実践政策学
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  • 意思決定、運用実態、政策的課題
    桒原 響子
    2026 年12 巻1 号 p. 5-13
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、欧米諸国を中心に、国家および非国家を含む外国勢力による偽情報拡散が安全保障上の脅威と位置づけられ、政府をはじめ、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)プラットフォーム企業を中心とする民間セクター、メディア、大学、研究機関、非政府組織(NGO)などの市民社会によって、対策が強化されている。背景には、ソーシャルメディアや人工知能(AI)技術の発展を通じて、偽情報が民主主義や選挙に与える影響への懸念が高まっていることがある。特に、2016年の米国大統領選挙や2022年のロシアによるウクライナ侵攻は、こうした脅威認識を国際的に強める契機となった。一方、日本ではこれまで偽情報対策が限定的であったが、日本政府は、2022年12月に「国家安全保障戦略」を含む安全保障関連3文書を改定し、外国勢力による偽情報拡散への対処に本格的に乗り出した。本論文は、偽情報問題への関心が相対的に低かった日本において、いかにして対策の重要性が評価され強化されたのかを明らかにするとともに、政府による意思決定過程と運用実態を分析し、現行対策が抱える政策的課題を検討する。特に、日本における①「偽情報」の定義の曖昧性、②偽情報問題に対する認識の偏向性、③対策に関与するアクターの限定性を明らかにし、欧米諸国の先行事例とも比較しながら分析を行うことで、今後の包括的かつ持続的な政策の方向性を提示する。
  • 藤田 佳太, 嘉名 光市, 高木 悠里
    2026 年12 巻1 号 p. 15-27
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、都心部における商店街では、チェーン店の増加等による商業空間の均質化・無個性化が課題となっている。商店街の個性を形成する重要な要素として店舗構成が挙げられるが、その構成は時代背景や周辺環境、地元組織の取り組みによって変化してきたと考えられる。従って、その変遷を明らかにし将来像を検討することは重要である。大阪市都心部・難波に位置する戎橋筋商店街は、大阪市都心部・難波に位置し、古くから栄えた商店街で、近年では観光客の増加やチェーン店の進出等の様々な変化がみられる。これまで、商店街の個性を守るために組織体制の充実、商店街の業種に関するルールや計画の策定等に取り組んできた。本研究は、戎橋筋商店街における店舗構成の変遷を明らかにすることを目的とする。結果として、戎橋筋商店街の周辺環境としては、交通基盤整備や商業施設の開業などの大きな変化が起きていた。そのなかで商店街店舗は激しく入れ替わりながらも、「衣料品」「飲食料品」「飲食」を中心とする業種構成を維持してきた。その背景には、建築協定やまちづくり構想といった制度的担保に加え、家主部会などの組織によって関係者間の連携が機能してきた点があると考えられる。一方で、これまで考慮されていなかった業種の増加が見られ、今後はルールの見直しが必要であると考えられる。
  • 室田 哲男
    2026 年12 巻1 号 p. 29-40
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    災害初動時において、現場の最前線にある市町村は、一刻の猶予も許されない状況の下で、平時とは異なる膨大な災害対策業務を迅速かつ的確に処理しなければならない。このため、常に完璧な対応を行うことは容易ではなく、何らかの「失敗」と評価し得る問題の発生は不可避に近いと言える。本稿は、失敗を否定的に捉えるのではなく、そこから積極的に学び、原因を解明して再発防止につなげる「失敗学」の考え方に基づき、2013年以降の大規模豪雨災害における12市町村の検証報告書を比較・分析し、災害初動対応における失敗やその原因を構造的に明らかにすることを目的としている。分析の結果、防災気象情報や被害情報の収集・分析、避難指示等の発令、住民への情報伝達、関係機関との情報共有など、情報管理に関わる業務で多くの失敗が発生していた。これらの失敗は、重大な失敗、組織外に影響する失敗、組織内部の失敗の3段階に分類され、小さな失敗が積み重なり、重大な失敗につながる「失敗のハインリッヒの法則」が自治体の災害対応にも当てはまることが確認された。また、失敗の原因は、個人のミスのみならず、業務手順、組織・体制、施設・設備の不備などが多層的に重なり合っており、事前の備えや体制整備の重要性が改めて示された。さらに、以上の結果を踏まえ、政策的含意を整理し、各市町村が優先順位を踏まえつつ災害対応力を効果的に強化するための示唆を提示した。
