小児は成人と違い, 成長, 発達により身体や臓器の状態が劇的に変化します. すなわち, 成人に必要な身体の維持や運動に要する栄養のほかに, 「成長・発達」に必要な栄養素やエネルギー量を考えなくてなりません. 一方, 小児の食物摂取能力や消化・吸収機能は発達途上であり成人より未熟です. 小児の栄養は, この「成長・発達」と「未熟性」という二つの特徴を念頭において, 細やかな対応をしていくことになります. 小児の栄養必要量を算出するのに重要なポイントは, (1) 発育に必要なエネルギー量や各種の栄養素を考慮する. (2) 幼少児においては, 臓器の機能が未熟であり代謝予備能が低いことに留意する. (3) 体液の影響を強く受けることに注意する. の3点です. 小児の総エネルギー量の算出には, 成人のHarris Benedictの公式は適用できず, 年齢と体重を考慮して算出します. 成長期の小児においては, 身体構成成分としての蛋白質の重要性が高くなっています. また, 小児では脂質の蓄積量が少ないため, 容易に必須脂肪酸欠乏に陥ります. 小児の成長に必要なミネラルとして「カルシウム」, 発達に必要な微量元素として「鉄」が, 特に欠乏しやすく注意を要します. 小児期は, 栄養不良になるとまず体重増加が不良になり, 「身長に対する体重比」が低下します. 栄養不良が慢性化すると身長の伸びも悪くなり, 「年齢に対する身長比」が低下します. 「身長・体重比」が90%未満のものを急性栄養障害, 「年齢・身長比」が95%未満のものを慢性栄養障害と判定します. 小児の成長に必要な栄養のファクターは, 総エネルギー, 蛋白質, カルシウム, リン, ビタミンA, D, 発達に必要な栄養素は, 鉄, 脂肪酸, ヨウ素, 葉酸が主なものと言われています. 被虐待児の事例や, 長期にわたり経腸栄養や経静脈栄養を余儀なくされる肝胆道系, 腸疾患の病児, もしくは不適切な栄養状態の母体においては, これらの栄養素の欠乏に十分注意すべきと思われます.
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