冠状動脈造影によって動脈硬化による狭窄病変が3本ある冠動脈のうち, どの場所に, どの程度の狭窄があるかを判定でき, その程度によって, 薬物治療でよいか, 冠形成術あるいはバイパス手術の適応かを最終的に決定できる. すなわち, 1または2枝病変は薬物治療か冠形成術, 3枝病変は外科治療を原則としている.
薬物療法は狭心症治療の基本であり, 狭心症発作を緩解, 予防して生活の質を向上させ, 生命予後を改善させることを目的としている. このために抗狭心症薬・抗血小板薬・抗凝固薬, それに危険因子軽減のための薬剤が用いられる. 心筋酸素需要を減少させるためベータ遮断薬またはカルシウム拮抗薬, 冠拡張薬として亜硝酸薬・カルシウム拮抗薬が用いられる. また血栓の形成予防として抗血小板薬や抗凝固薬を用いる. 薬物療法だけで発作を予防し, 運動耐容能が改善する例も多数あり, 狭心症治療の最初の選択となる.
冠動脈形成術 (PTCA) は臨床応用されてから四半世紀が経過し, 成功率は高まり, 合併症も少なく安全に施行できるようになった. 適応も広がり, その施行症例数は飛躍的に増加しており, 現在では薬物治療・外科治療とともに冠動脈インターベンションは狭心症の三大治療法の一つとして確立されている. PTCAの欠点として頻度は1-2%と非常に少ないが, 重症化する急性冠閉塞と6ヵ月後に高い頻度で認める再狭窄がある. この短所を補う目的で, 最近ではニューデバイスといわれる新しい機器が開発された. ニューデバイスとして1) 金属の筒で広げるステント, 2) 狭窄病変をカンナで削るような, 方向性冠動脈アテローム切除術, 3) 硬い病変をドリルで掘削するようなロータブレーター, 4) 紫外領域のエキシマレーザーによる組織の蒸散をはかるレーザー, 5) 粥腫を退縮させる放射線, などがある.
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