要旨:裸子植物において,通常の染色体観察に加えてクロモマイシンA3とDAPIを用いる蛍光分染法とin situハイブリダイゼーション法により染色体を解析し,次の結果を得た。中国産トウヒ属Picea koraiensisとP. crassifoliaの染色体をFISH法により解析することにより,両種の染色体構造が類似していることが明らかとなった。カラマツ属13タキサを蛍光分染パターンにより6グループに分ることができた。カラマヅ属に特異的な基部DAPIバンドに局在する縦列型ATリッチ重複DNAを同定し,この配列が本属に共通して含まれることを明らかにした。イヌマキとソテツに,XY型の性染色体が存在した。マツ属のアカマヅとクロマヅにおいて,蛍光バンドに局在するDNAについて解析を行い,蛍光バンドと局在する塩基配列との関係を明らかにした。これらのDNAをプローブとする多色FISH法をアカマツとクロマツに適用することにより,染色体同定が可能であった。さらに,種間で同祖染色体の同定が可能であり,詳細な種間の染色体比較が可能になった。
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