順天堂医学
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45 巻, 4 号
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Contents
目次
特集 肝胆膵疾患 ―診断と治療の最先端―
  • --MRCP (MR Cholangiopancreatography) を中心に--
    崔 仁換, 有山 嚢, 須山 正文, 窪川 良広, 山中 晃一郎, 中野 一永
    2000 年 45 巻 4 号 p. 468-473
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    MRCPは非侵襲的に膵胆管像を描出できる画期的な画像診断法であり, 診断的ERCPに代わる新たな検査法として有用性を発揮している. MRCPは, 閉塞部より上流の膵胆道や炎症に伴う滲出液の広がりなど, ERCPでは得られない多くの情報を提供する. そのため, 胆膵疾患に対するより深い理解と, 詳細な病態の把握にもとづく診断および治療計画を可能にし, ERCPによる合併症の減少にも貢献する. また, 外来で簡便かつ安全に施行できるため, 胆膵疾患の早期診断や経過観察にも有用性が高い. また, MRI断層像と組み合わせることにより, さらに精密な診断が可能となる. 今後, 空間分解能の向上とともにますます発展, 普及するものと考えられる.
  • 須山 正文, 有山 嚢, 窪川 良広, 崔 仁煥, 山中 晃一郎, 中野 一永
    2000 年 45 巻 4 号 p. 474-478
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌1460例を臨床病期別および治療法別に分類し, 生存率を比較検討した. CS1でTAEは3年28%・5年11%, TAE+PEITは83%と32%, SMANCS動注療法は3年および5年とも86%, PEITは3年85%・5年53%であった. TAEと他の治療法には生存率に有意の差がみられた. しかし, TAEを行っている症例の多くは腫瘍個数および腫瘍径が他の治療法群と比し大きく, 比較とならないと考えられた. 腫瘍径が3cm以下で腫瘍個数が3個までの症例にはPEITあるいはSMANCSが有効と考えられた.
  • 児島 邦明, 佐藤 泰然, 森岡 研介, 松本 浩次, 須郷 広之, 藤澤 稔, 行方 浩二, 太田 秀二郎, 高森 繁, 深沢 正樹, 別 ...
    2000 年 45 巻 4 号 p. 479-485
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    教室では1979年以来530例の肝細胞癌入院症例を経験し, 切除例は213例40%である. 肝癌切除後の残肝再発は, 肝硬変症例における多中心性発生例も含め高率であり, われわれの成績でも耐術例の5年累積生存率は51%であるが, 無再発生存率は27%と開きがある. 肝癌の治療法の選択に当たっては, できるだけ少ない侵襲で, できるだけ長期生存の得られる治療法が選択されることが望ましく, 肝予備能や腫瘍進展度に応じて, 肝切除, PEIT・MCT・TAEなどの使い分けが重要である. 手術リスクの少ない臨床病期Iのような肝機能良好例においては, 肝切除は確実な局所コントロールと長期予後が期待でき, その意義は大きいものと考える. しかし一方で, 臨床病期II・IIIの多くの肝硬変症例では, 長期生存の条件は治療法よりむしろ肝予備能や腫瘍進展度に大きく依存しており, QOLを考慮した治療法選択が重要である. 特に小肝癌の治療方針はControversyであり, 患者とその家族に十分なinformed consentを行い決定することが重要である.
