子どもの眼の病気には, 先天性ですでに治療が困難なものから, 早期発見, 早期治療で視機能の発達を促せるものまで様々なものがある. 小児期は視覚の発達する重要な時期であるにもかかわらず, 症状があっても子どもなのでうまくいえず, 中には自覚症状がほとんど出ないものもあり, そのせいで病気の発見が遅れやすいのも特徴である. 眼科における検査や診察は, おとなには簡単なものでも, 子どもには大変困難な場合が多く, 診療が難しいこともあるが, 根気と時間をかけて適切な診療を継続すると, 視力が上がっていくお子さんが多いのも事実である. 子どもの眼球の発育程度や機能的発達は, 年齢差や個人差があり一様ではない. また近年, 親子関係, 親族関係の多様化や, 患児を取り巻く環境格差も拡大してきている. このように, 一人ひとりのお子さんに適切な診療を行うと同時に, 各家庭の事情に配慮することも大切である. 一方, まったく健康であっても, 環境の整備不足や, 危険予測の未熟さ, いじめやけんかなどによる外傷で視力を失う子どももいる. 子どもの眼の病気の予防, 早期発見, 早期治療の重要性は, 少子高齢社会においてますます高まってきている. WHO (国際保健機構) の統計によると, 2002年の小児期の失明者は世界で約148万人, 日本盲人福祉委員会の統計によると, 2005年の盲学校在籍者は約4千人となっている. 全国盲学校在籍者の眼疾患では未熟児網膜症が約20%にのぼり, 近年増加傾向となっている. このような失明に至る重症疾患のほか, 弱視や斜視のように視機能の発達不全が出る疾患, ストレスなどが原因と考えられる心因性視覚障害, 非常に稀な先天異常や遺伝性疾患なども含まれ, 小児眼科が扱う疾患は, 実は非常に広い範囲を対象としている. 眼科専門医の診療が必要な子どもの眼の病気と, 日常生活での注意点などについてあらかじめ両親が知っておくことが重要となる.
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