外国にルーツをもつ乳幼児を受け入れている保育園で生じている問題やそれに対してとるべき対策などを明らかにすることを目的として、外国人留学生が多い広島県東広島市と、外国人技能実習生が多い呉市を対象に、外国にルーツをもつ子どもを受入れる保育園とその保護者を対象としてアンケート調査を行った。その結果、両市では外国にルーツをもつ乳幼児の全体数や各園の在籍情報を把握しておらず、保育園は言葉が通じないことに起因する事故の恐れや文化や食事に関する理解不足、保護者との意思疎通の困難といった不安を抱えていた。そのため保育園は、子どもの親の国の文化を紹介する資料、子どもの受入れの時点で親の国籍や言語能力、食事の配慮の有無などの事前把握、市の外国人住民に対する支援体制についての情報提供、加配保育士の配置などを要望していることが明らかとなった。一方、外国にルーツをもつ子どもの保護者は、日本語能力が低いほど、保育士と意思疎通が出来ないことで困難を抱えており、英語の書類や掲示、通訳・コミュニケーション補助ツールの他、自国の文化を紹介する資料、ハラルフードの提供の要望があった。このような要望に早急に対処していくことが必要であるが、予算も限られているため、通訳の配置や翻訳機の配布はすぐには難しい。そこで、筆者らは「やさしい日本語」と英語、イラスト等で構成した指差しでコミュニケーション可能なツールを作成し配布したところ、保育園から高く評価された。
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