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川崎 幸彦
2015 年 6 巻 1 号 p.
3-10
発行日: 2015年
公開日: 2020/12/15
ジャーナル
フリー
全身性エリテマトーデス(SLE)は,血管および結合組織の全身性慢性炎症性疾患である.発症
機序としては,遺伝的素因に環境因子が加わることで免疫応答異常が生じ,免疫複合体が形成され,
これら免疫複合体が組織に沈着することで臓器障害が惹起されると考えられる.ループス腎炎(LN,
本症)は最も頻度の高い臓器病変であり,成人と比較して疾患活動性も高く,予後を決定しうる因子
となる.
本稿においては,本症の発症に関連する遺伝学的素因,環境因子や免疫応答異常と免疫複合体形成過
程および腎臓への沈着後の炎症進展機序について,さらにはこれらの病態を制御するための重症度に
よる層別化した治療戦略などについて現在までの知見を元に概説した.成長過程の小児における本症
の治療では,治療効果のみでなく副作用とのバランスを考慮したより適切な治療選択が望まれる.
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河合 利尚, 渡辺 信之, 横山 みどり, 中澤 裕美子, 後藤 文洋, 内山 徹, 前川 貴伸, 樋口 昌孝, 放生 雅章, 小野寺 雅史
2015 年 6 巻 1 号 p.
11-16
発行日: 2015年
公開日: 2020/12/15
ジャーナル
フリー
慢性肉芽腫症(CGD)は,殺菌能が低下し細菌や真菌へ易感染性を示す原発性免疫不全症である.
本疾患では炎症性サイトカインの過剰産生により炎症性肉芽腫が形成されるが,ステロイドや免疫抑
制剤による治療は易感染性を増悪させるため制限された使用となる,今回,肉芽腫性間質性肺炎を合
併したCGDの2症例に対して,サリドマイド治療を行った.症例は8歳と20歳のCGDで,血清
KL-6高値と胸部CTで肺間質陰影の濃度上昇を認めた.各種培養検査は陰性で,病理所見では肺間質
組織にリンパ球浸潤と微小な肉芽腫を散在性に認めた.活動性の高い感染症の関与が否定的だったた
めサリドマイドを3か月間投与したところ,血清KL-6は低下し胸部CTでは問質性陰影は消失した.
治療中,明らかな易感染性の増悪は認めず,サリドマイドに関連する重篤な副作用もみられなかった.
CGDでは感染症だけでなく過剰な免疫応答に関連した肉芽腫性間質性肺炎をきたす可能性が示唆さ
れ,CGDの2症例においてサリドマイドは有用であった.
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田崎 優子, 清水 正樹, 井上 なつみ, 石川 さやか, 上野 和之, 谷内江 昭宏
2015 年 6 巻 1 号 p.
17-22
発行日: 2015年
公開日: 2020/12/15
ジャーナル
フリー
Angiopoietin(Ang)1および2(以下Ang l/2)は血管内皮細胞機能の調節に重要な役割を果たして
いる.今回我々は全身型若年性特発性関節炎(s-JIA)に合併したMAS病態におけるAng l/2の役割
と血管内皮細胞障害の指標としての臨床的意義について検討した.s-JIA 25例(うち10例はMASを
合併),多関節型JIA 11例,健常小児(HC)15例についてAngiopoietin 1/2の血清中濃度をELISA法
で定量し臨床像と比較検討した.MAS合併時には急性期と比較し血清Ang-1濃度は有意に減少し,
Ang-2/1比は有意に増加していた. Ang-2/1比はMASを合併すると急激に上昇し,改善すると速やか
に低下した,Ang-2/1比は, MASの活動性を示すLDHおよびFDP-Dダイマーと有意な相関を示した.
Ang-1およびAng-2/1比はMASにおける血管内皮細胞障害の程度を反映し, MASの病勢を把握する
指標として有用であると思われた.
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清水 正樹, 梅林 宏明, 井上 祐三朗, 笠井 和子, 金子 詩子, 菊地 雅子, 木澤 敏毅, 北川 好郎, 久保田 知洋, 鈴木 一雄 ...
2015 年 6 巻 1 号 p.
23-27
発行日: 2015年
公開日: 2020/12/15
ジャーナル
フリー
メトトレキサート(MTX)は若年性特発性関節炎(JIA)に対する標準的な治療薬であるが,初期
投与法,効果判定の時期,中止の基準などは一定していない.今回我々は小児リウマチ性疾患の診療
に携わる経験年数が10~15年の12施設15名の小児科医(うちリウマチ専門医12名を含む)を対
象にアンケート調査を行い,JIAに対するMTX治療の実態について検討した.治療法については,週
1単回投与で6mg/m2より開始,10 mg/m2を目標に1~2週ごとに,2mg/m2程度ずつ増量されるこ
とが多かった.葉酸の併用や内服方法については,一定していなかった.副作用については,嘔気の
頻度が高く,内服コンプライアンスが問題となっていた.効果判定については,治療開始後3か月.