  • 窪川 良廣, 有山 襄, 須山 正文, 崔 仁換, 山中 晃一郎, 中野 一永
    2000 年 45 巻 4 号 p. 486-496
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    胆石合併急性胆嚢炎50例・各種胆嚢隆起性病変204例について検討した. 急性胆嚢炎で緊急手術を行った例は, 症状が強く炎症反応が高い例・抗生剤の無効な例・腹膜刺激徴候を有する例・肝膿瘍合併例・胆嚢穿孔例であった. 27例には症状の消失後, 待機的手術を行った. 基礎疾患を有する例, 手術を拒否した例13例は手術を施行せず, 抗生剤を投与し, 抗生剤の無効であった3例にPTGBDを行い, 症状は消失した. 急性胆嚢炎において, 血液生化学検査所見では炎症反応が重症度と相関し, USでは全例に急性胆嚢炎の所見がみられ, 急性胆嚢炎の診断に有用であった. 急性胆嚢炎は基礎疾患がなければ手術の適応となるが, 保存的治療から緊急手術, PTGBDへ踏み切る時期は, 抗生剤の無効な例では2日から遅くても3日以内と考えられた. 胆嚢癌に胆嚢結石の合併が60.6%にみられ, 胆嚢結石の例は癌の存在にも考慮すべきである. 胆嚢隆起性病変切除例の内訳はコレステロールポリープ87例・腺筋腫症 (localized type) 24例・炎症性ポリープ4例・過形成ポリープ6例・腺腫12例・早期癌21例・進行癌50例である. コレステロールポリープは88.5%が10mm以下で, 大きな病変ほど癌の比率が高くなった. コレステロールポリープのEUSによる正診率は78.6%であった. 腺筋腫症のEUSによる診断率は57.9%でlocalized typeの例は癌との鑑別が困難な例が多く, 腺腫では均一な高エコーの例が特徴的であった. 胆嚢癌で存在診断ができた例では全例術前に癌と診断した. コレステロールポリープと診断できない例, 10mm以上の病変では癌の可能性を考慮し, 精査・手術を検討する必要がある.
  • 深沢 正樹, 森岡 研介, 織畑 剛太郎, 太田 秀二郎, 大橋 薫, 児島 邦明, 別府 倫兄, 二川 俊二
    2000 年 45 巻 4 号 p. 497-510
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    門脈圧充進症の最も重篤な疾患である食道・胃静脈瘤の治療法について, その変遷と現在行われている各種治療法の特徴について述べた. 門脈圧元進症は基礎に肝硬変をはじめとする多くの疾患があり, 種々の程度の肝1能障害や複雑な血行動態を有することから, その治療には様々な困難が伴う. このため1877年Eckの実験的門脈下大静脈端側吻合が考案され, 1950年代前半にこれが臨床応用されて以来様々な試みがなされた. まず門脈下大静脈端側吻合についで門脈下大静脈側々吻合, 近位脾腎静脈吻合などのいわゆるmajor shuntが開発されたが, 重篤な合併症の発生によって, その後遠位脾腎静脈短絡, 左胃静脈下大静脈吻合などのselective shuntと, 経胸食道離断術, 胃上部切除術, Hassab手術などの直達手術へと移行した. 1970年代を中心にこれらの手術は一応納得しうる成績を挙げていたが, 外科手術は静脈瘤への効果は確実であるが, 肝硬変症が80%以上を占める門脈圧亢進症において, 侵襲の大きさが課題であり, 侵襲の少ない非観血的治療の開発が求められていた. そして1974年の経皮経肝的門脈側副血行路栓塞術 (PT0) を皮切りに, interventional radiologyとしてバルーン下逆行性経静脈的塞栓術 (B-RT0), 経頚静脈的肝内門脈静脈短絡術 (TIP) などが開発され, 一方では1978年本邦に導入された内視鏡的硬化療法 (EIS) はその低侵襲性と簡便性によって急速に普及し, さらに1992年新たに内視鏡的静脈瘤結紮術 (EVL) が開発され, 各々良好な成績が報告されている. しかし症例ごとに複雑多岐な病態を有する本症の治療に当たっては, 1種類の治療法で全ての症例を網羅することは不可能であり, 肝機能や門脈血行動態などに応じた適切な治療法を, より慎重に選択することが必要である. このためには現在行われている各種治療法や, それらの併用療法などについての利害得失を十分に理解することが肝要と考え報告した.
  • 川崎 誠治
    2000 年 45 巻 4 号 p. 511-517
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    1997年10月の脳死移植法の施行以来, わが国での脳死肝移植はようやく2例が実施されたのみである. 一方, 生体肝移植は, 1989年以来800例以上が施行され, 他のどの国よりも盛んに行われている. 適応疾患も胆道閉鎖症を中心とした慢性疾患だけでなく, 急性疾患である劇症肝炎などにも拡がった. また小児患者だけではなく, 移植肝容積が小さいという問題を乗り越えて, 成人患者へも積極的に施行されるようになってきている. このような展開のなかで, 中肝静脈を含む左葉グラフト, 左尾状葉を含む左葉グラフト, 右葉グラフトを用いた移植も行われつつあり, 患者本来の肝臓を一部残す補助肝移植も実施されている. 米国では年間約4000例の脳死肝移植が施行されているが, 患者数は臓器提供数よりもはるかに多く臓器不足は深刻である. この臓器不足解消の方法として生体肝移植, 分割肝移植はとらえられているが, 一方, 適応の制限についても方策がねられているのが現状である. わが国での生体肝移植と脳死肝移植の現況と展望を, 米国での肝移植の現状と比較しつつ概説した.
