霊長類研究 Supplement
最新号
選択された号の論文の79件中1~50を表示しています
第36 回日本霊長類学会大会 公開市民講座
  • 原稿種別: 公開市民講座
    p. 4
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    日時:2020 年12 月6 日(日)  13:30 ~16:30


    形式:Zoom によるオンライン配信


    本講座では、野外生態研究、内分泌系、腸内細菌、動物園の保全教育という観点から、霊長類学が種の保全に果たす役割を、最新の研究成果とともに、高校生から社会人を念頭に、わかりやすく紹介します。特に、熱帯林にのみ生息し、絶滅の危機に瀕している我々ヒトに近い大型類人猿を中心に講演します。


    プログラム
    司会・趣旨説明 牛田一成( 中部大学創発学術院)


    1.ボノボを知る、まもる
        徳山奈帆子 ( 京都大学霊長類研究所国際共同先端研究センター)

    2.動物園での研究からみえたオランウータンの繁殖特性
        木下こづえ ( 京都大学野生動物研究センター)

    3.腸内細菌が野生復帰の切り札? ~ ゴリラにはゴリラの乳酸菌~
        土田さやか ( 中部大学創発学術院)

    4.動物園だからこそできる保全教育
        赤見理恵 ( 日本モンキーセンター)


    各演題へのコメンテーター
        中村美知夫( 京都大学大学院理学研究科)、藤田志歩( 鹿児島大学共通教育センター)、
        半谷吾郎( 京都大学・霊長類研究所)、田中正之( 京都市動物園)


    主催:日本霊長類学会
    共催:中部大学創発学術院
    後援:愛知県教育委員会


    日本学術振興会科学研究費 研究成果公開発表(B) 20HP0018 助成事業

自由集会
  • 原稿種別: 自由集会
    セッションID: W01
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    日時:2020 年12 月4 日(金)  13:00 〜14:30


    形式:Zoom によるオンライン配信


    ニホンザルをはじめ多くの野生動物による軋轢が増加している。農業被害や生活被害、精神被害に加えて市街地への出没、侵略的外来種の定着と増加、感染症によるリスク、地域的な分布の拡大と消滅など様々な問題が発生している。 一方、少子高齢化する農山村では対策の遅れなど地域による課題が山積している。専門的な立場から、ニホンザルをはじめとした野生鳥獣による問題解決を支援する活動は重要である。そこで自由集会では、一般社団法人ニホンザル管理協会が進める活動を紹介する。本協会は、大学に所属する研究者と民間の調査会社に所属する実務者で構成している。活動は主に対策技術の向上と担い手の育成をサポートし、人と野生鳥獣の問題を解決に導くことで、持続的に共存できる地域づくりを目指している。また、全国の行政・学術団体・市民・農林業従事者・事業者等の連携を促進し、社会課題の解決と地域の創生に寄与することを最終の目的として活動している。ニホンザル管理協会が目指しているニホンザルの保全や管理、そして後継者育成について課題を整理し、関係学会との連携をどう進めるべきか、最新の情報を共有しながら議論を進めたい。


    プログラム
    1.社団設立の趣旨〜サル管理の現状と課題〜
        森光由樹(兵庫県立大学)

    2.ニホンザル農業被害対策〜行政の人材育成〜
        山端直人(兵庫県立大学)

    3.ニホンザル管理業務〜民間事業者の人材育成〜
        清野紘典(株式会社野生動物保護管理事務所)

    4.地域に根ざした対策支援〜地域団体の人材育成〜
        鈴木克哉(NPO 法人里地里山問題研究所)

    5.サル管理協会が目指す人材育成〜これまでの成果と今後の活動に向けて〜
        清野未恵子(神戸大学)


    コメント:伊吾田宏正(酪農学園大学・一般社団法人エゾジカ協会)


    責任者: 森光由樹(兵庫県立大学)

  • 原稿種別: 自由集会
    セッションID: W02
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    日時:2020 年12 月4 日(金)  15:00 ~18:00


    形式:Zoom によるオンライン配信


    動物福祉や保全への意識が高まる現代においては、野生動物を飼育するうえで、飼育する動物及びその本来の生息地に負担を与えないことが飼育の前提となってきている。しかし、現在でも動物福祉や生息地保全の観点から問題となる事例も存在する。
    今回とりあげる大型類人猿のエンターテイメント利用と、霊長類のペット取引について、動物福祉・保全の観点から専門家から多くの問題が指摘されてきた。大型類人猿のエンターテイメント利用に関しては、幼少期の不必要な母子分離を引き起こしやすいことや、それに伴い群れ飼育との両立が難しいこと、種本来の行動習得ができなくなることなど、動物福祉の観点から問題点がある。さらに、絶滅危惧種である大型類人猿が擬人化された形で見せられることで、絶滅危惧種としての認識がさがるといった環境教育の観点からも問題が指摘されている。また、ペットのための違法取引が、スローロリスやマーモセット類など野生霊長類の個体数減少に寄与していることが知られている。その取引の現場では動物が死ぬことも多く、人獣共通感染症につながる怖れもある。残念なことに、日本にその多くが輸入されている実態などがあきらかとなっている。こうした問題に対して、研究者個人やそのグループが、その実態を把握したり、問題提起したりするなどを行ってきた。しかし、動物・人の生活や感情が複雑に絡み合うこれら問題について具体的な解決には至っていない。
    わたしたちは個人として、または専門家の集まりである学会としてこうした問題にどのように向きあい、解決に向けてどのような貢献ができるのだろうか。今回の自由集会では大型類人猿のエンターテイメント利用や霊長類の違法取引に関する近年の動向やそれに対して行った活動について話題提供をしていただく。その後、一般参加者も含めてこれらの問題について議論を行う。霊長類に関する専門家ができる貢献について考える場としたい。


    話題提供者
     1.松阪崇久(大阪成蹊大学教育学部)・徳山奈帆子(京都大学霊長類研究所)
     2.北出智美・成瀬唯(TRAFFIC Japan)
     3.徐沈文 ( 京都大学霊長類研究所)
     4.Steve Ross (Lincoln Park Zoo)


    コメンテーター
     林美里(京都大学霊長類研究所)
     諸坂佐利(神奈川大学法学部)
     白井啓(株式会社野生動物保護管理事務所)


    主催:日本霊長類学会保全福祉委員会


    責任者:山梨裕美(日本霊長類学会保全・福祉担当幹事)


    運営:山梨裕美(日本霊長類学会保全・福祉担当幹事)
       徳山奈帆子(京都大学霊長類研究所)
       赤見理恵(公益財団法人日本モンキーセンター)

口頭発表
  • 天野 英輝, 荻原 直道
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: A01
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    ヒトの脳において特異的に進化した形質を特定するには、ヒトの脳と最も近縁である大型類人猿の脳を比較し、その形態的差異を明らかにすることが重要である。 本研究ではヒトと大型類人猿の深部領域まで含めた脳の形態差を明らかにすることを目的に、正中矢状面における脳形態を幾何学的形態測定学により分析した。 具体的には、ヒト15個体、チンパンジー14個体、ボノボ3個体、ゴリラ2個体、オランウータン3個体の頭部MRI画像から正中矢状断面画像を取得し、大脳輪郭、脳溝、脳梁、視床、小脳、脳幹などに解剖学的特徴点及び準特徴点を配置することで脳形態を定量化した。そして、位置合わせ及びサイズ正規化後の特徴点座標値の主成分分析を行うことで、ヒトと大型類人猿の脳形態の変異傾向を抽出した。その結果、ヒトの脳形態は、大型類人猿と比較して、脳幹・小脳が相対的に垂直に、後頭葉、前頭葉眼窩部が下方に位置し、頭頂葉が上方に顕著に突出する傾向がみられた。深部領域に着目すると、前頭前野内側、頭頂葉楔前部の拡大がみられた。また、帯状回、脳梁は頭頂葉の突出に伴い上方に突出するが、前交連、視床など中心部組織は相対的に種間差が小さいことが明らかとなった。このようなヒトの脳形態の変異傾向は、ヒトは直立二足歩行の獲得により脳幹・小脳が垂直に、後頭葉を相対的に下方に配置させることで、頭頂葉の上下方向への拡大を実現できたことを示唆していると考えられる。楔前部は視空間統合機能と関係することから、石器製作・利用に必要な認知能力とも関係する。二足歩行の獲得による脳幹・小脳部の垂直化が、ヒトに特異的な大脳化への前適応となった可能性が示唆された。

  • 櫻屋 透真, 関谷 伸一, 江村 健児, 平崎 鋭矢, 荒川 高光
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: A02
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    足底筋は哺乳類全般で重要な役割を担うが、霊長類においてはその役割の一部がヒラメ筋に引き継がれている (Hanna and Schmitt, 2011)。ヒトのヒラメ筋前面には羽状筋部があり、前から入る独立した神経枝 (前枝: Ramus anterior; Ra) に支配される (Sekiya, 1991)。 ヒラメ筋羽状筋部と足底筋は、神経束レベルで支配神経が共同幹や交通を有し、由来の近縁性が示唆されている (Okamoto et al., 2013)。霊長類間でヒラメ筋羽状筋部と足底筋の神経支配様式を比較することで、ヒトの直立二足歩行への適応に伴う両筋の系統発生を考察した。ワオキツネザル6 側、クモザル1側、リスザル1側、ニホンザル1側、テナガザル2側、オランウータン1側、チンパンジー2側、ヒト6側 ( 足底筋欠如例3側含む) のホルマリン固定標本を使用し、実体顕微鏡を用いて脛骨神経の神経束分岐パターンを解析した。ヒト全例にRaが認められた。先行研究同様、Raと足底筋枝は共同幹を形成するか交通を有した。ワオキツネザル全例にRa相当の支配神経 (Ra相当枝) が認められ、足底筋も存在した。Ra相当枝はチンパンジー2/2側、テナガザル1/2側にも確認された。足底筋はニホンザル、オランウータン、チンパンジー1/2側に存在した。Ra相当枝と足底筋が共存する場合、両者は共同幹を形成するか交通を有した。ヒトから最も遠い系統のワオキツネザル全例にRaと足底筋が存在するが、ヒト以外の霊長類ではRaが認められないものも、足底筋が欠如するものも存在した。下腿屈筋群は、腓腹筋およびヒラメ筋のRaに支配されない部からなる群と、深層屈筋群の2つに分けることができ、Ra支配部と足底筋は深層屈筋群に分類された。よって、ヒラメ筋Ra支配部は足底筋を含む下腿屈筋群と近い由来の可能性があり、これが霊長類全体の共有原始形質である可能性が示唆された。ヒトは直立二足歩行の適応に際し、ヒラメ筋全体の発達に伴ってRa支配の羽状筋部が恒常的となり、由来の近い足底筋もよく残存している、という系統発生を考えたい。

