順天堂医学
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46 巻, 2 号
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Contents
目次
特集 山口・田中二教授定年退職記念講演会
第6回都民公開講座「心臓病(虚血性心疾患)からどうやって身をまもるか?―最新の診断・治療 そして予防―」
  • 代田 浩之
    2000 年 46 巻 2 号 p. 176-179
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患とは心臓の栄養血管である冠状動脈に主として粥状硬化による狭窄や閉塞が発生し, 心筋の虚血が起こるために発症する. 虚血性心疾患の中には心筋が血液不足 (虚血) になり, 一時的に胸痛を感じさせる狭心症と冠状動脈が突然閉塞し, 心筋が壊死に陥る心筋梗塞がある. また糖尿病症例や高齢者などでは, 虚血であるにもかかわらず, 胸痛を感じないことが比較的多く, 無痛性心筋虚血と呼ばれている. 最近では不安定狭心症や心筋梗塞など冠状動脈の急激な閉塞に伴う病態を急性冠症候群 (Acute coronary syndrome) と呼んで, 包括的にとらえる概念があり, 粥腫の破綻とそれに続く血栓性の閉塞を原因とした病態としてまとめて表現されるようになった. 冠状動脈疾患の危険因子として, 高コレステロール血症・喫煙・高血圧・糖尿病・肥満・運動不足などがある. それぞれの危険因子を持つことによって冠状動脈硬化をはじめとする動脈硬化症の発症の危険性が高まる. 動脈硬化の初期のプロセスは危険因子が動脈の内皮 (動脈の一番内層で血液と接する細胞) に傷害を与えることから始まり, 内膜に脂質, 泡沫細胞の蓄積と平滑筋細胞増殖, 細胞外基質の増加が起こり粥腫が形成される. 狭心症の診断では病歴を詳しく聞くことが, 最も重要である. 労作によって起こる30秒から数分の胸部重圧感, 圧迫感, 締め付けられるような痛みなど, 労作性狭心症の典型的な症状である. 夜間や明け方の安静時胸痛は冠攣縮性狭心症を疑わせる. より客観的な診断のためには, 運動負荷心電図・心臓核医学検査・24時間心電図などで, 心臓の虚血 (血液不足) を明らかとし, 最終的には冠状動脈造影を用いて, 病変の局在と狭窄の程度を確認する必要がある.
  • --薬物治療と冠動脈インターベンションの進歩--
    宮内 克己
    2000 年 46 巻 2 号 p. 180-186
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    冠状動脈造影によって動脈硬化による狭窄病変が3本ある冠動脈のうち, どの場所に, どの程度の狭窄があるかを判定でき, その程度によって, 薬物治療でよいか, 冠形成術あるいはバイパス手術の適応かを最終的に決定できる. すなわち, 1または2枝病変は薬物治療か冠形成術, 3枝病変は外科治療を原則としている. 薬物療法は狭心症治療の基本であり, 狭心症発作を緩解, 予防して生活の質を向上させ, 生命予後を改善させることを目的としている. このために抗狭心症薬・抗血小板薬・抗凝固薬, それに危険因子軽減のための薬剤が用いられる. 心筋酸素需要を減少させるためベータ遮断薬またはカルシウム拮抗薬, 冠拡張薬として亜硝酸薬・カルシウム拮抗薬が用いられる. また血栓の形成予防として抗血小板薬や抗凝固薬を用いる. 薬物療法だけで発作を予防し, 運動耐容能が改善する例も多数あり, 狭心症治療の最初の選択となる. 冠動脈形成術 (PTCA) は臨床応用されてから四半世紀が経過し, 成功率は高まり, 合併症も少なく安全に施行できるようになった. 適応も広がり, その施行症例数は飛躍的に増加しており, 現在では薬物治療・外科治療とともに冠動脈インターベンションは狭心症の三大治療法の一つとして確立されている. PTCAの欠点として頻度は1-2%と非常に少ないが, 重症化する急性冠閉塞と6ヵ月後に高い頻度で認める再狭窄がある. この短所を補う目的で, 最近ではニューデバイスといわれる新しい機器が開発された. ニューデバイスとして1) 金属の筒で広げるステント, 2) 狭窄病変をカンナで削るような, 方向性冠動脈アテローム切除術, 3) 硬い病変をドリルで掘削するようなロータブレーター, 4) 紫外領域のエキシマレーザーによる組織の蒸散をはかるレーザー, 5) 粥腫を退縮させる放射線, などがある.
