目的: 順天堂大学医学部産婦人科学講座にて開発した自律神経膀胱枝温存術式と従来の温存法との広汎性子宮全摘術術後排尿機能の推移について, 術後の放射線療法の影響を考慮に加えて, 比較検討を行った.
対象: 1993年11月から1998年10月までに順天堂大学医学部附属順天堂医院産婦人科において広汎性子宮全摘出術をうけた子宮頚癌Ib期症例40例を対象とし, このうち21例は基靭帯および仙骨子宮靭帯までの自律神経の温存群 (従来法) であり, 19例は, さらに膀胱子宮靱帯後層外側部までの自律神経温存を行った群 (新温存法) である. また, 両群は術後放射線療法の有無により分けた.
方法: 尿流動態検査はCO
2による膀胱内圧測定と尿流量測定とし, 術前, 術後1ヵ月, 3ヵ月, 6ヵ月, 12ヵ月, 24ヵ月の期間に分けて行った. 排尿機能の評価は最大尿意時排尿筋コンプライアンス値 (Cmdv値), 尿流量曲線パターンが正常化するのに要した期間を主たる指標とした.
結果: 術後放射線療法非施行群における, 術前値を100%としたときのCmdvの推移は術後24ヵ月で従来法に比較して, 新温存法群に有意 (p<0.01) な改善を認めた. また, 術後放射線療法施行群でも, 術後1, 24ヵ月において新温存法群に有意な改善を認めた. 術後放射線療法施行群は非施行群に比較してCmdv値の減少傾向を示し, 特に, 従来法群術後24ヵ月で著明であった. 尿流量曲線パターンが正常化するのに要した期間は新温存法群で, 従来法群に比して, 術後放射線療法施行の有無にかかわらず, 短期間であった. 術後10年間における両群問の再発率に有意差は認められなかった.
結論: 骨盤自律神経膀胱枝を温存する術式は従来法と比べ明らかに術後の排尿障害を軽減した. また, 広汎子宮全摘出術後の放射線療法は術後排尿障害に影響する事が示唆された.
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