順天堂医学
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47 巻, 4 号
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Contents
目次
特集 病院におけるリスクマネジメント(医療安全対策)の取り組み
  • 新木 一弘
    2002 年 47 巻 4 号 p. 428-438
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
  • 今井 壽正
    2002 年 47 巻 4 号 p. 439-443
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    順天堂医院におけるリスクマネジメント体制の立ち上げに携わった経験から, 体制の確立には, 幾つかの必要な前提条件が指摘できる. (1) 病院トップ (院長) の主導のもとに行う, (2) 医師が重い腰を上げる, (3) 院内多職種間の意見交換・意思の疎通が行われる, (4) 自由な意見・討論の環境が形成される, などである. その上で, 院長補佐をGeneral Risk Manager (GRM) とし, 医療安全管理委員会を設置し, 院内報告制度を整備し, 院内の各局面・職域で現状を再点検する業務改善運動の一環として機能させて行く. さらに医療リスクマネジメントを実効あるものにするため, GRMを長とする医療安全委員会と院長を長とする事故調査委員会の, 役割の分担と俊敏な連動が求められる.
  • --実践的リスクマネジメント体制確立のための基本的コンセプト--
    梁井 皎, 清宮 正嗣
    2002 年 47 巻 4 号 p. 444-452
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    近年, 患者の高齢化・各種高度医療機器の増加・在院日数の短縮などから, 高度の医療を担っている医療施設ほど組織的にリスクマネジメント体制を構築することが必要となっている. 永い歴史を持つ順天堂医院ではずっと以前から高度の医療と患者の安全・サービスを理念として診療を行ってきた. また, 平成5年12月に特定機能病院第1号として承認され, また, 平成12年4月から医療安全対策室を発足させて実践的なリスクマネジメント体制の構築をはかってきた. 実践的リスクマネジメント体制確立のための基本的コンセプトとしてあげられるのは, 先ずは病院トップがリスクマネジメント体制確立の必要性を強く認識し, 強い権限を与え得るゼネラルリスクマネジャーを任命するところから始まる. 次に, ゼネラルリスクマネジャーは単なる形だけのリスクマネジメント体制を整えるのではなく, 職員全員が医療安全対策意識を高めて活動できる様な体制を立案し指導する. 順天堂医院では医療安全管理委員会の他に14の各種リスクマネジメント小委員会を設置し, 各種報告書の分析などで現場職員自らが活動し, さらに各種安全対策を現場にフィードバック出来る態勢をとっている. 各種リスクマネジメント小委員会が各種報告書の分析を的確に行い得るように, 14委員会の分け方はインシデント内容別になっていて, さらにこれらの小委員会は委員が各部署から公平に集まって構成されている. 事故は現場で起こるため, 立案した各種安全対策が現場にフィードバックされない様なリスクマネジメント体制では全く意味をなさない. また, 従来の組織の中に新しい組織としてのリスクマネジメント体制を組み込むに際しては, ITを活用したnetworkを一挙に院内に張り巡らしてしまう形を取ることがポイントである. リスクマネジメント体制は継続的に行われなければならないが, その継続的活動の中心となるのが, いったん作成された事故防止対策マニュアルの内容を毎年継続的に改訂する活動である. すなわち現場の職員各人が事故防止対策マニュアルの担当部分を繰り返し確認し, 大なり小なりの事故が起こる度にマニュアルの確認・修正を行うことによって, より完成された事故防止対策マニュアルができあがり, 医療事故の減少につながる. 実際, 当院においても大きな事故はもとより小さな事故も減少の傾向にある.