  • -冠動脈バイパス手術-
    細田 泰之
    2000 年 46 巻 2 号 p. 187
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    1984年1月より1999年2月までの間に順天堂大学胸部外科教室において施行された2,000例のCABGの在院手術死亡率は1.7%, 主な合併症としての術周期心筋梗塞 (PMI) は2.4%, IABPを必要とする低心拍出症候群 (LOS) 2.6%, 術周期脳梗塞 (CVA) 2.5%と低値になっている. Kaplan-Meier法による長期生存率を内胸動脈 (ITA) をバイパスの材料として使用した827例と大伏在静脈 (SVG) のみを使用した649例の2群に分けて検討した. 術後14年の時点ではITA群の生存率は88.2%と満足すべきものであり, SVG群の69.0%に比べて有意に優れていることが明らかであった.
  • 杢野 浩司
    2000 年 46 巻 2 号 p. 188-193
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患の経過には, 慢性に進行する冠動脈硬化病変の形成と動脈硬化プラークの破裂による血栓形成の2つの異なった過程があり, 特に後者は急性冠症候群の発症との関連があり臨床的にも重要である. 基本的には, 虚血性心疾患の予防対策として関連する冠危険因子の発生を予防または治療し, 重複する冠危険因子の数を減らすことにより冠動脈硬化病変の形成や進行を抑制することが重要である. また現在, 虚血性心疾患の予防法としての有効性が示されている代表的な薬物療法には, アスピリンによる抗血小板療法とスタチン剤によるLDLコレステロール低下療法である. 抗血小板療法により急性冠症候群における血栓形成を抑制して, 心筋梗塞の初発や再発の予防, 心事故による死亡の予防効果を認めている. 一方, スタチン剤によるLDLコレステロール低下療法でも, 虚血性心疾患の発症や心事故による死亡の低下とともに総死亡率の低下も含めた著明な予防効果が示された. その機序として, 冠動脈硬化病変の進行の抑制に加えて動脈硬化プラークの安定化により血栓形成につながるプラークの破裂をも予防している可能性が考えられている. 肥満も冠危険因子の一つであり, 虚血性心疾患の他にも多くの疾患と関連しているが, 最近体脂肪の分布による質的分類が示されている. その結果, 皮下脂肪型肥満よりも内臓脂肪型肥満の方が動脈硬化形成性の代謝状態であり, 同様の病態が, シンドロームX・死の四重奏・インスリン抵抗性症候群として報告されている.
