順天堂医学
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53 巻, 3 号
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Contents
目次
総説
  • 平松 啓一
    2007 年 53 巻 3 号 p. 350-351
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    病院の誕生, 発展の歴史は, 病院感染の歴史でもある. 病院感染対策は19世紀の優れた観察者・研究者であるSemmelweisらによりその基礎が置かれた. 20世紀半ばに抗生物質の時代が到来し, われわれの脳裏には, いつしか病原微生物は単に抗生物質によって殺滅すべき対象としてしか映らなくなってしまった. しかし, 今や, その時代は終わり, われわれは再び病原微生物とまともに向き合わなければならなくなった.
  • 伊藤 輝代
    2007 年 53 巻 3 号 p. 352-362
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    基礎医学は, 臨床医学の礎といわれる. ここでは基礎医学に属する細菌学, 感染制御科学におけるこの間の研究を3つの視点, 1) 薬剤耐性機構の研究, 2) MRSAの遺伝学的研究, 3) ゲノム解析とその情報を利用したマイクロアレイ解析から述べ, それらの研究が感染制御の新しい方法論を作る上で果たした役割を考察した.
  • 近藤 成美
    2007 年 53 巻 3 号 p. 363-371
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    微生物検査室 (臨床検査部) は, 病院感染管理において, 病原微生物の同定や薬剤感受性の情報提供, 病院感染管理に必須の感染サーベイランス, さらには医療スタッフの教育など, 重要かつ多面的な役割を果たしている. 微生物検査の結果は, 感染症診療において適切な診断・治療を行うための重要な情報となるため, 臨床医への検査情報の提供は迅速かつ系統的であることが求められる. この場合, 信頼性の高い検査結果を得るためには, 微生物検体の適正な採取・保存といった, 検体の品質管理が重要である. 微生物検査室には多くの情報が集積されるため, 微生物検査に関わる検査技師や臨床検査専門医が, 最初に病院感染アウトブレイクなどの兆候に気づくことも多い. このため, 微生物検査室に集積される疫学情報が, 必要なときにはいつでも経験的治療の指標や病院感染管理の基礎データとして, 機動的かつ有効に利用できるよう整備されていく必要がある.
  • 堀 賢
    2007 年 53 巻 3 号 p. 372-378
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    病院感染症の発生を予防することは, 文字通り病院感染症を“制御する”ことに他ならない. これを可能にするシステムを構築することができれば, 病院感染症対策が個人の力量に依存することなく永続的な組織の活動として継続することができる. 感染対策委員会が院内で横断的に活動を展開するためには, 様々な部署の代表者が委員として力を結集する必要がある. 具体的には, コアとなる感染対策室とともに, 院長 (または副院長), 看護部長, 事務部長, 診療部門代表者, 医療安全推進部, 検査部, 薬剤部, 栄養部, 施設課, 資材供給課, 健康管理室がメンバーに含まれるべきである. 各委員はそれぞれの立場から, 病院感染症予防に向けた提案と貢献が期待されている.