第4回都民公開講座「気管支喘息:最新の治療とその背景」
  • --気管支喘息の病態生理--
    瀬山 邦明
    2000 年 45 巻 4 号 p. 521-523
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    気管支喘息患者の気道は, 種々のアレルゲン・感冒・大気汚染・気圧や気候の変化・運動・心理的ストレス, などの様々な外的・内的刺激に対して過敏であり (気道過敏性), この過敏性は喘息特有の気道炎症によることが明らかになってきた. 気道炎症と気道過敏性は悪循環をなして喘息発作を慢性化させる. 気道炎症により, 気管支平滑筋細胞の収縮, 気道壁の浮腫, 気道分泌の亢進と貯留などの病理学的変化による気流制限が生じる. 好酸球・肥満細胞・T細胞などの炎症細胞と気道構成細胞が放出するサイトカインやメディエーターにより, 気道炎症は維持される.
  • --気管支喘息の診断およびその鑑別について--
    植木 純
    2000 年 45 巻 4 号 p. 524-528
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    近年, 気管支喘息は, 気道の慢性炎症性疾患と認識され, その概念は大きく変化した. 臨床的には発作性の呼吸困難・喘鳴・咳の症状と, 種々に変化する気道閉塞による気流制限を示す. ただし, 長期罹患成人例では気道のリモデリングにより気流制限の可逆性の低下が見られることがある. 気道過敏性も重要な病態生理学的特徴の一つである. 気道が過敏なほど喘息症状がいちじるしい傾向があり, 症状がなくても気道過敏性が存在する. しかし, これらの臨床症状・所見は気管支喘息に特異的なものではない. 典型的な発作を繰り返す場合は診断は容易であるが, 発症初期で症状が軽度な時は, 診断が困難なことが少なくない. また, 高齢者ではCOPD (chronic obstructive pulmonary disease) との鑑別が問題となる. 診断の遅れは治療, 管理の遅れの原因となり, 慢性化・重症化を引き起こす可能性がある.
  • 村松 正嗣
    2000 年 45 巻 4 号 p. 529-535
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    気管支喘息が気道の慢性炎症性疾患としてその病態をとらえられるようになった最近の背景より, 抗炎症薬は現在その治療の中心に位置づけられるようになった. 抗喘息薬は長期管理のために継続的に使用する薬剤としての長期管理薬 (コントローラー) と喘息発作治療のために短期的に使用する薬剤としての発作治療薬 (レリーバー) の2種類に大別されている. 長期管理薬の第一選択薬は, 強力な抗炎症作用を持ち全身的副作用の少ない吸入ステロイド薬である. わが国の喘息治療ガイドラインでは重症度にあわせ吸入ステロイド量を増減することを基本コンセプトとしており, 状況により気管支拡張薬や抗アレルギー薬の併用を勧めている. また急性悪化時の短期ステロイド内服は治療の成功には不可欠のテクニックである. さらに自覚症状のみに頼らずピークフローモニタリングを中心とした自己管理を的確に行うことを患者に徹底させることで, より安全で速やかな喘息のコントロールが可能になる.
  • 永田 智
    2000 年 45 巻 4 号 p. 536-542
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    身体的・精神的・免疫学的に成熟過程にある小児の気管支喘息は, 臨床像・アレルゲン・鑑別疾患・臨床経過・発作のメカニズムなどの各面で, 成人とは異なる様々な特徴を有している. 治療は, 原因療法と薬物療法, 運動・心理療法に分けられる. 原因療法は, 生活環境整備が主体で, 中でもダニ対策が重要である. 薬物療法は, 発作に対する治療と予防的薬物療法に分けられるが, 特に後者では, 抗アレルギー剤・徐放性テオフィリン薬・吸入ステロイド薬による持続的な気道炎症の抑制が図られ, 発作時にβ刺激剤の投与が行われる. 最近では, 小児でも中等症の喘息に対して吸入ステロイド薬が導入され, 成長に対する影響の少ないfluticasone propionateの, 今後の小児喘息治療への適応が期待されている. 運動誘発性喘息の発症には, 過呼吸や脂質メディエーター等が関与しているといわれており, 適切な運動指導により予防できることが多い. 小児喘息のoutgrowを促すためには, 患児の成長・発達を促しながら, 適切なアレルゲンの回避と的確な予防薬治療が必要と考えられる.