  • 生活困窮リスクの早期把握に向けて
    白取 耕一郎, 鎌谷 勇宏, 中井(松尾) 和弥, 森川 想
    2026 年12 巻1 号 p. 41-50
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    生活困窮への対応においては、困窮が顕在化した後の支援だけでなく、生活困窮リスクを早期に把握し、困窮の発生や深刻化を予防することが重要である。しかし、生活困窮リスクや初期困難を簡便に把握し、予防的支援や生活改善につなげるための実践的指標は十分に蓄積されていない。本稿は、生活困窮の予防と深刻化防止を目指す防窮の観点から、「防窮簡易指標」を開発し、その基礎的性能を検討することを目的とする。本稿でいう生活困窮リスクには、生活困窮が顕在化する前の脆弱性だけでなく、支払い不安や受診抑制のように、すでに生活上の困難として部分的に表れている初期状態も含まれる。具体的には、貧困研究、政策文書、支援実務者へのヒアリングをもとに、生活困窮リスクに関わる13項目を作成した。項目は、「基本的思考」「お金」「健康」「社会関係」の4分野から構成され、5件法で回答する。オンライン調査データを用いて探索的因子分析を行った結果、「経済的安定性」と「健康・金銭管理力」の2因子9項目が抽出された。さらに、経済状況および生活意識との関連を分析したところ、「経済的安定性」はいずれとも一貫して関連していた。「健康・金銭管理力」は経済状況とは関連していたが、生活意識との関連は統制変数を加えると明確ではなくなった。本指標は生活困窮状態を確定診断するものではないが、市民本人による生活困窮リスクの自己点検、支援者による初期面談、防窮教育でのリスク確認などに活用しうる。
  • 愛知県半田市における固定資産税業務の事例から
    遠藤 守, 佐々木 颯太, 屠 芸豪, 浦田 真由, 中村 勇登, 島崎 寛和, 木村 智行
    2026 年12 巻1 号 p. 51-62
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    将来の日本において急速な人口減少が見込まれるなか、自治体が持続可能な形で行政サービスを提供し続けるためには、自治体DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進が不可欠である。自治体DXは単なる情報通信技術の導入による業務のデジタル化にとどまらず、業務プロセスの再設計を含む行政運営の抜本的な効率化を伴うものである。しかし、先端的な情報通信技術を効果的に活用するためには、技術的知見を有する大学等の研究機関や、行政実務に精通した民間企業との連携が欠かせない。本研究は、産官学連携の枠組みを通じて、自治体内の特化業務に対しAI技術およびデータ利活用を実践的に導入し、業務効率化を実現する手法の開発とその実践を目的とする。具体的には、愛知県半田市における固定資産税業務を対象として、リモートセンシングデータやAI等のデジタル技術を用いた業務効率化手法を構築した。地目判読システムの開発においては、航空写真画像および地番図データをAI技術と統合することで、従来は手作業に依存していた判読作業の自動化を実現した。さらに、判読結果を基盤として現況地目調査を効率的に実施するため、調査票の自動生成や最適な調査ルートを提示する支援手法も併せて開発した。これら一連の業務フローを対象とした支援システムの開発および実証実験を通じて、提案手法の有用性が確認された。
  • 横村 優, 高木 悠里, 嘉名 光市
    2026 年12 巻1 号 p. 63-76
