目的: 切除不能進行胃癌に対する化学療法治療効果を, 70歳以上の高齢者群と70歳未満の非高齢者群で比較し, 高齢者群における化学療法の有効性を検討した.
対象および方法: 対象は1990年から2002年3月までに多剤併用化学療法 (局所療法は除く) を施行した70歳以上の高齢者切除不能進行胃癌症例 (以下高齢者群) のうち, フッ化ピリミジン系製剤 (UFTまたは5-Fluorouracil, 以下5-FU系) とcisplatin (CDDP) を中心に全身併用投与した19例 (男性15例, 女性4例, 平均年齢75.1±3.1歳) と, 同時期に同様の治療を施行した70歳未満の非高齢者群55例 (男性40例, 女性15例, 平均年齢55.0±11.8歳) を, 奏効率, 50%生存期間, 平均在宅期間, 50%在宅率, Performance Status (P. S) などのQOLの改善, 有害事象発現率から比較検討した.
結果: 高齢者群, 非高齢者群はそれぞれ奏効率21.1%と25.5%, 50%生存期間は272.0日と208.0日, 平均在宅期間は194.9日と136.2日, 50%在宅率は52.6%と34.5%, P. S改善率は73.4%と56.3%であり, それぞれの効果に有意差はなかったが, 高齢者群は非高齢者群に比べQOLの改善面において良好な成績を認め, これは奏効群, 非奏効群と分けて検討した場合でも同様の傾向が認められた. 薬物有害反応は高齢者群でGrade3以上の白血球減少, 血小板減少, 非高齢者群ではGrade3以上の悪心・食欲低下が多く認められた.
結論: 切除不能進行胃癌に対する化学療法は, 高齢者群では非高齢者に比べ奏効率や生存期間で差は認めなかった. しかし有意差はなかったものの, 平均在宅期間, 50%在宅率, P. Sの改善といったQOL改善面の有効性は非高齢者群に比し高かった. よって高齢者に対する化学療法は, 薬剤量を適正に調節し, 薬物有害反応に迅速で的確な対応ができれば, 治療効果が期待できると考えられた.
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