と比較的早期に判定が行われていた.減量中止については,その判断の時期,方法ともにばらつきが
目立っていた.今回の調査から,MTXの投与法は依然施設間でばらつきがあることが明らかになった.
今後適正なMTX治療の確立に向け,全国的な症例集積による実態調査が望まれる.
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清水 彰彦, 檜佐 香織, 野村 滋, 鹿間 芳明, 今川 智之
2015 年 6 巻 1 号 p.
28-32
発行日: 2015年
公開日: 2020/12/15
ジャーナル
フリー
当院フォロー中の小児リウマチ性疾患患者26名において骨代謝マーカー(BAPとTRACP-5b)を測
定し,骨密度・副腎皮質ステロイド(以下ステロイド)投与との関連を後方視的に検討した.TRACP-
5bが年齢・性別の基準値を超えた骨吸収が充進している症例が15例(58%)と多かった.一方, BAP
低値となり骨形成が抑制されている症例は2例(8%)のみであった.骨形成・骨吸収とも抑制される
成人でのステロイド性骨粗霧症とは対照的な結果となった.ステロイド投与の有無で,骨代謝マーカー
に有意な差は認めなかったが,ステロイド投与群で有意に骨密度の低下を認めた.ステロイド投与群
では,薬剤の影響以外にも,炎症性サイトカインや臥床などの要因が骨密度低下に関与している可能
性がある。骨代謝マーカーの特徴からは,骨吸収を抑制するビスホスフォネートが有効な治療選択肢
となると推測される.本研究からは,以下の2点が明らかになった.一つは,小児リウマチ性疾患患
者には骨吸収が克進している症例が多いこと.もう一つは,ステロイド投与例では,骨代謝マーカー
は影響を受けないが,骨密度は有意に低下するということである.治療による骨代謝マーカーの変化
や各疾患の骨代謝マーカーの特徴などを明らかにするため,症例の蓄積が必要である.
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清水 正樹, 竹本 裕子, 高倉 麻衣子, 井上 なつみ, 田崎 優子, 石川 さやか, 上野 和之, 谷内江 昭宏
2015 年 6 巻 1 号 p.
33-38
発行日: 2015年
公開日: 2020/12/15
ジャーナル
フリー
ぶどう膜炎は若年性特発性関節炎(JIA)の主要な関節外症状である.一部の症例では治療抵抗性を
示し,失明の原因にもなりうる.近年治療抵抗例に対して,アダリムマブ(ADA)の有用性が報告さ
れている.症例1: 8歳.女児.2歳時に右足関節炎を呈し,少関節型JIAと診断された.ぶどう膜炎の
合併もあり,6歳時よりステロイドの内服治療を開始したが,度々再燃しステロイド依存性の経過を
示した.8歳時よりADAを開始し有害事象はなく改善した.症例2: 8歳男児.5歳時に左膝関節炎
を呈し,少関節型JIAと診断された.ぶどう膜炎の合併もあり, MTXの内服およびステロイド点眼治
療を開始し,関節炎,ぶどう膜炎とも改善した.6歳時に伝染性単核症に罹患しMTXを中止したが
その3か月後よりぶどう膜炎の再増悪を認めた.MTXおよびステロイド剤の内服治療を開始したが
減量後再燃したため,8歳時よりADAを開始し有害事象はなく改善した. ADAは治療抵抗性ぶどう
膜炎に対する非常に有用な薬剤であり,早期の適応拡大が望まれる.
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石川 さやか, 清水 正樹, 井上 なつみ, 田崎 優子, 上野 和之, 濱口 儒人, 谷内江 明宏
2015 年 6 巻 1 号 p.
39-42
発行日: 2015年
公開日: 2020/12/15
ジャーナル
フリー
症例は20歳女性.15歳時に分類不能関節炎型の若年性特発性関節炎と診断され,メトトレキサー
トとエタネルセプト(ETA)の併用治療により寛解を維持していた. ETA開始3年後の19歳時に両
足底に掻痒感を伴う鱗屑性紅斑を認めた.皮膚生検では,過角化,錯角化,表皮の肥厚,表皮突起の
延長,海綿化,裂隙形成を認め,乾癬様皮疹と診断した.ETAを継続したまま,外用薬による治療を
開始したが改善に乏しく,4か月後にETAを中止し,トシリズマブ(TCZ)に変更したところ改善を
認めた.TNF阻害薬使用中に難治性の皮疹を認めた際には, TNF阻害薬の副作用としての乾癬様皮
疹の可能性を考慮する必要がある.
