PLANT MORPHOLOGY
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19and20 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 小野 道之
    2008 年 19and20 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    フロリゲンの発見を契機として,花成以降の過程の研究,特に形態学的な視点による研究が活発になることが予想される。日本植物形態学会では日本植物学会第71回大会において,生理的な過程である花成と,それにより誘起される茎頂における花序・花芽の形成を関連づけて考えるシンポジウムを開催した。そこで,本特集では,関連したミニレビューを掲載する。
  • 平岡 和久, 大門 靖史, 荒木 崇
    2008 年 19and20 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    命名から70年たってようやく,フロリゲンの実体がFT蛋白質であることが明らかになった.20kDaのFT蛋白質は,適切な外的要因(日長,光質,温度など)および内的要因(齢,大きさなど)による制御を受けて,葉の維管束の篩部伴細胞で発現し,篩管を通って茎頂へと輸送され,FDのような転写因子とともに花芽形成を開始させる.FT蛋白質は種子植物においては保存されており,その発現制御には,広く保存されていることが予想される「CO/FT制御モジュール」や,分類群ごとに独自に獲得された制御経路が関わる.近年,日長や温度による生活環の調節において,FT蛋白質が,ジャガイモの塊茎形成や木本植物の芽の休眠誘導と解除といった,花成以外の事象の調節にも関与していることが明らかになってきた.このことは,FT蛋白質が茎頂分裂組織の活性を調節するための汎用的な長距離シグナルである可能性を示唆する.
  • 近藤 洋, 竹能 清俊
    2008 年 19and20 巻 1 号 p. 15-27
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    花成に低温が関与するバーナリゼーションでは,種子や芽生えの時期に受けた低温の効果が個体成熟後に現れる.この低温の記憶のように,ある情報が繰り返される細胞分裂を経ても安定して維持される現象をエピジェネティクスという.エピジェネティックな現象は,鍵となる遺伝子のメチル化や,それをとりまくヒストンの化学修飾によって,安定的なクロマチンの構造変化およびそれに伴う遺伝子発現の変化が誘導されることによって制御される.バーナリゼーションでは,花成経路統合遺伝子であるFLOWERING LOCUS C(FLC)が様々なエピジェネティック制御を受けることが明らかになっている.一方で,光周期が花成を制御する光周的花成においては,誘導的光周期によって誘導された花成は非誘導条件に戻されると容易に栄養生長に戻るため,エピジェネティクスによる記憶を考慮する余地がない.したがって,これまで光周的花成とエピジェネティクスを関連付けて考察した報告はなかった.しかしながら,シソの光周的花成は誘導的光周期を受容したことを記憶するかのように安定して持続する特徴がある.DNA脱メチル化剤を用いた解析の結果,シソや他のいくつかの植物で光周的花成にエピジェネティクスが関与する可能性が見いだされた.本総説では,植物におけるエピジェネティクスの知見を概観するとともに,光周的花成におけるエピジェネティクス制御の可能性について紹介する.
  • 経塚 淳子
    2008 年 19and20 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    植物は胚発生以降も葉の腋に新しい茎頂メリステム(腋生メリステム)をつくり,そこから分枝を増やすことにより生涯にわたり形態形成を続ける.イネ科植物の花序はいくつかの異なるタイプの分枝で構成されており,それぞれのタイプの分枝の組み合わせが種に固有の花序の形をつくる.したがって,腋生メリステムの形成,その分化運命の決定,分枝の成長パターンにより花序の基本構造が決定される.本稿ではイネやトウモロコシなどイネ科植物を中心に,分枝パターンの決定に関わる遺伝的制御に関する知見を紹介する.
  • 山口 暢俊, 米田 好文
    2008 年 19and20 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    シロイヌナズナの野生型Columbia株は,顕著な花茎の伸長とともに花芽を付けていくため,総状花序と呼ばれる花序形態を示す.一方,Landsberg erecta(Ler)株は,花序先端部に花芽が密集した散房花序と近似した花序形態を示す.花序形態形成機構に関して新たな知見を得るために,散房花序様変異体であるcorymbosal(crm1)とcrm2変異体を単離し,小花柄と節間の細胞伸長欠損により花序形態が変化するcrm1変異体に注目した.crm1変異はerやcrm2変異と相加的な関係であったため,CRM1遺伝子はERやCRM2遺伝子はそれぞれ独立の経路で機能する可能性が示唆された.ポジショナルクローニングにより,crm1変異体の原因遺伝子はオーキシンの極性輸送に必要であるBIG遺伝子であり,花序分裂組織,花芽分裂組織,小花柄と節間の維管束で発現していることがわかった.crm1-1変異体とオーキシン輸送阻害剤で処理した花序では,オーキシンの蓄積によって発現が誘導されるマーカー,DR5の発現量の減少とPIN1タンパク質の蓄積量の増加が観察された.さらにオーキシン輸送阻害剤処理によって小花柄の伸長は抑制されたため,これらの変化はCRM1/BIGタンパク質が制御するオーキシン輸送経路を欠損したために起こったと考えられる.発現解析の結果,LEAFY(LFY)遺伝子やCUP-SHAPED COTYLEDON2(CUC2)遺伝子の発現量がcrm1-1変異体では増加していた.そのため,crm1変異体での花序形態の変化はオーキシンの輸送欠損のみが原因ではない可能性があり,これらの遺伝子の関与を検討する必要がある.