  • 仲井 理沙子, 北島 龍之介, 今村 拓也, 亀田 朋典, 小塚 大揮, 平井 啓久, 井藤 晴香, 今井 啓雄, 今村 公紀
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: A03
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    私たちと最も近縁な原生生物であるチンパンジーの進化発生生物学は、ヒトの起源を理解するために不可欠です。しかし、技術的・倫理的制限からチンパンジーの個体を用いた胚発生の継時的な解析は困難です。この課題に対して、iPS細胞の分化誘導系を用いることで、培養下で発生現象を再現し、精査することが可能となります。そこで、私たちは、チンパンジーiPS細胞の樹立と、分化誘導培養による初期神経発生の再現に取り組みました。まず、成体チンパンジー由来の皮膚線維芽細胞に、リポフェクション法を用いてヒトの初期化因子を保有するプラスミドベクターを導入し、チンパンジーのiPS細胞を樹立しました。この細胞は、ヒトのiPS細胞と同様に、フィーダー細胞フリーの条件で維持することができます。次に、チンパンジーiPS細胞を用いてダイレクトニューロスフェア形成培養を行い、神経幹細胞を効率よく誘導することに成功しました。iPS細胞から神経幹細胞に至る分化誘導過程1週間に着目し、遺伝子発現と細胞の分化能について継時的に解析した結果、段階的な遺伝子発現の変化が明らかになり、エピブラストから放射状グリア細胞へ至る個体発生と同様な発生運命の進行が再現されていることが明らかになりました。また、発生段階特異的な発現を示す遺伝子としてCUZD1遺伝子を新たに特定し、この遺伝子が神経発生や種特異性に関与する可能性について検証するため、機能解析を進めています。本ダイレクトニューロスフェア形成法は、ヒトやニホンザルのiPS細胞に対しても適用可能であり、発生段階の進行速度における種差も認められています。 以上より、本実験系はチンパンジーの初期神経発生の根底にある分子細胞基盤を明らかにし、ヒトの脳進化について理解するために有望なツールとなると考えられます。

  • Wanyi LEE, Takashi HAYAKAWA, Colin CHAPMAN, Yuji TAKENOSHITA, Shiho FU ...
    原稿種別: Oral Presentation
    セッションID: A04
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    Gut microbiome is actively involved in multiple physiological processes of the animals, including accessing nutrients and maintaining health. Although knowledge on functional impact of gut microbiome has increased greatly in the past decades, our understanding of the mechanisms governing the ecology and evolution of gut microbiome remains obscure. The gut microbiome is potentially affected by factors relating to the hosts (e.g. digestive system, phylogeny) and the environment (e.g. season, habitat type, interactions with sympatric animals of the same and different species). Many previous studies have revealed that mammalian microbiome strongly correlates with host phylogenetic relationship and digestive system, indicating co-divergence of gut microbiome with the host specific characteristics. However, there has been debate about the influence of host phylogeny on gut microbiome comparing to the environmental factors. Since mammals must acquire gut microbes from the outside environment, differences in diet, local habitat and other environmental factors could substantially alter gut microbiome. One way to disentangle the effects of environmental factors on gut microbiome from the host-related factors is to compare gut microbiome of closely related species living sympatrically and allopatrically. Using 16S rRNA Illumina sequencing, we investigated the gut microbiome of 15 primate species living in Moukalaba-Doudou National Park, Gabon and Kibale National Park, Uganda. Utilizing matrix and topological comparisons, we assessed the relative role of host phylogeny, digestive system (colobus/non-colobus), substrate use (arboreal/ terrestrial) and sharing of habitats (geographic distance) in influencing microbiome composition of the nonhuman primates. In particular, weighted UniFrac was found correlated with host phylogeny, digestive system and geographic distance, whereas unweighted UniFrac was found unrelated with any of the factors tested. Overall, our result revealed that in addition to the host-related factors, habitat sharing also played a nonnegligible role in determining gut microbiome composition. This study contributes to a deeper understanding the underlying mechanism governing the ecology and evolution of gut microbiome.

  • 稲葉 明彦, 熊木 竣佑, 有永 理峰, 岩槻 健, 今井 啓雄
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: A05
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    腸管上皮細胞は、栄養素の消化吸収だけでなく異物の認識においても重要な機能を担っている。近年、腸管上皮に極めて少数存在するTuft細胞が寄生虫感染時に免疫を活性化するセンサー細胞であることが明らかになった。現在までげっ歯類を中心に解析が進められているが、げっ歯類と霊長類では生体機能に隔たりが存在する。しかし、解析系が乏しいため霊長類における機能解析は進んでいない。そこで、霊長類Tuft 細胞の解析基盤を構築するため、幹細胞の三次元培養系であるオルガノイド培養法を用いて腸管上皮細胞を培養することで、in vitroにおいてマカク由来Tuft細胞の作出を試みた。まず、アカゲザル (Macaca mulatta) およびニホンザル (Macaca fuscata) の小腸組織から腸陰窩を単離し、特殊なゲルに包埋することで小腸オルガノイドを作製した。次に、培養した小腸オルガノイドにInterleukin-4, 13 (IL-4, IL-13) を添加し3日間培養することでTuft細胞への分化誘導を試みた。その後、Tuft細胞の免疫組織化学染色を行うとともに、RNAを抽出し次世代シーケンサーによる発現遺伝子の網羅的解析を試みた。結果より、IL-4, IL-13はオルガノイド中のTuft細胞数を有意に増加させた。RNA-seqより、Tuft細胞マーカー遺伝子や免疫関連遺伝子の発現が有意に増加していることを確認した。今回我々は、世界に先駆けて非ヒト霊長類由来の消化管オルガノイドの培養に成功した。IL-4, IL-13によるTuft細胞数の顕著な増加は、生体内の免疫応答を模倣していることから、本培養系が消化管機能のin vitro解析系として適していることが示唆された。今後、本培養系を用いて霊長類固有の消化管メカニズムが存在するか解析を試みる。

  • 杉山 宗太郎, 今村 公紀, 糸井川 壮大, 吉村 崇, 今井 啓雄
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: A06
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    アカゲザルなどの一部のマカク類は秋から冬にかけて季節性の繁殖を行う。こうしたマカク類では繁殖期に精巣の肥大化と精巣内での活発な精子形成が見られるのに対し、非繁殖期では精巣が小さくなり、大部分の精細管で精子形成が停止する。しかしながら、年間を通した精細管の組織学的解析は行われていない。そこで、本研究では屋外飼育のアカゲザルから2ヶ月おきに計6個体の精巣を採材し、精細管における精子形成の季節変動について組織形態学的に検討した。具体的には、採材されたアカゲザル6個体の精巣サンプルを用いてHE染色による精細管1つ当たりの全体面積、管内腔面積、細胞数などの組織学的な統計解析を行った。 解析の結果、精細管の全体面積と細胞数は12月から2月にかけて有意に減少し、8月から10月にかけては有意な増加が見られた。また、精細管の内腔面積は8月から12月にかけて有意に増加し、2月から4月にかけて有意に減少した。これらの結果から、精細管全体面積と内腔面積は異なった季節変動パターンを示すことが確認された。また、細胞数の変化から、各精細管内の細胞密度は季節を通してほぼ一定であることが確認された。さらに、アカゲザルでも非繁殖期にリスやシリアハムスターと同様、精母細胞や円形型精子細胞までの分化の停止を伴った精巣の退縮が起こっていることが確認された。今後は生殖細胞特異的な分子マーカーを用いた免疫染色を行い、各時期の精原細胞、精母細胞、精子細胞の種類や分布を解析する予定である。

  • 何 天萌, 李 婉怡, 半谷 吾郎
    原稿種別: Oral Presentation
    セッションID: A07
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    Fecal particle size is a measurement of the result of chewing. It provides important information about the feeding and digestion of herbivores. Understanding the effects of the potential proximate determinants, such as age, sex, and dietary toughness, on fecal particle size helps us interpret this widely used measurement, but have not been extensively investigated, especially in primates. This study aims to clarify how these factors influence fecal particle size in omnivorous Yakushima Japanese macaques. We simultaneously documented their diet, food toughness, and fecal particle size in the lowland area of Yakushima in the period from March 2018 to April 2019. Fecal particle size showed limited differences across months and no difference among age-sex classes. Dietary toughness showed no effects on fecal particle size, while only the consumption of fruits showed a marginally significant negative effect. Our data indicate that food toughness did not limit food comminution in our study subjects, while no age-sex class showed a difference in chewing ability. The lack of variation might derive from a less tough diet compared to the gelada, in which an effect of toughness on fecal particle size was found. These results suggest that food comminution is less variable in frugivores and omnivores primates compare to highly specialized species (such as geladas). This study showed dietary toughness, age and sex differences not always result in fecal particle size variations in frugivores and omnivores species, while the physical structure of foods should be considered during interpreting relevant results.

  • Razanaparany Tojotanjona Patrick, 佐藤 宏樹
    原稿種別: Oral Presentation
    セッションID: A08
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    Despite the contrasting niches during daytime and nighttime, few primates called cathemeral exhibit significant activity distributed over the 24-h. The main hypotheses suggested as the adaptive significance of cathemerality were thermoregulation strategy to avoid heat/cold stress, antipredator strategy to avoid diurnal raptor, feeding strategy to fill energy requirement by feeding fibrous food over 24-h during periods of fruits scarcity. Few studies tested together these hypotheses and found that feeding strategy appeared to be the strongest factors determinants of cathemerality in Eulemur (Donati et al 2011 Animal behav). However, this was a controversial hypothesis for cathemeral lemurs, Hapalemur, that could digest fiber (Eppley et al 2017 Behav Ecol Sociobiol). A study featuring Eulemur did not support also this hypothesis (Curtis et al. 1999 Amer J Primatol). We previously found that cathemerality in dry forest in Ankarafantsika is probably a strategy for maintaining water-balance on days of high ambient temperatures and dry condition (Razanaparany and Sato 2020 Folia Primatol). Therefore, we tested the hypotheses postulated as the adaptive significance of cathemerality in the brown lemurs in dry forest in northwestern Madagascar. We followed two groups of (Common brown lemur) Eulemur fulvus all-day and all-night, over 9 months, equality distributed two seasons. As brown lemurs were hypothesized to shift into nocturnal during defoliation periods to avoid diurnal raptors, we determined the canopy openness and use the data as a proxy of exposure to raptors. We assessed the fiber intake, water intake from food and metabolizable energy intake. We found that the diurnal activity level of the brown lemurs decreased on days of lower humidity, higher ambient temperatures, and closer canopy cover by leaves. Their nocturnal activity level increased with their energy intakes and during defoliation periods. Our results supported that cathemerality is probably thermoregulation to cope with the heat stress, an anti-predator strategy to avoid the diurnal raptors. As canopy cover and humidity are likely linked to the water availability, these results also suggest that cathemerality is probably a strategy to cope with dry/heat stresses in the daytime and ensuring the energy intake during the night. Water accessibility would explain the increase of their diurnal activity during hot daytime and the decrease of nocturnal activity level and nocturnal energy intake at night in the wet season.