  • -順天堂医院の建築・設備に関する実態調査-
    伊藤 昭, 崎村 雄一, 森本 正一, 網中 眞由美, 平松 啓一
    2007 年 53 巻 3 号 p. 379-389
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    理想的な病院感染対策は, 病院建築設計の段階から始まる. 病院運用段階においても, 施設をいかに維持管理し, 環境を整備するかが重要で, この運用が見事に行われるためにも病院の構造自体が感染対策に適したコンセプトによって設計される必要がある. 今回, 理想的な病院建築に資するため, 順天堂医院の医師と看護師を対象にアンケート調査を行った. 外来に関しては, 診察待合や処置室のスペース不足, 診察室数の不足, また感染対策上近接することが望ましくない診療科の組み合わせなどが指摘された. 外来初診患者の適切な振り分けによる待ち時間の短縮を図ること, 感染症患者専用の診察待合が必要との意見が見られた. 手術・滅菌部門では, 2号館の建築空間の狭隘, 空気清浄度が気になるとの回答が見られた. 因に2号館の陰圧対応診察室の利用者は8.7%であった. 手術と滅菌部門との位置関係, 既滅菌物品や汚染物・廃棄物などの物流動線に対して不具合を感じている看護師が大多数を占めた. 一足制については, 院内感染との関連性は薄いとの理由で賛成数が反対を上回った. 病棟部門では, 病室の広さ・入口扉幅・ベッド間隔. 必要な設備, ステーション廻りの物流動線等に対する各号館に従事する看護師の感じ方の違いなどを把握した. 病院全体においては, 多くの職員が, 歩道橋, エレベータ, 長い移動ルートや各所の段差に対して不満を感じており, 患者のQOLに配慮して庭園, 図書館, 物販. 飲食店舗設置の要望が多かった. アンケート結果から, 医療スタッフの使用実態, 建築空間の感じ方, 感染制御に対する考え方, 部門諸室構成の要素, 環境・設備機能の改善点などを抽出した. 今後, 建築空間・設備の不具合箇所を検証して, 病院感染を防ぐ最適な環境整備と維持管理の手法構築に繋げたい.
  • 池田 恵
    2007 年 53 巻 3 号 p. 390-396
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    1980年代のMRSA (メチシリン耐性黄色ブドウ球菌) の台頭に始まり, VRE (バンコマイシン耐性腸球菌), MDRP (多剤耐性緑膿菌) など抗生物質耐性菌による病院感染はますます深刻な問題となっている. 順天堂医院の微生物検査室では, 自動機器 (MicroScan WalkAway) で薬剤感受性検査を行うブドウ球菌属菌株および腸球菌属菌株について, VCMの薬剤感受性を通常の判定法に加えて48時間後にも行い, 常法では検出されないVCM耐性低感受性菌の検出に努めている. このような方法を用いることにより, 平成17年5月に順天堂医院で, VanB型VREが入院患者1名の尿より検出された. 本稿では, VREアウトブレイクのリスクを予測し, 局地的流行伝播を早期に察知して速やかな感染対策を実施できたこと, さらに微生物検査室や医療安全管理室と協働して病院全体で適切な感染対策に取り組んだ結果, 新たなVREの伝播を防止しアウトブレイクを未然に防止することができた事例を紹介する.
  • 網中 眞由美
    2007 年 53 巻 3 号 p. 397-403
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    医療関連感染を防ぐための感染制御プログラムの構成要素として, (1) 感染制御のための明文化した方針と手順を立案, 実践, 評価, 更新 (2) 医療関連感染サーベイランスを実践 (3) 感染症の感染経路を遮断するための直接的介入手順の立案と実践 (4) 職業感染制御 (5) ファシリティマネジメント (6) 感染制御教育 (7) 感染制御コンサルテーションが挙げられる. なかでも医療関連感染サーベイランスは, 他の感染制御プログラムを遂行していく上においても不可欠であり, 重要かつ必須の感染制御プログラムである. 本稿では, 医療関連感染サーベイランスの概要について紹介する.
  • 菊池 賢
    2007 年 53 巻 3 号 p. 404-409
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    病院感染などの感染症診療に必要なサポート項目は診療体制, 感染管理, 教育, 研究の4つの要素に分類される. 中でも診療科としての感染症部門設置が一般的でないわが国の場合, 診療体制のサポート制度をどのように確保するかは, DPC導入推進, 医療費削減の上からも今後, どの病院でも直面する大きな問題となる. 本項ではわが国の感染症診療に望まれるサポート体制について, われわれの取り組みなどを紹介しながら論じてみたい.