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赤池 治美, 今中 啓之, 根路銘 安仁, 久保田 知洋, 山遠 剛, 山崎 雄一, 野中 由希子, 嶽崎 智子, 是松 聖悟, 河野 嘉文 ...
2015 年 6 巻 1 号 p.
43-48
発行日: 2015年
公開日: 2020/12/15
ジャーナル
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生物学的製剤により若年性特発性関節炎(JIA)の予後は著明に改善し,妊娠に対応する症例が増
えつつある.当科でも2症例3分娩を経験した.症例1は全身性エリテマトーデスを合併したリウマ
チ因子(RF)陽性多関節型JIA例である. infliximab等でJIAが軽快した27歳時に第1子を計画妊
娠したが,JIAの活動性は高く,子宮内胎児発育遅延で在胎32週に帝王切開で分娩した.治療を
etanerceptに変更後,第2子を妊娠したが,加重型妊娠高血圧腎症の為に在胎25週で緊急帝王切開
となった.症例2は16歳のRF陽性多関節型JIA例. adalimumab(ADA)で寛解中に在胎24週相当
の予期せぬ妊娠が判明した.ADAを中止したが再燃はなく,在胎37週で出産した. JIA活動期の妊
娠では疾患制御は難しく,胎児発育にも悪影響がある.そのため,寛解導入後の妊娠が望ましく,妊
娠中も慎重な母体管理が必要である.また,思春期を迎える症例には治療薬による妊娠への影響の啓
発を確実に行い,予定外妊娠を避けるべきである.
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水田 麻雄, 笠井 和子, 中岸 保夫, 三好 麻里
2015 年 6 巻 1 号 p.
49-52
発行日: 2015年
公開日: 2020/12/15
ジャーナル
フリー
症例は14歳の女子.出生時より単心房,房室中隔欠損,下大静脈欠損,多脾症候群を認め,二心
室修復術,僧帽弁形成術の既往がある.10歳時より股関節の疹痛を認めたが自然に軽快した,しかし
その数か月後に右手・両足・膝関節の疼痛を認めたため,当科を紹介受診.抗CCP抗体陽性,リウ
マチ因子陽性の多関節型若年性特発性関節炎と診断し,プレドニゾロン(PSL),メトトレキサート
(MTX)による治療を開始された.その後,症状は軽快傾向にあり, PSLの減量をすすめていたが,12
歳時に感冒を契機に関節症状が増悪し,PSLを増量するも効果は限定的であったため,生物学的製剤
(トシリズマブ)導入を考慮した.トシリズマブ(TCZ)に関しては, IL-6機能の遮断による心機能へ
の影響が明確ではなく,心機能に異常のある児に対してのTCZの作用は検討されていないことから,
本児へのTCZ投与による心機能悪化の可能性が考えられた.導入前の心臓超音波検査では明らかな心
機能の異常は認めなかったことからTCZ投与に至ったが,懸念された副作用は認めず,投与を継続で
きた.現在は関節症状が残存しており,PSLの増量と減量を繰り返している.必要に応じて生物学的
製剤のスイッチングも考慮中である.
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佐藤 知実, 大林 聡子, 奥田 雄介, 坂井 智行, 澤井 俊宏, 一色 啓二, 宇津 貴, 竹内 義博
2015 年 6 巻 1 号 p.
53-56
発行日: 2015年
公開日: 2020/12/15
ジャーナル
フリー
症例は17歳女児.SLE発症10年後にネフローゼ症候群を伴ってループス腎炎が再燃し,腎生検で
ループス腎炎ISN Class IV G(A/C)型と診断した.ステロイドパルス療法を4コースを施行したが徐々
に尿蛋白が増加し,全身の著明な浮腫,胸腹水の貯留,心嚢液貯留を来し,17歳6か月時に入院となっ
た.自己抗体の除去を目的とし,血漿交換療法を行ったところネフローゼ状態は改善し,浮腫や胸腹水,
心嚢液は消失した.その後,徐々に尿蛋白は減少し,維持の免疫抑制療法としてシクロホスファミド
パルス療法を選択し,8か月後にネフローゼ症候群の寛解を得た.
ループス腎炎はSLEにおいて生活の質や生命予後を決定する重要な合併症であり,ループス腎炎IV
型ではステロイドに加えて,ミコフェノール酸モフェチルやシクロホスファミドパルス療法の併用を
必要とする.それに加え,重症のネフローゼ症候群をきたした症例では,救命のため急性期の治療と
して血漿交換療法が有効であると考えられた.
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藤井 法子, 北村 綾香, 大内 一孝, 森原 徹, 秋岡 親司, 細井 創
2015 年 6 巻 1 号 p.
57-61
発行日: 2015年
公開日: 2020/12/15
ジャーナル
フリー
混合性結合組織病(MCTD)には関節炎がしばしば合併する.その多くは骨病変を伴わない軽微な滑膜炎であるが,稀に高度の骨びらん性変化を伴う.
