順天堂医学
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49 巻, 2 号
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Contents
目次
特集 二教授定年退職記念講演会
  • -医療提供体制の改革と順天堂の医療システム-
    佐藤 潔
    2003 年 49 巻 2 号 p. 134-144
    発行日: 2003/07/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
  • 市川 銀一郎
    2003 年 49 巻 2 号 p. 145-156
    発行日: 2003/07/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    当教室では内耳から聴中枢に至る各種情報を電気生理学的, またそれに準ずる手法の内から, 非侵襲的に得られる聴性誘発反応・脳電図・双極子追跡・f MRIなどを用い《聴え》を見ることにより, 聴覚障害の精密な部位診断法確立を目的として検討を行ってきた. 聴覚情報は聴器から聴覚中枢路を上行し, 聴中枢を経て言語中枢などに情報を提供する. 1970年代よりmedical electronicsの発展が聴覚情報についての微細な検討を可能にした. 1997年には日本脳波・筋電図学会 (現日本臨床神経生理学会) による各種の誘発電位測定指針作成に当たり, 当教室は聴性誘発電位の測定指針の作成を担当した. 現在, わが国で実施されている本反応検査はこの指針に従っている. われわれは聴覚情報が内耳から聴中枢に上行する過程を連続的に〈見る〉ため対数時間軸表示による記録を行い臨床応用している. 脳電図 (脳等電位図;Brain mapping) は頭皮上に投影される電位分布を見ることにより聴覚路の動態を知る手がかりとなり, 当教室はわが国で最も早くその研究に着手した. 双極子追跡 (Dipole tracing) は音の情報が上行する過程につき連続的にその位置, 方向などを〈見る〉ことができる. fMRIでは聴皮質近傍の情報に限られるが, 純音と語音とでは優位半球が異なるなど感音難聴における語音明瞭度の低下に関する病態を〈見る〉方法としての可能性を秘めている. これらの手法は, いづれも利点・欠点を有するが中枢聴覚路の病態を論ずる場合, 有用な情報を提供してくれる. 一方, 耳音響放射 (Otoacousitic emission;OAE) は蝸電図と共に詳細な内耳機能を非観血的に〈見る〉ことができる安定した現象である. 近年, 急速に臨床応用が成されている. 途半ばではあるが, 聴覚障害の詳細な病態をreai timeで〈見る〉ことにより速やかな診断・治療が行われる時代が近づいている. 《聴え》を見ることは生涯の夢である.
総説
  • -心停止から心拍動への移行-
    天野 篤
    2003 年 49 巻 2 号 p. 157-162
    発行日: 2003/07/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    20世紀末から高まった低侵襲外科治療の潮流は心臓血管外科領域にも入り込み, 現在成人心臓血管外科手術で最も数多い冠状動脈バイパス術では, 小切開や心拍動下という形で経験を積むことからはじまった. 当科では2002年7月から手術の質を低下させないように動脈グラフト中心の心拍動下CABGを第一選択とし, 8ヵ月で133例のCABGを経験した. その内109例について胸骨正中切開の心拍動下で施行し, 平均年齢65.6±8.7歳, バイパス本数は3.8±1.2本, 手術死亡1例0.9%であった. 術後合併症についても周術期心筋梗塞, 術後出血再開胸はそれぞれ1例0.9%ずつで, 術後腎不全2例 (1.8%), 電気的除細動を要した心房細動5例 (4.6%) と比較的良好なものであった. 早期回復への一助として, 手術室で麻酔覚醒を得て人工呼吸器を離脱すると術後ICU滞在日数, 在院日数とも短縮される傾向にあった. 心拍動下CABGは早期回復が得やすいが, 後進の教育や病院収入, 適応拡大と術後症例の受け入れなどの点で解決しなければならない問題点も生じてきている.
  • 竹井 謙之, 佐藤 信紘
    2003 年 49 巻 2 号 p. 163-175
    発行日: 2003/07/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    肝臓は先天性代謝異常・肝炎・肝硬変・肝癌など多彩な疾患が生起する臓器であり, これら難治性肝疾患の大半は遺伝子発現の変調を基盤として発症することから, 病因遺伝子レベルで治療介入を行い, 病態の予防・制御を図る遺伝子治療は極めて理にかなっている. 肝発癌の制御など遺伝子工学的アプローチをもってはじめて対処が可能となる課題など, 多くのニーズと技術の進歩に支えられ, 遺伝子治療は肝の治療学としてますます重要な役割を果たすであろう.