原著
  • -ヘルスプロモーションの視点から-
    島内 憲夫
    2007 年 53 巻 3 号 p. 410-420
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, ヘルスプロモーションの視点から主観的健康観 (健康の定義) の年齢差. 性差・年次差を明らかにし, その類型化を試みることにある. ヘルスプロモーションとは, 「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし改善することができるようにするプロセスである. 」この健康の決定要因は, 遺伝, ヘルスサービス, ライフスタイル, 環境要因が考えられるが, ヘルスプロモーションの主眼は, ダイエット, 定期的な運動や禁煙そして家族や友人などとの良い人間関係, 音楽や絵画などの趣味活動, さらには自然とのふれあいなどといったような幅広い健康的な生活習慣形成にある. 人々の健康的な生活習慣形成は, 科学的な証拠EvidenceBased Medicine (EBM) に基づくと共に, ライフコースの中で生じる人々の様々な日常的諸経験や物語Narrative Based Medicine (NBM) にも基づいてつくられている. 健康社会学では, この健康的な生活習慣の形成過程を「健康の社会化Health Socialization」と呼んでいる. 健康の社会化とは, 「人々が当該社会における健康知識, 健康態度そして健康行動の様式を内面化することによって, 真の自由と幸せを獲得する過程である. 」 本研究は, その過程の中でも「健康知識」と「健康行動の様式」を媒介する「健康態度」に注目し, その中心を成す「人々の主観的健康観」の類型化とその性差・年齢差・年次差を明らかにしようとした. なぜなら, 生活習慣病が蔓延している現代社会において, 人々の幅広い健康生活習慣を支援するシステムを構築するためには, まず人々がNBMの視点から形成している主観的健康観も明らかにしなければならないからである. 本研究によって得られた人々の主観的健康観は次の6つに類型化された. (1) 「病気がない, 身体が丈夫, 快食・快眠・快便」といった身体的な健康観 (2) 「幸せ, 家庭円満, 生きがいの条件」といった精神的な健康観 (3) 「仕事ができること, 人間関係がよい」といった社会的な健康観 (4) 「心身ともに健やかなこと」といった身体的・精神的な健康観 (5) 「心も身体も人間関係もうまくいっていること」といった身体的・精神的・社会的な健康観 (6) 「人を愛することができること, 何事にも前向きに生きられること」といったスピリチュアル (霊的・魂的) な健康観 そして主観的健康観は, 年齢差, 性差, 年次差があること, また加齢や時代の移り変わりと共に身体的健康観から精神的, 社会的, スピリチュアル (霊的・魂的) な健康観に拡大していることが明らかになった.
  • 石川 雅邦, 竹井 謙之, 池嶋 健一, 榎本 信行, 櫃垣 信彦, 八木田 秀雄, 奥村 康, 佐藤 信紘
    2007 年 53 巻 3 号 p. 421-427
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: TRAIL (tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand) はtypeII膜タンパクであり, 正常細胞には有意な障害作用を及ぼさず, 一部の癌細胞に選択的にアポトーシスを誘導することが報告されている. しかし, TRAILが肝癌細胞を障害するか不明である. 一方, インターフェロン (IFN) は肝硬変からの発癌を抑制することが知られる. 本研究では, IFNにより発現増強したT細胞上のTRAILが肝癌細胞障害性を発現するか検討した. 対象および方法: 健常人由来ヒト末梢血T細胞 (PBT) はLymphoprep (NYCOMED) により分離し, 10%FCS添加RPMI1640にて培養した (3.5×106cells/ml). PBTは抗CD3/TCRモノクローナル抗体と共にIFNs (α, β;200∪/ml) を添加して12時間培養を行った後, 洗浄しeffector cellとして用いた. PBT表面に発現したTRAIL量はフローサイトメトリーにて解析した. ヒト肝癌細胞株とIFN刺激PBTの共培養を行い (E/T比5), 癌細胞障害能を検討した. 結果: 分離PBT細胞膜上には有意なTRAIL発現は認めなかった. しかし, IFNα, βにて12-48時間刺激を行うと, 著明なTRAIL発現増強が惹起された. PBTとの12-48時間の共培養ではHepG2細胞からのLDH逸脱は軽微であったが, 抗CD3抗体-IFN処理PBTとの共培養では, LDHは3-4倍に増加した. さらに抗TRAIL抗体 (10μg/ml) を培養液に添加することで, IFN刺激PBTによる肝癌細胞障害は著明に (-70%) 抑制された. 結論: 以上の結果は, IFNはPBT細胞膜上のTRAIL発現増強を介して癌細胞障害性を発現することを示す. IFN療法によりウイルス排除が完遂されない場合でも, 肝硬変から肝発癌が抑制される機序の一端を説明しうる可能性が示唆された.
