順天堂医学
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57 巻, 6 号
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目次
Contents
特集 第326回順天堂医学会学術集会
  • -総合学としての緩和ケア学への挑戦-
    奥野 滋子
    2011 年 57 巻 6 号 p. 570-581
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    緩和ケアには, 身体的苦痛・精神的苦痛・社会的苦痛・スピリチュアルペイン (いわゆる全人的苦痛・トータルペイン) の軽減を目的としたケアに加えて, 病態・疾患の管理・治療効果の向上という役割もある. 現在では, 緩和ケアはターミナルケアと同義ではなくなってきており, 治療の早期から開始されるべき医療サービスと定義されている. また, 緩和ケアは, がんに特化せずあらゆる疾患に適応されるものとして, 海外ではすでに慢性進行性疾患, 認知症, 高齢者医療の現場にも導入されている. がん医療においては, 緩和ケアはがんの診断から死に至るまでの間, すなわち治療のどの段階においても提供されるべき医療サービスであるといえる. 原因ががんであるか否かにかかわらず, 病気がもたらす最終的な姿は死である. 医療者もまた, 死を前提とした人間としての患者の人生の一部分を担っているという認識をもち, 患者, 家族とかかわる姿勢が大切である. したがって医療者は, 治療を行うにあたり, 患者の人生の意味の喪失, 自己コントロール感の喪失, 罪の意識, 孤独, 希望がないこと, 死についての恐怖を無視することはできないであろう. 緩和ケアの教育には, 医学・看護学・薬学といった自然科学の知識に加えて, 人文社会学・宗教学・哲学・死生学・生命倫理学といった人間科学の知識を融合することが望ましく, 緩和ケア・医療の最前線から, 私たちは「総合学」としての「緩和ケア学」を啓発していかなければならないと考える. 以上, 順天堂大学医学部附属順天堂医院緩和ケアセンターの活動状況報告とともに, 緩和ケアの現状と問題点について概説した.
  • 笹井 啓資
    2011 年 57 巻 6 号 p. 582-587
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    放射線治療は飛躍的に進歩し, 病変に集中して放射線を照射することが可能となった. このため, 多くの悪性腫瘍で外科手術と同等の治療成績が得られるようになった. 放射線治療は外科手術と比較して, (1) 臓器の形態や機能を温存が可能, (2) 低侵襲, (3) どの部位でも治療可能などの特徴がある. このため, 治癒率に加えて治療後のQOLが重視される現代では根治的治療としての放射線治療が重要な役割を担っている. 低侵襲かつ強力な局所的治療である点から, 放射線治療は悪性腫瘍による症状の緩和治療法としても有効である. 放射線治療は症状の改善とともに病変そのものの治療が可能であり, 単独でも, またほかの治療法と併用することもできる. 対症的放射線治療の主に対象となる疾患は, 骨転移による疼痛, 神経の圧迫による麻痺, 気道や血管の圧迫の解除, 脳への転移などがあげられる. これらのうち, 脊髄圧迫による脊髄横断症状, 上大静脈症候群などは緊急放射線治療の対象であり, すみやかな治療開始が望まれる. 放射線治療はきわめて強力な根治的治療法であるとともに, 緩和ケアでの利用も有効である. ほかの治療法と適切に組み合わせることで, より効果的に目的を達することができる.
  • 宮田 真美子
    2011 年 57 巻 6 号 p. 588-593
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    緩和ケアには精神腫瘍学 (サイコオンコロジー) というがん患者とその家族, ケアにあたるスタッフに生じる精神症状や心因反応に介入する専門分野がある. この精神腫瘍学は腫瘍学, 精神医学, 心理学を基盤として創始されたが, 今日では基礎医学から哲学, 社会学の知識も含んだ総合的学問分野となっている. 研究課題は2つあり, がん患者の精神面に与える影響を研究することと, 精神的・心理的因子ががんの発症や転帰に与える影響を研究することである. がん患者に生じる通常反応の経過と精神症状の特徴についてまとめた. また, 精神腫瘍学が関係するトータルペインの一つであるスピリチュアルペイン (霊的苦痛) の定義とスピリチュアルケアの要点を説明する. 最後に順天堂大学浦安病院緩和ケアチームも精神状態の調査研究を行っており, この結果を踏まえた臨床でのケアとこれからの展望を述べる.