  • Zhihong XU, Andrew MACINTOSH
    原稿種別: Oral Presentation
    セッションID: A09
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    Pathogen transmission is a key issue in both public health and wildlife conservation. Predicting pathogen transmission using social network analysis (SNA) has been trending upward following numerous studies of wildlife showing positive relationships between an individual’s social network centrality (a measurement of its importance in a network) and its probability or degree of infection; including in macaques. Based on this work, we aimed to test whether social network centrality can predict parasite infection in different macaque species and populations. We constructed 4 data sets based on behavioral observations and parasitological investigation using 2 groups each of rhesus macaques (Macaca mulatta) and Japanese macaques (Macaca fuscata). We modeled the relationship between social network centrality and intestinal parasite infection intensity in each group and compared the results among them. We also conducted simulations to control for the effect of sample size (i.e. number of fecal samples for parasitology) on the determined relationship. Generalized linear mixed models suggest a positive relationship between centrality and infection in only one macaque population (Japanese macaques of Koshima). Simulations show that small sample size was unlikely to have affected our results. Overall, our results suggest that social network centrality does not generally predict parasite infection across species and populations, which may relate more strongly to the various local ecologies of the studied groups. However, we cannot rule out the possible influence of seasonality in our study because our data were collected at each site in different seasonal conditions. Furthermore, human influences such as degree of provisioning and population management may also play a role. Ultimately, this work emphasizes the importance of understanding the mechanisms underlying transmission and how they might vary across populations and groups when attempting to relate social factors to infection.

  • 武真 祈子, Spironello Wilson, Barnett Adrian A., 湯本 貴和
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: A10
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    食物量の変化は霊長類の行動生態に大きく影響する。 特に果実は重要な食物資源であり、少果実期に生き延びる採食戦略が、野生霊長類の食性の多様化を導いたとされる。では、エネルギー価が高く存在量が安定した「理想の果実」が人為的に与えられた場合、種ごとの食性はどう変化するのか。本研究では、異なる食性を持つキンガオサキとコモンリスザルが、毎日一定量与えられる給餌のフルーツと、季節変動のある森林内の食物資源をどのように利用するかを比較した。2019年3月から2020年2月の1年間、ブラジル・国立アマゾン研究所(INPA)の構内において、毎日給餌がおこなわれているFree rangingのリスザル1群とサキ2群を追跡し、瞬間スキャンサンプリング法を用いて行動と採食品目を記録した。また1000本の調査木について、花、果実、新葉の有無を毎月一回記録した。リスザルでは、少果実期に給餌の利用割合が森林内果実よりも高くなることがあったが、サキでは、少果実期であっても、給餌の利用割合が森林内果実の利用(主に種子の利用)を上回ることはなく、多果実期には給餌を利用しない日もあった。こうした差が見られた一方で、サキとリスザルの両種は共通して、多果実期には給餌の採食時間割合を減少させ、森林内果実の利用割合を増加させた。採食部位別に見ると、リスザルでは果肉の、サキでは種子の採食時間割合が増加していた。これらの結果は、サルたちにとって選好する食物は森林内果実であり、給餌は少果実期における代替食物であることを示唆する。霊長類は単に摂取エネルギーを最大化するのではなく、多様な食物の組み合わせで栄養バランスを保つという仮説があるが、完全な野生下でこれを実証することは難しい。本研究は存在量の制約がない給餌を選択可能な状況においても、霊長類が種ごとに異なる食物を選好することをフィールド実験として示した。

  • 柴田 翔平, 古市 剛史, 橋本 千絵
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: A11
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    チンパンジー(Pan troglodytes)とボノボ(Pan paniscus)は、互いに進化的に最も近縁な二種であるが、オスの攻撃性に大きな違いがある事で知られる。チンパンジーでは集団内・集団間で成熟個体間の殺しに至る激しい攻撃が観察されるが、ボノボにおいてはそのような攻撃性は見られない。二種の攻撃性の違いはメスの発情期間(性皮最大腫脹期間)の違いにより説明されてきたが、最近の研究では二種共に高順位のオスが高い繁殖成功をおさめており、どちらの種においても厳しい繁殖競合が存在する事が示されている。二種の攻撃性に違いを与える要因の解明には、オス間の社会関係を詳細に調べ、攻撃交渉の様相やコンテクストを比較する必要がある。本研究では、Pan属二種のオスの、集団内の攻撃交渉と順位関係及び近接関係に注目した。ウガンダ共和国カリンズ森林保護区にてチンパンジーM集団のオトナオス、コンゴ民主共和国ルオー学術保護区ワンバのボノボE1集団のオトナオス及びワカモノオスを対象に終日個体追跡を行った。チンパンジーの攻撃交渉の頻度は、性皮最大腫脹メスの存在時では不在時の二倍となり、約35%であった。ボノボでは観察期間のうち約90%の期間で性皮最大腫脹メスが観察され、約31%の頻度で攻撃交渉が見られた。追跡個体と他のオス個体の近接頻度を分析した結果、ボノボでは平均約70%、チンパンジーでは平均約50%の頻度で他のオスから10m以上離れて過ごしていた。チンパンジーでは低順位の個体ほど他個体との近接頻度が低い傾向にあったが、ボノボでは順位による近接頻度の差は見られなかった。ボノボでは順位ではなく家系や母親の存命が攻撃傾向や他のオス個体との近接に影響を与えていると示唆される。

  • 横山 拓真, 橋本 千絵, 古市 剛史
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: A12
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    ボノボは類人猿の中で唯一、メス中心社会を築いている。メスの社会的順位はオスと同等またはそれ以上であり、社会的交渉や性的交渉、遊動の主導権はメスが握ると言われ、このようなメスの特徴が平和的な社会を維持するのに重要だとされている。またボノボは、交尾を繁殖目的だけではなく、食物分配のために行うなど、社会的機能を含むことがあり、メス同士では「ホカホカ」と呼ばれる特徴的な社会的・性的交渉が観察される。さらに、ボノボのメスには「ニセ発情」と呼ばれる、排卵を伴わずに性皮を腫脹させる特徴的な生理状態がある。チンパンジーと比較すると、ボノボは社会構造、社会的・性的交渉、メスの生理状態において大きく異なる特徴を持つ。 これまでの遺伝的研究では、ボノボの子どもの50%以上はアルファオスの子どもであるため、高順位オスは効率的に交尾を独占しているだろうと言われていた。一方で、行動観察からは、ボノボは常に複数のメスが同時に性皮を腫脹させているため、高順位オスは交尾を独占できないだろうとも言われていた。また、「ホカホカ」は社会的緊張の緩和や順位誇示など、複合的な機能があると考えられてきた。しかし、ボノボの社会的・性的交渉をメスの生理状態と行動学の見地から分析した研究は少ない。 本研究では、コンゴ民共和国ルオー学術保護区にて、ボノボの交尾と「ホカホカ」における相手選択の傾向と、メスの生理状態との関連を分析した。その結果、高順位オスは相手のメスの生理状態に関わらず、独占的に交尾をしている傾向が見られた。また、「ホカホカ」では、高順位メスが誘いかけることが多く、他の調査地で見られるような、マウントポジションを取ることによる順位誇示は行われていないことが明らかになった。

  • 村松 明穂
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: A13
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    マカカ属は多くの種で構成され,その地理的分布域の広さ・生息環境の多様さ・生態の多様さなどで知られている。こうした特徴から,マカカ属を対象とした比較研究が盛んにおこなわれてきた。社会生活については,社会組織・配偶システム・社会構造に着目した先行研究がある。マカカ属の社会性を比較する指標のひとつとして,専制的な傾向の強さに関する4段階の暫定的なスケールが示されている。この4段階スケールでは,グレード1は最も専制的な傾向が強い種を表し,グレード4は専制的な傾向が弱い種を表している。 本研究では,ポータブル式タッチモニタ装置を導入し,日本モンキーセンターで暮らすマカカ属の実験場面での社会性を比較した。実験のすべての手続き・段階は,オープンラボ型比較認知研究として,来園者の前でおこなわれた。対象種は,マカカ属6種(アカゲザル・ニホンザル・ミナミブタオザル・チベットモンキー・ボンネットモンキー・トクモンキー)であった。この6種は,4段階スケールによって,暫定的に,それぞれグレード1からグレード3に割り当てられている。 実験は,食物報酬や装置への馴致から開始し,タッチモニタ課題へと移行した。また,タッチモニタ課題は,徐々に難しい内容に変更していった。 実験者は,実験場面で装置にアプローチ(装置を触る・正面に留まる)した個体を記録し,アプローチ時間を計測した。その結果,アプローチ個体数・アプローチ時間それぞれにおいて種間での差異が認められた。また,この差異は,先行研究で示された4段階スケールに概ね従うものであった。よって,本研究では,飼育下の実験場面においても,マカカ属の社会性を再現できることが明らかになった。つまり,本研究のような動物園でのオープンラボ型比較認知研究を実施することにより,来園者に対して,マカカ属を新しい視点から観察し,社会性について学ぶ機会を提供できる可能性が示された。

  • 徐 沈文, 友永 雅己, 足立 幾磨
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: A14
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    Human receive information not only through direct experience but also through referential media such as videos. Human experience is largely expanded by the ability to utilize information which refer to particular events and objects that are out-ofsight. Such referential information can be conveyed through videos in human older than 4-year-old (DeLoache 1987). It is also known that the same age of children start to understand referential function of language and thus language acquisition may facilitate the understanding of referential function of media (Flavell et al 1990; Perner 1991). However, it is unclear whether and to what extent such referential competence is shared in nonlinguistic animals. To address this, we tested whether chimpanzees (Pan troglodytes) can garner video information about relevant events, which is not directly observed (here, food being hidden in the next room) and, if so, what factors may facilitate their usage of referential information process. Five chimpanzees first observed food-hiding in one room. A half banana was baited into one of the two cups (green/red) by an experimenter. Chimpanzee then moved to the next room received a choice test. Foodhiding was demonstrated either directly in front of them (Real condition) or through video (Video condition). Two individuals performed better than chance in both conditions suggests that chimpanzees may share the ability to acquire information based on referential media–referent association with humans. Conversely, the remaining three individuals failed in both conditions suggests that spatial dissociation and/or temporal delay between observation and choice test may be causes of failure. Future studies need to test if their understanding of referential function of video can be facilitated by improving task continuity in space and time.