  • 河野 重行
    2008 年 19and20 巻 1 号 p. 45-54
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    理論と実験生物学の長年の挑戦にもかかわらず,生殖戦略として性がこんなにも一般的なのはなぜかという問はまだ十分説明されていない.本稿では,その回答の一部として,1)真正粘菌(Physarum polycephalum)のミトコンドリア線状プラスミド(mF),2)ヒラアオノリ(Ulva compressa)の配偶子の性的非対称性,3)黒穂菌(Microbotryum violaceum)によるヒロハノマンテマ(Silene latifolia)の雌雄性の撹乱について紹介する.ミトコンドリアは母性遺伝する.mFプラスミドは両親由来のミトコンドリアを融合することで,ミトコンドリアの母性遺伝に抗して父親由来のミトコンドリアから母親由来のミトコンドリアへ伝播することができる.これはバクテリアの接合プラスミドFを髣髴させる.mFやFのような利己的な分子共生体が引き起こした接合が最初の性だったのではないかと考えられている.接合や性的組換えは選択圧に対して優位にはたらく.この利己的DNAの分子共生体説は,性の起源に直接関与するだけでなく,性の進化の次の段階を理解するのにも重要な意味をもつだろう.本稿では,こうした性の起源と進化に関する新しいアイデアとして,ヒラアオノリの雌雄配偶子の眼点に対する接合装置の性的非対称性と,ヒロハノマンテマの性を撹乱する利己的共生菌M.violaceumについても,性と遺伝的アーキティクチャを交錯するものとして紹介したい.
  • 野崎 久義
    2008 年 19and20 巻 1 号 p. 55-64
    発行日: 2008年
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    要旨:生物の生殖は,“性”が誕生して以来,雌雄の配偶子が同じ大きさの同型配偶(単細胞藻類,粘菌類など),雌の配偶子が少し大きな異型配偶(ハネモなど),そして更に大型で運動能力のない「卵(雌性配偶子)」と小型で運動能力のある「精子(雄性配偶子)」が受精する卵生殖(ボルボックス,高等動植物など)へと進化したと古くから推測されていた.しかし,卵と精子をつくるメスとオスの性が同型配偶のどのような交配型(性)から進化したかは全く不明であった.最近我々は雌雄が分化したボルボックスの仲間(プレオドリナ)で,オスのゲノムに特異的な遺伝子(OTOKOGI)を発見し,その起源がクラミドモナスのマイナス交配型(優性交配型)の性を決定するMD遺伝子と同じであることを明らかにした.このことは,“メス”が性の原型であり,“オス”は性の派生型であることを示唆する.オス特異的遺伝子“OTOKOGI”の発見はこれまでに全く未開拓であったメスとオスの配偶子が分化した群体性ボルボックス目における性の進化生物学的研究の突破口となるものと思われる.即ち,群体性ボルボックス目における性特異的遺伝子を目印にした性染色体領域の解読および性特異的遺伝子の機能解析を主軸とする新しい進化生物学がこれから始まるのである.
  • 岩元 明敏
    2008 年 19and20 巻 1 号 p. 65-72
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:先端成長は植物の形態形成の根本を担うものであり,その多様性と基本システムを明らかにすることはきわめて重要である.サクラ属のシュート構成の多様性,ミツマタの三叉分枝形成,そしてマツモの花発生などの種特異的な先端成長についての形態学的研究は,先端成長の多様性を明らかにし,従来のモデルに対する再評価への糸口を与えている.先端成長の基本システムについては,ミイロイヌナズナの根端成長を対象とした細胞動力学的解析によって,その働きが細胞レベルで明らかになってきた.さらに,この細胞動力学的手法に数理モデルを組み込むことで,先端成長における細胞増殖と細胞体積の増大の関係性を解体し,環境・遺伝要因が基本システムの働きに及ぼす影響を定量的に解析することが可能となった.
  • 石垣 和洋, 臼井 利典, 阿部 知顕
    2008 年 19and20 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:細胞性粘菌Dictyostelium discoideumは十分に栄養があるとき分裂増殖を続けるが,栄養が不足して飢餓状態になると集合を開始し,多細胞体を形成する.実験環境下で最もよく用いられるAx-2株は,グルコース,ペプトン,イーストエクストラクトを主な栄養源とする液体培養液で培養が可能である.これらの栄養源のうち,グルコースについては,これを含まない培養液を用いて細胞を振盪培養した場合,増殖速度は低下するが細胞は増殖可能であることが報告されており,グルコースの欠乏は,細胞が飢餓状態を感知するための要因とはならない可能性があった.そこで, 振盪培養の代わりに培養用シャーレ中にグルコースを含まない栄養培地(G-培地)を満たして静置する,静置培養法で同様の実験を試みたところ,ゆっくりと増殖ができるものの,細胞密度が約7.5×105細胞/mlを超えると,やがて細胞は培地中で集合を開始することが確認された.集合途中の細胞にグルコースを添加すると,集合体が速やかに分散されることから,細胞性粘菌はグルコースの有無を感知し,グルコースの欠乏が飢餓状態の認識の1つの要因になることが示唆された.制限酵素仲介遺伝子挿入法(REMI法)により作成された突然変異株の中から,この条件でも全く集合しない変異株を単離し,その変異遺伝子を同定したところabpEに欠損があることがわかった.abpEは発生の初期段階において,仮足形成の調節に関わっていることが知られている.以上のことから,栄養液体培地中での細胞の集合には正常な仮足形成が必要とされる可能性が示唆された.
  • 2008 年 19and20 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
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