  • 山口 敬介, 井関 雅子, 奥野 滋子, 稲田 英一
    2011 年 57 巻 6 号 p. 594-601
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    本邦で2006年にがん対策基本法が成立し, 緩和ケアを早期から適切に行うことが明記された. これにより緩和ケアは大きな広がりをみせ, ホスピスや緩和医療専門病棟だけでなく, 一般病院でも緩和ケアチームが設置されるようになってきた. それに伴いWHO除痛ラダーに代表される体系化されたがん性疼痛管理法が広く普及し, さらにこの10年間にオピオイド鎮痛薬の種類・剤形や投与経路が増えたことやオピオイド以外の薬物療法や鎮痛対策が増えたこと, 優れた薬物の出現なども手伝って, がんの痛みに対する除痛率は大きく向上している. しかしながら, すべての医療従事者が, がん性疼痛管理に習熟しているとは言い難く, 今後の課題として各診療科や各部門の垣根を越えて機能する緩和ケアチームを整備し, 緩和ケアの啓蒙・普及に努める必要がある.
総説
  • 直居 豊
    2011 年 57 巻 6 号 p. 602-609
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    2011年3月11日に起きた東日本大震災は福島原発の2次災害を引き起こし, 結果として放射線について日本人すべてがあらためて考えさせられる事態となった. この放射線災害は近隣の住民のみならず, 被曝した食材などが日本全国に流通されたことから全国的な問題となっている. 結果として多くの国民が放射線に怯えることとなったが, その最大の理由は正確な情報や知識が流布されないまま放射線という目にみえない威力と恐怖が全国的に拡大したためである. われわれ放射線科医は常に放射線と接して仕事をしてきており放射線のよさ, こわさも理解しているつもりであるし, 常に放射線被曝を減らす努力も忘れないように教育されてきた. しかしわれわれ職業人以外はほとんど放射線について教育される機会も興味も少なかったと思われる. 通常職業人として放射線を扱う者には年1回の放射線安全教育が厚生労働省から義務づけられており, 順天堂でも必ず年1回安全教育が行われてきた. しかし必ずしも出席者は多いとはいえず, あまり身近なこととは理解されていなかったように思う. 今の時期こそ医療従事者として放射線について今一度考えるよい機会と思われる. 本稿では医療従事者として知っておくべき放射線の知識と福島の原発災害関連での実被害, 風評被害の一部について解説する. またより広い視野で放射線について考えてもらうために自然放射線や職業被曝, 医療被曝についても概説する.
