近年,中国において,以下の誤った認識が広く国民の間に流布している。すなわち,中国の所得比例型公的年金の所得代替率とされているものが,実際には平均給付率で評価されているということ,そして,高齢化の進展により所得代替率が2000年の約70%から2020年には約40%へと急落したとされていることである。これにより,中国の年金制度改革において,積立方式私的年金の大幅な拡充が必要不可欠であるという主張がなされている。本稿では,このような所得代替率の動向に関する誤った認識を正し,中国の年金制度が直面している真の課題が何であるかを示した上で,その対処法を提案する。本稿における分析の結論は,以下の通りである。第一に,「所得代替率」と「平均給付率」は互換的に使用できる概念ではない。第二に,真の粗所得代替率は約60%と安定しており,2014年10月からは上昇傾向にある。第三に,平均給付率の低下は高齢化とは関係なく,見過ごされてきた年金制度やカバレッジの構造変化,および平均賃金の過大評価から生じている。第四に,中国の合計特殊出生率は近年大幅に低下しており,他国とのより公平な比較のための「スライドした高齢者依存率」が急速に上昇していることを考えると,積立方式私的年金の拡大ではなく,出生率向上に多くの資源が向けられるべきである。
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