実践政策学
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7 巻, 2 号
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  • 向井 智哉
    2021 年 7 巻 2 号 p. 173-179
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/22
    ジャーナル フリー
    本研究は、犯罪者・被害者イメージがどのような構造を有するか、このイメージが「刑罰の厳罰化」、「刑罰の早期拡大化」、「治療の推進化」、「治療の早期拡大化」によって構成される刑事司法に対する態度とどのように関連するかを検討することを目的とした。まず予備調査では質的アプローチによって、犯罪者・被害者に関するイメージを包括的に収集した。その後の本調査では、予備調査で作成された項目を対象に因子分析を行なった。その結果、犯罪者イメージは「犯罪者ネガティブイメージ」、「境遇イメージ」、「更生可能イメージ」、被害者イメージは「苦境イメージ」、「ネガティブ感情イメージ」、「被害可能性の普遍性イメージ」、「被害者ネガティブイメージ」によって構成されることが示された。続いて、犯罪者・被害者メージと刑事司法に対する態度の相関を検討したところ、犯罪者・被害者の各イメージは刑事司法に対する態度の異なる因子と相関することが示された。最後に、上記の結果から得られる実践上の示唆として、政策の立案の際には、犯罪者・被害者イメージの両価性を考慮に入れる必要があることを論じた。
  • 活動内容を踏まえたCOVID-19収束後の訪問意向に着目して
    安藤 慎悟, 管野 貴文, 室岡 太一, 谷口 守
    2021 年 7 巻 2 号 p. 181-190
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/22
    ジャーナル フリー
    「関係人口」が今後の我が国の地域活性化の切り札として期待されている中、COVID-19の流行に伴い、地域への訪問を伴う訪問型関係人口の活動が制約され、オンライン等を活用して地域と関わる非訪問型関係人口への期待が現在高まっている。しかし、各都道府県が多様な活動内容から成る関係人口をそれぞれどの程度、どの地域から獲得しているかは未知であると共に、非訪問型活動の内容構成に応じ、今後訪問型への移行可能性も地域によって異なると考えられる。COVID-19収束後を見据えた地域活性化施策を実践するためには、そうした関係人口の獲得実態の基礎的な情報をまず整理した上で、検討していく必要がある。そこで本研究では、全国を対象とした大規模な調査に基づき、非訪問型と訪問型両者の活動内容に着目して、まず乖離度やジニ係数という指標を用いることで、両関係人口の空間的特性の把握を行った。その上で、各活動内容の構成割合から都道府県の類型化を行い、類型ごとに非訪問型のCOVID-19収束後における訪問意向割合をも示すことを通じて、関係人口の獲得特性の解明を行った。その結果、非訪問型は訪問型と比較し、距離抵抗の影響は小さいが、特定の都道府県への集中度は高いことが示された。また、人口当たりの非訪問型関係人口を多く獲得していても、その中身がふるさと納税に依存している都道府県では、COVID-19収束後の訪問意向の高まりは望めないことが明らかとなった。
  • 奈良県中和・西和地域3市4町の文化施設・運動施設の事例から
    蕭 耕偉郎, 髙木 悠里, 橋戸 真治郎, 西上 魁人, 近野 成宏, 堤 洋樹
    2021 年 7 巻 2 号 p. 191-200
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/22
    ジャーナル フリー
    人口減少社会に伴う地方財政の緊縮に直面し、ニーズに合わせた現状公共施設の再編や複数自治体を横断しての公共施設の共有が重要な課題になってきている。奈良県中和・西和地域における広陵町、大和高田市、香芝市、葛城市、上牧町、王寺町、河合町を含む3市、4町では広域連携により一部の既存施設を縮小・廃止の可能性が検討されてきた。本稿では、3市4町の広域連携による既存の文化施設、運動施設の再編に向けて、まず現状における各施設の共同利用を中心とした利用実態から把握することが必要と考える。また、本稿では3市4町に設置されている12の文化施設・18の運動施設を対象として、今後、複数自治体における広域連携による共同利用を前提とした施設の再編に向けて、これら施設の現状における利用実態に基づいた評価方法を提案することを目的とする。そのため、本稿では上述の30施設のイベント主催者や利用者から回収した2,824件のアンケートの分析から、満足度・共同利用による総合評価、共同利用の需給実態による評価を踏まえ、更にそれぞれの施設の延床面積・築年数などの諸元を加味して再編・共同利用としての優先度を判断する方法の有用性を検証した。
