順天堂医学
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56 巻, 1 号
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目次
Contents
話題 就学前の子どもの問題
  • 清水 俊明
    2010 年 56 巻 1 号 p. 2
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
  • -就学前の子どもを中心に-
    篠原 光代
    2010 年 56 巻 1 号 p. 3-6
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    おとなの睡眠時無呼吸 (以下SA) はマスメディアなどを通じて知られているが, 子どものSAについては, あまり知られていないのが現状である. 子どものSAの原因は口蓋扁桃および咽頭扁桃肥大等による気道狭窄と言われており就学前後の子どもに多く認められる. 子どものSAもおとなと同様に閉塞型が一般的であり, 今回子どもの閉塞型睡眠時無呼吸症候群 (以下OSAS) について簡潔にまとめた. 子どものOSASの臨床症状は体型指数 (BMI) が14.9以下の痩せ型の子どもが約半数であった. 保護者の11%は子どものSAを確認してないこと, 眠気を覚ます意味での過剰行動が63%にみられる一方, 授業中に頃眠を認める子どもが48%いること, 口呼吸が89%に認められ, 食事時間および食塊を飲み込むまでの時間の遅延が認められることなどから家庭, 学校での子どものOSASに対する啓発活動が必要であると考えられた. 子どものOSASの診断には頭部X線規格撮影写真によるセファロメトリー (一般的分析に加え, 特に気道分析) を行い, 可能な限りファイバースコープにて上気道の観察を耳鼻咽喉科医とともに行うことが望ましい. PSG検査は入院下で施行するのが難しい場合, 自宅で簡易型PSGを用いて数日間測定することが望ましい. 子どものOSASの治療は, 対症療法ではなく, できれば根治的療法 (矯正治療による顎の成長誘導, 扁桃の外科的処置等) を行うことが望ましく, なによりもSAを予防することが重要であると考えられた.
  • 細澤 麻里子, 田中 恭子
    2010 年 56 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    発達障害と診断される子どもの数は世界的にも増加傾向にあり, 医療, 教育, 福祉など多方面にわたる支援体制の整備が急務となっています. また, これまでの研究から発達障害においては早期発見, 早期療育が重要であることが認識されています. わが国では平成17年に発達障害者支援法が施行され, その一環として乳児健診を利用した発達障害の早期発見に努めてきました. しかし, 特に知的障害を伴わない発達障害児は「気になる子」とされながらも3歳児健診でも半数近くが見過ごされ, その結果, 就学後に不適応や心身症などの二次障害を引きおこすことが少なくありません. これに対して, 3歳児健診以降に顕在化する問題に気づき, 適切な就学や支援に結びつけるために, 一部の地域では5歳児健診が広まりつつあります. 発達障害には現時点では根本治療がありませんが, 適切な対応により本人の抱えている学習・生活上の困難さが改善されることも少なくなく, まずは障害を理解し症状に気づいてあげることが大切です.
  • 横山 利幸
    2010 年 56 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    就学後には黒板や教科書, 定規など就学前と比べ格段に質の高い視機能が要求されます. 小児の場合, 外見上の異常があれば早期に眼科受診がなされますが, そうでなければそのままでは見逃されてしまいます. 日本では就学前の眼科健診としては3歳児健診, 就学時健診があって, ほとんどのところが視力検査を実施しております. ここで異常が発見されれば, 治療可能なものは就学前に治療を開始し, 就学前に治癒もしくはある程度の改善が得られますし, そうでなくても就学後の対策がたてられます. 治療可能な疾患で健診によって発見される代表は弱視です. 弱視の治療の原則は屈折矯正と健眼遮蔽です. これは今も変わりませんが, 最近では少なくとも視力0.3以上の中等度弱視では以前より短い遮蔽時間で効果が出ることがわかりました. またアトロピン点眼によるペナリゼーションも同様の効果があることがわかり, 見直されてきています. さらに, より年長児でも治療の効果が確認され, 新しい治療としてはLevodopaの内服による弱視の治療が試みられています. しかしながら, 重症の弱視ではやはりより長時間の遮蔽のほうが効果的であり, また若年のうちに治療を開始したほうが反応がよいのも確かであります. その意味では3歳児健診は大変有意義で重要と思われます. 今後は見逃しをできるだけ少なくし, 3歳児健診の精度を上げるよう, 屈折検査の導入や視能訓練士の関与が望まれますが, それには社会的な基盤を充実させる必要があると思います.
