域特性・自覚的健康感と関連していることが示された. 結論: 高齢者は没個性的で受動的な情報行動とは異なり, 人口学的・社会構造的, および健康的要因の特性に基づく情報行動をとっているものと推察された. 従って, 高齢者に対する今後の情報サービスにおいては, 従来の周知型のみならず個々人の特性に即した選択肢提示型の周知内容が構成されなければならないものと言えよう.
  • 須田 均
    1997 年 43 巻 3 号 p. 456-463
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    骨端線閉鎖前の雑種幼若犬を用い, 移植骨の横径増大における血行の役割りについて, 4群に分けて実験を行い, X線学的および組織学的に比較検討した. 4群は, I群;骨膜血行温存・骨髄血行遮断・骨膜温存群, II群;骨膜血行遮断・骨髄血行温存・骨膜温存群, III群;骨膜・骨髄両血行遮断, 骨膜温存群, IV群;骨膜・骨髄両血行遮断, 骨膜除去群とした. I群では術後約2週目ごろより横径増大が出現し, 5-6週目で最大となった. 骨癒合は8-10週で完成した. II群ではX線上明らかな横径増大を認めたものはなく, 骨癒合に関してはI群とほとんど差がなかった. III群では3週目ごろより一部に仮骨形成を認めるものもあったが, 明らかな横径増大とはいいがたく, 骨癒合はI・II群と比べ遅かった. IV群では, 2週目ごろより骨吸収が始まり, 5-6週でほとんど吸収された. 以上の結果により, 血管柄付骨移植における移植骨の横径増大には骨膜血行が重要な役割を果たしていると考えられた.
症例報告
報告
  • 四宮 滋子, 井上 令一
    1997 年 43 巻 3 号 p. 472-476
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    外来通院中の成人患者で, 十分量の抗てんかん薬服用にもかかわらず月に1回以上の発作があり, 二次性全般発作または複雑部分発作の前に明瞭な単純部分発作が先行する5例を対象としてclonazepam (CZP) の間欠的付加使用を試みた. 患者に単純部分発作に気付いた直後にCZP 0.5mgまたは2mg錠を服用するように指導した. その結果, 発作頻度は全例において100-50%の範囲で減少した. 側頭葉内側部の焦点が示唆される例では発作の減少率が高く, 一方, 器質的変化が強く外側側頭葉の障害が優位なものでは発作減少率が低かった. このような間欠的使用では特記すべき副作用や耐性は認められなかった. CZPの作用機序として, その抗けいれん作用に加えて強力な抗不安作用の関与が示唆された.
抄録
てがみ
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