PLANT MORPHOLOGY
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30 巻, 1 号
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表紙
特集
  • 大矢 禎一
    2018 年 30 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル フリー

    オルガネラの構造と機能の解明には,分子生物学的,細胞生物学的解析を含む様々な角度からの解析が必要であり,単細胞真核生物のモデルとして知られる酵母を用いて多くの先導的な研究が行われてきた.比較的単純な細胞内構造を持つ酵母で研究成果をあげると,単細胞と多細胞という違いはあるものの,次に高等動植物でも調べてみるというアプローチが可能である.そこで,日本植物学会第81回大会において,日本植物形態学会および特定認定非営利綜合画像研究支援との共催のもと,出芽酵母の最近のオルガネラ研究の成果を紹介しながら,植物のオルガネラ研究にも繋がる諸問題について議論するシンポジウムを開催した.

  • 中野 明彦
    2018 年 30 巻 1 号 p. 3-4
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル フリー

    真核細胞のモデル系として優れている酵母は,遺伝学と生化学の両方に適しているだけでなく,形態学においても大きな利点を持つ.筆者らが開発した最先端の超解像共焦点ライブイメージング顕微鏡による観察で,膜交通のパラダイムが次々に覆されようとしている.

  • 木原 章雄
    2018 年 30 巻 1 号 p. 5-14
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル フリー

    スフィンゴ脂質は真核生物の生体膜を構成する主要な脂質の1つであり,その疎水骨格セラミドは長鎖塩基と脂肪酸から構成される.長鎖塩基の分解は生体内のスフィンゴ脂質の恒常性維持のために重要である.筆者らは最近,長鎖塩基の代謝経路の詳細(反応および関与する遺伝子)を解明した.その中でも4位に水酸基を持つ長鎖塩基(フィトスフィンゴシン)は代謝過程においてα酸化を受け,奇数鎖脂肪酸へ変換するというユニークな代謝を受けることを明らかにした.これまで脂肪酸α酸化はペルオキシソームで行われるというのが通説であったが,筆者らが見出したα酸化は小胞体で行われるという全く新しいものであった.本稿では,スフィンゴ脂質の構造,長鎖塩基の代謝,脂肪酸α酸化について,筆者らが酵母と動物細胞を用いた解析から明らかにした最新の知見を紹介する.また,筆者らの知見に基づいて植物での長鎖塩基の代謝についても考察する.

  • Duc Minh Tran, Yukio Kimata
    2018 年 30 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル フリー

    Activity, morphology and size of an organelle are not constant, but vary dependent on extracellular and intracellular conditions. The endoplasmic reticulum (ER) is the location where secretory and transmembrane proteins are folded. Dysfunction or overwork of the ER, which is mostly accompanied by ER accumulation of unfolded client proteins, leads to transcriptional induction of proteins that work in and/or for the ER. This cellular event, known as the unfolded protein response (UPR), is observed in a wide variety of eukaryotic species, and its mechanism has been mainly uncovered through studies using yeast Saccharomyces cerevisiae as a simple model organism. The intracellular signaling pathway of the UPR contains various remarkable features, which include the involvement of regulatory splicing of transcription-factor mRNAs that is performed by the ER-located transmembrane endoribonuclease Ire1 in the cytoplasm. In this article, we describe our current understanding about Ire1 and the UPR in cells of S. cerevisiae and other eukaryotic species including plants.

  • 中戸川 万智子, 中戸川 仁
    2018 年 30 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル フリー

    オートファジーは,細胞質のタンパク質やRNAに加え,小胞体,ミトコンドリア,ペルオキシソーム,脂肪滴など様々なオルガネラをリソソーム/液胞に運び,分解する.したがって,オルガネラを構成する膜脂質もオートファジーを介してリソソーム/液胞に輸送されることになる.しかし,タンパク質やRNAと比べ,脂質の分解やリサイクルに関しては,メカニズムおよび生理的意義も,まだほとんど明らかとなっていない.本総説では,脂質代謝とオートファジーの関係に関する現在の知見をまとめ,オートファジーの脂質の恒常性維持への関与について議論する.