  • 高橋 淳一郎
    2000 年 45 巻 4 号 p. 543-545
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    運動が身体に良いと言うことは, 知られているが, 喘息患者は発作に対する不安から, 身体活動を制限し, 日常においても消極的になりがちである. 運動中は酸素摂取量が増加し, 多量の空気が気道を通ることにより, 喉が渇き, 痰が出しにくい状態が喘息の発作を引き起こす. 陸上では, 乾いた空気下で運動しなければならないが, プールは, 湿度が高く, 水しぶきもあり湿った空気を吸いながら運動することができるため, 喉の渇きが起こりにくい. また, 水泳の呼吸は, 水中で息を止め, 水上に顔が出た際一気に呼吸するというパターンである. そのパターンは, 呼吸筋のトレーニングや, 肺活量の増加などの効果をもたらす. したがって, 水泳を続けることにより, 喘息に打ち勝つ身体ができ, その結果今までにない積極性が芽生えるはずである.
  • 深澤 伸慈
    2000 年 45 巻 4 号 p. 546-549
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
  • 笠原 剛敏
    2000 年 45 巻 4 号 p. 550-553
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    1. 喘息の呼吸リハビリテーションを見ると, 本邦では未だ普及が遅れ, 標準的なプログラムの確立はされていない. しかし小児喘息における運動療法は治療の一貫として位置づけられ, 運動嫌いによる運動・体力低下を防ぐのに有益とされている. 今回, 小児および成人喘息で見られる呼吸障害・喘息発作に対処するため, 家庭でできるリハビリテーションについて報告する. 2. 家庭でできるリハビリテーションとして, 腹式呼吸は呼吸効率の改善を目的に, 排痰法は痰の累積を防ぐことを目的に, そして柔軟体操は呼吸運動に必要な柔軟性を目的に行い, それぞれの指導内容, 注意点を紹介する. 3. 喘息の呼吸リハビリテーションの重要なポイントは患者の自己管理能力の向上である. そのため患者および援助者が具体的な対処・援助法を理解し, 呼吸困難時・パニック時に対処可能な状態か, いなかを判断できる能力が必要となる.
原著
  • -タリウム心筋シンチグラム, 冠動脈造影所見との対比-
    宮野 祥子, 藤岡 治人, 住吉 正孝
    2000 年 45 巻 4 号 p. 554-562
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 心室中隔 (IVS) 領域の心筋梗塞 (MI) における標準12誘導心電図 (ECG) の診断精度を心筋シンチグラムを用いて検討, さらに冠動脈造影 (CAG) 上の中隔枝との関係についても検討した. 対象: タリウム (Tl) 心筋シンチグラムを行い得た前壁中隔心筋梗塞115例 (男100例, 平均60歳). 106例でCAG施行. 方法: Tl心筋シンチグラムから得られたSPECT像のextent mapで, MIの領域がIVSに占める割合を求め欠損面積率 (%DA) とし, %DAが50%以上の場合をA, 同様に70%以上・90%以上の場合を各々B, Cとし, それぞれの場合についてECG指標 (QV1の有無・QV1V2の有無・qV6の有無) との関係を検討した. さらにCAG施行106例で左冠動脈前下行枝 (LAD) 責任病変部位 (AHA分類のSegment6かSegment7) 診断に対するECG指標の有用性も検討した. 結果: (1) 各ECG指標陽性群は陰性群と比べ%DAが有意に大であった (p値は各々0.0002・0.0008・0.0008). (2) A, Bの場合については上記ECG指標いずれの感度も65%以下と低値であったが, 特異度はQV1V2 (+) を選択した場合に, Aにおいて76%と良好. Cの場合については, 感度の面ではQV1 (+) とqV6 (-) が各々79%・75%と良好であったが, 特異度の面では各々58%・45%と低値. これに対しQV1V2 (十) は感度, 特異度共に比較的良好であった (各々67%・68%). (3) ECG指標QV1・qV6の陽性群は陰性群と比べてSegment6に責任病変を持つ例が有意に多かった (p値は各々0.034・0.001). 特にSegment6を示唆する所見としてqV6 (-) の感度が67%と最も高値, 特異度も65%と比較的良好. これに対しQV1V2 (+) は特異度67%と最も高値であったが感度は49%と不良. 結論: QV1 (+) ・qV6 (-) は, T1シンチグラムでIVSの広範な梗塞を伴う例に限り感度が高かった. 一方, 特異度はQVIV2 (十) が良好であった. またqV6 (-) は梗塞責任病変がLAD近位部にあることを最も示唆する所見であった.