我々は,MCTD発症から3年後の高用量メトトレキサート(MTX)内服中に,骨びらんを伴う肩関節痛を認めた14歳女児例を経験した.関節鏡に
て関節滑膜増殖と骨びらんを伴うパンヌス形成を認め,関節滑膜炎と診断した.関節リウマチ類似の病態と考え,滑膜除去とトシリズマブ(TCZ)投与を行い,速やかに軽快した.多彩な臨床症状を示
すMCTDをはじめとした膠原病では,病態を基にした治療介入が必要不可欠である. TCZは関節リウマチ以外の膠原病に合併する難治性関節炎にも試みるべき治療であると考えられた.
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清水 順也, 尾嶋 有美, 土屋 弘樹, 服部 真理子, 兵頭 勇樹, 藤永 祥子, 浦山 建治, 古城 真秀子, 金谷 誠久, 白神 浩史 ...
2015 年 6 巻 1 号 p.
63-67
発行日: 2015年
公開日: 2020/12/15
ジャーナル
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ネフローゼ症候群(NS)とべーチェット病(BD)の合併は極めてまれである.症例は13歳男児.6
歳時にNSを発症し頻回再発型となったため, mizoribin(MZR)高用量治療の併用を行いNSは長期
寛解維持できた.MZR高用量治療を開始したころから児は歯科矯正治療を始めたが,その後口内炎を
繰り返したり,ときに蕁麻疹様の紅斑が出現したりするようになった.NS発症から7年後に眼発作
を契機にBDと診断した.児はHLA-B51陽性であった. BD,NSいずれもその病因はいまだ明確でな
いが,本症例においては,HLAや歯科矯正治療などの口腔粘膜刺激のみならず,ステロイドやMZR
などのNSへ対する治療がBD発症・進展に影響していた可能性もある. BD発症のメカニズムを検討
するうえで興味深い症例と考えられたため,報告する.
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笠井 和子, 水田 麻雄, 中岸 保夫, 阪本 浩一, 三好 麻里, 足立 厚子
2015 年 6 巻 1 号 p.
69-72
発行日: 2015年
公開日: 2020/12/15
ジャーナル
フリー
Parry Romberg syndrome(PRS)は顔面半側が進行性に萎縮する稀な疾患である.今回我々はPRS
と限局性強皮症を合併した小児例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.
症例は初診時7歳11か月の女児.初診の5か月前に右下口唇に線状の,また右下顎部に斑状の白色
萎縮性局面が出現した.その後右上顎・右頬粘膜・舌右側へ白色病変の出現が拡大すると同時に,右
頬部・下顎のびまん性の萎縮による右顔面の変形を認めるようになった.白色萎縮性局面の生検結果
で真皮内の炎症細胞浸潤と膠原線維の肥厚・沈着を認めたことより,限局性強皮症と診断された.また,
右顔面のびまん性萎縮を認めたことおよび病変の範囲や性状よりPRSとも診断された.この両所見を
合わせて,本症例は限局性強皮症とPRSの合併症例と診断した.
PRSは稀ではあるが,限局性強皮症を合併する疾患として小児科医も認識しておく必要があると思わ
れた.
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石川 さやか, 清水 正樹, 井上 なつみ, 田崎 優子, 上野 和之, 藤田 健司, 加畑 多文, 谷内江 明宏
2015 年 6 巻 1 号 p.
73-76
発行日: 2015年
公開日: 2020/12/15
ジャーナル
フリー
症例は10歳女児.入院2年前から時々右股関節痛を認めていた.3か月前に高度の右股関節痛と可
動域制限を認め,当院へ紹介入院となった.入院時右下肢の筋萎縮と右股関節の拘縮があり,X線検
査では右股関節の関節裂隙狭小化を認めた.MRI検査ではそれに加え,骨髄浮腫の所見,大腿骨頭面
に虫食い状のくびれがあり,臼蓋側にも一部嚢胞形成を認めた. 一方で,少量の関節液貯留はあるも
のの,若年性特発性関節炎(JIA)に特徴的な造影効果を伴う滑膜増生の所見を認めなかった.これ
らの結果から特発性股関節軟骨融解(ICH)と診断した.イブプロフェン内服,ステロイド関節内注
射,リハビリ治療を開始した.治療後症状は改・善し,X線検査上関節裂隙の狭小化の改善も認めてい
る.ICHは大腿骨頭近位部の硝子軟骨の融解により関節裂隙が狭小化し,股関節の可動域制限をきた
す原因不明の疾患である.強い股関節痛と可動域制限を主症状とし,前思春期の女児に好発するため,
JIAの鑑別診断の一つとして重要な疾患であると思われた.
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