順天堂医学
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55 巻, 1 号
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Contents
目次
話題 一般医に判る花粉症の完全攻略法
  • -疫学・発症のメカニズムと診断法-
    横井 秀格
    2009 年 55 巻 1 号 p. 2-7
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    花粉症は花粉を原因抗原とする季節性のアレルギー性鼻炎であります. 症状が強く, 生活の質の低下を招き, 年々増加していることから問題となっています. 症状はアレルギー性鼻炎の三主徴である鼻汁, くしゃみ, 鼻閉にアレルギー性結膜炎症状としての目のかゆみを伴いやすいものです. 病態は1型アレルギー反応ですが, 好酸球など多くの炎症細胞が関与する炎症性疾患といえます. “なぜ花粉症は増加しているのか?”については, 疫学的にスギ抗原の増加も一因ですが, 先進諸国における生活水準の向上から, 衛生環境が改善するとともに, 予防接種や抗生物質が普及し幼少児期の感染症が激減したことが, アレルギー性疾患増加の原因となっているのではないか?という『衛生仮説 (Hygiene Hypothesis) 』があります. 近年のTh1, Th2のバランスが崩れているという理論が後押してています. すなわち, Th2反応は抗体産生を誘導することで細胞外病原体防御に関連することから, アレルギー疾患におけるTh2の働きについて明確となりTh2細胞の優位性がアレルギー疾患の発症や重症度に関係していると考えられています. 診断においては他の疾患と同様に問診など患者さんとのコミュニケーションが大切であり, 血清IgE抗体検査 (RASTなど) や鼻汁好酸球検査, 画像検査が有用です.
  • 楠 威志
    2009 年 55 巻 1 号 p. 8-10
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
  • -手術の適応と効果-
    池田 勝久
    2009 年 55 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    保存的治療に抵抗を示す花粉症などのアレルギー性鼻炎に対して下鼻甲介を標的とした各種の手術が試みられています. 適応は薬物療法などの保存的治療に抵抗を示す症例です. 使用機器や方法としては電気凝固法, 化学凝固法, レーザー手術, アルゴンプラズマ凝固装置などが挙げられます. 下鼻甲介粘膜の凝固術が無効な鼻漏とくしゃみの重症例では, 後鼻神経切断術が短期入院で適応となります. 難治性の鼻閉には粘膜下下鼻甲介骨切除術, 下鼻甲介粘膜切除術などが有効です.
特集 小児の栄養――こどもの未来を考える――
  • 児玉 浩子
    2009 年 55 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    わが国では, 肥満児はなお増加しており, 中高生男子の約12%, 女子の約10%は肥満児である. 肥満児の15-20%はメタボリック症候群で, 生活習慣病合併例や生活習慣病予備軍も多い. 要因は胎児期の低栄養, 早期のBMIリバウンド, エネルギー・脂肪・動物性蛋白の摂取過多, 朝食欠食, 運動不足などである. 肥満小児は成人肥満に移行する率が高い. したがって肥満小児には早期からの介入が重要であり, 肥満の予防には食育が必要である. 食育推進には『食・栄養と健康・病気』に関する科学的根拠に基づいた知識が不可欠であり, 小児科医には, このような知識の提供が求められている. また, 日常診療でも子どもの体形に注目し, 肥満小児には積極的に介入することも必要である.
  • -胎内および発達期の栄養環境と生活習慣病-
    板橋 家頭夫
    2009 年 55 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    Barkerらの報告を契機に多数の疫学調査が行われ, 子宮内発育不全による低出生体重児が生活習慣病のリスクが高いことが知られるようになった. これらの疫学調査や動物実験などをもとに, Barkerらが提唱したのがFetal Origins of Adult Disease (FOAD) 仮説である. その後, GluckmanとHansonらは, FOAD仮説の限界を踏まえ生物進化論的視点を加えたDevelopmental Origins of Health and Disease (DOHaD) 仮説へと進展させ, 現在広く受け入れられている. DOHaD仮説とは, 感受期において胎内あるいは発達期の環境に応じ獲得した不可逆的適応反応 (developmental plasticity) を基盤に, その後の環境とのミスマッチによって生活習慣病へと進展するという考え方である. 現在, わが国の新生児の平均出生体重が1970年半ば以後減少しつつある. この原因は, 出産適齢期の女性のやせ願望や, 初産年齢の高齢化, 多胎妊娠, 女性の喫煙率の増加などの非遺伝的母体要因のために胎児の発育が抑制される (maternal constraint) ことに起因すると考えられている. 運動不足や飽食の時代にあっては, maternal constraintによってdevelopmental plasticityを獲得すると, 胎内環境と出生後の環境のミスマッチが容易に生じる可能性が高い. したがって, 出生体重が減少しつつあるこの傾向に歯止めがかからなければ, 将来わが国においては生活習慣病などの成人期慢性疾患の爆発的な増加が数世代にわたって続くことが懸念される.