  • 木下 真弓, 中島 滋夫, 須郷 亜紀子, 島本 透子, 杢野 浩司, 山口 洋
    2000 年 45 巻 4 号 p. 563-574
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: β1刺激作用を有するドブタミン (DB) を用いた負荷心エコー法が生存心筋の検出法として注目されているが, DB用量の増加により外的心仕事量が増加し生存心筋の検出感度が低下するという問題点がある. これに対し陽性変力作用と減負荷効果を合わせもつphosphodiesteraseIII阻害剤のオルプリノン (OL) をDBと併用した負荷心エコーについて検討した. 方法: 虚血性心疾患29例, 健常人4例の計33例に対し, DB2, 5, 10μg/kg/min=γとDB10γにOL2γを併用した4段階の負荷を行った. 各段階で心エコー画像により30分割した左室壁の運動を評価し, 正常収縮4点, 低収縮3点, 重度低収縮2点, 無収縮1点にスコア化した. また, 各段階の上腕動脈圧波形から求めた収縮末期圧と一回心拍出量より外的心仕事量を算出した. 結果: 負荷前より壁運動異常を認めた22人の個人ごとの平均壁運動スコアの変化は, DB10γに比べOL2γの併用によりさらに有意な増加を認めた (p=0.003). また壁運動異常を認めた全232分画の平均壁運動スコアも各段階で有意に上昇 (p<0.0001) したが, OL2γの併用によりさらに有意な増加を認めた (P<0.0001). 壁運動異常別では, DB10γからOL2γの併用においては重度低収縮分画 (p=0.03) と無収縮分画 (p<0.0001) の有意なスコアの増加を認めた. 外的心仕事量は負荷前に比べDB10γで有意に増加 (p<0.01) したが, OL2γの併用によりDB10γよりも有意に低下した (p<0.01). 結論: DBにOLを追加併用した負荷心エコーで, 各個人ごとまたは全壁運動異常の平均壁運動スコアはDB単独に比べ有意な増加を示したが, 逆に外的心仕事量は有意に低下した. この結果, 低用量DBにOLの併用により生存心筋の検出感度が改善し新しい診断法として臨床応用可能と考えられた.
  • 柘植 俊直
    2000 年 45 巻 4 号 p. 575-583
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 免疫複合体が炎症を惹起する際, Fcレセプター (FcR) がその鍵を握っていることが明らかにされ, IgA腎症の場合にはFcαRの関与が注目されている. しかし, 実際にFcαRがメサンギウム細胞においてどのような機能を担っているのかは分かっていない. そこで, 培養メサンギウム細胞にFcαRおよびFcRγ鎖遺伝子を導入し, シグナル伝達能力を持つ機能的なFcαRを強発現する細胞株を樹立し, FcαRが免疫複合体を介してメサンギウム細胞に如何なる機能を誘導するか解析した. 方法: ヒトFcαRα鎖およびヒトFcRγ鎖をマウスメサンギウム細胞株に遺伝子導入し, 発現させた. このメサンギウム細胞においてFcαRを架橋刺激し, 蛋自分子のチロシンリン酸化について検討を行った. またこれらの細胞を可溶化熱凝集IgAで刺激し, 培養上清中のMonocyte chemoattractant protein (MCP-1) をELISA法にて測定した. 結果: FcαRα鎖およびFcRγ鎖発現細胞において, FcαRを架橋刺激することによって, チロシンリン酸化された細胞内蛋白群が検出され, さらにこれらの一部がFcRγ鎖とsykであることが免疫沈降法によって同定された. また, 可溶化熱凝集IgA存在下では, これら細胞が培養上清中に放出したMCP-1の濃度がFcRγ鎖非発現細胞に比べて有意に高いことも確認された. 結語: IgAによる刺激を受けたメサンギウム細胞は, FcRγ鎖を会合したFcαRを介して活性化され, その結果多様な機能を誘導する可能性があると考えられた.