  • 福田 智行, 神吉 智丈
    2018 年 30 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル フリー

    ミトコンドリアは酸素呼吸により細胞に必要なエネルギーの大半を作りだすオルガネラである.一方,呼吸の副産物としてミトコンドリアからは活性酸素が生じ,細胞成分に障害を与えてしまう.したがって,健全な細胞活動のためには,ミトコンドリアの量と質が適切にコントロールされている必要がある.オートファジーによるミトコンドリアの選択的な分解は,真核細胞が余分あるいは異常なミトコンドリアを取り除く手段の1つと考えられている.マイトファジーとよばれるこの反応は,ミトコンドリアの一部を二重膜で囲まれたオートファゴソーム内に包みこみ,次いでリソソームあるいは液胞と融合することで分解する.マイトファジーの機構や制御の理解に,出芽酵母をモデルとした研究は大きく貢献してきた.出芽酵母のミトコンドリア外膜に存在するAtg32はマイトファジーに特異的なレセプターとしてはたらき,オートファジー因子と直接作用することで,分解するミトコンドリアとオートファゴソーム形成の場とを結びつける.また,マイトファジーの誘導はAtg32の転写や翻訳後修飾を介して厳密に制御されている.さらに,Atg32はマイトファジーに特異的な因子であるため,その欠損株の表現型解析によりマイトファジーの生理的な意義を検証することが可能である.本稿では,Atg32を中心に酵母で明らかにされたマイトファジーの機構や制御,意義について紹介する.

  • 吉久 徹
    2018 年 30 巻 1 号 p. 37-58
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル フリー

    翻訳因子として必須なtRNAは,その基本的な重要さゆえ,比較的一定な翻訳環境を提供するための「変わらない分子」と見られてきた.しかしtRNAは,80ヌクレオチド程度と短いRNAながら多様かつ多段階のプロセシングを受けることが必要で,極めて変化に富んだ成熟過程を経る.転写に始まる各プロセスは核内でもその場が巧妙に配置され,さらに一部のステップは細胞質で行われること等が今世紀になってから次々と判ってきた.これに並行して,tRNAは成熟化の過程で,また,成熟化後もダイナミックに細胞内を動き回る姿も明らかとなった.加えて近年,tRNAの量自身が細胞内外の環境で制御される可能性も報告され,tRNAの持つイメージが変わりつつある.本稿では,最近注目されるようになってきたtRNAを巡る様々なダイナミクスのうち,tRNAの成熟化といった分子の形のダイナミクスと細胞内の空間的なダイナミクスについて,特に成熟過程で重要な核を中心とした現象について概覧し,今後のtRNA研究の展開を考えるための土台を提供したい.

  • 久保 佳蓮, 大矢 禎一
    2018 年 30 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル フリー

    1,3-β-グルカンは,高等植物と酵母に共通に存在する多糖類であり,特に出芽酵母では細胞壁の主要な構成成分である.本稿では「究極のオルガネラ研究」ということで,出芽酵母の(1)細胞壁合成チェックポイントと(2)細胞壁をターゲットにした新しい抗真菌剤,という1,3-β-グルカン合成に関する二つの最近の研究を紹介する.まず細胞壁合成チェックポイントは出芽酵母の1,3-β-グルカン合成が停止した時に活性化する細胞周期チェックポイントであり,最近その分子機構の概要が明らかになってきた.細胞壁合成が停止したことを細胞壁のセンサーが感知すると2つのMAPキナーゼと転写因子カスケードを経てM期サイクリンClb2の転写を抑制し,細胞周期はG2期で停止する.高等植物にも細胞壁合成と細胞増殖を結びつける機構があることは興味深い.一方,1,3-β-グルカン合成は細胞増殖に必須であり古くから抗真菌剤のターゲットとされてきたが,最近ポアシン酸という新しい抗真菌剤が見つかった.ポアシン酸はイネ科の植物のリグノセルロースの加水分解産物に含まれる細胞壁の架橋剤ジフェルラ酸の誘導体である.出芽酵母を用いた研究からポアシン酸は1,3-β-グルカンに結合してその合成酵素の活性を阻害することがわかった.幅広いスペクトラムの植物病原性真菌に効くことから,植物由来の次世代農薬としての期待が高まってきている.

