順天堂医学
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45 巻, 1 号
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目次
Contents
特集 今,注目の介護保険をめぐって
原著
  • --ヘルス・ローカス・オブ・コントロールを媒介にして--
    津波古 澄子
    1999 年 45 巻 1 号 p. 28-41
    発行日: 1999/06/10
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    目的: 5・6歳児の主観的健康観を明らかにし, 健康に対する信念や保健対処行動の関係を検討した. 5・6歳児に対する適切な保健教育ならびに養育者や保育関係者への情報提供など, 健康教育に資する目的で行った. 対象: 5・6歳児のヘルス・ローカス・オブ・コントロール (HLC) を捉えるための簡易式幼児用HLC図版を工夫し, その妥当性をみるための予備調査を公立小学校 (武蔵野市, 沖縄県) 1年生75名 (男39・女36) を対象に行った. 本調査は公立保育園の5・6歳児90名 (男児46・女児44) と養育者90名を対象とした. 方法: 面接法で, 保育園の静かな場所にて10分程度の半構成的インタビューを行った. 主な質問は, 1) 健康を知っているか2) 「元気だな」と思うときはどんな時3) 「元気がないな」と思うときはどんな時4) お腹がすいたときどうする5) 疲れたときどうする6) 寒いときどうする7) 元気のおかげはどれを簡易式幼児用HLC図版をみせて選択する方法であった. 結果: 5・6歳児の86%は「健康」という言葉を理解していなかった. 5・6歳児の主観的健康観を「元気」「元気でない」で捉えると, 「元気」を〈活動〉〈生活〉〈人間関係〉〈情動〉として表象しており, 「元気でない」の理解には〈身体〉的表象が加わることが明らかになった. 簡易式幼児用HLC図版の工夫は, 文字の学習に個人差のある幼児期に活用できる可能性が示唆された. 5・6歳児の空腹, 疲労, 寒さに対する保健対処行動は, 積極対処行動と我慢対処行動の2つがみられた. 3つのうち2つ以上に我慢対処行動傾向のある子どもが11%いた. また, 2つ以上の我慢対処行動への影響要因として, 女児で健康に対する自己統制観をもち, 人間関係・情動指向が示された. さらに, 我慢対処行動に影響を及ぼしている要因の重要度は, 元気でない, 元気, HLC, 性差の順位であった. 結論: 主観的健康観とHLCを媒介にした保健対処行動は, 相互に関連が示された. また, 5・6歳児の保健教育のあり方に有効な方向が示された.
  • 嶋田 一成
    1999 年 45 巻 1 号 p. 42-50
    発行日: 1999/06/10
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    目的: 動脈硬化の発生にリポ蛋白が促進的 (LDL) あるいは抑制的 (HDL) に関与することは広く知られている. 最近の研究ではHDLは, 血管内皮の増殖, アポA-Iを介するプロスタサイクリンの安定化などの作用があり血管緊張に影響を及ぼしている可能性があると考えられている. そこで著者は, ブタ冠動脈条片を用いHDLの血管緊張に対する影響を検討した. 方法: ブタ冠動脈条片をPGFで前収縮させ, ヒト血漿から分離したHDLを投与した際の等尺性収縮張力の変化を測定し, 内皮の有無, 一酸化窒素合成酵素阻害薬であるL-NMMA, シクロオキシゲナーゼ阻害薬であるindomethacin (IM) の効果を検討した. 結果: 1) 内皮温存血管ではHDLは濃度依存性に弛緩を誘発した. 2) しかし内皮剥離血管ではHDL誘発血管弛緩反応は消失した. 3) L-NMMA (300μM) はこのHDL誘発血管弛緩反応に影響を及ぼさなかった. 4) IM (10, μM) はHDLによる弛緩を完全に抑制し, 逆に10.5±1.9% (30min) の収縮を発生した. 結論: HDLは内皮依存性に血管弛緩反応を引き起こした. この作用は内皮よりのNOを介するものではなく内皮細胞から遊離されるPGI2などの血管弛緩性プロスタノイドの作用を増強していることを示唆し, 同時にIM前処置ではHDL投与により弛緩ではなくむしろ収縮増強を認めた. 以上より抗動脈硬化作用を持つHDLは血管緊張にも影響を及ぼす可能性が示唆された.
  • --出産・育児による変化--
    宮腰 由紀子, 西田 美佐, 塩原 正一
    1999 年 45 巻 1 号 p. 51-63
    発行日: 1999/06/10
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    目的: 次代の子供の健康を担う母親の食品添加物等への意識と, 食品表示の確認行動の妊娠期と育児期の比較から, 母親に向けた食品選択に関する効果的な保健指導を検討するための資料を得ることを目的とした. 対象: 妊娠期間中の調査 (以下『妊娠期』と略) の回答者で, 育児期間中の調査 (以下『育児期』と略) へ回答した366人中の, 妊娠期調査時点の胎児を第1子として出産した母親327人を, 今回の解析の対象とした. 方法: 食品添加物関連17項目を含む39項目から成る質問紙を, 妊娠期は手渡し, 育児期は郵送で配付した. 回収は両時期とも郵送とした. 集計・分析は統計パッケージSPSSにより, 同一人物の妊娠期と育児期のデータを用いて, 両時期間の食品添加物に対する意識と行動と各項目との相関関係・因子分析 (バリマックス回転を行った最尤法) の結果を比較した. そして共分散構造分析により, 育児期の食品添加物等『表示の確認』行動に対する主要項目の影響関係を把握した. 結果: 全項目において妊娠期と育児期の回答間には強い相関関係が認められ, 妊娠期の意識や行動の傾向が育児期に反映することが確認された. 9割の人が「食品添加物のことを詳しく知りたい」と関心が高いが, 食品添加物を『気にする』『表示の確認』をする人は5割に留まった. 意識・行動項目の因子分析から両時期とも第一因子『購入品』を得たが, 第二・三因子は時期による相違が見られた. 育児期の『表示の確認』は妊娠期よりやや減少しており, 育児期の『表示の確認』に対する項目間の関係構造は, 『表示の確認』が『気にする』から強い影響を受けていた. 一方, 『気にする』は「食品添加物について詳しく知りたい」からの影響を受けていた. 考察: 食品添加物等の表示を確認する行動を促進するには, 食品添加物に関する正しい知識を母親が持つことにより, 母親が食品添加物を気にする意識が強化されることが, 大切なポイントであることが明らかになったと考える.