  • 山梨 裕美, 根本 慧, Alejandro Josue
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: B01
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    夜行性のスローロリスの社会行動に関してはわかっていないことが多い。成熟オスと成熟メスのホームレンジが重なっていて,親和的な関係性を持っていることが示されている。ただし,同性の成熟個体同士は排他的なホームレンジを築いていることが多く,その社会関係はわかっていない。公益財団法人日本モンキーセンターでは2016年に空港などで摘発されたピグミースローロリスの飼育環境改善及び環境教育・研究拠点のために,スローロリス保全センターを職員及び研究者の手で設立した。その中で,16個体(オス10個体,メス6個体)を対象に,同性のペアを作り,社会関係の構築過程について調査を行った。すべての個体は成熟個体で5 歳以上だった。2016年から2018年にかけて8つの組み合わせで試したのちに,5つのオスペアが形成できた。オスペアは,初期にはケンカが観察されたが10日ほどで収束した。オスメスペア・メス同士はケンカもほとんど観察されず,初日から高いレベルでの親和行動が観察された。初期には性による違いが顕著だったが,最終的にはオスペアでもメスペアでも,グルーミングや遊び,夜間の寝場所の共有といった社会交渉が観察され,攻撃交渉はほとんど観察されなくなった。寝場所の共有については,偶然よりも高い確率で観察され,寒さとの関連も見いだせなかった。 さらに,糞中グルココルチコイド代謝産物濃度の変化を評価したところ,同居によりストレスが長期的に増加することはなかった。1ペアでは,同居前よりも有意にストレスレベルが減少した。以上の結果から,同性の成熟個体であっても,ピグミースローロリスが親和的な社会関係を築くことが示された。オス同士のペアは初期にはケンカも観察されることから,理想的な選択肢ではないかもしれないが,最終的に築く親和的な関係性を考えると,余剰個体の問題などを解消する社会管理手法のひとつとなりうると考えられた。

  • 山口 飛翔, 風張 喜子
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: B02
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    2019 年9月~11月、金華山島のニホンザルB1 群で第一位オス(TY)が群れと共に行動したり、群れから離れて行動したりを繰り返すという特異な行動が観察され、その動きに影響されるように群れのまとまりが大きく変動した。本発表では、その報告を行う。TYは調査期間中に少なくとも6回にわたって群れへの出入りを繰り返し、長いときには2週間以上群れから離れたのちに群れに戻った。この間、複数のメスが群れ本体とは離れてTYと行動している様子が5 例確認され、うち3例ではTYを含む集団と群れ本体の双方を同時観察した。また、行動圏外で一部の個体がTYと共に行動している様子も2例観察され、うち1例ではTYの行動圏外への移動に一部の個体が追随し、残りの個体との間で分派が生じる過程が観察された。TYと共に行動していた個体の多くは、TYと親密な関係を築いていたメスとその血縁個体だった。以上の事例では、メスが積極的にTYに追随する様子が確認されたことから、群れのまとまりの変動はTYが群れから離れる際に、彼と親密な一部のメスたちが彼に追随したことによって生じたと推測される。なお、交尾期が終了した1~3月にもTYは群れへの出入りを繰り返したが、その間に同様の群れのまとまりの変動は観察されなかった。交尾期のみに群れのまとまりが変動したのは、交尾期特有のオスからメスへの攻撃を避けるため、多くのメスが移動の際にメスたちが彼を頼って追随したからだと推測される。実際、TYが群れにいる日にはメスが他のオスから攻撃される頻度が低く、彼の存在がオスの攻撃の抑止力となっていた。加えて、TYが他のオスよりも長期間群れにいたことでメスとの間により強固な親和的関係が築かれていたことも、メスたちが彼に追随したことに影響しているかもしれない。一方で、TYは度々行動圏外へ移動したので、特に親密なメス以外の多くは彼に追随しなくなったと考えられる。

  • 西川 真理, Ferrero Nuria, Cheves Saul, Lopez Ronald, 河村 正二, Fedigan Linda ...
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: B03
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    カニバリズムは様々な動物で知られているが、霊長類では比較的まれである。そのため、カニバリズムが生じた文脈を詳細に記録した事例研究の蓄積は、その状況を理解し、潜在的な適応的意義を評価する上で重要である。本発表では、2019年4月9日にコスタリカ共和国のグアナカステ自然保護区サンタロサ地区に生息する野生ノドジロオマキザルCebus imitatorで観察されたカニバリズムの詳細を報告する。カニバリズムの対象となったのは、LV群の生後10日と推定されるメスのアカンボウであった。このアカンボウは、同じ群れ内のオスによる子殺しと思われる攻撃交渉の直後に木から転落した。その後、衰弱したため母親が運搬しなくなり、地上に横たわっていた。アカンボウが死亡した15分後に同じ群れの2歳のオス(アカンボウのはとこ)が死体の左足の指を食べ始めた。最終的にはアルファメス(アカンボウの祖母)が死体を独占し、 31分間にわたって食べたが、死体の上半身のほとんどを食べ残した。カニバリズムが生じている間、群れメンバーのほとんどが死体の匂いを嗅いだり、触ったり、威嚇するなどの興味を示したが、他のメンバーは死体を食べようとしなかった。本事例が観察された当時、2歳のオスは離乳した直後だったこと、アルファメスは妊娠後期だったことを考慮すると、栄養摂取への強い欲求がカニバリズムを引き起こした一因となった可能性が考えられる。本調査地では、子殺しが比較的頻繁に観察されるが、今回の事例が37年以上の研究で記録された唯一のカニバリズムの観察であることを考えると、カニバリズムはこの種では珍しい行動であると考えられる。

  • 井上 陽一, 勝 野吏子, 岡ノ谷 一夫
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: B04
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    飼育下テナガザルにおける興味深い3つの行動を録画したので紹介する。これら3つの行動のうち道具使用については過去に数例報告があるが、他の報告はない。 道具使用は2012年4月、福知山市動物園で子どものテナガザル(Hylobates lar)がカップを拾い上げて水飲み場に持っていき、それを使用して水を飲んだというものである。なお、他の動物園のテナガザルに対しても同じようにケージの中にカップを入れて様子を見たが、道具使用は観察されなかった。 自発的な食物分配は2011年5月、マレーシア・サバ州コタキナバルのロッカウィ動物園で、若者のテナガザル(Hylobates muelleri)が大人のテナガザルにニンジンのかけらを自発的に手渡したというものである。 相手に気づかれないように目的を達成する行動と考えられる事例は 2000年12月に福知山市動物園で観察された。子どもテナガザルの姉妹2個体(Hylobates lar)にバナナ片を与えた時、妹が、先に小屋の中に落としたバナナ片をまっすぐ取りには行かず、姉に気づかれないようにバナナ片の方は見ないでゆっくりと後ずさりしてバナナを取って食べたというものである。この時、移動の間妹は姉を注視し、抑制的に行動した。 これらの行動が何故観察されたのか、発表者らはその成育歴に注目した。福知山市動物園の個体はいずれも1歳から人間の子どもや大人と遊びなどを通じて触れあう機会が多くあった。ロッカウィ動物園の個体は野生由来ではなくもともとペットとして飼われていたもので、子ども期にはおそらく家族同様に育てられていたものと思われる。このような幼児期に人間と密度濃く触れ合った環境がテナガザルに潜在的に存在する手の操作性や社会性の能力を発達させたのではないかと考えられる。

  • 杉山 幸丸
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: C01
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    私が研究を始めた頃から霊長類の種数は5倍近くに増えているらしい。一方で、「親子は同種」という定義がある。常にそうだったら新しい種は金輪際生まれない。 種とはなんだろうか。分類学に触ったこともない身で考えてみた。

  • 服部 志帆, 小泉 都
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: C02
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    日本の霊長類学の創始者のひとりである川村俊蔵博士(1927~2003年)は、伊谷純一郎博士とともに 1952年と1953年に屋久島で調査地開拓のために予備調査を行った。合計43日の間、合計36人(猟師26人)に聞き取り調査を行った。西部に位置する永田の猟師や屋久島全域に詳しい安房の猟師などを対象に、サル、シカ、狩猟法、狩猟域、利用法、伝承、地名など多岐にわたる情報を聞き取っている。これらの情報は野帳8冊と日記1冊に記載されており、5万6千字をこえる。 本発表では、猟師から得た情報のなかでも最も充実しているヤクシマザルに関するものを取り上げ、1950年代の屋久島において猟師がサルとどのような関わりを持っていたのか、またサルが猟師にとってどのように重要であったのかを明らかにすることを目的とする。 方法は、2013年から解読している川村博士の野帳の情報を分析することであり、川村博士が1950年代に聞き取りを行った猟師の子孫から補足情報を得た。 分析の結果、当時の猟師は個人差があるものの、群れのサイズ、行動域、食性、交尾行動、群れ内外の関係、ソリタリー、猿害などサルに関する広範な知識を持っていることが明らかとなった。また、永田の猟師はそれぞれの狩猟域で牢屋罠という箱型の罠を用いてサルの狩猟を行っていたことや、サルのことをアンちゃん、ヨモ、山の大将、旦那、モンキーさんなどと呼び、頭や胆を薬として利用するという民俗知識を持っていたことがわかった。このような豊かなサルとの関わりは、島外の研究所や動物園からの生きたままのサルに対する高い需要にも影響を受けていたと考えられる。

  • 半谷 吾郎, 金森 朝子, 久世 濃子, Wong Siew Te, Bernard Henry
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: C03
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    生息地に関するニッチ分割の理解は、多種共存のメカニズムを明らかにするために必須である。十分に広い範囲をカバーする個体数調査を、環境の季節変動を含むように、長期にわたって何度も繰り返して行わなければならないため、霊長類ではそのようなデータは非常に少ない。超年周期で予測不能な果実資源の変動が起こる東南アジア熱帯林の霊長類群集は、とくに興味深い対象である。われわれは、25か月間にわたって、ボルネオ島のダナムバレー森林保護区の中の10km 離れた2か所の調査地で、繰り返しルートセンサスを行った。ここには、オランウータン、ボルネオテナガザル、レッドリーフモンキー、カニクイザル、ブタオザルの5種の昼行性霊長類が生息している。この5種は、水平的には生息地分割を行っていなかった。レッドリーフモンキーのみ、樹高が低いところを好む傾向を見せたが、彼らの分布はそのような場所に限定はされていなかった。調査中に1回確認された結実のピークに応じて、オランウータンだけが数を増やした。利用する平均樹高は種によって異なっていた。ほかの霊長類群集と比較して、水平的な生息地の分割の欠如と、オランウータンの長距離移動がこの群集の特徴であるといえる。一方、垂直方向の生息地分割は、ほかの多くの群集でも報告されている。