学会賞受賞者ミニレビュー
  • 宮川 勇
    2018 年 30 巻 1 号 p. 65-72
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル フリー

    ミトコンドリアDNA(mtDNA)は特異的なタンパク質と結合して,ミトコンドリア核様体(mt核様体)を形成している.筆者らは,DAPI染色法によって,酵母 Saccharomyces cerevisiae の生活環におけるmt核様体の動態について調べた.酵母 S. cerevisiae のmt核様体は,栄養成長培養の対数期には数珠状形態をとり,定常期には小球状形態をとる.減数分裂・胞子形成培養では,減数分裂前期にmt核様体は顕著な網目を形成しながら,胞子の中に分配される.酵母の嫌気培養では定常期に大きく凝集したmt核様体が形成され,嫌気培養から好気培養への変換過程では,凝集mt核様体は伸長し小球状へと分散する動的な形態変化を示す.また,rho- 呼吸欠損株では,保持するmtDNA配列の単位の長さに依存して,mt 核様体の形態が変化した.筆者らは,酵母から単離したmt核様体を構成するタンパク質を分析した.mt核様体にはDNA 結合タンパク質Abf2pが主要な成分として結合し,mtDNAを折り畳んでいる.また,Abf2p以外にも多くのタンパク質がmt核様体を構成している.酵母種間でのAbf2pホモログの比較から,Abf2pはmt核様体タンパク質の中で保存性が低いことが分かった.

  • 小林 優介, 三角 修己, 西村 芳樹
    2018 年 30 巻 1 号 p. 73-81
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル フリー

    葉緑体には約100コピーの独自のゲノム(葉緑体DNA)が存在し,多彩なタンパク質と相互作用することで葉緑体核様体構造を形成する.遺伝情報を司るゲノムDNAを次世代へと確実に分配するには,相同組換え中間体であるHolliday ジャンクションを適切に解消する必要がある.これまで葉緑体ではHollidayジャンクションの解消機構は知られておらず,如何にして葉緑体DNAの分配が保証されているか理解されていなかった.我々は,葉緑体核様体の形態や分配に異常を示す緑藻クラミドモナスの変異体を解析することで,葉緑体局在のHollidayジャンクション解離酵素Monokaryotic chloroplast 1(MOC1)を発見した.MOC1は藻類から陸上植物まで広く保存されており,葉緑体DNAの分配や維持に極めて重要であることが明らかとなった,本総説では,Hollidayジャンクション研究の歴史を辿りながら,葉緑体においてHollidayジャンクション切断機構が果たす役割について紹介する.

  • Nobuko Sumiya
    2018 年 30 巻 1 号 p. 83-89
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/01
    ジャーナル フリー

    Chloroplasts arose from a cyanobacterial endosymbiont. Most algae with a single or a few chloroplasts per cell synchronize chloroplast division with the host cell cycle. This synchronization is regulated via interactions between the cell and chloroplast. The onset of chloroplast division is regulated by S-phase-specific expression of the nuclear-encoded chloroplast division genes; however, in the unicellular alga Nannochloris bacillaris, one of the plastid division genes, FtsZ2, is expressed throughout the cell cycle. Plastid-dividing (PD) machinery usually forms a ring complex only during the division phase, although the number of the FtsZ rings, and not of PD rings, is increased in N. bacillaris cells under phosphate-enriched mixotrophic condition where the chloroplast DNA is excessively replicated. Therefore, among components of the PD machinery, only FtsZ ring formation is promoted by chloroplast DNA synthesis under certain conditions. During chloroplast division, the onset of chloroplast constriction allows the progression of cell cycle to metaphase. The blockage of PD machinery formation before its assembly arrests the cell cycle in prophase in the unicellular alga, Cyanidioschyzon merolae; however, once DRP5B is recruited to the chloroplast division site, the cell cycle progresses despite the failure of chloroplast fission. A similar phenomenon has been observed in the glaucophyte Cyanophora paradoxa suggesting that the mechanism of the chloroplast division checkpoint is established early in chloroplast acquisition.

日本植物形態学会第29回大会(野田)ポスター発表要旨
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