  • 永田 智
    2010 年 56 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    小児は成人と違い, 成長, 発達により身体や臓器の状態が劇的に変化します. すなわち, 成人に必要な身体の維持や運動に要する栄養のほかに, 「成長・発達」に必要な栄養素やエネルギー量を考えなくてなりません. 一方, 小児の食物摂取能力や消化・吸収機能は発達途上であり成人より未熟です. 小児の栄養は, この「成長・発達」と「未熟性」という二つの特徴を念頭において, 細やかな対応をしていくことになります. 小児の栄養必要量を算出するのに重要なポイントは, (1) 発育に必要なエネルギー量や各種の栄養素を考慮する. (2) 幼少児においては, 臓器の機能が未熟であり代謝予備能が低いことに留意する. (3) 体液の影響を強く受けることに注意する. の3点です. 小児の総エネルギー量の算出には, 成人のHarris Benedictの公式は適用できず, 年齢と体重を考慮して算出します. 成長期の小児においては, 身体構成成分としての蛋白質の重要性が高くなっています. また, 小児では脂質の蓄積量が少ないため, 容易に必須脂肪酸欠乏に陥ります. 小児の成長に必要なミネラルとして「カルシウム」, 発達に必要な微量元素として「鉄」が, 特に欠乏しやすく注意を要します. 小児期は, 栄養不良になるとまず体重増加が不良になり, 「身長に対する体重比」が低下します. 栄養不良が慢性化すると身長の伸びも悪くなり, 「年齢に対する身長比」が低下します. 「身長・体重比」が90%未満のものを急性栄養障害, 「年齢・身長比」が95%未満のものを慢性栄養障害と判定します. 小児の成長に必要な栄養のファクターは, 総エネルギー, 蛋白質, カルシウム, リン, ビタミンA, D, 発達に必要な栄養素は, 鉄, 脂肪酸, ヨウ素, 葉酸が主なものと言われています. 被虐待児の事例や, 長期にわたり経腸栄養や経静脈栄養を余儀なくされる肝胆道系, 腸疾患の病児, もしくは不適切な栄養状態の母体においては, これらの栄養素の欠乏に十分注意すべきと思われます.
  • 笠井 美里
    2010 年 56 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科の開業医が見ている小児患者は平均で30%, 多い施設では50%です. 免疫獲得中の小児には感染性の耳疾患・鼻疾患・上気道炎が頻発します. 小児耳鼻咽喉科領域で近年問題になっていることは耐性菌による急性中耳炎の増加・滲出性中耳炎の増加と遷延化アレルギー性鼻炎の増加と低年齢化, 睡眠時無呼吸症候群の増加などが挙げられます. 一方, 小児耳鼻咽喉科領域の治療の進歩としては内視鏡手術の進歩による気道異物や鼻副鼻腔手術の技術向上, 人工内耳の進歩, 難聴遺伝子の解明などが挙げられます. 少子化の傾向は進んでおりますが, 周産期医学の進歩により以前は致死的であった病態も救命できるようになりました. 小児の成長に際し重要な意味を持つ聴覚や呼吸機能に障害をもつ小児の増加が予想されます. 本項では耳鼻咽喉科を受診する患児に多い疾患の診断と治療, 最近の知見について述べます.
