目的: 巨大気腫性肺嚢胞症の手術後早期および遠隔期の呼吸機能推移から外科治療成績と手術適応について検討した.
対象: 胸部X線所見で, 1側胸腔の50%以上を占める嚢胞を有し, 切除術を行った41症例 (手術42回) を対象とした. 男性39例, 女性2例で, 年齢は25歳から75歳 (平均48.2±10.3歳) であった.
方法: 手術は胸骨正中切開26例, 後側方開胸14例, 腋窩開胸1例, 胸腔鏡手術1例で, ブラの処置は切除または縫縮術を行った. 呼吸機能測定項目として肺活量 (VC), %肺活量 (%VC), 1秒量 (FEV1), 1秒率 (FEV1%), %1秒量 (%FEV
1), ピークフロー (PEFR), V
50・V
25, 残気量 (RV), 残気率 (RV/TLC) を測定した. 諸指標の測定は手術前と手術後1ヵ月・3ヵ月・6ヵ月・1年から5年に行った. 術後1ヵ月の測定結果を早期, 3ヵ月から5年を長期成績とした.
結果: 術前のFEV
1値で1000ml未満 (I群) 7例・1000ml-2000ml (II群) 11例・2000ml-3000ml (III群) 15例・3000ml以上 (IV群) 9例の4群に分類した. FEV
1値はI群: 0.70±0.20l→1.21±0.3l (P<0.001) ・H群: 1.72±0.3l→2.07±0.4l (P<0.05) と手術後に改善した. IIIIV群ではFEV
1値に有意の変化はなかった. 全ての群でFEV
1%・V
50・V
25は手術後有意に改善した. I群のFEV
1・V
50・V
25は, 長期で減少する傾向を示したが, 5年まで改善値を維持した. IIIIV群は術後早期にVCの低下を認めたが, その後は術前値を維持した. I群の2例が長期で呼吸不全死した.
結論: 巨大気腫性肺嚢胞手術後の呼吸機能改善は, FEV
1術前値が2000ml未満の呼吸機能低下例に著明であり, 手術後5年の長期まで改善値を維持した. 術前のFEV
1が2000mlを越える症例には, 呼吸機能改善を目的とした積極的な手術適応はないと考えられた.
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