  • --組織の運営と維持--
    清宮 正嗣, 梁井 皎
    2002 年 47 巻 4 号 p. 453-460
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
  • --プロモーションビデオの役割--
    矢内 俊裕, 梁井 皎, 清宮 正嗣
    2002 年 47 巻 4 号 p. 461-464
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    順天堂医院においては, ゼネラルリスクマネジャーおよび医療安全対策室を中心に組織的な医療事故防止システムの構築が行われ, 各種委員会の活動から全職員への周知徹底まで実践的なリスクマネジメント体制が展開されてきた. その基礎として, リスクマネジメントに関する職員の啓蒙と理解のために, 順天堂医院におけるリスクマネジメント体制を主な内容としたプロモーションビデオを作成した. 作成したビデオは, 安全管理のための職員研修やリスクマネジメントに関する集会などで上映されており, また, 各部署に配布されて全職員がいつでも観ることができるようになっている. 全職員が安全管理のための意識を持ってミスや事故を犯さないよう組織的に防止し, 安全で質の高い医療を提供するためには, 多くのインシデント報告書・事故報告書を分析して職員にフィードバックすることが必要であるため, 報告書提出の重要性を強調したい.
  • 小西 敏郎
    2002 年 47 巻 4 号 p. 465-471
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    リスク管理には, 過去のインシデントのレポートを集積して検討し対策をたてること, そして医師を含めてナースや医療従事者の個人個人がリスク管理面での医療知識レベルを向上させること, また医療従事者間のコミュニケーションをよくして情報をできるだけ共有化すること, 医療の標準化を図って医療内容を効率化して無駄な検査や治療を減らすことなどが重要である. これらのいずれにもクリニカルパスは極めて有効である. さらに重要なことは, クリニカルパスから逸脱する異常を患者自身あるいは家族が早期からチェックできることもクリニカルパスの大きな利点である. これからの医療システムにおいては, 患者および家族からのチェックシステムも加えることにより, 医療過誤を防ぎ, 発生した異常に対して早期に治療を開始することが必要である. クリニカルパスは医療費の診断群類別の定額支払い制度 (DRG/PPS) への対応として注目を集めているが, リスク管理の面でも極めて有用であるので, 21世紀の医療変革にクリニカルパスの導入は必須である.
総説
  • 加藤 済仁
    2002 年 47 巻 4 号 p. 472-478
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    最近, 社会の医療事故に対する関心は強く, 各医療機関・病院団体, 国もリスクマネジメントに積極的に取り組んでいる. リスクマネジメントは, 医療の質の確保の一環として位置付けられ, その対象は, 主にいわゆる〈あってはならない事故の防止〉に向けられている. しかし, 医療事故は不可避的に起こるものであり, 事故後の対応についてもリスクマネジメントの対象とすべきと考える. 本稿では, 医療事故紛争の解決に携わっている立場からみた, 医療事故の予防策の問題点と発生後の対応について述べた.
  • 乾 道夫
    2002 年 47 巻 4 号 p. 479-485
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    近年, 医療訴訟が増加の傾向を辿り社会的にも多くの関心を呼んでいる. そして何故か, と同時に防止へのリスクマネジメントが求められている. 今回, リスクマネジメントの持つ諸問題について, 一般論と医療事故におけるそれとを対比しつつ説明, 刑法上の医療過誤および民法上のそれについて, 具体的simulationとして表現・解説し, 医療訴訟にまつわる問題点を述べた.
原著
  • 淺沼 克彦
    2002 年 47 巻 4 号 p. 486-492
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    目的: 種々の疾患において, 蛋白分解酵素とそれを制御する細胞増殖因子が, 細胞外基質の再構築に重要な役割を担っている. 今回, 細胞増殖因子であるb-FGFによる培養分化糸球体上皮細胞からの蛋白分解酵素とその阻害物質の分泌について検討した. 対象: 培養分化糸球体上皮細胞が分泌した蛋白分解酵素 (カテプシンL) とその阻害物質 (シスタチンC) を検討対象とした. 方法: イムノブロットにより細胞増殖因子投与時の蛋白分解酵素とその阻害物質の分泌変化を検討した. 結果と結論: b-FGFはカテプシンLの分泌を増加させたが, シスタチンCの分泌には影響しなかった. 糸球体上皮細胞において, 蛋白分解酵素であるカテプシンLは細胞増殖因子であるb-FGFにより制御されていた. 糸球体上皮細胞から分泌増加されたカテプシンLは, 結果的に糸球体基底膜を分解亢進に導き, 糸球体硬化の進展に重要な役割を担っていることが示唆された.
