順天堂医学
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52 巻, 4 号
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目次
特集 今日のがん化学療法
  • 飯島 克順, 渡辺 純夫
    2006 年 52 巻 4 号 p. 518-527
    発行日: 2006/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    近年, 胃癌罹患者数は減少しているものの, その死亡者数は肺癌についで依然第2位である. しかし, 胃癌に対する標準治療は決まっておらず, 臨床の現場では症例に応じて治療法の選択を行っているのが現状である. ここ数年, TS-1, CPT-11, タキサン系の新規抗癌剤が相次いで承認され, 多剤併用療法の工夫により徐々に生存期間の延長を認めているが, 未だ満足のいく結果は得られていない. 当科ではパクリタキセル (TXL) の特性に注目し, 従来のFP療法にTXLを加えたレジメンをフロントラインの標準治療として確立するため, 現在, 臨床第I相試験を施行している. フロントラインの確立とそれに続くセカンドライン以降の化学療法, 個々の病態に即した集学的治療を組み合わせることが生存期間, 在宅期間の向上に必要であると考えられる. また, 高齢者の癌患者が増加したことなどから, 延命重視の治療から患者のQOLを考慮した治療を行う必要性が高まってきた. われわれはEORTC QLQ-C30調査表を用いて, 化学療法がQOLに与える影響を検討し今後の治療方針に反映させたいと考えている.
  • 杉本 耕一
    2006 年 52 巻 4 号 p. 528-535
    発行日: 2006/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    これまでの造血器悪性腫瘍に対する化学療法が成功した代表的な例として急性骨髄性白血病に対するアントラサイクリン系薬剤+cytarabine療法, びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するCHOP療法が挙げられ, いずれもその治癒率は30-40%であった. これらの治療では, アントラサイクリン系抗癌剤, DNA代謝拮抗剤, アルキル化剤, ビンカアルカロイド等の抗癌剤が使用され, いずれもDNA損傷および細胞周期の阻害が主たる作用機序である. このためたとえば静止期の細胞が大部分を占める濾胞性リンパ腫には十分な効果が期待できなかった. 今日では, これまでに明らかにされた造血器悪性腫瘍の分子レベルでの病因・病態の理解を基盤として, いくつかの造血器悪性腫瘍において増殖促進, 細胞分化・アポトーシス抑制等の異常シグナルを特異的に阻害する分子標的療法剤が開発・使用されている. ここでは, 慢性骨髄性白血病に対するイマチニブ, 急性前骨髄球性白血病に対するall-trans型レチノイン酸, 濾胞性リンパ腫に対するリッキシマブを用いた治療に関して概説する.
  • 高橋 和久, 平間 未知大, 石渡 俊次, 三浦 佳代, 島貫 由理, 高橋 史行, 大橋 里奈
    2006 年 52 巻 4 号 p. 536-545
    発行日: 2006/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    わが国において肺癌は増加傾向にあり, また, 癌死の第1位であることから, その臨床的対応は急務である. 肺癌は組織学的に非小細胞肺癌Non-Small Cell Lung Cancer (NSCLC) と小細胞肺癌Small Cell Lung Cancer (SCLC) に分類され, その生物学的特性も異なる. 局所進展型のNSCLCの標準的治療は放射線と化学療法の同時併用であり, 遠隔転移を伴うNSCLCは全身状態Performance Status (PS) が許せば化学療法が第1選択となる. 1990年以降, パクリタキセル, ゲムシタビン, ドセタキセル, ビノレルビン, 塩酸イリノテカンなどの新規抗癌剤が導入され, 現在ではプラチナ製剤 (シスプラチンCisplatin (CDDP) あるいはカルボプラチンCarboplatin (CBDCA) ) と新規抗癌剤の2剤併用が進行NSCLCの標準的治療である. 高齢者はプラチナ製剤の使用が困難なことが多く, ビノレルビンあるいはドセタキセルの単剤投与も推奨されている. 初期治療に反応しない, あるいは再発症例に対してはドセタキセルの単独投与あるいはゲフィチニブ (イレッサ®) が選択される. ゲフィチニブはがん細胞表面に発現する上皮増殖因子受容体のチロシンキナーゼを特異的に阻害する小化合物であるがresponderとnon-responderがあること, 副作用としての5%の症例に急性肺障害が発症することが報告された. SCLCは早期から遠隔転移することが多く化学療法か放射線治療が適応となる. 限局型症例でPSが良好 (かつ高齢者でない) な症例では化学療法 (シスプラチンとエトポシド) と1日2回の多分割放射線照射の同時併用が選択される. 一方, 進展型の標準的治療は化学療法単独 (シスプラチンと塩酸イリノテカン) とである. これらの治療により, 手術不能肺がん症例の治療成績は飛躍的に向上し, NSCLC手術不能の1年生存率は20-30%に, SCLC LD症例は3年生存率30%となった. 高齢者に多い進行肺癌の治療は根治が困難であることから予後の改善とともにQuality of Life (QOL) を考慮した治療選択をすべきである.