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    都市再生特別地区(特区)は自由度の高い計画を定められる都市計画制度であるが、東京都以外を対象とした研究は限定的である。また、特に公共貢献については特区を単位として分析するだけでなく、特区周辺を含んで一定の広がりをもった地域レベルで捉える視点や、時間の経過による相互の関係性や連携のあり方を考慮する視点が求められる。本研究は、全国の特区の指定動向を把握・分析したうえで、特区が一定集積した都市再生緊急整備地域を対象に、公共貢献の計画内容やその傾向を地域レベルで明らかにした。また大阪駅周辺を対象に、地域整備方針や関連計画等と公共貢献の関係、公共貢献による都市施設や公共施設の整備状況など、公共貢献の実態について分析した。結果、都市規模に応じて特区の指定動向が異なること、地域整備方針の変更回数や指定地区数にも大きく差異があることを示した。また、特区の公共貢献は、地域整備方針の実現に加えて、任意計画で示された地域の将来像の実現手段や、特定の地域課題の直接的・間接的な解決手段など、様々な役割を担っていることを示した。また特定の施設について公共貢献の役割分担が生じている可能性や、特区の境界を超えて地域全体に波及するように公共貢献が拡充されている可能性を示唆した。
  • GBFSオープンデータを用いた時空間分析
    塚田 開希人, 有賀 敏典
    2026 年12 巻1 号 p. 77-84
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、シェアサイクルにおける再配置問題に対し、観光需要の創出を通じた需要誘導が有効な改善手段となり得るかを検証する。対象は鎌倉市、藤沢市、逗子市、葉山町の4市町とし、10分間隔で取得したGBFS在庫データを用いて、貸出不可(空車)および返却不可(満車)状態の時空間的な発生実態を把握した。次に、ポート周辺の特性に基づく分類と時間帯別の遷移ルールを用いて観光周遊ルートを生成し、これを外生的な需要として在庫時系列に投入することで、需給アンバランスの改善効果をシミュレーションした。その結果、観光需要の創出により、貸出不可・返却不可状態の継続時間および長時間継続するポート数がともに減少し、再配置問題の緩和が確認された。さらに、トラックによる再配置負担の代替指標として算出した自転車の総輸送距離(台・km)は、最大で約20 %削減され、週1回のトラック再配置と同等以上の効果が得られる可能性が示された。これらの結果は、再配置を供給側の運用に依存するだけでなく、観光回遊を活用した需要誘導により補完できることを示唆する。すなわち、シェアサイクルの運用改善は観光施策と連携した政策的アプローチとして設計し得るものであり、都市における移動効率とサービス水準の向上に資する可能性がある。
  • 岐阜市コミュニティバスの長期実績に基づくPDARUサイクルの有効性
    青木 保親, 土井 健司, 葉 健人
    2026 年12 巻1 号 p. 85-94
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、岐阜市コミュニティバスシステムを事例として、地域公共交通の持続性を支える政策運用のあり方を検討するものである。近年、地方都市ではデマンド交通、AIデマンド交通、シェア交通など多様な施策が展開されているが、人口減少、高齢化、利用者減少、運転士不足の進行のなかで、地域公共交通をいかに維持・更新していくかは依然として大きな課題である。岐阜市では、コミュニティバスが2006年10月に試行導入され、その後段階的に拡大し、20年を経た現在も20地区で運行が継続されている。さらに、地域公共交通利便増進実施計画のもとで、幹線系統の強化、都市拠点へのアクセス向上、リアルタイム運行情報の提供、利用促進施策などが一体的に進められている。本稿では、こうした長期的な制度運用を Plan、 Do、 Assess、 Report、 Utilize からなる PDARU サイクルの観点から整理し、地域公共交通の持続性を、計画・実施・評価だけでなく、結果の共有や見直しを含む運用の過程から捉えることを試みる。また、岐阜市のコミュニティバスを、旧来型施策としてではなく、補完交通、情報化、ネットワーク化を通じて更新されてきた制度として捉え、鶴岡市の事例との比較を通じてその特徴を検討する。そのうえで、今後のデマンド交通やAI交通施策を考える際にも、PDARU が一つの有効な視点となる可能性を検討する。
  • 自由記述データのトピックモデル分析
    並松 沙樹, 門馬 真帆, 茂手木 香帆, 岩波 光保
    2026 年12 巻1 号 p. 95-104