  • -普及型低磁場装置を用いた日常診療における診断能-
    京極 伸介, 片山 仁
    1999 年 45 巻 1 号 p. 64-74
    発行日: 1999/06/10
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    目的: 最近わが国でも大腸の悪性疾患の頻度が増加しつつある. 特に直腸癌ではQOLを重視した手術法の開発に伴い従来からの診断法やCTに加え, MRIによる術前の病期診断が注目されつつある. 本研究では直腸癌に対する術前検査としてのMRIの役割と有用性について, 特に普及型低磁場装置の日常診療における診断能を, CT検査例および文献報告例と比較検討し報告する. 対象: 1991年7月から1996年12月までの5年6ヵ月間に, 当施設において術前に骨盤部MRIが施行され, 手術や生検において病理組織学的に確定診断された直腸癌54症例を検索対象とした. 症例は36歳から83歳までの男性32人, 女性22人で平均年齢は60.7歳である. 方法: CTとMRIそれぞれの腫瘍描出能・深達度およびリンパ節転移についての診断能を比較検討した. 結果: 腫瘍描出能は両者共に良好で, CTの施行された49例中46例とMRIの施行された54例中51例において描出可能であった. 深達度診断については, CTにおける正診率は37.0%, MRIにおける正診率は56.9%であり, 統計学的に有意差が認められた. しかしリンパ節転移の診断能は, 両者共にいちじるしく低いものであった. 結論: 深達度診断においては, MRIはCTを上回る成績を得ることができたが, リンパ節転移の診断においては満足のいくものではなかった. 高磁場MRI装置による報告や, 研究レベルの低磁場MRI装置による報告に比べ, その診断能は低かった. 日常診療における診断能の向上のためには, ソフトウェアのバージョンアップにより高速スピンエコー法の撮像を可能にすること, さらにフェイズドアレイコイルの使用が必要と考えられた.
  • --一都市における小学1年生児の体格, ライフスタイルの3歳時からの追跡結果--
    西田 美佐, 川南 勝彦
    1999 年 45 巻 1 号 p. 75-92
    発行日: 1999/06/10
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    目的: 3歳時より開始したコーホート調査において, (1) 対象児の小学1年生 (以下「小1」) 時点での肥満・軽体重児の割合やその3歳時の体格との関連, (2) 肥満・軽体重児の健康の特徴や, ライフスタイル, 環境との関連, (3) ライフスタイルの形成過程や成因を検討し, 小児期からの生活習慣病予防対策の基礎資料を得ることを目的とした. 対象: 東京都立川市において初回調査 (1992年, 3歳時), 追跡調査 (1996年, 小1時) ともに回答が得られた443名中, 身長・体重の照合が可能な384名を対象とした. 方法: 初回調査, 追跡調査時に保護者を対象に『子どもの健康とライフスタイル』に関する質問紙調査を実施した. また, 健診時に計測した身長・体重からBody Mass Index (BMI) [体重 (kg) /身長 (m) 2] を算出し, 小1時のBMIを3群 (軽体重群=14未満, 標準体重群=14以上18未満, 肥満群=18以上) に分け, ライフスタイルや環境との関連を検討した. ライフスタイルの形成過程については, 初回・追跡調査で照合可能な項目の関連を, ライフスタイルの成因については, 環境との関連をみた. 結果: (1) 小1時点で, 肥満群は8.1%, 軽体重群は12.0%であった. 3歳時のBMIとは高い相関を示していたが, 肥満群は5.7%→8.1%に, 軽体重群は2.3%→12.0%に増加していた. (2) 軽体重群では子どもの健康度が『とても良い』と回答した者が少なく, 肥満群では多かった. 軽体重群は, 朝食で『ごはん』『みそ汁』を食べる者, 夕食を『祖母と』食べる者, 睡眠時間が長く, 就寝時刻が遅いまたは早い者が多かった. 肥満群は, 『早食い』の者が多く, 朝・夕食を「兄弟姉妹』と食べる者や, 朝食で『パン』『牛乳』を食べる者が少なかった. (3) 小1時のライフスタイルは3歳時のそれと非常に強い相関を示していた. 朝食の内容には一緒に食べる人との, 休日の間食時間には母親の職業や祖母の同居との関連がみられた. 結論: 小1時には軽体重群, 肥満群が3歳時よりも増加しているが, 小1時の体格, ライフスタイルとも3歳時のそれと強い相関を示していたことから, 小児期からの健康的なライフスタイルの形成のためには, より早い時期からの介入が効果的である可能性が示唆された. その際, 同居家族や母親の就労形態など, 家庭の状況の違いを配慮した対策を講じる必要があるだろう. また, 小1時点で, 軽体重児が1割以上存在し, 健康上の問題が懸念されることから, 今後は肥満と同様, 小児の軽体重にも注目して, 健康やライフスタイルとの関連を観察していく必要があると考えられた.
抄録
てがみ
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順天堂医学投稿規程
編集後記
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