原著
  • -未治療高血圧患者における層別解析研究-
    高良 勝彦, 鈴木 仁, 鈴木 佑介, 堀越 哲, 富野 康日己
    2011 年 57 巻 6 号 p. 610-616
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    慢性腎臓病 (Chronic Kidney Disease;CKD) が, 世界的に注目されている理由の一つは, CKDが末期腎不全への進展と心血管イベントの危険因子であることが明らかにされたからである. それらを阻止するためには, 厳格な降圧と蛋白尿の改善が重要視されている. 今回, われわれは, 未治療の高血圧CKD患者を対象に, カルシウム拮抗薬ベニジピン投与による降圧効果ならびに蛋白尿減少効果, 抗酸化効果を検討したので報告する. CKD合併未治療高血圧患者34例にカルシウム拮抗薬であるベニジピンを投与し, 1年間追跡した. 血圧, 尿蛋白クレアチニン比 (UP/cre) および過酸化脂質 (Lipid peroxide;LPO) を投与前後で測定した. 収縮期および拡張期血圧は, 投与前に155.4±17.8/91.5±12.2mmHgであったものが, 投与1年後には133.1±17.6/77.3±10.3mmHgに低下した (それぞれp<0.001). UP/creは, 投与前には1.50±1.50g/g creatinine (g/g cre) であったが, 1年後には0.79±1.06g/g creとなり, 有意に低下した (p=0.012). UP/creの変化率は, 65歳以上のCKD合併高血圧患者では, 65歳未満のその患者に比べ有意に大きかった (83.3%vs. 40.6%, p=0.042). また, LPOは, 投与前に1.39±0.67nmol/mlであったものが, 1年後には0.89±0.23nmol/mlとなり, 有意に低下した (p=0.023). 本研究では, CKD合併高血圧患者のなかで未治療に対象を限定しても, ベニジピンは尿蛋白を高齢者でより強く減少させた. これらの結果から, ベニジピンが尿蛋白改善効果を有することが示唆された. また, ベニジピンの投与によりCKD合併未治療高血圧患者のLPOレベルは低下したため, ベニジピンは抗酸化作用を有することが示唆された.
  • 杉田 学, 野村 智久, 関井 肇
    2011 年 57 巻 6 号 p. 617-623
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    目的: 急性薬物中毒患者は背景に精神疾患をもつことが多く, 入院となった場合精神科医の常駐しない病院では受け入れを躊躇することがある. 本研究の目的は, 当院で経験した急性薬物中毒症例を分析し, 適切な病院選定を行うために, 搬送前に得られる情報からどのような患者背景が入院に関連するかを明らかにすることである. 対象と方法: 過去4年間に当院を受診した611症例の急性薬物中毒を対象に後ろ向きに検討した. 患者の背景, 病院到着前の患者情報, 診療内容, 転帰を調べ分析した. 性別による患者背景や治療内容の違いや, 入院と関連がある患者背景について統計学的検討を行った. 結果: 対象のうち死亡例はなく, 入院となったのは289名 (47%) であった. 性別による患者状態や治療内容の違いはなかった. 入院と関連が高い因子は, 高齢 (p=0.0006), 重度の意識障害があること (p=0.0001), 50錠 (包) 以上の大量の内服があること (p<0.0001) であった. 一方, 精神科受診歴の有無, 内服後搬送の時期, 付き添いの有無は, 入院との有意な関連性はみられなかった. 結語: 重度の意識障害や大量の内服症例は入院となる可能性が高いため, 入院可能な施設へ搬送するべきである. 一方で精神科受診歴があることや内服早期であること, また付き添いがいないことは入院させることができない施設でも受け入れを拒否する理由とはならず, これらの患者を一旦受け入れることで, 搬送困難症例を減らすことができる.
  • 櫻本 浩司, 内丸 仁, 内藤 久士, 和賀 俊明, 砂山 聡, 清水 孝彦, 黒澤 尚, 白澤 卓二
    2011 年 57 巻 6 号 p. 624-629
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    目的 : ヘモグロビンの酸素親和性の変化が生体に及ぼす役割は, いまだ議論のあるところである. われわれはマウスにおいてヘモグロビンの酸素親和性が, 赤血球生成, 末梢組織での酸素消費および身体活動性を制御している可能性を報告した.そこでわれわれはヘモグロビンの酸素親和性を変動させる因子を探るため, 環境因子, 特に食物由来の因子を探索した. 対象および方法 : 健康男性ボランティアから血液を採取し, 生成したヘモグロビンと様々な服用可能な植物抽出液を混ぜ, P50値をHEMOX-ANALYZERで測定した.さらに, 健康男性ボランティアがAllium sativum抽出物質1,000mgを服用し, その前後でのP50値および2, 3-diphosphoglycerate (2, 3-DPG) 値を測定した. 結果 : スクリーニングテストにおいて, 多種の植物由来の抽出物質がP50値を変動させた.この中からAlliumsativumを候補として選択し, in vitroにおいて有意にP50値を上昇させることを認めた.さらにin vivoにおいてAllium sativum抽出物質1,000mg服用後2時間でP50値は有意に上昇した.さらにAllium sativum抽出物質1,000mgを長期服用後P50は上昇し2, 3-DPG値は低下し, 服用中止後にはP50値は減少し2, 3-DPG値は上昇した. 結論 : ヘモグロビン酸素親和性はAllium sativum抽出物質のような食物因子によって変化していることが示された.この作用はヘモグロビンへの直接的作用の可能性が示唆された.