  • 愛媛県宇和島市旧津島町を対象として
    白柳 洋俊, 渡邉 友泰, 羽鳥 剛史
    2021 年 7 巻 2 号 p. 201-208
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/22
    ジャーナル フリー
    人口減少や高齢化に伴い地域の衰退が懸念される中、住民が社会資本の維持及び管理や地域組織の運営に主体的に取り組み、地域の存立を支えていくことが求められている。その実現には、住民一人ひとりが居住する地域を自分にとってかけがえのない存在だと感じる地域愛着を有することが基本的な前提となるが、地域愛着の醸成に繋がる要因について十分な研究蓄積があるとは言い難い。そこで本研究では、景観の保全状況に着目し、地域における景観の保全状況が、住民の地域愛着を醸成する効果を検討する。具体的には、第1に、歴史的景観キャラクタライゼーションの手法に基づき評価した景観の保全度が高い程、住民の地域に関わる記憶の想起が促される傾向にある、第2に住民の地域に関わる記憶の想起量が多い程、地域愛着が高まる傾向にある、との2つの仮説を措定し、同仮説を、愛媛県宇和島市旧津島町を対象とした景観の保全状況に関する調査及びアンケート調査に基づき実証的に検証した。調査の結果、景観の保全度が高い程、田園をはじめとした自然地物に関連する記憶の想起が促されること、こうした自然地物に関連する記憶の想起が多い程、地域愛着が高まること、すなわち上記仮説を支持する結果が得られた。
  • 坂井 琳太郎, 川端 祐一郎, 藤井 聡
    2021 年 7 巻 2 号 p. 209-222
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/22
    ジャーナル フリー
    近年、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増すと同時に、米軍の東アジア駐留縮小が議論され始めるなど、地政学的環境の変化の兆候が見られる一方で、海上輸送などロジスティクス面の整備の遅れや、有事の際の交通機関の統制ルールの欠如などが指摘されている。輸送・交通網の整備や統制は国土計画に属する課題でもあり、安全保障計画と国土計画の統合的な検討が必要と考えられるが、そのような研究及び実践はこれまでほとんど行われていない。坂井ら(2021)は戦前の国土計画に地政学的見地が多分に取り込まれていたことを指摘した上で、戦後にその傾向が希薄化したことを明らかにしている。一方本研究では、国土計画ではなく地政学理論に関する文献を調査する事を通して、地政学的状況が交通を中心とする国土計画に本質的かつ依存的な影響を受けているか否かを明らかにする。そして現代においても安全保障計画は国土計画と連動させながら策定・運用することが望ましいことや、その場合に重要となる戦略要素について、地政学理論に基づき提案を行う。
  • 群馬県前橋市を事例として
    塚田 伸也, 森田 哲夫
    2021 年 7 巻 2 号 p. 223-229
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/22
    ジャーナル フリー
    我が国では、ETC利用率の高まりとともに高速道路のSICの整備が進められた。本研究は、SIC周辺の住民を対象にアンケート調査を実施し、QOL評価とインターチェンジの整備に対する期待が及ぼす影響について定量的に検討したものである。研究の結果、期待する効果として、自動車の利便性に加えて、経済活性化と開発促進や防災・危機安全の向上が期待されており、かつQOL評価へ影響を及ぼしていることも推察された。
  • 屠 芸豪, 河野 祐希, 浦田 真由, 遠藤 守, 安田 孝美
    2021 年 7 巻 2 号 p. 231-239
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/22
    ジャーナル フリー
    近年、社会全体でデジタル化が進み、行政をはじめとする様々な分野において、データと情報通信技術との利活用が重要になってきている。行政分野においては、自治体における行政運営や社会課題に対応するために、情報通信技術を活用し、データに基づく政策立案が必要である。そのため、自治体におけるオープンデータをはじめとするデータの推進と利活用が重要となる。本研究では、自治体での画像オープンデータ推進の実践に向け、産官学連携により人工知能技術を活用した支援システムを構築する。現状、全国の自治体では文章や表形式のオープンデータの推進は進んでいるものの、肖像権やプライバシー等の問題により、画像のオープンデータ化については普及が進んでいない。そこで本研究では、画像のオープンデータ化を推進するための支援システムを開発した。加えて、産官学連携により自治体における実証実験を通じて支援システムを検証した。その結果、自治体の保有する画像のオープンデータ化に対する実現可能性と有効性を確認することができた。これにより、画像オープンデータの利活用に繋げると考える。また、自治体における画像オープンデータに関連する業務負担を軽減し、業務効率の向上を図る。更に、本研究を通じて自治体業務に人工知能技術を活用した効果と意義を検証し、人工知能技術の活用に対する理解とイメージを深めることを目指す。