原著
  • 厳 崇仁, 方 震中, 呉 明修, 蔡 敦仁, 福井 光峰, 富野 康日己
    2003 年 49 巻 2 号 p. 176-184
    発行日: 2003/07/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 連続携行式腹膜灌流 (CAPD) 療法の重大な合併症である腹膜硬化症に対するステロイドの効果を明らかにする目的で, デキサメサゾンのヒト腹膜中皮細胞 (HPMC) の増殖とコラーゲン産生能について検討を行った. 方法: ヒト大網よりHPMCを採取・培養した. Fetal calf serum (FCS) による刺激下での細胞増殖およびコラーゲン産生をデキサメサゾン (Dex) の添加・非添加の条件で検討した. 細胞増殖能は, modified methyltetrazolium assay (MTT法), 細胞周期はflow cytometry, collagen α (I) mRNA発現はnorthern blot, コラーゲン産生能はH3-proline incorporationを用いて検討した. 結果: HPMCの細胞増殖はDex濃度依存性に抑制され, さらにG1相に留めることが示された. I型コラーゲンのmRNA発現および蛋白産生も, 濃度依存性に抑制された. 結論: CAPD療法の合併症である硬化性腹膜炎の治療に, ステロイドの効果が期待される.
  • 横井 尚子, 石川 正治, 加納 章子, 芳川 洋, 市川 銀一郎
    2003 年 49 巻 2 号 p. 185-193
    発行日: 2003/07/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 音響外傷による急性感音難聴の薬物治療には, ビタミン剤・循環改善剤等とともに, ステロイドホルモンの投与が多く行われており, 特にステロイドホルモンで高い臨床効果が得られている. ステロイドホルモンは鼓室内投与によって内耳障害に治療効果を示すと報告されている. そこでわれわれは急性音響外傷モデルを作成し, デキサメタゾンの鼓室内投与の効果を聴性脳幹反応 (以下ABR) および蝸牛神経複合電位 (以下CAP) を指標に検討した. 対象: 鼓膜正常, プライエル反射正常のハートレー系モルモット (体重約400g) 方法: 全身麻酔の後, 局所麻酔下に気管切開し, 筋弛緩剤を投与し人工呼吸管理下においた. 両側の中耳骨胞を開放し, 鼓室内に銀ボール電極を設置した. 音響負荷としては, 耳介側方3cmの位置より105dBSPL, 4kHz純音を30分間与えた. 音響負荷後同一個体の一側の鼓室内にデキサメタゾンを, 対照として反対側の鼓室内に生理食塩水を鼓室内に充満するよう投与した. 10分後薬液を除去した. 音響負荷前, 負荷直後, 薬剤投与直後, 音響負荷1時間後・2時間後のABRのI波潜時, 蝸牛神経複合電位 (CAP) のN1の潜時・振幅・閾値について検討した. 結果: 潜時・振幅ともデキサメタゾン投与側と対照側との間には統計的には有意な差は認められなかった. しかし各個体毎に検討するとABRのI波・CAP潜時の改善がより多く認められ, ステロイドの効果が示唆された. 結論: 潜時・振幅ともデキサメタゾン投与側と対照側との間には統計的には有意な差は認められなかった.
  • -在宅ホスピスケアシステムの構築に向けて医師への面接調査から-
    高石 純子, 杉本 正子, 荒賀 直子, 秋山 正子, リボウィッツ志村 よし子, 河原 加代子
    2003 年 49 巻 2 号 p. 194-207
    発行日: 2003/07/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 医療における在宅ホスピスケアシステムを構想する上で, ホスピスや緩和ケア病棟の地域における機能と役割についての示唆を得る. 対象と方法: 1999年11月に実施した全国ホスピス-緩和ケア病棟への統括責任医師・看護師への調査で回答のあった医師36名の中から, 同じ府県に位置する施設を2所ずつ計4所を選択し, それぞれの医師4名を対象に, 半構成式の面接聞き取り調査を実施した. 結果: 対象施設は設備面・スタッフ面ともに充実し, それぞれの特徴を生かした活動を行っていた. 在宅ホスピスケアは全ての施設で実施していた. 各施設における入院までの待機期間は1-2週間であり, 患者と家族に対しては, 早い時期に療養の場として在宅と施設の説明を行い, 自由に選択できるようにしていた. 地域に向けての活動は, 開業医や訪問看護ステーションの看護職者に対する教育, 地域住民への教育などの啓蒙活動を重要と捉えて実施していた. また対象医師は, 明確な動機をもって早い時期から終末期医療を志向しており, 患者が施設と在宅を選択できるホスピスケアの提供の実現を強く望んでいた. ホスピスケアにおける看護師の役割については, その役割を高く評価し強い期待をよせていた. 結論: 2県のそれぞれの施設では, 近年のホスピス-緩和ケア病棟の増加に違いが見られ, 今後地域性を生かしたホスピスケアの推進が望まれる.