  • 山本 由子, 森 健, 小栗 豊子
    2011 年 57 巻 6 号 p. 630-637
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    目的: 順天堂医院において1994年から2003年の10年間に, 血液および血管カテーテルから真菌を検出した症例について患者背景, 菌種, カテーテル留置の有無, 治療, 予後について検討した. 対象と方法: 10年間に血液および血管カテーテルから真菌を検出した203名のうち, コンタミネーションと考えられる症例34名を除外した169名, 176エピソードについて臨床経過をレトロスペクティブに調査検討した. また, 真菌血症の死亡に関連するリスクファクターについてFisherの正確検定を用いて統計学的検討を行った. 結果と結論: 症例は男性に多く (69.3%), 年齢は50歳以上が81.2%で大多数を占めていた. 基礎疾患は悪性腫瘍が多く, なかでも食道癌が悪性腫瘍の26.3%を占めて最も多かった. 検出菌種はCandida albicansが66例 (37.5%) で最多であったが, 従来の報告と比較してC. parapsilosisの検出率が高かった. 死亡に関与するリスクファクターとしては, (1) 抗生剤投与中, (2) 検出菌がC. albicansであること, (3) 人工呼吸器管理下であることがあげられた. Trichosporon属の検出がCandida属に次いで多く, トリコスポロン症の発症にも注意が必要であると考えられた.
報告
  • -初期研修修了時のアンケート調査から-
    冨木 裕一, 鈴木 勉, 清水 俊明, 小林 弘幸, 金子 和夫, 小池 道明, 関川 巌, 安本 幸正, 児島 邦明, 住吉 正孝, 礒部 ...
    2011 年 57 巻 6 号 p. 638-643
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    研修医が自分の進路をいつ頃から考え始め, 決定するかについて検討した. 研修医が自分の進路を考え始めるのは研修2年目の前半で, 決定するのは研修2年目後半が多かった. 臨床研修を体験することは, 9割以上の研修医の進路に影響を及ぼし, 4割の研修医が進路を変更していた. 進路を決めた理由は, 「臨床研修をやってみて」が多かった. 平成22年度からの研修制度の変更によって, 進路を決定する時期は早まることが予想される.
症例報告検討会
  • 佐々木 洋平, 大澤 勲, 中田 純一郎, 小林 則善, 荻島 達也, 藤目 真, 伊藤 浩一, 荒川 敦, 八尾 隆史, 鈴木 祐介, 来 ...
    2011 年 57 巻 6 号 p. 644-649
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2014/11/11
    ジャーナル フリー
    原発性アルドステロン症は, わが国における高血圧症患者の5-10%を占めるとされ, まれな疾患ではない. 未治療症例では高血圧持続とアルドステロンによる臓器障害の発症・進展が懸念される. 本症例は低カリウム血症を伴う高血圧から二次性高血圧症が疑われ, ACTH負荷副腎静脈サンプリング (ACTH-AVS) を含む精査の結果, 原発性アルドステロン症と診断された. 病側副腎の腹腔鏡下摘除術によりアルドステロン過剰分泌と, 血圧・電解質の改善が得られた. 二次性高血圧症におけるプライマリケアと, その後の鑑別診断・治療がすみやかに進み, 病診連携の役割分担が機能した1症例であり, ここに報告する.
食事指導シリーズ
抄録
症例に学ぶ
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