  • 辻 大和, 海老原 寛, 立脇 隆文, 清野 紘典
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: C04
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    森林生態系における霊長類の役割のひとつに種子散布が挙げられる。霊長類の種子散布に関するこれまでの知見は、野生個体群を対象とした研究で得られたものである。近年、日本各地でニホンザル(Macaca fuscata) による農作物被害が深刻化している。農地への依存が、サル本来の土地利用様式や食性を変えることは以前から指摘されてきたが、それが彼らの種子散布特性に与える影響は、これまでほとんど評価されていない。われわれは、2019年から2020年にかけて愛知県豊川市で野外調査を実施し、サルの糞に含まれる種子の内容を評価するとともに、GPSテレメトリー装着個体の位置情報と給餌実験のデータ(Tsuji et al. 2010, J. Zool.)を組み合わせて、飲み込まれた種子の散布距離を推定した。豊川市のサルの糞からは、年を通じて種子が出現した(計18樹種)。糞一個ありの種子数・種子の健全率は他地域と同程度で、この地域のサルが他地域と同様に飲み込み型の種子散布を行っていると推測されたが、糞一個当たりの樹種多様性(年平均1.4 ± 0.7種)は、他地域よりも低かった。種子の出現頻度が高かったヤマモモ (Morella rubra) をモデル植物として、種子の散布距離を推定したところ、平均値は1 ~2.5km(最大:約6km)と、島嶼部(金華山・屋久島)で得られた値よりも長く、本土地域のサルはツキノワグマに次ぐ長距離散布していることがわかった。糞は、耕作地や植林地などヤマモモの生育地(広葉樹林)以外の場所で多く排泄される傾向、また採食場所よりも集落に近い場所で排泄される傾向があった。 農地への過度の依存は、散布者としてのサルの役割をゆがめている可能性がある。したがって、駆除を含めた適切なサル対策は、彼らの持つ生態学的機能の維持、生態系管理の面からも必要と思われる。

  • 柏木 健司
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: C05
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    1900年代前半の黒部峡谷(富山県東部)に生息していた哺乳類について、その種類や生息範囲、生息数などの具体的な情報は、ほぼ皆無の現状にある。これまで確認した限りにおいて、研究者による研究報告は天然記念物研究報告の鏑木(1934)が唯一である。ここでは、当時の登山家が記した山行記録から哺乳類に関する記録を抜き出し、当時の黒部峡谷における哺乳類相の可視化を試みた。 使用した主たる資料は、日本山岳会発行の「山岳」(1906 -2006)と、登山家のまとめた単行本である。山行記録中の哺乳類の記述は行程に組み込まれていることから、日時と場所を読み取り可能な情報が多い。また、登山家に雇用された山案内人は、猟師や釣り師を生業としていた人々であった。 山案内人は、登山家に狩猟を含め様々な哺乳類に関する情報を登山家に伝え、登山家はそれら情報を登山記録中に書き記した。 山行記録中から抽出できた哺乳類種は、イノシシ、ニホンカモシカ、ツキノワグマ、ニホンザル、ニホンテン、タヌキないしアナグマ、ニホンノウサギ、ニホンリス、ムササビ、翼手類の一種であった。抽出した記録のほとんどは、ニホンカモシカ、ツキノワグマ、ニホンザルの3種で、比較的目立つ中・大型哺乳類種であることに加え、当時の狩猟対象であったことも、記録数の多い要因に挙げられる。 1900年代前半の黒部峡谷において、ニホンザルの確認地点は主に欅平より下流域で、上流の下廊下では2地点のみであった。当時のニホンザルの分布は、1980年代におけるニホンザルの群れ分布(赤座、2002)に、支流の黒薙川上流に位置する柳又谷での記録を除き、大まかに含まれている。また、ニホンザルによる洞窟利用(井上、1910;柏木ほか、2012)と温泉利用(山田、1920;八尾、2017)が、山行記録中に記されていた。本発表では以上の内容に加え、登山家の執筆した山行記録を利用する上での利点と欠点も合わせて議論する。

  • 大石 高生, 香田 啓貴, 森本 真弓, 井戸 みゆき, 安江 美雪, 田中 洋之
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: C06
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    1967年に設立された京都大学霊長類研究所では、実験利用するニホンザルを自家繁殖している。野生のニホンザルには生息地域ごとに遺伝的な違いがあり、その遺伝的特徴を維持するために、主に初期に日本各地で有害獣とされて捕獲したニホンザル地域群をそのまま繁殖の創始群とした。それ以降、各地域群には新しい個体を導入することなく30〜50頭程度の閉鎖集団としてオープンエンクロージャー(放飼場)で維持してきている。放飼場で誕生した個体の一部は繁殖集団の維持のために母系の偏りを減らすよう配慮しつつ残し、それ以外の個体は雌雄ともに間引きを行い、形態学、行動科学、神経科学などの実験研究に供している。 現在では、母系で数えて第8 世代の個体まで誕生している。ニホンザル若桜群は、鳥取県八頭郡若桜町から1974年に導入されたメス12頭、オス9頭を起源とし、2020年7月21日現在50頭(4歳以上のメス20頭、4歳以上のオス9頭、4歳未満の個体21頭)からなる飼育群である。近年、我々は若桜群の中に、顔貌や関節に特異な症状を示す個体を発見し、その個体が常染色体潜性遺伝病の一種であるムコ多糖症I型(MPSI) を発症していることを確認した。さらに発症の原因であるIDUA遺伝子のSNPの特定に成功し、人類進化モデル研究センターに保管されたDNA試料を用いてヘテロ個体の同定、家系解析に取り組んでいる。本研究では、これまでの若桜群のメスザルごとの総産子数、年間産子数、母系家系の年間産子数と消長、父子判定済み個体に関するオスザルの年間産子数などを算出し、若桜群の飼育歴、繁殖歴、2002年10月に実施した群の分割、幼若個体個体の間引き、MPSI発症個体の出現との関係や群内での繁殖に関する競合について考察する。

  • 川本 芳, 直井 洋司, 萩原 光, 白鳥 大佑, 池田 文隆, 相澤 敬吾, 白井 啓, 岡野 美佐夫, 近藤 竜明, 田中 洋之
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: C07
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    ニホンザルのミトコンドリアDNA非コード領域には160塩基の重複配列変異が局地的に知られていた(Hayasaka et al. 1991)。今回は、この領域の3’端部分で新たに発見した2塩基(CA)配列をモチーフにする反復配列の多型について報告する。この多型は九州, 四国, 中国地方のサルでは反復が0回もしくは1回と少ないが, 屋久島では例外的に4回になっていた。一方、紀伊半島を含む近畿以東のサルでは0回から最大6回までの著しい多型を示し、その分布には地域性が認められた。特に地理的に孤立する房総半島のニホンザルでは4回から6回の反復が観察され、非コード領域内の塩基置換突然変異と組み合わせると地域内で6種類のハプロタイプが区別でき、これらハプロタイプで特徴付けられる群れの分布が確認できた。一方、南房総の外来アカゲザル個体群にこの反復多型は認められず、検体はすべて0回反復であった。昨年度の千葉県内で実施した調査では、この反復多型を応用して、交雑の進むニホンザル生息地域の推定や、アカゲザル交雑群に移籍したニホンザル群生まれのメスの出自が推定できた。この反復多型は、外来種の交雑モニタリングやニホンザル個体群の地域間交流調査で有用な遺伝標識になると期待できる。

  • 古賀 章彦, 久川 智恵美, 吉澤 未来
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: C08
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    わんぱーくこうちアニマルランド(高知市)で、マントヒヒの赤ちゃんが生まれました。名前はシーマ。乳児のとき、体は真っ白でした。母親のパトラ、父親のシーザーは、どちらも標準的なマントヒヒの毛色です。 そのシーマ、2歳頃から、部分的に色が着き始めました。 大人になった現在、しっぽと手足の先が褐色。顔にも着色が少し。そしてこのような端部以外は、白のままです。このパターンは、シャム猫に似ています。シャム猫では、温度が低いほどチロシナーゼ(メラニン合成に必須の酵素)の活性が上がることが原因と、わかっています。そこで、シーマのチロシナーゼの遺伝子に変異があると予測し、主要部の塩基配列を調べました。 全530個のアミノ酸のうちの365番目が、アラニンであるところ、シーマはトレオニンになっていました。 365番目付近は、チロシナーゼが保因子の銅と接する部分で、酵素の機能に重要です。ここに微妙な構造変化をもたらしています。この365番目のアミノ酸の変化が、シーマの独特な体色の原因と、推測されます。

  • 長田 直樹, 松平 一成, 濱田 譲, Malaivijitnond Suchinda
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: C09
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    マカク属のサルはアフリカ大陸の一部とユーラシア大陸の広い地域に生息しており,20以上の形態的に多様な種から構成されている.これまでにミトコンドリアゲノムや核遺伝子の解析によって系統関係が議論されてきたが,頻繁な種間交雑の結果として,複雑な系統関係をもっていることが知られている.とくに,いくつかの種では,ミトコンドリアゲノムから推定される系統関係と核遺伝子から推定される系統関係とが一致しない現象が報告されている.これらの不一致の要因を明らかにし,それぞれの種がたどってきた歴史を明らかにするために,われわれは,ニホンザル,タイワンザル,タイ産カニクイザル(fascicularis亜種およびaurea亜種)について新たに全ゲノム配列を決定し,合計7種からなる17個体の全ゲノム配列解析を行った.とくに,性特異的な移住様式に注目した解析を行うため,常染色体とX染色体のゲノムの系図について比較を行った. 本講演では,アカゲザル,ニホンザル,タイワンザルからなるmulatta群の起源と歴史を中心にその結果を発表する.これまでの研究で,ニホンザルおよびタイワンザルのミトコンドリアゲノムはインドのアカゲザルよりも中国のアカゲザルにより近縁であることが示されている.われわれは,ニホンザルおよびタイワンザルは,核ゲノムにおいては,アカゲザルがインド集団と中国集団が分かれるよりも古く分岐しているものの,インド集団よりも中国集団のゲノムにより近縁であるということを発見した.このことは,アカゲザルの祖先集団がインド集団と中国集団に分岐した後に,中国集団がニホンザル・タイワンザルの系統に関連した集団と交雑を起こしたことを示している.また,X染色体の解析により,中国産アカゲザルの祖先集団から雄特異的な移住が起こり,ゲノムの混合が起こったことも示唆された.