  • 齊藤 光江
    2006 年 52 巻 4 号 p. 546-558
    発行日: 2006/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    欧米では死亡数が減り始めている乳癌であるが, 罹患は世界中で増加している. 原因の究明も重要であるが, 早期発見と診断後の有効かつ安全な治療の開発が当面の課題である. 治療は, 必要最小限の局所療法と最大限の全身療法が現在のスタンダードである. そして, 予後は, 発見時その癌が既に全身病になっているのか否かと, その最大限の薬物療法に癌がどれくらい反応してくれるかで決まる. 乳癌の予後を左右する薬物療法の代表である化学療法について, 手術前, 手術後, 再発後に施行する目的と内容, 結果を紹介する.
原著
  • 太田 一樹, 永原 章仁, 飯島 克順, 加藤 順子, 芹沢 信子, 長田 太郎, 吉澤 孝史, 岩崎 良三, 竹井 謙之, 佐藤 信紘
    2006 年 52 巻 4 号 p. 560-565
    発行日: 2006/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 切除不能食道癌に対する食道ステント挿入治療の有用性, 安全性についてプラスチックステントと金属ステントとを対比検討する. 対象と方法: 1992年から2002年に手術不能進行食道癌による食道狭窄をきたし, 食道ステント挿入を行った14例 (プラスチックステント群7例, 金属ステント群7例) を対象とした. うち10例は化学療法, 放射線療法の治療歴を有していた. 経口摂取改善度, Performance Status (P. S. ) 改善度, 生存期間, 在宅日数, 有害事象について2群間で比較検討した. 結果: ステント挿入により, 経口摂取P. S. は金属ステント群で有意に改善を認めた. 71.4%で在宅治療が可能となった. 生存期間, 在宅日数は2群間で有意差を認めなかった. 有害事象はいずれも制御可能で, 2群問に有意差を認めなかった. 結論: ステント治療を行うことにより, 経口摂取が可能となり, P. S. の改善のみならず, 在宅治療も可能となり, 患者のQOLはいちじるしく改善した. また, ステント留置は前治療を有する例にも安全に施行する事ができた. プラスチックステントと金属ステントとの比較では, 生存期間, 在宅率, 安全性に差を認めなかったが, QOLは金属ステント群で有意に改善した. これらの事から, 食道癌性狭窄に対してプラスチックステントでは十分なQOLの向上が得られず, 金属ステント留置が有用であると考えられた.
  • 坂本 修一, 坂本 一博, 鎌野 俊紀
    2006 年 52 巻 4 号 p. 566-572
    発行日: 2006/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 炎症腸管の収縮運動の機序を解明するために, フッ化ナトリウム (NaF) によるGTP結合蛋白質 (G蛋白質) の活性化によっておこる, 正常および炎症小腸の収縮運動について検討した. 対象と方法: 実験は成犬を用い, 神経遮断剤, NO阻害剤, シグナル伝達機構に関する薬物などを投与できるカテーテルを小腸辺縁動脈に挿入し, 腸管運動の測定を施行した. またエタノールと酢酸を腸管内に注入し炎症腸管を作製した. 結果: NaFは正常および炎症小腸で濃度依存的に収縮運動を発生させたが, 炎症小腸で有意に反応は抑制された (p<0.05). ニコチン受容体, ニューロン伝達, ムスカリン受容体などに対する神経遮断剤によりNaFの収縮運動は正常および炎症小腸で抑制された. 一方, NO阻害剤の投与で増大した. また平滑筋におけるシグナル伝達機構を検討するため事前に神経遮断剤とNO阻害剤を投与した. NaFの収縮運動は, カルシウムブロッカーとホスホリパーゼCの抑制剤で抑制され, 正常小腸では炎症小腸よりいずれも低い傾向であった. 結論: 小腸の収縮運動は炎症により抑制された. NaFは神経とNOの両者を活性化させ, 直接小腸平滑筋を収縮させていると考えられた. 炎症腸管における収縮運動はシグナル伝達機構よりも神経を介する機序により調節されていると考えられた.
