目的: 3歳時より開始したコーホート調査において, (1) 対象児の小学1年生 (以下「小1」) 時点での肥満・軽体重児の割合やその3歳時の体格との関連, (2) 肥満・軽体重児の健康の特徴や, ライフスタイル, 環境との関連, (3) ライフスタイルの形成過程や成因を検討し, 小児期からの生活習慣病予防対策の基礎資料を得ることを目的とした.
対象: 東京都立川市において初回調査 (1992年, 3歳時), 追跡調査 (1996年, 小1時) ともに回答が得られた443名中, 身長・体重の照合が可能な384名を対象とした.
方法: 初回調査, 追跡調査時に保護者を対象に『子どもの健康とライフスタイル』に関する質問紙調査を実施した. また, 健診時に計測した身長・体重からBody Mass Index (BMI) [体重 (kg) /身長 (m) 2] を算出し, 小1時のBMIを3群 (軽体重群=14未満, 標準体重群=14以上18未満, 肥満群=18以上) に分け, ライフスタイルや環境との関連を検討した. ライフスタイルの形成過程については, 初回・追跡調査で照合可能な項目の関連を, ライフスタイルの成因については, 環境との関連をみた.
結果: (1) 小1時点で, 肥満群は8.1%, 軽体重群は12.0%であった. 3歳時のBMIとは高い相関を示していたが, 肥満群は5.7%→8.1%に, 軽体重群は2.3%→12.0%に増加していた. (2) 軽体重群では子どもの健康度が『とても良い』と回答した者が少なく, 肥満群では多かった. 軽体重群は, 朝食で『ごはん』『みそ汁』を食べる者, 夕食を『祖母と』食べる者, 睡眠時間が長く, 就寝時刻が遅いまたは早い者が多かった. 肥満群は, 『早食い』の者が多く, 朝・夕食を「兄弟姉妹』と食べる者や, 朝食で『パン』『牛乳』を食べる者が少なかった. (3) 小1時のライフスタイルは3歳時のそれと非常に強い相関を示していた. 朝食の内容には一緒に食べる人との, 休日の間食時間には母親の職業や祖母の同居との関連がみられた.
結論: 小1時には軽体重群, 肥満群が3歳時よりも増加しているが, 小1時の体格, ライフスタイルとも3歳時のそれと強い相関を示していたことから, 小児期からの健康的なライフスタイルの形成のためには, より早い時期からの介入が効果的である可能性が示唆された. その際, 同居家族や母親の就労形態など, 家庭の状況の違いを配慮した対策を講じる必要があるだろう. また, 小1時点で, 軽体重児が1割以上存在し, 健康上の問題が懸念されることから, 今後は肥満と同様, 小児の軽体重にも注目して, 健康やライフスタイルとの関連を観察していく必要があると考えられた.
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