  • 早川 昌弘
    2009 年 55 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    適切な栄養管理を行うことは, 胎児, 新生児にとって重要であるが, 時に, 母体合併症や新生児期の疾病により, 栄養管理に難渋することがある. 胎児期-新生児期の栄養は, 児の中枢神経発達に重要な役割を果たしており, 適切な栄養が供給されないと身体発育が抑制されるばかりでなく, 中枢神経発達にも悪影響が及ぶことが知られている. 一方, 新生児脳波は, 発達過程における中枢神経の機能的評価が行える検査であり, 特に経時的脳波記録を行うことで, 受傷時期の推測や脳成熟の評価が可能である. われわれは, 新生児脳波を用いて, 子宮内発育不全 (胎児発育不全) および子宮外発育不全 (出生後の発育不全) における中枢神経成熟評価を行い, いずれの場合も, 経腸栄養の確立, 身体発育が中枢神経成熟と関連があることを明らかにした. 周産期の栄養障害と発達予後との関連については, 広く研究が行われているが, 新生児脳波を用いた電気生理学的検討は, その病態解明に有用であると思われる.
  • 赤澤 智宏, 志村 健作, 石井 邦弥, 松尾 望
    2009 年 55 巻 1 号 p. 34-39
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    神経堤細胞は全身の様々な組織に分化する多様性と, ダイナミックな移動能が特徴である. 神経堤細胞の異常に惹起される疾患は小児期に発症し, 全身性の複合疾患を呈する. 本研究ではマウス発生工学的手法を駆使することで, 神経堤細胞の発生・分化・増殖・移動を明らかにすると同時に, 神経堤複合疾患の病態解明に貢献する事が期待されるモデル動物を作成した. 神経堤細胞の発生過程で長期間発現が持続する転写因子SOX10のプロモーター領域に, 蛍光タンパク質VENUSを挿入して外来性に発現させるトランスジェニックマウスを作出した. われわれはインサー-トサイズが200kbpに及ぶBACクローンを鋳型として, 大腸菌内相同組み換え技術を応用し, BAC内のマウスSOX10遺伝子の翻訳領域をVENUSに置換することによって, BACトランスジェニックマウスを作成した. この組み換えマウスは, SOX10の発現細胞に時間特異的・部位特異的にVENUSが発現することが確かめられた.
原著
  • 中原 大志, 米澤 郁穂, 奥田 貴俊, 迫田 順太, 野尻 英俊, 鎌野 俊哉, 黒澤 尚
    2009 年 55 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    背景: MRIの普及によって特発性側弯症患者にChiari I型奇形などの小脳扁桃の位置異常が発見される機会が増えた. Chiari I型奇形を伴う側湾症は進行性であり治療に難渋することが多いことは知られているが, 5mm未満の小脳扁桃の下垂 (tonsillar ectopia) と側弯の進行を検討した報告は少ない. 対象と方法: 特発性側弯症の診断で受診し, 初診時のCobb角が50°以下で, Risser signが4以下の女性患者118例を対象に頭頸移行部のMRIを撮影した. 小脳扁桃の下垂度によってChiari I型奇形 (C群), tonsillar ectopia (E群), 下垂のない例 (N群) に分類し, 各群と側弯の進行の相関を検討した. 結果: C群は4例 (3.4%), E群は10例 (8.5%), N群は104例 (88.1%) であった. 側弯の進行を認めたものは, 118例中42例 (35.6%) であった. その内訳は, C群が4例 (100%), E群が4例 (40%), N群が34例 (32.7%) であった. C群とE群 (P=0.04), C群とN群 (P=0.006) で側弯の進行に有意差を認めた. また, E群内では, 小脳扁桃の下垂が2mmを超えるものが有意に側弯の進行を認めた (p=0.048). 考察: 今回の結果から, 2mm以下のtonsillar ectopiaは側弯の進行に対しては病的意義がなく, 2mmを超えるtonsillar ectopiaは, Chiari I型奇形を合併した側弯症と同様に進行の危険性が高く注意深く経過を観察する必要があると考えられた. 一方, 頭蓋骨の成長により小脳扁桃の下垂が軽減すると側弯の改善が認められたという報告がある. tonsillar ectopiaにはChiari I型奇形が改善した例が含まれており, 小脳扁桃の下垂が2mm以下まで軽減すると側弯の進行が安定化すると推測された.