  • 高谷 典秀
    2002 年 47 巻 4 号 p. 493-500
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    血小板活性化の初期段階においては, 血小板膜糖蛋白 (GP) Ibとvon Willebrand Factor (vWF) が結合することで, Sykのリン酸化を引き起こす. そこで今回著者は心筋虚血再灌流障害における血小板の役割を, GPIb-vWFの結合阻害作用を持つAurintricarboxylic Acid (ATA) を用いて検討した. マウスを用いて左冠動脈の30分虚血後, 120分再灌流を行うモデルを作成した. ATA投与群および非投与群における比較では, 心筋障害領域は投与群に比べ非投与群で有意に抑制されていた (P<0.01). また, 再灌流後15分における血小板Syk活性は, コントロールに比べ有意に増加し, ATAの投与で抑制された. 一方, vWFの血中濃度は, 再灌流後に上昇したが, ATA投与では変化が認められなかった. 心筋虚血再灌流障害の初期においては血小板が重要な役割を示し, その際vWFとGPIbの結合が血小板Sykの活性化に関与しているものと思われた. ATAはvWFとGPIbの結合を抑制することで, 虚血再灌流後の心筋障害を軽減すると考えられた.
  • --FcRγ鎖ノックアウトマウスを用いた検討--
    小西 博応
    2002 年 47 巻 4 号 p. 501-507
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    背景: 動脈硬化および冠動脈形成術後の再狭窄では血管内皮障害後に生じる血栓形成が重要であると考えられているがそのメカニズムについては未だ不明な点が多い. 血小板のコラーゲンによる活性化には膜糖蛋白であるGPIbおよびGPVIを介した刺激伝達が重要であるとされており, 最近膜蛋白GPIbおよびGPVIがFcRγ鎖と結合していることが報告された. 今回コラーゲンによる血小板活性化の血管障害後の新生内膜形成における役割を調べるためFcRγ鎖ノックアウトマウスを用いた血管障害モデル (血管結紮モデル) を作製し検討した. 方法: FcRγ鎖KOマウス8-12週令, 野生群 (C57/BL6) 8-12週令に対しKumarらの方法を用い総頚動脈を結紮し3日後・7日後・28日後に血管断面標本を作成し, 内膜肥厚面積・内膜中膜比 (I/M) ・狭窄率を計測した. また初期の内膜の変化を電顕で観察した. 結果: FcRγ鎖KOマウスで, 内膜肥厚面積・内膜中膜比 (I/M). 狭窄率は, それぞれ2215±475μm2・0.085±0.01・5.4±0.4%とコントロール群34362±3013μm2・0.87±0.054・38.4±2.6%と比較して有意に低下していた. 総括: 血小板の膜蛋白GPIb. GPVIが新生内膜増殖に重要な役割を果たしている可能性が示唆された.
  • 荒賀 直子, 白石 安男, 元永 拓郎
    2002 年 47 巻 4 号 p. 508-518
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    アトピー性皮膚炎患児 (以下AD患児と略) を養育している母親からの日常生活に関わる多様な訴えの奥にある育児に関する不安や心配を理解し, 母親への心理面への支援をおこなうことは母親の心身の健康維持に重要であり, 児のADの改善に良い影響を与えると考えられる. これらのことを踏まえてAD患児の母親の心理面への支援に必要なことを検討する目的でADと診断されている3, 4, 5歳児の母親44名を対象に, 育児に関する不安項目・日本版STAI (State-Trait Anxiety Inventory) ・その他の項目を用いてADではない3, 4, 5歳児の母親108名との比較により分析・検討した. その結果, 本研究の対象となったAD群の母親, 対照群の母親共に育児に関する不安要因は特性不安に関連する〈児の年齢〉・〈就業〉・〈私は生き生きと育児している〉・〈気が滅入ることがよくある〉・〈とても心配性であれこれ気に病む〉の5項目と状態不安に関連する〈夫と一緒に育児していると感じる〉・〈同居家族数〉の2項目であった. AD群の母親では児の年齢が上がること, 母親が就業していることは不安を大きくし, 同居家族数が多いことは不安を小さくし, また母親の心的状況は, 不安はありながらも夫と協力して生き生きと育児をしており, 夫と協力し不安なく生き生きと育児をしているが気がかりや心配があり不安が大きい対照群との相違が明らかになった. これらのことからAD群の母親の心理面への支援には重要他者 (夫・医師など) との良好な関係が必要であることが示唆された.