  • 西村 剛, Dunn Jacob C., Sears Jacobus P. P., 新宅 勇太
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: C10
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    霊長類の音声は、多様性に富んでいる。ヒトの話しことばを構成する音素は声道での共鳴によってかたちづくられるが、サル類の音声の音響学的特徴の多くは声帯振動でつくられる音源の特性によっている。サル類の声帯形態は、肉眼解剖や染色切片等による解析が行われてきたが、それらの技術的制約により体系的理解が不足している。本研究は、摘出喉頭の固定標本を、ヨウ素溶液(I2KI) に浸潤させたのち、マイクロCTで撮像することで、軟組織を造影して高解像度の画像データを非侵襲的に収集することに成功した。ヒト上科7属30標本、旧世界ザル8属34標本、新世界ザル10属22標本を用いて、声帯/ 声帯膜、声帯筋の形態変異を解析した。新世界ザルでは声帯から上へ高く伸びる声帯膜が認められたが、旧世界ザルでは中程度から低い。一方、ヒト上科では、属間のみならず種内でも変異に富んでいる。ヒトでは声帯膜は認められない。新世界ザルやテナガザルでは声帯筋が貧弱であるのに対して、旧世界ザルや大型類人猿、ヒトでは声帯筋が比較的発達する。声帯膜は、声帯振動を起こりやすくし、大きな音声を作るのに寄与するというモデルがある。しかし、サル類でみられる声帯膜形態の多様性は、その機能も一様でない可能性を示唆している。また、ヒト上科での声帯膜形態の大きな変異は、むしろその機能的重要性の低下を示している。ヒトの声帯膜欠損は、そのような進化的背景で進化したのかもしれない。

  • 木村 賛, 菊池 泰弘, 清水 大輔, 高野 智, 辻川 寛, 荻原 直道, 中野 良彦, 石田 英實
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: C11
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    北部ケニア・ナチョラで発掘された中新世化石ホミノイド・ナチョラピテクスNacholapithecus kerioi の下腿骨については、ほぼ全身骨格 (KNM BG 35250) の脛骨および腓骨 (Nakatsukasa et al. 2012)、および腓骨二片 (KNM BG 17809 および17810, Rose et al. 1996) が報告されている。大きな化石集団であるナチョラピテクスにはこれ以外にも下腿骨が見つかっている。これら未報告骨17 片の特徴を観察した予報をここに発表する。脛骨・腓骨ともに大きな個体からの骨と小さな個体からの骨とが同数程度存在する。これはKikuchi et al. (2018) の大腿骨解析でいうところの性差として考えられ、それぞれの推定体重も既発表と同程度である。左右の骨数もほぼ同数程度である。骨端線からわかる限り若年の骨数は成年骨数より少なく含まれている。脛骨腓骨とも骨体は弯曲が少なく、筋付着痕がかなり弱いようである。下腿並びに足部の筋活動があまり強くなかったのではないかと考えられる。脛骨下関節面は前縁後縁の長さがほぼ等しい矩形に近い、面は骨軸に対し直交に近い角度を持つ。中央稜が見られる。前縁前方への関節面張り出しが弱い。内外果ともに内外側への張り出しが弱く、果の関節面がかなり垂直に近い。これらの足関節の形態特徴はここが主に矢状方向運動をなし、内がえし/外がえし(inversion/eversion)や強度の背屈運動が少なかったことを思わせる。これらから見た下腿骨形態は現生大型類人猿とはやや異なる特徴を持ち、三次元移動よりは水平面な歩行を多用したものではないかと思われる。

  • 高井 正成, 中務 真人, Thaung-Htike , 江木 直子, Zin-Maung-Maung-Thein , 河野 礼子, 楠橋 ...
    原稿種別: 口頭発表
    セッションID: C12
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    ミャンマー中部に分布する後期中新世初頭の地層から発見された大型ホミノイドの上腕骨化石について予備的に報告する。対象とする化石(NMMP-IR-5555)はマグウェーの南約50kmにあるテビンガン地域で、 2018年に村人が農作業中に発見した。現地の地質調査の結果、化石が出土した層準はミャンマー中部に広範囲にわたって分布するイラワジ層最下部にあたる。共産する哺乳類化石相を南アジアの中部シワリク層からみつかる哺乳類化石相と詳しく比較した結果、産出層の年代は約900〜850万年前と推定された。IR-5555は非常に大型なホミノイドの右上腕骨遠位端(肘)の化石で、多少の磨耗痕はあるが、関節部などの保存状態は良好で詳しい解析が可能である。サイズはオスのゴリラ程度で、滑車部が幅広く上腕小頭は球形に近い。 前面の鈎突窩が深いのに対し後面の肘頭窩はやや浅く、その外側縁稜が比較的低い。上腕骨後面外側部が非常に広い。内側上髁はやや後屈し、比較的短い。現生大型類人猿の共有派生形質とされる滑車上縁稜の切痕と小頭遠位部の外側後面の斜行稜線に関しては、前者は確認できるが後者は存在しない。また現生オランウータンに見られるような滑車凹部の極端なくびれや発達した外側髁上稜は見られない。全体的にテビンガンの肘化石は比較的原始的な大型類人猿の特徴を示しており、その巨大なサイズから判断して地上性の四足歩行者であった可能性が高い。しかし、ゴリラで見られるようなナックルウォーキングに適応した特徴は観察されない。一方で、暫定的な観察結果ではあるが、シバピテクスやオランウータンとの近縁性を示す共有派生形質も確認できていない。

ポスター発表
  • 木下 勇貴, 平﨑 鋭矢
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P01
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    ビデオ撮影は動物の行動や運動を観察・計測する上で最も広く一般的に使われている方法である。しかし, 得られた映像から行動の特定の側面を抽出するには, 人間の手と目による解析が必要で, その作業には労力がいる。また, 運動研究では, 関節点の追跡のためヒトや他の動物に身体表面マーカーを貼付するが, そうした侵襲的な操作は自然な動きを阻害する可能性がある。 こうした障害をクリアするために, マーカーレス姿勢推定のためのソフトウェアDeepLabCut (以下, DLC) (Mathis et al., 2018) が様々な分野で導入されつつある。DLCは, 深層学習を用いて動物の関節などの特徴点を動画から抽出することで, 高い精度で動物の姿勢を推定する。本研究では, 霊長類の野外や室内での研究にDLC が利用可能かどうか判断するために, 手動でデジタイズした場合とDLCを用いた場合との精度について比較検証した。身体表面マーカーを貼付していないニホンザルの実験室内での歩行をビデオ撮影した。 動画から複数のフレームを抽出し, 実験者が関節位置をデジタイズした。得られた座標セットを訓練データと検証データに分け, 訓練データを用いてDLCのネットワークを学習させた。その後, 学習済みネットワークによって検証データの関節位置を推定した。DLCが推定した検証データの関節座標の位置と, 実験者が設定した関節座標の位置との誤差(pixel) を計算し, DLC誤差E(d) を得た。また, 実験者が検証データに対して再度ランドマークを設定し, 実験者誤差E(e) を取得した。E(d) とE(e) を比較することで, DLCの精度について検証した。身体表面マーカーの自動追跡にも利用できるかどうか検証するため, 以上の解析をマーカーありの条件でも実施した。得られた結果を元にDLC の利用可能性について考察を加える。

  • 田村 大也, Wilfried Ebang Ella Ghislain, Akomo-Okoue Etienne François
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P02
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    同種他個体に対する致死的攻撃は多くの霊長類種で見られる現象である。ゴリラ属では子殺しに加え、エンカウンター時の身体的闘争の結果、成熟オスのシルバーバックが死亡することがある。一方、成熟前の若いオスである「ブラックバック」が同種内における敵対的交渉の結果、死亡に至るケースは知られていない。本発表では、野生ニシローランドゴリラの1頭のブッラクバックオスが重傷を負い、その後死体で発見された事例を報告する。本事例はガボン共和国ムカラバ-ドゥドゥ国立公園の人づけされた野生ニシローランドゴリラの群れ(ニダイ群)で観察された。死亡した個体は、観察当時推定14歳のブラックバック「ドド」である。 ドドは3歳時に右腕の肘から下が切断されたため、片腕の状態で成長した個体である。2019年12月8日、身体の前面に怪我を負っているドドを群れ内で確認した。目視で確認された怪我は、右胸上側部の大きな裂傷、左胸中央部の小さな裂傷、腹部上部の犬歯傷であった。腹部の犬歯傷からは流血が見られ、呼吸が乱れている様子もあった。この日は追跡終了時までドドは群れと共に遊動していた。12月9日は群れを発見できず、 12月10日から14日までニダイ群を終日追跡したがドドは確認できなかった。12月15日、森の中でドドの死体を発見した。野生ニシローランドゴリラがこのような重傷を負う原因として考えられるのは、同種他個体による攻撃とヒョウによる捕食である。本事例では、ドドが怪我を負う瞬間を直接観察していないため推測の域を出ない点は注意が必要だが、怪我の様子などから総合的に判断すると、同種他個体による攻撃が原因である可能性が高いと考えられる。ニシローランドゴリラでは子殺しを含め同種内の致死的攻撃の直接観察例はないが、本事例は致死的な攻撃行動が本種でも起こり、またブラックバックにも向けられることを示唆する貴重な観察である。

  • 清家 多慧
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P03
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    アフリカに生息するカンムリクマタカはヒョウなどの大型食肉目と並んでアフリカの特に森林性の霊長類にとっては主な捕食者であると考えられている。しかし、カンムリクマタカの研究は疎開林や都市近郊でのものが多く、森林での生態についてのデータは少ない。本研究では森林に生息するカンムリクマタカの獲物内容を明らかにするため、タンザニアのマハレ山塊国立公園においてカンムリクマタカの巣1つにビデオを設置して巣への獲物の持ち帰りを撮影し、動画から獲物種の同定を行った。撮影は2019年10月9日から2020年3月18日の日中に行った。この期間に巣を訪れたのはオスとメス1 羽ずつで、ヒナも確認された。正確な孵化の日付がはっきりしなかったため、ヒナの羽毛の生え変わり時期から孵化日を11月3日と推定し、それ以降の育雛期における動画データ(計103日、803時間)を分析に使用した。なお、撮影最終日までヒナは巣で親の持ち帰った獲物を食べていた。育雛期間中、獲物の持ち帰りは計46回撮影され、ヒナによる獲物の持ち帰りはなかった。獲物は霊長類が26回と最も多く、うち16回はアカオザルと同定できた。マハレではアカオザルを中心に霊長類の生息密度が他の哺乳類種よりも高いため、この結果は獲物種の生息密度を反映している可能性が高い。一方、同所的に生息するチンパンジーとヒョウも霊長類を捕食するが、アカオザルではなくアカコロブスを捕食することが多いことが先行研究から分かっている。この違いは同じ森林で肉資源をめぐる捕食者間でのニッチ分化の結果なのかもしれない。さらにこのような捕食者の選好性の違いは被食者である霊長類の対捕食者戦略の違いにもつながると考えられる。また、カンムリクマタカのオスは霊長類の持ち帰りが多かったのに対してメスはブルーダイカーが多く、2 羽の間で違いが見られた。

