目的: 心室中隔 (IVS) 領域の心筋梗塞 (MI) における標準12誘導心電図 (ECG) の診断精度を心筋シンチグラムを用いて検討, さらに冠動脈造影 (CAG) 上の中隔枝との関係についても検討した.
対象: タリウム (Tl) 心筋シンチグラムを行い得た前壁中隔心筋梗塞115例 (男100例, 平均60歳). 106例でCAG施行.
方法: Tl心筋シンチグラムから得られたSPECT像のextent mapで, MIの領域がIVSに占める割合を求め欠損面積率 (%DA) とし, %DAが50%以上の場合をA, 同様に70%以上・90%以上の場合を各々B, Cとし, それぞれの場合についてECG指標 (QV
1の有無・QV
1V
2の有無・qV
6の有無) との関係を検討した. さらにCAG施行106例で左冠動脈前下行枝 (LAD) 責任病変部位 (AHA分類のSegment6かSegment7) 診断に対するECG指標の有用性も検討した.
結果: (1) 各ECG指標陽性群は陰性群と比べ%DAが有意に大であった (p値は各々0.0002・0.0008・0.0008). (2) A, Bの場合については上記ECG指標いずれの感度も65%以下と低値であったが, 特異度はQV
1V
2 (+) を選択した場合に, Aにおいて76%と良好. Cの場合については, 感度の面ではQV
1 (+) とqV
6 (-) が各々79%・75%と良好であったが, 特異度の面では各々58%・45%と低値. これに対しQV
1V
2 (十) は感度, 特異度共に比較的良好であった (各々67%・68%). (3) ECG指標QV
1・qV
6の陽性群は陰性群と比べてSegment6に責任病変を持つ例が有意に多かった (p値は各々0.034・0.001). 特にSegment6を示唆する所見としてqV
6 (-) の感度が67%と最も高値, 特異度も65%と比較的良好. これに対しQV
1V
2 (+) は特異度67%と最も高値であったが感度は49%と不良.
結論: QV
1 (+) ・qV
6 (-) は, T1シンチグラムでIVSの広範な梗塞を伴う例に限り感度が高かった. 一方, 特異度はQVIV2 (十) が良好であった. またqV6 (-) は梗塞責任病変がLAD近位部にあることを最も示唆する所見であった.
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