総説
原著
  • 内藤 久士, 小林 裕幸, 内田 桂吉, 大森 大二郎, 千葉 百子, 山倉 文幸, 米田 継武
    2000 年 46 巻 2 号 p. 203-210
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 老化および持久的トレーニングがラット骨格筋の熱ショックタンパク質 (HSP72) の発現に及ぼす影響を遅筋および速筋に分けて検討することであった. 対象および方法: 若齢 (12週齢) および老齢 (100週齢) のF344雌ラットが年齢群ごとに, コントロール群および運動群の2群に分けられた (各群n=6). 両年齢群のトレーニング群は, トレッドミル上での持久的ランニングを75-80%Vo2maxの強度で1日60分, 週5日の頻度で10週間にわたって行われた. トレーニング期間終了72時間後, ヒラメ筋 (遅筋) および長指伸筋 (速筋) が摘出され, ウェスタンブロット法により, HSP72が定量された. 結果: コントロール群のHSP72の発現量は, ヒラメ筋の若齢群95±5ng・老齢群100±6ngおよび長指伸筋の若齢群22±2ng・老齢群20±5ngであり, 各筋とも年齢による差が見られなかった (P>0.05). 一方, トレーニング群のHSP72の発現量は, ヒラメ筋の若齢群116±3ng・老齢群116±4ngおよび長指伸筋の若齢群66±2ng・老齢群43±6ngで, 各筋ともに同年齢のコントロール群よりも有意に (P<0.05) 高い値を示した. しかしながら, その増加率は, ヒラメ筋 (若齢群+22%・老齢群+15%) と長指伸筋 (若齢群+200%: 老齢群+115%) では異なるものであった. 結論: 持久的トレーニングは, 骨格筋のHSP72の発現を増加させるが, 老化は速筋 (長指伸筋) において, その応答性を低下させる.
  • 田所 洋行
    2000 年 46 巻 2 号 p. 211-218
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 膵内分泌腫瘍に見出される腺管構造の意義について, 正常膵組織の膵管構造を踏まえて検討する. 対象: 順天堂医院および関連施設で外科的に切除された膵内分泌腫瘍30例と肝胆膵疾患のない50例の剖検膵組織を対象とした. 方法: 組織片は内分泌腫瘍より1-3個, 剖検膵では頭部・体部・尾部より1個ずつ切り出し, HE染色・EVG染色を行った. 腫瘍内腺管ならびに剖検例の膵管の長径・短径を測定し, 後者では周囲の弾性線維の厚さも併せ光学顕微鏡下40倍で10視野以上で行った. また, 膵島と膵管との連続性についても調べた. さらに腺管・膵管に対し, CA19-9・リパーゼ・NSEおよびCarboni canhydrase-IIの免疫組織化学を行った. 結果: 1) 膵内分泌腫瘍30例中9例において, 腫瘍内に腺管がみられた. 腺管は9例全例がCA19-9・CA-IIに陽性, リパーゼも9例中7例が陽性であった. 9例中7例の腺管は, 腫瘍細胞と連続性があり, その6例では周囲を弾性線維で囲まれなかった. 一方, 9例中5例の腺管では腫瘍細胞と連続性がなく, いずれも弾性線維で囲まれていた. 2) 剖検例の80μm以下の膵管では, 弾性線維が50.8%に存在しなかった. 膵管の長径・短径と弾性線維の厚さの間には相関係数0.745・0.707と強い相関関係がみられた. 膵島と膵管との連続性は50例中8例 (16%) にみられた. 結語: 膵内分泌腫瘍の腺管構造の中で, 弾性線維が腺管周囲に存在するものは既存の膵管で, 弾性線維が存在せず, かつ腫瘍細胞と連続性がみられるものは新生の腺管で, 腫瘍細胞からの分化と考えられた.
報告
  • 一宮 洋介, 辻 昌宏, 植田 由美子, 稲見 理絵, 馬場 元
    2000 年 46 巻 2 号 p. 227-230
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 介護保険制度の運用開始にあたり, 老年患者の病状と介護認定度との関係を明らかにして, 問題点を検討する. 対象: 順天堂大学浦安病院神経精神科老人専門外来通院中で平成12年4月までにかかりつけ医の意見書を作成提出した20症例である. 方法: 対象の臨床症状・痴呆の程度・日常生活動作能力 (特に寝たきり度) と介護認定の結果を調査して, 比較検討した. 結果: 介護認定の結果は要支援から要介護5まで広きにわたったが, 自立とされたものはなかった. 身体症状がより重い介護認定をもたらす傾向が認められた. 結論: 今回検討した症例では介護認定作業において, 痴呆症状より身体症状に重きがおかれていた. 今後は痴呆症状を適切に評価する作業が必要である.
抄録
てがみ
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編集後記
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