総説
  • 渡部 幸司, 長岡 正範
    2010 年 56 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    リハビリテーションの分野で電気刺激療法は, 従来, 鎮痛や筋力強化などの目的で使用されているが, 有効性がほとんど証明されていない. 今回, 電気刺激療法の有効性が認められない理由, さらに新しく開発された方法を紹介し, 今後の展望について検討した. 電気刺激療法は, 対象や刺激条件がさまざまであるため, 目標別の刺激条件を概説した. 従来は, 神経・筋に対する治療法がほとんどであったが, 近年, それ以外にも糖輸送体タンパク質増加, 血管新生や血流増加なども報告されている. 神経・筋に対する治療法では, 電気刺激による筋収縮が生理的な筋収縮とは違うという問題点がある. それに対し, 新しい方法であるハイブリッド訓練法と随意運動介助型電気刺激装置は, 随意運動と同時に行うことで, 生理的な筋収縮も得る方法である. 今後, 電気刺激療法を他の運動療法と併用することなどで, さらに発展が期待できる.
  • モハマド タハ, エミリア タヌセプトラ, 富野 康日己
    2010 年 56 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    末期腎障害 (ESKD) 患者では, 心血管疾患の発症が増加することが知られている.心血管疾患の発症・進展に酸化ストレスが注目されている.酸化ストレスマーカーのなかでも一酸化窒素 (NO) は, L-アルギニンを基質として一酸化窒素合成酵素 (NOS) より生成される半減期の非常に短いフリーラジカルであり, 強力な作用をもつ.特に血管内皮においては, 内皮型一酸化窒素合成酵素 (eNOS) からのNO 産生が血管内皮障害の進展に深く関与していることが知られている.また, eNOS の遺伝子多型が高血圧や糖尿病の進展に関与しているとの報告もみられているが, eNOSの多型とESKDとの関係については十分に検討されていない.一方, ESKD 患者ではホモシスチン (HCY) と非対称型ジメチルアルギニン (ADMA) が増加しており, 透析患者においてHCY は独立した心血管障害のリスクファクターであり, ADMAは心血管イベントのリスクを34% 増加させることが知られている.最近, N-アセチルシステイン (NAC) はHCYやADMAを低下させることが報告されており, ESKD患者における心血管疾患発症の予防因子の一つとして注目されている.本稿では, インドネシアのESKD患者におけるeNOSの遺伝子多型 (Glu298Asp) およびHCYとADMAに関連したNACの役割に注目し, 最近の知見をふまえて概説する.
原著
  • 各務 正, 建部 一夫, 酒井 理恵, 檀原 高
    2010 年 56 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    目的: 医学教育の卒前教育においては学生により教員評価が行われるが, 卒後教育においては大学院教育等を除けば実施されていない. 今回, 卒後教育における様々な評価者に対する被評価者の意識調査を行った. 対象・方法: 順天堂大学医学部の1992年 (卒後17年目) から2006年 (卒後3年目) まで15年間の卒業生 (調査依頼対象数1,186名) への郵送によるアンケート調査を行った. 評価者を上司, 同僚, パラメディカル, 患者, 学生, 自分自身, 学会に分け, 卒後教育において教育効果を向上させるために, どの評価者が有効かを回答させた. 結果: 回答率は40.6%. 被評価者が有効と認識している評価者は, 卒後3年から7年目のグループでは上司と学会を, 8年目から12年目のグループでは患者と同僚を, 13年目から17年目のグループでは同僚とパラメディカルとする調査結果となった. 学生からの評価が有効と考えるものは各卒後年次を通して少なかった. 結論: 被評価者は, 卒後年数が高くなるに従って, 自らの成長に有効とする評価者は, 指導上で直接的な上司等から病棟で協働している同僚医師へと変化していることが示唆された.
  • VU Tuan Anh, 高井 敏朗, LE Anh Tuan, 木下 洋和, 上條 清嗣, 原 むつ子, 王 暁玲, 小川 尊資, 須藤 ...
