背景: 軟骨や椎間板に多く存在するII型コラーゲンは, 分解されるとII型コラーゲン架橋C-テロペプチド (type II collagen C-terminal telopeptide ; CTX-II) を生じ, 尿中に排泄される. このCTX-IIは, 股関節や膝関節の軟骨の変性や摩耗の程度の評価に有用であるとされる一方, II型コラーゲンを主たる構成体とする椎間板の変性程度とは, 相関が認められないと報告されている.
目的: 尿中CTX-IIと腰椎X線における個々の椎間板変性の進行度との相関関係について横断的に検討すること.
対象および方法: 対象は, 腰痛を訴えて当院を初診した40歳以上の患者100例の腰椎400椎間である. X線学的腰椎椎間板変性の評価として, 椎間板高, 椎体縁の骨棘長, K/L分類を測定した. 早朝2番尿を採取し, 尿中CTX-IIを測定した. 上記データと年齢, 性差, BMI, 腰椎MRIと尿中CTX-IIとの相関について横断的解析を行った. データの統計解析は, t検定およびKruskal-Wallis検定を用いた.
結果: 尿中CTX-IIは年齢, BMIにおいて相関は示さなかった. 男性より女性の方が有意に高かった. L2/3, L3/4椎間板高との間に相関を認め, 高, 低椎間板群間で有意差を認めた. 骨棘長および腰椎MRIについては, どちらとも有意な相関は認められなかった.
考察: L2/3, 3/4椎間板高でのみ相関を認めた結果は, X線撮影時の焦点と距離からなるものと思われる. 骨棘形成は椎間板変性の二次的な現象であり, 椎間板の変性程度と骨棘は相関しないと考えられた. CTX-IIは椎間板の構造的破綻により放出されたのち検出されている. MRIは椎間板の構造的変化が起こる以前の段階をも検出していると考える事ができ, 尿中CTX-II値と相関しない理由である可能性が考えられた.
結語: 尿中CTX-II値は, 腰椎X線における椎間板変性の程度を反映する可能性がある.
抄録全体を表示