  • 齋藤 雅子, 呉本 慶子, 高橋 系一, 新島 新一
    2007 年 53 巻 3 号 p. 428-437
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 新生児の脳波は乳幼児以降の小児, 成人の脳波とは大きく異なり, 陰性の一過性鋭波は正常であってもあらゆる部位から出現する. これらの鋭波の特徴を明らかにするために新生児脳波の一過性鋭波について背景脳波が正常な群と異常な群を比較検討した. 対象および方法: 順天堂医院NICUに入院した126人の新生児で修正37-42週に施行した127例の脳波を対照とした. 背景脳波により67例が正常, 32例がdisorganized pattern群, 40例がdysmature pattern群に分けられた. 一過性鋭波の部位別の1分あたりの出現頻度, 周波数, 振幅につきそれぞれの群で比較検討した. 結果: 一過性鋭波の1分あたりの出現頻度は全体ではdisorganized pattern群で0.928±0.681と正常群0.634±0.381に比較し有意に高かった (p<0.01). CとTではdisorganized pattern群での出現頻度が有意に高かった (p<0.05). dysmature pattern群では統計的には明らかではないがいずれの部位でも正常群に比較すると多く認められた. 振幅ではFの150μV以上のもの, C, Tの100μV以上のものがdisorganized pattern群で正常群に比較し優位に多く認められた (p<0.01, 0.05, 0.05). 周波数では4-7HzのものがCとTでdisorganized pattern群で正常群に比較し優位に多く認められた (p<0.05). 結語: 一過性鋭波はdisorganized pattern群でCとTに有意に多く認められた. この様な一過性鋭波の出現の仕方の特徴は新生児脳波を判読する上で一つの特徴となると思われた.
  • 船山 和志, 堀口 逸子, 辻本 愛子, 丸井 英二
    2007 年 53 巻 3 号 p. 438-445
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 本研究の目的は, 健康づくりという観点から横浜市K区の高齢住民の現状を質的に把握することである. 対象および方法: 調査法としてフォーカスグループインタビューを用いた. 対象者は区内在住の自立した前期高齢者から, 男性19名, 女性18名の計37名を有意抽出した. 抽出したメンバーから, 10名程のグループを, 男女別にそれぞれ2グループ, 計4グループ作成した. 1グループにつき90分程のインタビューを行い, 健康づくりに関連した項目について質問した. 分析はインタビューを行った筆者と, フォーカスグループインタビューの分析経験のある2名のものと行った. 結果および考察: その結果, 前期高齢者において, 健康づくりと地域交流などの社会参加が密接に関係していた. 女性では, 健康づくりの活動において, 友人関係や社会活動が重要な要素であったが, 阻害因子となる場合も存在することが明らかになった. 男性では, 健康づくりにおいて仕事からの退職が大きな契機となることが示唆された. ほとんど会社内だけでの人間関係から, 退職後は地域社会での生活への転換が必要となり, そのことがスムーズに行われることが健康づくりや社会参加に影響していることが考えられた. 今後の健康づくり活動では, これらのことをふまえてサポートする必要性が考えられた.