  • 荒金 恵太, 一ノ瀬 友博
    2021 年 7 巻 2 号 p. 241-266
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/22
    ジャーナル フリー
    本研究では、一つの行政区域の範囲を超える広域的なスケールの流域圏の視点を緑の基本計画に導入することの意義と課題について考察することを目的として、2019 年の台風第 19 号(令和元年東日本台風)で総合治水対策の効果がみられた鶴見川流域の事例を対象に、ヒアリング調査や現地調査等により、総合治水対策に資する公園整備や緑地保全の取組の展開経緯等に関する情報を収集・整理した。その結果、鶴見川流域における総合治水対策の取組は、国土交通省関東地方整備局、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、町田市、稲城市の連携によって、40 年以上の長きにわたり取組が展開され、その一環で遊水地や調整池の機能を有する公園も整備されてきたことや、それらの遊水地や調整池の機能を有する公園は、2019 年の台風第 19 号(令和元年東日本台風)の発生の際に、水位を低減させる役割を担っていたことが確認された。生物多様性保全についても、1998年に生物多様性保全モデル地域計画(鶴見川流域)が全国に先駆けてとりまとめられ、流域全体の中での保全すべき緑地(生物多様性重要配慮地域)が17 箇所抽出されていた。生物多様性保全モデル地域計画(鶴見川流域)の内容は、後に策定された鶴見川流域水マスタープランや、各自治体の緑の基本計画の内容とも連携していた。今後、気候変動に伴う災害リスクの増大が懸念され、河川・下水道による対策のみならず、雨水貯留浸透機能を有する公園整備や緑地保全による対策も含めた流域治水の推進や、同じ流域圏内の自治体間の連携強化が一層重要となっている中、緑の基本計画においても流域圏の視点を導入することの有効性や実現可能性が示された。
  • 風間 七海, 福島 秀哉, 福井 恒明
    2021 年 7 巻 2 号 p. 267-281
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/22
    ジャーナル フリー
    東日本大震災の復興事業においては、各地域の特性に配慮した復興が重視された。復興過程に現れた地域の特性の通時的、総合的な把握とその記述方法の検討は、今後の復興事業のあり方の議論において重要な知見を提供すると考えられるが、その複雑な状況における調査・分析に向けた、より効率的かつ効果的な方法論の検討が求められている。本研究では復興の主体である基礎自治体(市町村)が復興過程において継続的に地域に関する情報を発信してきた自治体広報紙に着目し、その記事内容の通時的分析から復興過程に現れた地域の特性の読み取りを試みた。その成果として、東日本大震災被災6自治体の広報紙の構成・内容に関する特徴を把握した上で、震災前から継続的に住民に身近な情報を発信していた「地域の出来事」に関する記事のテキスト分析により復興過程に現れた地域の特性の一部を明らかにした。
  • 内航海運の利用促進と外航コンテナシャトル便の導入に着目して
    柴崎 隆一, 若島 久幸, 梁 子睿, 水野 遊大, 杉村 佳寿
    2021 年 7 巻 2 号 p. 283-304
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/22
    ジャーナル フリー
    本稿は、国際海上コンテナ貨物輸送における国内内航フィーダー輸送および外航コンテナシャトル便の促進施策の影響を定量的に計測するため、著者らがこれまで構築してきたインターモーダル国際物流シミュレーションモデルを、内航フィーダー輸送におけるカボタージュ規制や品目による時間価値の相違等を考慮したモデルへと拡張し、我が国へ適用してモデルの再現性を確認した。構築したモデルを用いて、博多港を対象とした内航海運の新設・横持ち費用削減等の利用促進施策や外航コンテナシャトル航路の新設シナリオ、さらに両施策を組み合わせた複合シナリオを想定したシミュレーションを行い、両施策による内航・外航貨物輸送量の変化や、時間価値の異なる貨物構成の変化が及ぼす影響について検証した。
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