  • 沼部 令奈, 今井 啓雄
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P04
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    苦味は、身体に有害となり得る食物を避けるために動物が生来持っている味覚であり、苦味を受容するのはTAS2R遺伝子群にコードされる苦味受容体であることが知られている。苦味受容体の中でも、TAS2R38は遺伝子多型が存在し、個体間の苦味感覚が異なることの原因遺伝子の一つと言われている。ヒトにおけるTAS2R38のハプロタイプは、3つのSNPの組み合わせにより、主に高感受性のPAV型と低感受性のAVI型が見られ、遺伝子型としては多くの民族集団でPAV/PAV、PAV/AVI、AVI/AVIが大多数を占める。 TAS2R38は人工苦味物質PTC 等の苦味感覚の有無及び強度に関係していることが知られているほか、アブラナ科野菜に含まれる苦味の知覚にも関与する可能性があることが報告されている。本研究では、ヒトにおいてTAS2R38の遺伝子多型と特定の食物の苦味感覚及びその嗜好とに関連性があるのかを、アンケートと被験者の遺伝子型とを比較することにより検討した。また、過去の多くの研究において、味覚試験が継続的に行われた例はなく、一度の試験でPTC感受性が区別されていた。ここで、同一個体における味覚の変化はないのかという疑問を抱き、本研究では、20代~30代のヒトを対象に、毎週PTC試験紙の苦味を評価してもらい、その変化をハプロタイプごとに検討すると共に、個人の体調の変化に関係があるかを検討した。その結果、PAV/PAV、AVI/AVIグループ間で継続的に有意差が観察された。遺伝子型と食物の苦味感覚及び嗜好性については有意な相関が見られなかったが、苦味が強いものほど嗜好性と負の相関が見られる傾向にあった。TAS2R38の遺伝子多型はヒトだけでなくニホンザルやチンパンジーでも観察されるため、これらの採食行動と比較しながらTAS2R38の遺伝子多型の進化的意義について検討したい。

  • Min HOU, Masahiro HAYASHI, Ryuichi ASHINO, Amanda D. MELIN, Shoji KAWA ...
    原稿種別: Poster Presentation
    セッションID: P05
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    Taste perception is fundamental in dietary selection for many animals. Bitter taste perception is important not only in dietary selection but also in preventing animals from ingesting potentially toxic compounds. Previous studies have revealed evolutionary divergence of the bitter taste receptor gene (TAS2R) repertoire in mammals, including primates, using publicly available whole genome sequence (WGS) data. Plant tissues contain more toxic compounds than animal tissues do. Herbivores could have less TAS2R genes because they are predicted to be more tolerant and less sensitive to bitter compounds to ingest poisons. On the other hand, herbivores could have more TAS2R genes because they are predicted to be in need of selecting and ingesting bitter plants which other animals avoid. Cercopithecid (African and Asian) monkeys are an excellent subject for studying adaptive evolution of bitter sensation because they have diverged into folivores (colobines) and omnivores (cercopithecines). However, only a few genera have been studied in this context. Dependence on WGS data is also potentially problematic due to its inherent incompleteness especially for multigene families such as TAS2Rs. In this study, we employed the target capture (TC) method specifically probing TAS2Rs followed by massive-parallel sequencing for nine cercopithecid species (seven cercopithecines: two Papio, two Macaca, one each of Cercopithecus, Chlorocebus and Erythrocebus species; two colobines: one each of Semnopithecus and Colobus species). We show that TC is far more effective than WGS in retrieving gene sequence and distinguishing intact and disrupted genes. We also find bitter taste gene composition differs among the species. Further studies are required to investigate whether difference of gene composition result in difference of receptor sensitivity and behavioral reactivity to bitter compounds.

  • 石川 大輝, 山田 一憲, 中道 正之
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P06
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    マカカ属のメスザルが自身の子ども以外の子を養子として育てるのは、出産1ヵ月以内のメスが、自身の子が死亡した時に多いことがわかっている。また、自分の子ども以外に授乳することは稀な行動である。本報告では、極めて稀な事例として、嵐山ニホンザル集団(京都市、西京区)における、母が生存している14ヵ月齢の子ザルへの非血縁個体からの授乳事例を報告する。2018年8月8日、Cooper'65'81'94'01 (17歳、以下Co01)が、より高順位個体の子であるKojiwa'62'74'79'90'96'17(14ヵ月齢、以下Ko17)に授乳しているのを発見した。2018年8月時点で、Co01は実子であるCooper'65'81'94'01’16(28ヵ月齢、以下Co16)に対しても授乳していた。また、Ko17は実母Kojiwa'62'74'79'90'96(22歳、以下Ko96)からも授乳されていた。8月中の観察で、Co01からKo17への授乳中の毛づくろい、授乳中にサプラントを受けた際に生起した背中による運搬、腹に抱えての運搬、運搬後の授乳の再開も確認された。そこで、2018年8月31日から同年10月31日の間に22.9時間(Co01:10.6時間、Ko17:12.3時間)の個体追跡を行った。結果、3回の授乳が確認された。Co01からKo17への授乳拒否はなかった。追跡期間に一度だけ、Ko17が実母から授乳拒否を受けた直後、Co01と異なる劣位の非血縁個体の乳房に口を近づけたが、相手個体が逃げて授乳は成立しなかった。追跡期間を通し、Co01は実子のCo16に対して11回の授乳を行った。 またKo17は、実母のKo96から59回の授乳を受けた。 つまり、対象個体間の授乳関係は、実母-実子間のものより希薄だといえる。しかし同時に、対象個体間の授乳は一回のみではなく継続的に行われたこともわかる。

  • 上田 悠一朗, 本郷 峻, Akomo-Okoue Etienne-François, 井上 英治
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P07
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    霊長類の種間交雑は、マカクやヒヒを中心に野生下でも確認されており、属間での交雑も報告されている。 ガボン共和国ムカラバ・ドゥドゥ国立公園において、マンドリル(Mandrillus sphinx)とシロエリマンガベイ(Cercocebus torquatus、以下マンガベイ)の交雑個体と思われる個体が自動撮影カメラで確認された。 本研究では、マンドリルの群れ、マンガベイの群れ、両種の混群が利用していた場所から、群れの移動直後に採取した糞56サンプルを用いて、遺伝解析を行った。核ゲノム上のCD4ψη-δ globin intergenic(以下Psi)の塩基配列と、α 1,3 GT(以下GT)内のマンドリル属内にある9塩基の欠失の有無をPCR で確認し、 35サンプルで、3領域すべての結果を得ることができた。Psiでは7ハプロタイプ、CD4では12ハプロタイプが検出され、登録配列も含むハプロタイプネットワークから、マンガベイタイプかマンドリルタイプかを推定した。マンドリルの群れ由来の3サンプルすべてがマンドリルタイプであったのに対し、マンガベイの群れ由来の18サンプルのうち16サンプルはマンガベイタイプで2サンプルはマンドリルタイプであった。 混群由来の15サンプルでは、1サンプルがマンガベイの、11サンプルがマンドリルのタイプであり、残り2サンプルは交雑由来のDNAであると推定された。糞由来のDNAであるため確証は難しいが、遺伝解析においても属間交雑が生じていることが示唆された。また、交雑個体の遺伝子型から、雑種第二代以降であると推定された。本研究では、ミトコンドリアDNAのシトクロムb領域の塩基配列が一部のサンプルで決定できなかったため、母系を推定できなかったが、今後、交雑が確認されたサンプルなどを詳細に解析することで、属間交雑についてより詳細に解明されることが期待できる。

  • 北山 遼, 白井 温, 根本 慧, 田和 優子, 綿貫 宏史朗, 早川 卓志
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P08
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    クモザル類(霊長目Ateles属)はメキシコからボリビアまでのアメリカ大陸の熱帯林に広く分布する新世界ザルの1グループである。中南米の熱帯環境に適応した多様な生態や形態をもち、現在、少なくとも7 種に分類されるのが一般的である。日本国内では現在、約30の動物園で約150頭が飼育されている。日本では長らく、クロクモザル、ケナガクモザル、ジェフロイクモザルの3グループに大別されて飼育が行われてきた。これらの3グループが現在分類されている7種それぞれにどのように対応するかは不明である。クモザル類のほとんどの種が絶滅の危機に瀕している今、生息域外での適切な保全と理解の実践のためには、飼育個体の種を正確に把握することが重要である。そこで本研究では、日本国内の飼育クモザルを、遺伝学的なエビデンスに基づいて種判定することを目的とした。 日本動物園水族館協会加盟園館で飼育されているクモザルから福祉に配慮して遺伝試料を採取し、ミトコンドリアゲノムDNAのシークエンス多型解析および核ゲノムマイクロサテライト領域のフラグメント解析を実施した。これを由来がわかっている野生群の先行研究の結果と比較したところ、日本には7種分類中4種が存在することが示唆された。この解析結果と飼育園館所蔵の家系情報を比較したところ、雑種個体も多数存在する可能性が明らかになった。そこで本発表では、本研究の結果に基づいて日本国内のクモザル類の適切な飼育、管理のあり方を提案するとともに、遺伝学的研究が飼育動物の保全に貢献できる可能性について議論する。

  • 南 俊行, 石川 大輝, 古市 剛史
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P09
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    ヒト以外の霊長類における同種個体の死体への反応の報告が蓄積されてきている。しかし、その多くは死亡したアカンボウに関するものであり、それ以外の年齢の死体を扱った報告は乏しい。またアカンボウ以外の年齢の死体を扱った報告では、死体は致命的な外傷を負っていたり、死後長時間が経過して腐敗が進行したりしている場合が多い。本発表では、無傷かつ死後数時間のニホンザルの老齢メスの死体に対する他個体の反応が観察されたので、その詳細を報告する。 京都市西京区の嵐山モンキーパークいわたやまにて、 2020年7月20日に本事例を観察した。死亡個体は 29歳のメスであった。死体発見から232分間、死体への他個体の反応を記録した。さらに、唯一死体にグルーミングをした個体のその後の社会交渉を、2020年8月9日から8月21日にかけて個体追跡サンプリングにより記録した。また、事例観察前の2019年5月から2020年3月にかけて、死亡個体を含む群れ内の個体の社会交渉を、スキャンサンプリングで記録した。
    死体に外傷は見られず、死後5時間程度と推定された。 死体の観察中に4度、6歳メスが死体をグルーミングした。グルーマーは死亡個体と生前に社会交渉が観察されていなかった個体であった。死体へのグルーミング中には、死体の性器周辺をグルーマーが覗き込む行動が観察された。また事例観察日以降、死亡個体と生前に社会交渉が見られた個体とグルーマーが、新たに社会交渉を行う場面が観察された。観察中に死体に接触した個体はこの個体のみであり、その他に2個体(2歳メスと34歳メス)が死体に近接した。そのうち2歳メスが近接した際には、22歳メスがその個体を威嚇し追い払った。
    本事例より、死体への親和的な反応は必ずしも生前の親密な社会関係に起因するわけではないことが示唆された。死体へのグルーミングが起きた背景を中心に、考察を行う。

  • Jie GAO, Masaki TOMONAGA
    原稿種別: Poster Presentation
    セッションID: P10
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    The knowledge about how body parts are located and what they look like is important for species and individual discrimination in animals. In this study, we used eye-tracking to investigate whether chimpanzees have this body knowledge or not. We tested six chimpanzees and recorded their gaze behavior towards chimpanzee body stimuli. We focused on manipulations of arms or legs. For either arms or legs, there were four conditions. The first was normal bodies as a control. In the second condition, we misplaced one arm or a leg to a wrong position. In the third condition, we replaced an arm with a leg, or vice versa. In the fourth condition, we replaced an arm or a leg with a human arm or leg. The AOIs (areas of interest) were the strange body parts in the manipulated conditions or the corresponding ones in the control condition. We examined the number of trials in which chimpanzees had looked at the AOIs, the time to first fixation to AOIs, and the fixation duration of AOIs. Chimpanzees had more trials looking at the AOIs in the second and fourth conditions than control. Although there was no difference in the time to first fixation to AOIs across conditions, they had longer fixation durations in all manipulated conditions than control. The results showed that chimpanzees paid more attention to the strange body parts than control in general. This suggests that chimpanzees have the knowledge of the locations and appearances of body parts, as humans do, indicating that our common ancestor may have the knowledge about their body parts, too.