  • 中里 馨
    2000 年 45 巻 4 号 p. 584-595
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 加算平均心電図 (Signal-averaged electrocardiogram: SAE) の新たな解析法であるSpectral turbulence (ST) 法における診断特異度と診断結果の再現性を, 従来のTime domain (TD) 法と比較すること. 対象: 基礎心疾患のない, 標準12誘導心電図でも異常のない健常成人200名 (男100名・女100名;平均年齢29歳) を対象とした. 方法: 全例でSAEを記録し, TD法およびST法の各パラメーターの測定値を過去の報告値と比較した. さらに得られた正常値の95%信頼区間値に基づく診断基準と, 従来の診断基準を用い, 診断特異度を比較した. 再現性の検討は, 15分間隔で2回記録し得た200例中65例において, 各パラメーター毎の相関係数を求めるとともに診断結果の一致率を比較した. さらに, 長期再現性を確認するため, 1週間後もSAE記録を行い得た65例中24例で, 同様に相関係数と診断の一致率を比較した. 結果: 各パラメーターの分布様式はTD法・ST法とも過去の報告と一致した. しかし, 測定値はTD法で性差, 体格差を示したのに対し, ST法ではそれらの影響は認めなかった. 診断特異度は, TD法で, 従来の診断基準では93%であったが, 95%信頼区間値の適用で99%へと改善した. ST法ではそれぞれ, 98%・99.5%と高値であった. 15分間隔で記録したSAEの2回の測定値はTD法・ST法ともに高い相関を示し, 記録間の変動は少なかった. 診断の一致率は15分後, 1週間後ともに, いずれの診断基準を適用した場合も, TD法で89-100%, ST法でも96-100%と良好であった. 結論: ST法は体格差, 性差などに影響されず, また診断特異度が高く再現性にも優れた解析法であり, 今後スクリーニング検査を含め, 臨床応用が可能と考えられる.
  • 安田 正之
    2000 年 45 巻 4 号 p. 596-603
    発行日: 2000/03/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: ペースメーカーシステム全体の寿命を規定する重要な因子である刺激閾値の経時的変化とペーシングリードの長期経過後の信頼性を検討すること. 対象および方法: 心室ペーシング453例 (男性262例・女性191例, 平均67歳) について, 急性期および慢性期における刺激閾値の推移ならびにペーシングリードの長期経過 (観察期間平均59.8ヵ月) 後の信頼性に関して検討した. 結果: (1) 急性期 (植込み時) の刺激閾値・心内R波高・リード抵抗は, 心室内伝導障害の1例を除き良好な値を示し, ステロイドリードと非ステロイドリードで差はなかった. (2) 亜急性期 (植込み1週間後) の出力3.5Vにおけるパルス幅閾値も良好で, 非ステロイドリードに比し有意にステロイドリードで低かった (P<0.05). (3) ジェネレーター交換施行104例の慢性期 (ジェネレーター交換時) 電気的特性の変化については, 慢性期の閾値上昇に伴い, 強さ-時間曲線は右上方へ偏位したが, Chronaxieは不変であった. (4) ペーシングリードに関連する合併症では, 断線15例 (3.3%), 離脱4例 (0.8%) など再手術を要する例が認められたが, 少数例であり, 長期経過は良好であった. 結論: 心室ペーシングにおける慢性期刺激閾値は, 急性期に比し, 上昇していたが, Chronaxieには有意差を認めず, 長期間安定していた. また, 再手術を要するリードに関連した合併症は少数であり, 心室ペーシングにおけるリードの長期信頼性も良好であった.
てがみ
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