  • -(NZB×NZW) F1マウスを用いた解析-
    中山 玲慧, 横山 利幸, 平塚 義宗, 中村 淳夫, 広瀬 幸子, 白井 俊一
    2002 年 47 巻 4 号 p. 519-527
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデス (SLE) に合併する網脈絡膜症の病態を解析する目的で, 代表的SLE自然発症モデル系である (NZB×NZW) F1 (B/W F1) マウスの加齢に伴う眼底変化の検索, およびその網脈絡膜病変の病理組織学的, および免疫組織学的解析を行った. B/WF1マウスには, 加齢に伴いIgGクラスの抗DNA抗体を含む各種の自己抗体産生と, これに相関した免疫複合体の沈着によるループス腎炎が自然発症し, その病態はヒトSLEに極めて類似している. 従って, SLEの病因解明を目的に, 従来より広く研究に用いられてきた. 今回の解析の結果, 検眼鏡的眼底所見では, 網膜静脈の拡張および動脈の狭細化が著明で, 眼底後極部を中心に網膜下に白斑が出現し, その白斑は時間経過とともに数・大きさ・範囲ともに増大し, 滲出性網膜剥離にまで進展するものも認められた. 検眼鏡による異常の出現時期は, 蛋白尿の出現を指標としたループス腎炎の発症時期よりも約4ヵ月も早く, 2ヵ月齢で既に異常所見を呈するものが認められた. 網脈絡膜の病理学的所見では, 1) 色素上皮細胞の変性・菲薄化・脱落, 2) 脈絡膜毛細血管の拡張および閉塞と, 脈絡膜毛細血管板の肥厚, 3) 脈絡膜細小血管の内皮細胞の腫大と内腔の狭小化が認められた. 免疫組織学的所見では, 脈絡膜毛細血管閉塞部位に一致して, 免疫グロブリンおよびC3の沈着が認められた. これらの結果から, B/WF1マウスにはSLE網脈絡膜症 (SLE chorioretinopathy) 類似の病変が発症すること, その機序として, 脈絡膜毛細血管レベルにおける免疫複合体の沈着による脈絡膜循環障害による二次的な色素上皮障害が主な原因であることが示唆された.
症例報告
  • 佐竹 正栄, 矢内 俊裕, 山高 篤行, 宮野 武, 保坂 篤人, 吉田 幸洋
    2002 年 47 巻 4 号 p. 528-531
    発行日: 2002/03/22
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    仙尾部および臀部にまで膨隆する巨大膀胱を伴った稀なPotter症候群を経験したので報告する. 症例は双胎第2子, 日齢0の男児で出生前より巨大膀胱・両側多嚢胞性異形成腎・両側肺低形成を指摘されていた. 出生時, 仙尾部から臀部にかけて直径7cm大の巨大嚢腫が認められ, 呼吸循環動態の改善に努めたが, 呼吸不全および腎不全が進行し, 日齢2に死亡した. 剖検の結果, 巨大膀胱・両側多嚢胞性異形成腎・両側腎の線維性癒合・右水尿管・左尿管無形成・膀胱憩室・膀胱頚部狭窄・前部尿道狭窄および両側肺低形成が認められた. 本症例のような巨大膀胱の進展形式は報告は少ないものの, 出生前の鑑別診断上, 念頭に入れるべきであると考えられた.
抄録
てがみ
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編集後記
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