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    建設業は国土保全や地域の安全・安心を支える基幹産業であるが、若年層の入職が進まず、担い手不足が課題となっている。若年層の入職促進や定着を図るためには、従事者自身が業界をどのように評価し、どのような将来像を描いているのかを世代別に把握することが重要である。本研究では、建設業従事者を対象としたアンケート調査を用い、業界満足度および次世代への推奨意向の世代差を分析するとともに、自由記述データのトピックモデル分析により建設業界に対する理想像の構造を整理した。その結果、業界評価には世代差が存在し、特に30代において満足度および次世代への推奨意向が相対的に低い傾向が確認された。また、自由記述の分析から、理想像は働き方や職場環境といった身近な課題に焦点を当てた「ミクロ型」と、建設業の社会的役割やインフラ維持といった広域的かつ長期的視点を重視する「マクロ型」、およびその中間の「準マクロ型」に整理できることが明らかとなった。さらに、世代間比較の結果、若年層では労働条件や職場環境、働きがいに関する関心が高い傾向が示された。これらの結果は、建設業界の魅力向上を入職前の広報活動に留めるのではなく、入職後の定着支援、労働環境改善、キャリア形成支援および若年層の視点を反映した働き方の制度設計へと接続する必要性を示している。
  • 中学校の探究学習及び小学校への出前授業を通じて
    大平 和弘, 木戸 花香, 山本 姫華, 今田 弥生, 野崎 颯大, 小島 航太, テルファ 美葡, 前田 莉玖
    2026 年12 巻1 号 p. 105-118
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、中学校の探究学習及び小学校への出前授業を通じ、妖怪伝承と災害リスクとの関係を解明し、妖怪伝承が地域の災害リスク教育として再生し得る可能性について実践的に検証することを目的とした。まず、文献調査と現地調査の結果、多くの妖怪伝承が、地域の過去の災害や夜道の危険などを回避する意図で語り継がれた伝承であること、現在も地域の環境の特徴を表していることが確認された。また、自然災害に関する妖怪伝承地は、ハザードマップとの関係より、現在も自然災害リスクに警戒すべき場所であることが示された。このことから、妖怪伝承が、災害リスクを伝える教育に活用できる可能性が高いことが示された。次に、小学校への出前授業により妖怪伝承の教育効果を分析した。児童へのアンケートの結果、妖怪への興味が高まり、妖怪を身近に存在する回避すべきものと認識する傾向が高くなることが示された。また、テキスト分析の結果、妖怪伝承は地域の災害リスクを伝え、リスク回避を促す意識を与え得ることが示された。さらに、妖怪伝承を7割以上の児童が誰かに話してみたいと感じたと回答した。これらのことから、妖怪伝承が災害リスクを伝える媒体として、地域で再生し得る可能性が示された。本研究で実践した妖怪伝承の発掘や再生の方法は、他地域でも適用可能であると考えられるため、今後多くの地域において妖怪伝承が災害リスク教育として継承されることを期待したい。
  • 錫鋳物を起点とした独創と共創の好循環
    大嶋 淳俊
    2026 年12 巻1 号 p. 119-124
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、富山県高岡市に本拠を置く地域中小企業・能作を対象として、現会長であり同社の変革を主導してきた能作克治氏のリーダーシップ実践を「クリエイティブ・リーダーシップ」と捉え、そのあり方がどのように形成・展開し、独創と共創の好循環を形成したのかを明らかにする。伝統産業の革新は、単なる新製品開発や販路拡大としてではなく、経営者が既成概念を超えて錫鋳物をはじめとする技術や素材、仕事そのものの意味を捉え直し、新たな価値創造へ結びつける実践として理解される。インタビュー、現地訪問、講演資料、著書、公開資料をもとに質的事例研究を行った結果、能作氏の実践は、下請け構造の中で形成された問題意識を起点に、伝統の意味づけの転換、自社製品開発や錫鋳物の新たな意味づけ、錫100%への挑戦といった独創の探索、国内外での共感形成と共創の展開、産業観光や地域への波及へと発展してきたことが明らかになった。特に、独創が共感形成を促し、その共感を基盤として他者との共創につながり、共創関係を通じた学習が新たな独創を促す循環が形成されていた点に特徴がある。さらに、この循環は、直営店、海外拠点、新社屋、産業観光といった顧客接点や体験基盤によって支えられていた。本稿は、伝統産業の革新を、経営者による意味づけの転換、独創の具体化、共創を通じた学習の連鎖として捉え直す視角を提示し、地域中小企業研究に理論的・実務的示唆を与える。
  • 京都市を中心とした所在解明と計画・開発・運用の実態
    北 梨緒乃, 岸本 慧大, 太田 尚孝