  • 安堂 裕介, 武内 裕之, 木下 勝之
    2006 年 52 巻 4 号 p. 573-579
    発行日: 2006/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 離島医療における産婦人科診療の現況を把握し, 産婦人科担当医の役割や離島医療の今後のあり方について検討する. 対象: 関東地方に属する10島の有人離島に常勤し, 日常的に産婦人科診療を担当している医師を対象にアンケート調査を行った. 方法: 離島における診療面および生活面での特徴を表出させるために, 54項目のアンケートを作成した. 該当する11名にアンケートを送付し, 書面で回答を得た. 結果: 関東地方に属する10の離島 (総人口: 約27500人) において, 産婦人科を専門とする医師が常勤しているのは2島 (対象人口: 約18500人) にそれぞれ1名ずつであった. 他の8島 (対象人口: 約9000人) は自治医大出身の医師が全科を兼任しており, 妊婦検診を始めとする産婦人科診療も担当していたものの, 分娩は取り扱っていなかった. 2名の産婦人科専門医も, 内科系・外科系を問わず, 他の診療科疾患に対する診療を行っていた. 診療面, 日常生活面のいずれにおいても離島特有のハンディキャップはあるが, 今後も離島医療に関わりたいという医師が72.7%を占めた. 結論: 離島・へき地においては, 内科系・外科系ともにある程度対応できる総合診療医として, 産婦人科医に寄せられる期待は大きい. 非常に厳しい条件下での診療・生活を余儀なくされる離島ではあるが, やりがいを感じる医師は多く, 診療面・生活面での環境を整備することにより医師の安定供給は十分可能であり, 離島医療の質の向上につながると考えられた.
  • 全 峰, 深沢 徹, 梁 広石, 熊谷 安夫, 橋本 博史, 高崎 芳成
    2006 年 52 巻 4 号 p. 580-587
    発行日: 2006/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: ヒトアジュバント病という疾患概念があるが, 近年その是非がとりざたされている. 本研究は, シリコンおよびパラフィンなどを使用した美容形成術の既往のある膠原病もしくは膠原病症状を呈する患者21名についてその臨床的特徴について検討し, 疾患の発症における美容形成術との関連について考察する. 対象: 1980年1月-2004年12月に順天堂大学医学部附属順天堂医院膠原病内科に通院加療歴があり, 美容手術後膠原病症状・所見を呈した患者21例を対象とした. 症例の年齢は27歳から75歳まで (平均61.3±10.0歳), 性別は女性19例, 男性2例であった. 方法: (1) 対象患者を定型的膠原病と診断できる群 (第1群: 14例) と膠原病を示唆する臨床症状・検査所見を認めるが, 特定の膠原病の診断基準を満たさない群 (第II群: 7例) に分類し, 美容形成術から発症までの期間, 臨床所見について比較検討した. (2) 対象患者群 (21例) と1989年に熊谷が報告したヒトアジュバント病症例群 (29例) と臨床的特徴について比較検討した. (3) 対象患者第I群の疾患のうちわけを, 本邦における疾患別発症頻度と比較検討した. 結果: (1) 発症までの期間は第I群と第II群の比較では有意差はないが, 第I群は第II群より自己抗体陽性率が高かった. (2) 熊谷が報告したヒトアジュバント病の症例群と自験例とともに強皮症との関連が強く, また自験例ではシェーグレン症候群との関連性も示唆された. (3) 本邦における疾患別発症頻度と比較すると, 第I群では強皮症およびシェーグレン症候群の比率が高かった. 考察: 美容形成術の既往と強皮症, シェーグレン症候群との関連が示唆されたが, 発症までの期間が長いことや, 実験的には美容形成術で使用された異物が免疫応答を誘導することは証明されていないことから, ヒトアジュバント病と美容形成術との関連は明らかでない. 今後, 異物に対する患者リンパ球あるいはマクロファージなどの反応性について免疫学的な解析をすることが必要である.