  • --動物実験におけるコイル留置長期経過後の血管組織学的変化--
    稀代 雅彦
    2007 年 53 巻 3 号 p. 446-457
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 動脈管開存症や主要側副血行路などに対して最近普及してきた経皮的コイル塞栓術に用いる金属コイルの生体におよぼす影響を懸念し, 留置後に自己組織化し長期間経過後の影響は無視できると考えられるatelocollagenを素材とするコラーゲンコイルの開発を試み, 動物実験によるコイルと血管の組織学的変化を検討した. 対象と方法: 対象は体重9.8-12.0kgの雑種成犬12頭. 作製したコラーゲンコイルを成犬目的血管 (腎動脈, 頚動脈, 椎骨動脈) 内に経皮的に留置. 留置後1週間から5年までの血管を経時的に採取し, コイルと血管内腔の変化を組織学的に検討するとともに閉塞状態を観察した. 結果: 血管閉塞を目的とするX線不透過性のコラーゲンコイルは作製, 留置可能であった. 今回コラーゲンコイル留置5年間経過までの長期所見が得られたが, 完全閉塞は維持され, 組織学的には完全自己組織化が完成され得ることを確認した. コラーゲンコイルの自己組織化には, atelocollagenの生体内吸収速度と増殖してくる新生組織の生成速度とのバランスに多因子が関与していると考えられ, 血管内流血中での自己組織化は, 初期には活発に, 中期まではなだらかに, その後はさらにゆっくりと経過する. 結論: atelocollagenを素材とする血管閉塞用コイルは作製可能であり, 5年間経過までには完全自己組織化をきたし得た. この実験結果は, 金属コイルとの代替えの可能性を示唆するものと思われた.
  • 工藤 綾子, 稲冨 恵子, 佐久間 志保子
    2007 年 53 巻 3 号 p. 458-467
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 本研究は訪問看護師ならびに施設責任者の在宅医療廃棄物処理の現状を把握し, 訪問看護ステーションの適正処理に関する教育的課題を明らかにすることを目的とした. 対象: 訪問看護師703名, 施設責任者345名. 方法: 対象者には質問紙による郵送法調査を行った. 調査内容は, (1) 在宅医療廃棄物の処理状況, (2) 医療廃棄物取り扱いに関する指導内容と方法, (3) 感染性医療廃棄物に関する意識と取り扱い, (4) 行政・企業・施設に対する要望などであった. 調査結果: (1) 訪問看護師が施設に持ち帰る廃棄物は注射器・注射針, 点滴セット, 血糖測定時のテステープ・カット針などであった. (2) 医療廃棄物に関する講習会への参加経験がある訪問看護師は25%であった. (3) 職員を講習会に参加させている施設責任者は34%であった. (4) 施設に対しては医療廃棄物に関するマニュアル作成, 感染症に対する学習の機会を要望していた. (5) 行政・企業への要望は訪問看護師・施設責任者ともに知識の普及であった. 結論: 講習会参加については参加させている施設責任者, 参加経験のある訪問看護師ともにその効果を認めているものの, 職員を講習会に参加をさせている施設責任者は少なく, 訪問看護師の在宅医療廃棄物に関する知識の普及と各市町村ならびに施設の廃棄システムを踏まえた感染性医療廃棄物の取り扱いマニュアルの作成が急務な課題であることが明らかになった.