  • 中村 健, 日野 直樹, 大地 陸男
    2003 年 49 巻 2 号 p. 208-214
    発行日: 2003/07/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: ラット心臓由来H9c2株化細胞は心筋および骨格筋のin vitroのモデルである. H9c2細胞における骨格筋型単一L型Ca2+チャネル電流のイソプロテレノールによる修飾を検討する. 方法: H9c2細胞を15-50日間培養し筋管細胞に発達させた. Ca2+アゴニストの (+) -202-791 (1000nM) および100mMBa2+を含む溶液をピペットに充填し, 細胞接着型パッチクランプ法により単一L型Ca2+チャネル電流を記録した. 結果: 小振幅の骨格筋型および大振幅の心筋型L型Ca2+チャネル電流が記録された. 骨格筋型電流がより多数のパッチから, 単独あるいは心筋型電流と併存し, 多チャネル電流として記録された. 併存する電流から個別的に和電流の時間経過を求めて比較すると, 骨格筋型の活性化の時間経過が特徴的に遅かった. イソプロテレノール (Iso, 1000nM) は両型のチャネルの開口頻度を増し, それぞれの和電流を増大させた. 骨格筋型チャネルの多いパッチからの平均電流はIsoにより増大し, チャネル活性化の電位依存性は過分極方向に変位した. 結語: H9c2筋管細胞のL型Ca2+チャネルにおいては骨格筋型が心筋型と併存するが, 骨格筋型の方が多い. βアドレナリン作動性物質のイソプロテレノールは骨格筋型L型単一Ca2+チャネルの開口頻度と平均電流を心室筋のL型単一Ca2+チャネルの場合と同様に増大させた.
  • 迫田 智子, 田代 享一, 船曳 和彦, 白土 公, 堀越 哲, 富野 康日己
    2003 年 49 巻 2 号 p. 215-221
    発行日: 2003/07/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 当科における糸球体疾患の病型と頻度を腎生検の適応基準別に集計し, 他施設での報告と比較検討した. 対象・方法: 腎生検例1,150例を対象とした. 腎生検の施行基準は時期により相違があり, 顕微鏡的・肉眼的血尿, 蛋白尿, もしくはネフローゼ症候群を呈した症例に腎生検を行った前期 ('78年-'86年) と軽度な顕微鏡的血尿のみの症例および尿蛋白が高選択性で尿沈渣所見の乏しいネフローゼ症候群でステロイド治療を優先した症例には腎生検を行わないと定めた後期 ('87-'00年) の2群に分け検討した. 結果: 腎生検の年間平均症例数は, 前期75.4例, 後期33.6例と後期で減少していた. 最も頻度の高かった組織病型はIgA腎症であり (42%), 次いで非IgA沈着増殖性糸球体腎炎および微小変化群 (MGA) (13%), 膜性腎症 (12%) であった. 前期と後期を比較すると, IgA腎症は38%から47%, 非IgA沈着増殖性糸球体腎炎およびMGAは17%から7%, 膜性腎症は10%から14%へと変化していた. 各発症様式での各疾患の割合は慢性腎炎症候群では, IgA腎症が53%と最も多く, ネフローゼ症候群では膜性腎症が33%で最も多かった. 結論: 腎生検の適応基準が変化してもIgA腎症は高率に認められた. 腎生検数が後期では前期に比べ減少していたことや組織病型の頻度に相違があったことは, 腎生検の適応基準の相違によるものと考えられた. しかし, 腎生検の適応基準に変化があっても, 確定診断と適切な治療法の選択や予後判定のために, 腎生検の施行は必要と思われる.
症例報告
  • 飯田 洋司, 中里 祐二, 佐々木 玲聡, 河野 安伸, 峰田 自章, 中里 馨, 戸叶 隆司, 安田 正之, 住吉 正孝, 中田 八洲郎, ...
    2003 年 49 巻 2 号 p. 222-225
    発行日: 2003/07/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    症例は52歳女性. 発作性上室頻拍による動悸発作を繰り返すため, 高周波カテーテルアブレーション治療目的で入院. 電気生理学検査のための右心カテーテル操作中, 卵円孔開存が確認された. 右心室からのペーシングにて左室側壁に心房最早期興奮部位を認め, 同部に逆行性伝導のみ可能な副伝導路を有する潜在性WPW症候群と診断した. また心室早期刺激法にて容易に正方向性房室リエントリー性頻拍が誘発された. アブレーションカテーテルを経心房中隔的に卵円孔から左房内に挿入し, 左房付着端で副伝導路の焼灼離断に成功した. 左側副伝導路アブレーションに際し, 術前の心臓超音波検査や電気生理検査により卵円孔開存が確認された場合, 経心房中隔アプローチによるアブレーションを積極的に試みるべきと考えられた.
抄録
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編集後記
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