    2010 年 56 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    目的: アトピー性皮膚炎患者の皮膚における黄色ブドウ球菌数が顕著に高いことはよく知られている. 黄色ブドウ球菌由来成分はアトピー性皮膚炎の発症および増悪化に関与する可能性がある. Toll様受容体 (TLR) を介した病原体構成分子の認識は, 獲得免疫応答への架け橋となる自然免疫応答を起動する. 黄色ブドウ球菌はペプチドグリカン, リポタイコ酸, およびリポタンパク質などのTLR2関連リガンドを産生する. 本研究では, アトピー性皮膚炎の感作過程および増悪化サイクルにおいて皮膚バリア機能破壊によって黄色ブドウ球菌由来TLR2関連リガンドが角化細胞と相互作用しうる状況を想定し, これまで検討されていなかったジアシル化リポペプチド刺激による角化細胞における炎症性サイトカイン発現誘導を解析する. 方法: 3つのTLR2リガンド (ペプチドグリカン, 合成トリアシル化リポペプチド, および合成ジアシル化リポペプチド) でヒト角化細胞を刺激し, 炎症性サイトカインおよびケモカインの産生誘導をELISA法および定量PCR法によって解析した. 結果: TLR2とTLR6複合体によって認識されるジアシル化リポペプチドは, ペプチドグリカンや, TLR2とTLR1複合体によって認識されるトリアシル化リポペプチドよりも効率よくCXCL8/IL-8タンパク質の放出を誘導した. ジアシル化リポペプチドはトリアシル化リポペプチドよりも効率よくCXCL8/IL-8, GM-CSFおよびCCL5/RANTESなどの炎症性サイトカインおよびケモカインのmRNA発現を誘導した. 結論: 角化細胞刺激におけるTLR2-TLR6複合体の重要性が示唆された. アトピー性皮膚炎の発症および増悪化における黄色ブドウ球菌由来ジアシル化リポタンパク質の関与の可能性は今後の検討課題である.
  • 茅野 崇, 菱沼 知美, 松尾 美記, 張 萌, 伊藤 輝代, 森本 ゆふ, 平松 啓一
    2010 年 56 巻 1 号 p. 56-67
    発行日: 2010/02/28
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    目的: 市中獲得型MRSA (CA-MRSA) の出現は最近10年間で世界的流行の様式になりつつある. CA-MRSAの高病原性はヒト白血球を破壊するPVL (Panton-Valentine leukocidin) と呼ばれる毒素を産生する能力と関連があると考えられている. CA-MRSAは, 病院獲得型MRSA (HA-MRSA) と称する現存するMRSAとは明確に区別されており, βラクタム薬に抵抗性が低く, かつ, βラクタム薬以外の異なる抗生物質に対して抵抗性が限定的である. また, CA-MRSAは, SCCmec (staphylococcal cassette chromosome mec) と呼ばれるMSSAからMRSAに変える動く遺伝子上に異なるレパートリーを保持している. 方法: 近年, CA-MRSAが病院内に侵入し, あらゆる強力なβラクタム薬に曝露されることによりβラクタム薬の高度耐性を獲得し始めている. このことは, われわれにマイクロアレイの遺伝子発現解析によりCA-MRSAの代表株であるUSA300の異なる病原性遺伝子の発現に対し高度耐性獲得の影響を評価するための動機となっている. われわれはさらに, HA-MRSAゲノムにより運び込まれたSCCmecに特徴的に見つけ出されたfudoh領域の病原性遺伝子の転写効果を検証した. 結果: 遺伝子発現プロファイル解析およびPVLアッセイの結果, USA300のオキサシリン高度耐性変異株は, 親株と比べ毒素遺伝子の転写が増強し, PVL産生量が増大した. 一方で, fudoh導入変異株は, 多くの病原性遺伝子の転写を抑制させる結果となった. 考察: CA-MRSAがオキサシリンに高度耐性化すると, 病原性が増強する可能性が示唆された. このことは, CA-MRSAに対するβラクタム薬の治療方法が, 病院内でより強毒なCA-MRSAを出現させる結果になるかもしれないことを示唆している.
症例報告
抄録
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編集後記
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