  • MITSUAKI KUBOTA, HISASHI KUROSAWA, HIROSHI IKEDA, YUJI TAKAZAWA, TAKAY ...
    2009 年 55 巻 1 号 p. 45-53
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    目的 : 変形性膝関節症 (膝OA) においてbone marrow abnormality (BMA) といわれる骨髄病変がMRI上しばしば認められる.BMAは膝OAのX線分類や疼痛に相関すると報告されているが, BMAのサイズ評価法はいずれも2次元的な評価である.われわれは内側型膝OAに対しBMAの3次元的なサイズを半定量的に評価し, さらにX線分類, 臨床所見と比較検討した. 方法 : 対象は内側型膝OA238例で, 全例X線,MRIを撮像した.X線分類はKellgren-Lawrence (K/L) 分類 (1-4) を使用した.MRI T2強調脂肪抑制画像でBMAの大きさをWORMSにしたがい2次元的に評価し, さらに3次元的なサイズを評価するため新しいスコア (spacial BMA score=s-score) を使用した.臨床症状は関節可動域 (ROM), 臨床スコアとしてVAS (visual analog scale) とJKOM (Japanese Knee Osteoarthritis Measure) を使用した.s-scoreとX線分類, 臨床所見と比較検討した. 結果 : BMAの頻度は内側大腿脛骨関節において74%であり, 外側大腿脛骨関節 (14%) および膝蓋大腿関節 (14%) に比べ有意に高値であった (P<0.01).内側大腿脛骨関節におけるs-scoreの増加はK/L分類の進行と有意に相関した.さらにs-scoreの増加はROMの縮小, VASおよびJKOMの増大と有意に相関した. 考察 : 内側大腿脛骨関節における3次元的なBMAの拡がりは内側型膝OAのX線分類および臨床所見と有意に相関した.
  • 迫田 順太, 石島 旨章, 黒澤 尚
    2009 年 55 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    背景: 軟骨や椎間板に多く存在するII型コラーゲンは, 分解されるとII型コラーゲン架橋C-テロペプチド (type II collagen C-terminal telopeptide ; CTX-II) を生じ, 尿中に排泄される. このCTX-IIは, 股関節や膝関節の軟骨の変性や摩耗の程度の評価に有用であるとされる一方, II型コラーゲンを主たる構成体とする椎間板の変性程度とは, 相関が認められないと報告されている. 目的: 尿中CTX-IIと腰椎X線における個々の椎間板変性の進行度との相関関係について横断的に検討すること. 対象および方法: 対象は, 腰痛を訴えて当院を初診した40歳以上の患者100例の腰椎400椎間である. X線学的腰椎椎間板変性の評価として, 椎間板高, 椎体縁の骨棘長, K/L分類を測定した. 早朝2番尿を採取し, 尿中CTX-IIを測定した. 上記データと年齢, 性差, BMI, 腰椎MRIと尿中CTX-IIとの相関について横断的解析を行った. データの統計解析は, t検定およびKruskal-Wallis検定を用いた. 結果: 尿中CTX-IIは年齢, BMIにおいて相関は示さなかった. 男性より女性の方が有意に高かった. L2/3, L3/4椎間板高との間に相関を認め, 高, 低椎間板群間で有意差を認めた. 骨棘長および腰椎MRIについては, どちらとも有意な相関は認められなかった. 考察: L2/3, 3/4椎間板高でのみ相関を認めた結果は, X線撮影時の焦点と距離からなるものと思われる. 骨棘形成は椎間板変性の二次的な現象であり, 椎間板の変性程度と骨棘は相関しないと考えられた. CTX-IIは椎間板の構造的破綻により放出されたのち検出されている. MRIは椎間板の構造的変化が起こる以前の段階をも検出していると考える事ができ, 尿中CTX-II値と相関しない理由である可能性が考えられた. 結語: 尿中CTX-II値は, 腰椎X線における椎間板変性の程度を反映する可能性がある.
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