  • 山口 忍, 丸井 英二, 斉藤 進, 荒賀 直子
    2007 年 53 巻 3 号 p. 468-476
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 1歳児をもつ母親の育児困難感の有無を把握し, 母子の属性と育児困難感の関連を明確にする. 対象: 千葉県内の協力が得られた2市に在住する1歳児をもつ全母親910名 方法: 2005年10月に無記名自記式質問紙による郵送調査を実施した. 育児困難感がある母親の把握には母子愛育会日本子ども総合研究所が作成した子ども総研式育児支援質問紙1歳児用を使用した. 結果: 分析対象は有効回答が得られた362名 (39.8%). 育児困難感がある母親は21.0% (76名) であった. その内, 育児困難感I. IIともにもっとも強いランク5である面接相談が必要とされる母親は4.4% (16名) であった. 育児困難感がない母親は79.0%で, その内訳では全くなしが45.0%であった. 母の属性7項目との関連では, 妊娠中に異常があった母親と関連がみられた (p<0.05). 子どもの属性7項目との有意な関連はなかった. 結論: 育児困難感がある母親は21%であり2000年の川井らの報告と比較して増加していた. また, 妊娠中に異常があった母親は育児困難感を持つことが明確になった. 今後は育児困難感軽減に向けた取り組みの充実が急務であり, そのためには妊娠中からの予防方法の開発, 汎用性がある育児困難感尺度の開発が必要である.
  • 李 瑛花, 中村 靖, 伊藤 茂, 木下 勝之
    2007 年 53 巻 3 号 p. 477-484
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 下肢深部静脈血流の妊娠経過に伴う変化を検出し, その臨床的意義を探る. 対象: 順天堂医院に通院中の妊婦と当院で出産した産婦116人および非妊婦10人を対象とした. 方法: 妊娠初期 (6-10週), 中期 (20-24週), 後期 (30-34週), 分娩前 (36週以降), 分娩後 (産褥3日目) に検査期間を分け, それぞれ30回ずつ, 左右の浅大腿静脈 (FV) と膝窩静脈 (PV) の血管径と血流速度を, 超音波診断装置を用いて測定し妊娠中の変化および左右差を比較検討した. 結果: FV, PVともに血管径は妊娠初期には有意差を認めなかったが, 中期以降は妊娠とともに有意に拡張した (p<0.001). RFV, LFV, LPVでは妊娠に伴って初期-中期, 中期-後期に有意な拡張を認め (RFV: 初期-中期p<0.001, 中期-後期p<0.01, LFVおよびLPV: 初期-中期, 中期-後期p<0.001), RPVでは初期-中期で有意な拡張を認めた (p<0.001). 左右の比較では後期に左側で有意に拡張が認められた (FVp<0.01, PVp<0.001). 血流速度は妊娠初期には有意な変化はなかったが, その後, 初期-中期にかけ血流速度が有意に低下した (RFV:p<0.001, LFV, RPV, LPV:p<0.01). しかし, 左右差は認めなかった. なお, 産後3日目には血管径, 血流速度とも速やかに妊娠前のレベルにまで回復した. 結論: 今回, 以前より指摘されていた妊娠中のDVTが左側に危険が高いことが確認された. 一方, 正常妊娠では血管径に左右差が生じても流速には左右差が生じなかったことより, 血栓形成には流速が大きく関与していることが推測された. 以上より, 超音波検査は静脈血栓の診断のみならず, 血管径の変化および静脈血流の変化を詳細に検討することにより血栓形成ハイリスク患者の抽出にも大変有用な検査となりうることが示唆された.