  • --特に自律神経膀胱枝温存と術後放射線療法の影響について--
    橋本 昌典, 鈴木 正明, 木下 勝之
    2006 年 52 巻 4 号 p. 588-595
    発行日: 2006/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 順天堂大学医学部産婦人科学講座にて開発した自律神経膀胱枝温存術式と従来の温存法との広汎性子宮全摘術術後排尿機能の推移について, 術後の放射線療法の影響を考慮に加えて, 比較検討を行った. 対象: 1993年11月から1998年10月までに順天堂大学医学部附属順天堂医院産婦人科において広汎性子宮全摘出術をうけた子宮頚癌Ib期症例40例を対象とし, このうち21例は基靭帯および仙骨子宮靭帯までの自律神経の温存群 (従来法) であり, 19例は, さらに膀胱子宮靱帯後層外側部までの自律神経温存を行った群 (新温存法) である. また, 両群は術後放射線療法の有無により分けた. 方法: 尿流動態検査はCO2による膀胱内圧測定と尿流量測定とし, 術前, 術後1ヵ月, 3ヵ月, 6ヵ月, 12ヵ月, 24ヵ月の期間に分けて行った. 排尿機能の評価は最大尿意時排尿筋コンプライアンス値 (Cmdv値), 尿流量曲線パターンが正常化するのに要した期間を主たる指標とした. 結果: 術後放射線療法非施行群における, 術前値を100%としたときのCmdvの推移は術後24ヵ月で従来法に比較して, 新温存法群に有意 (p<0.01) な改善を認めた. また, 術後放射線療法施行群でも, 術後1, 24ヵ月において新温存法群に有意な改善を認めた. 術後放射線療法施行群は非施行群に比較してCmdv値の減少傾向を示し, 特に, 従来法群術後24ヵ月で著明であった. 尿流量曲線パターンが正常化するのに要した期間は新温存法群で, 従来法群に比して, 術後放射線療法施行の有無にかかわらず, 短期間であった. 術後10年間における両群問の再発率に有意差は認められなかった. 結論: 骨盤自律神経膀胱枝を温存する術式は従来法と比べ明らかに術後の排尿障害を軽減した. また, 広汎子宮全摘出術後の放射線療法は術後排尿障害に影響する事が示唆された.
報告
  • 檀原 高, 清水 俊明, 小林 弘幸, 鈴木 勉, 岡崎 任晴, 濱田 千江子, 森本 真司, 田村 剛, 井原 裕, 高田 維茂, 住吉 ...
    2006 年 52 巻 4 号 p. 596-602
    発行日: 2006/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    順天堂では1999年より, Faculty Development (FD) の一貫として臨床研修医, 指導医, 研修責任者のための『臨床研修医のための研修会』を毎年開催している. 日本では厚労省の指導のもとで研修制度を新たに制定した平成16年からは, 順天堂大学医学部附属3病院〈本郷, 静岡, 浦安〉が協力してこの研修会を継続している. 本稿では, 現在までの臨床研修医のための研修会を概観し, 平成18年9月2日と3日に開催された第8回本研修会について報告する.
  • 檀原 高, 清水 俊明, 小林 弘幸, 三橋 直樹, 住吉 正孝, 田中 稔, 吉田 幸洋, 磯部 豊, 阿部 幸男, 石賀 大介, 各務 ...
    2006 年 52 巻 4 号 p. 603-607
    発行日: 2006/12/22
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    わが国では, 平成16年以降に医学部を卒業し, 臨床に掲わることを希望するものは, 最低2年間の一般医としての医学教育を受けることが義務付けられた. 新たに制定されたこの卒後教育プログラムは法制化され, 厚労省の指導のもとで運用されることになった. 研修に先立ち, 財団法人臨床研修推進財団の新しい選考制度Residency Electronic Information System (REIS) が導入され, 学生と病院との双方のマッチングを行うことになった. このマッチングシステムでは, 学生がWebサイトで病院のすべてのプログラムを知ることができ, かつどの病院への応募も可能となっている. 一方, 病院は採用したい学生を登録することができる. 95%以上の学生が病院とマッチングが成立している. 今年の春, 順天堂には臨床研修が終了した124名のものが, 大学院生, 専門医専攻生, 総合医として, 後期研修に進級した. 本報告では, 順天堂大学における卒後教育の最近の動向について述べる.
抄録
順天堂医学原著論文投稿ガイドライン
順天堂医学投稿規程
編集後記
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