    2026 年12 巻1 号 p. 125-137
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    歴史的建造物などを会議やイベントなどMICEの会場として貸し出し、特別感を演出するユニークベニュー(UV)が推進されている。文化財保護法の改正により文化財の活用が推進されるなか、保存への懸念は依然大きく、文化財を活用したUVの実態や計画・開発・運用は体系づけられていない。本研究では、京都市を中心に、差別化・意外性の観点からUVの実態を明らかにし、推進主体によるUVの計画・開発・運用における保存・活用の位置づけを解明することを目的とした。結果として、UVでは庭園・公園や寺院・神社が活用されており、その背景には伝統的な木造建築・庭園による他コンベンション施設や海外との差別化や想定使途と異なる意外性が推察された。政令指定都市の文化財保存活用地域計画では、活用に関する措置は少ないが、UVとしての活用と保存への再投資を位置付けた都市もあり、法改正の意図が汲まれていると推察された。京都市内の各機関によるUV開発では、市域の多数の文化財を生かした積極的なUV推進が見いだされた。二条城と長楽館は、UVとしての活用をそれぞれ収入源や動態保存として位置づけおり、保存と活用を両立していた。文化財を活用したUVとその再投資による保存・活用の好循環を位置づけ、その意義や経験に基づいて他都市や他施設が追従することが期待される一方、一様なUVは特別感を薄めるため、文化財ごとに差別化・意外性・制約といった個性をインベントリすることが肝要である。
  • 愛知県刈谷市をケーススタディとして
    村上 滉一, 樋口 恵一
    2026 年12 巻1 号 p. 139-148
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    わが国のまちづくりにおいて、都市・交通・福祉分野の施策を連携させる共通基盤として「日常生活圏」の客観的な把握が求められている。近年、携帯電話の位置情報データ(人流データ)の利活用が進むが、住民の主観的認識に依存する従来のアンケート調査等の結果と、客観的な人流データが示す圏域の整合性を統計的に検証した研究は存在しない。また、個人の状況を重視する福祉分野ではマクロな人流データの活用が停滞していた。そこで本研究は、愛知県刈谷市を対象に、特性の異なる2種類の人流データを用いて客観的な日常生活圏を評価し、住民アンケート等による主観的評価結果との比較検証を行った。データ間のバイアスを考慮し、目的地割合の順位に基づくフリードマン検定等を用いた結果、全中学校区で同一校区内への移動が最も多く、全手法間で0.7以上の強い統計的一致度が確認された。本成果により、福祉分野の圏域評価においても人流データが信頼性の高い代替指標となり得ることが実証された。このように人流データを活用して日常生活圏を評価し、都市・交通・福祉の共通範囲を明示できることは、単一分野に留まらず人流データを庁内横断的に共有・活用すべきであるという重要な実務的意義を提示している。今後は、都市構造の異なる他自治体への展開と汎用性の検証が課題である。
  • 群馬県藤岡市における実業高等学校の視点を通じて
    松田 拓也, 塚田 伸也, 田中 雅紀, 新井 健司, 森田 哲夫
    2026 年12 巻1 号 p. 149-160
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/07/11
    ジャーナル オープンアクセス
    地方都市において若年層の人口流出が顕著となっている。その原因の1つとして若年層の地域愛着の低下が考えられる。本研究では、群馬県藤岡市における実業高等学校を事例に、若年層の地域愛着を醸成するための手段として、高校教育までの期間における地域活動が重要であると仮定し、卒業後の進路を検討する時期である高校2年生を対象にアンケート調査を実施し、調査結果から、地域活動と地域愛着、居住意向の各々の関係性に着目した分析を行った。また、日頃の学校生活や自己肯定感に関する項目を分析し、それらの項目と地域活動へのやりがいなどの関連性について把握した。分析結果に基づき、若年層の地域活動が地域愛着の醸成と関係があり、またそのことが居住意向にも繋がることを検証することにより、地方都市における若年層の人口流出の対策や今後の高校教育のあり方について考察した。
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