第20回都民公開講座《気になる肝臓病,肝がん――肝がんにならない方法,なった場合の対処法――》
  • 富野 康日己, 渡辺 純夫
    2007 年 53 巻 3 号 p. 485-486
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
  • メタボリックシンドロームとの係わり
    竹井 謙之
    2007 年 53 巻 3 号 p. 487-491
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    最近わが国でも肥満が著明に増加しつつありますが, 肥満に高い率で合併する疾患の一つに脂肪肝があります. 脂肪肝は従来, 進行しない良性の肝疾患と考えられていました. しかし, 今や脂肪肝は生活習慣病の一つであると共に, メタボリックシンドロームや動脈硬化の発症・進展と直接関わりを持つことが明らかになりつつあります. 肝臓は食事由来のブドウ糖を取り込んで肝細胞内に蓄え, 空腹時など, 諸臓器の需要に応じてブドウ糖を血液中に放出します. 一方, 膵臓から分泌されたインスリンは肝臓に作用して, ブドウ糖の取り込みを促進し, 食後の過血糖を抑制します. 脂肪肝になると, 肝臓におけるインスリン作用の減弱-インスリン抵抗性-が現れ, 血糖制御の変調を招きます. また, インスリン抵抗性があると, これに打ち勝ってインスリンの作用を確保しようとして, 血液中のインスリン濃度が上昇するため, インスリンの負の作用である脂肪合成亢進作用, 血圧上昇作用, 動脈硬化促進作用が前面に出ます. 肥満・脂肪肝と高血圧や糖尿病, 高脂血症はインスリン抵抗性を基盤としてそれぞれを増悪させていくわけです. アルコールを飲まない人にも脂肪性肝炎が発症することがあり, 非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) と呼ばれます. 脂肪肝がまず存在して, そこに様々なストレスや障害因子が加わり, 炎症の出現/NASH発症に至ると考えられています. NASHは炎症を伴わない脂肪肝よりもさらにインスリン抵抗性が顕著であり, 病態形成やメタボリックシンドロームの惹起に重要な役割を果たしています. また, NASHは炎症の持続から, 肝臓の線維化を来して肝硬変, さらには肝がんまで進展しうる疾患です. メタボリックシンドロームの基盤病態として, また進行する肝臓病として, NASHを捉え, 適切な対応をしていく必要があります.
  • --特にC型肝炎ウイルスに対して--
    市田 隆文
    2007 年 53 巻 3 号 p. 492-495
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌の大半は肝炎ウイルス陽性の慢性肝炎や肝硬変から出現する. したがって, ウイルスを排除することにより肝細胞癌に進展することは確実に防げる. よしんばウイルスが排除できなくても, 壊死, 炎症を抑えることにより, 肝細胞癌への進展を遅らせることが可能となってきた. すなわち, 肝細胞癌にならない方法はある.
  • 須山 正文
    2007 年 53 巻 3 号 p. 496-499
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌の内科的治療であるRFAとリザーバーによる治療について概説した. RFAは小さな腫瘍で3個以内を適応としているが, その3, 5年生存率は63%, 48%と比較的良好であった. 合併症は7%にみられた. リザーバー治療はいまだ症例数が少ないが, 多発する腫瘍で有効例がみられ, 抗がん剤の開発などにより有効な治療法となりうると考えられた. しかし, 併存する肝硬変が進行するために予後が不良となることが多く, 肝硬変の進行を遅らせることも重要な課題である.
  • 川崎 誠治
    2007 年 53 巻 3 号 p. 500-505
    発行日: 2007/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌に対する外科治療としては, 肝臓の一部を腫瘍とともに切除する肝切除がある. 肝細胞癌の多くは慢性肝疾患を背景として発生するために, 背景肝の障害度を正しく評価し, さらに腫瘍の進展度をみて肝切除の適応を決定しなければならない. 肝細胞癌は門脈内腫瘍栓とそれに続く肝内転移を形成する臨床病理学的特徴を有し, したがって可能ならば腫瘍の血管支配領域を考慮した系統的切除が望ましい. 肝切除が適応でなければ, 経皮的局所療法, 肝動脈化学塞栓療法を考慮する. 肝硬変が進行した肝細胞癌症例では, 腫瘍条件によっては, 肝移植が適応となる. 欧米では主に脳死肝移植が施行され, 本邦ではほとんど生体肝移植のみしか行われていない. 腫瘍条件としては, ミラノ基準を満たす症例は肝移植後の再発も少なく, 本邦でも肝癌をともなった症例の脳死肝移植への登録はミラノ基準内のものに限られ, また生体肝移植もミラノ基準内の症例しか保険適応となっていない. しかし, ミラノ基準外であっても条件によっては自費で生体肝移植が施行されているのが現状である.
症例報告
抄録
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