  • 大西 絵奈, Brooks James, 山本 真也
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P11
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    行動の同期は、群れを維持するうえで必要不可欠な現象であり、このような現象の解明は、集団生活の進化と紐づけられる重要な課題である。魚類や鳥類にみられる大群での集団移動や、ホタルの同期点滅発光、ヒトを含む多くの動物にみられるあくびの伝染・表情摸倣など、行動の同期現象の文脈は多岐にわたる。本研究は新たに、飼育チンパンジーにおける排尿タイミングの同期を定量的に示すことを目的とした。熊本サンクチュアリにて飼育されている4集団(各5個体、計20個体)を対象に、計193時間の直接観察を行った。 全生起法を用いて排尿タイミングを記録し、また2分間隔のスキャンサンプリング法を用いて、対象集団の行動と近接率を記録した。観察結果に基づき、時間帯毎の排尿頻度・個体差を反映したシミュレーション(100セッション)を行うことで、排尿タイミングのランダムデータを作成し、排尿の同期率を観察値と比較した。その際、セグメント分析を用いて他個体との排尿間隔を分析したところ、65秒が閾値になっていることが示されたため、65秒以内におこった排尿を同期と定義した。結果、排尿が同期する確率は、シミュレーションよりも観察値で有意に高いことがわかった。従って、チンパンジーは、集団内他個体と排尿タイミングを同期させていることが示唆された。一方で、排尿の同期率と社会関係(毛づくろい率および近接率)に相関はみられなかった。しかし現時点では、排尿の生起頻度の低さから充分なサンプルサイズを確保できておらず、データを追加したうえで詳細な社会要因の分析をおこなうことが今後の課題である。このような社会要因を追求することで、排尿の同期現象の理解が深まると考えられる。

  • 大塚 亮真, 山越 言, 木下 こづえ
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P12
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    観光はマウンテンゴリラの保全において重要な役割を果たしているが人獣共通感染症やストレスなどの影響が懸念されてきた。マウンテンゴリラの行動と観光の関係を調べた研究はあるが副腎機能と観光の関係を調べた研究はない。 2018年5-6月と9-10月にブウィンディ原生国立公園の1つの人付け群の15個体から新鮮糞を採取してEIAにより糞中グルココルチコイド(fGC)濃度を測定した。ゴリラのfGC濃度と性、年齢、日平均気温、そして観光との関係を明らかにするために個体差を考慮したベイズ階層モデリングをおこなった。観光の指標として1日の観光客の総数と観光客の訪問回数を共変量とした2つのモデル(N = 320)を構築した。 fGC濃度はメスよりもオスのほうが低く(中央値 = -0.15, 97% BCI = -0.28 – -0.02)オトナよりもアカンボウのほうが高かった(中央値 = 0.30, 97% BCI = 0.11 – 0.50)が日平均気温と明確な関係はなかった。fGC濃度は観光客の総数が多いほど高く(中央値= 0.07, 97% BCI = 0.02 – 0.12)、訪問回数が1回だった場合よりも2回(中央値 = 0.21, 97% BCI = 0.10 – 0.31)または3回(中央値 = 0.56, 97% BCI = 0.32 – 0.80)だった場合のほうが高かった。予測精度は訪問回数を共変量としたモデルのほうが高かった。 観光客の総数は解釈が難しく予測精度の観点からも訪問回数を共変量としたモデルを支持したい。観光客の訪問回数の増加に伴うfGC濃度の上昇は、移動・監視コストの増大や採食効率の低下と関係があるかもしれない。 しかし、このようなfGC濃度の一時的な上昇を慢性ストレスと結びつけることはできず、免疫や繁殖に負の影響を及ぼしているかについてはさらなる検証が必要である。

  • 松下 裕香, 竹崎 直子, Melin Amanda D., 河村 正二
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P13
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    ヒトを含む狭鼻猿類の3色型色覚において中長波長感受性を担うLとMオプシンは、遺伝子変換による同一化に晒され、遺伝子領域全体を平均すれば高い塩基配列類似性を示す。その一方で、LとMオプシンの吸収波長の違いは自然選択によって維持されている。我々は以前、数種類の狭鼻猿類を対象にLとMオプシン遺伝子配列の系統樹解析を行い、イントロン領域では狭鼻猿類の各分類群で独立に遺伝子重複した樹形となるのに対し、LとMオプシンの吸収波長の違いに関わるエクソン領域では狭鼻猿類の共通祖先で遺伝子重複した樹形となることを示した。このことは、ヒトのLとMオプシン遺伝子が狭鼻猿類の共通祖先における分化に遡ることと、イントロンを含む遺伝子領域の大部分は遺伝子変換によるL-M間の配列同一化のために本来の系統関係を反映しないことを示している。しかし、狭鼻猿のLとMオプシンの分化の起源がさらに過去に遡るかどうかは不明であった。そこで、本研究では狭鼻猿のLとMオプシン遺伝子の間で配列相違性の高い領域のみを選抜し、広鼻猿、メガネザル、曲鼻猿も含めて系統樹解析を試みた。すべてのエクソンとイントロンを含む遺伝子全長配列を収集するために、ゲノムDNA 試料に対するL/Mオプシン遺伝子領域のtarget captureと大規模並列塩基配列決定を行った。L-M間の吸収波長の相違に強く影響するエクソン3及びエクソン5におけるL-M間塩基相違度を算出し、狭鼻猿類においてその平均値と同等以上のL-M間相違度を示す共通の領域、計282塩基長を選抜した。無根系統樹において、狭鼻猿類のLオプシンクラスターとMオプシンクラスターの間に広鼻猿類、メガネザル、曲鼻猿類のLとMオプシンのアリルが位置する樹形を示した。 このことは狭鼻猿のLとMオプシンは遅くとも狭鼻猿と広鼻猿の分岐前に、すでに分化していたアリルが並列して生じたことを支持している。

  • 小池 魁人, 時田 幸之輔, 小島 龍平, 平崎 鋭矢
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P14
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    ヒト大腿二頭筋(Bf) 長頭は坐骨神経(Ish) の脛骨神経 (Ti) 部から神経支配を受け、短頭はIshの総腓骨神経(F) 部から支配を受ける。Bf長頭・半腱様筋・半膜様筋を支配するTiは仙骨神経叢の腹側(屈側) 由来の神経であり、短頭を支配するFは背側(伸側) 由来の神経とされており、短頭は由来の異なる筋と考えられている。また霊長類Bfの形態は種によって異なる。各種Bf支配神経の仙骨神経叢における層序を明らかにすることはBfの由来を考察するうえで重要である。ゴリラ、ニホンザル、リスザルにて観察を行った。ゴリラBfは坐骨結節から起始し腓骨頭に停止する長頭と、大腿骨遠位後面から起始し腓骨頭へと停止する短頭の二頭筋であった。支配神経はヒトと同様であった。ニホンザルでは坐骨結節から起始し腓骨頭・下腿筋膜へと停止する筋(M1) のみであり、起始部付近にIshのTi部からの枝が、停止部付近にF部からの枝が進入していた。 しかし、この筋の支配神経はTi部からの枝のみであり、F部からの枝はこの筋を貫く皮枝であった。リスザルはニホンザルと同じ起始・停止・支配神経を持つM1が存在した。停止部付近をF部からの枝が貫き皮枝となっていた。また、この筋の内側に大殿筋から起始し、下腿筋膜へと停止する筋(M2)が存在した。M2はF部からの枝に支配を受けていた。3種の仙骨神経叢における層序は腹側から順に脛骨神経→総腓骨神経→上・下殿神経であった。ゴリラ長頭やニホンザル・リスザルM1を支配するTi部からの枝はTi本幹より腹側に位置し、他のハムストリングス支配枝と共同幹を形成していた。リスザル・ニホンザルM1の遠位部を貫く皮枝はFから分枝した。ゴリラ短頭・リスザルM2へのF部からの枝は仙骨神経叢ではFの背側で上・下殿神経と同じ層に位置した。ゴリラBf短頭とリスザルM2は近しい関係にあることが示唆された。本研究は京都大学霊長類研究所共同利用研究にて行われた(COIなし)。

  • 豊田 有, 丸橋 珠樹, 川本 芳, 松平 一成, Malaivijitnond Suchinda
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P15
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    発表者らがタイ王国で研究を続けている野生ベニガオザルの地域集団では、オス複数頭が協力して群れ内のメスを他のオスから防衛し、囲い込んだメスと交互に交尾をする「連合」形成のような繁殖戦略がみられる。 これは、繁殖資源という極めて競争性の高い資源を共同で防衛し、得た利益( 交尾機会) を分配するという協力行動の一形態である。一般に協力行動進化の議論では血縁選択が重要な焦点となるが、母系社会をもつマカク属において、オス間には血縁関係を想定できないことから、ベニガオザルのオス間で観察される繁殖をめぐる連合形成は、非血縁個体間での協力行動と考えられる。本発表では、タイ王国の野生集団で観察されたオス間連合形成について、マイクロサテライトDNAのフラグメント解析の結果から算出される血縁度を用い、協力相手選択に与える血縁度の影響を考察することを目的に分析を実施した結果を報告する。2015年9月から2017年6月までの18カ月間に実施した調査中に記録された433例の交尾のうち、オス間の連合形成によって交尾がおこなわれた連続多数回交尾26 例を抽出し、この連合形成に参与したオスたちの血縁度を、集団に属するオス間血縁度と比較した。血縁度の推定はマイクロサテライトDNA12座位の分析結果をもとにGenAlEx 6.3を用いて理論値を算出した。結果、調査地に生息する5群のなかで、連合形成が確認された3つの群れ(Ting, Nadam, Fourth)のうち、Ting群で見られた連合形成オス間の血縁度は、集団内のオスの血縁度の平均より有意に高かった一方、他の2つの群れの連合形成オス間にはこの傾向は見られなかった。本発表では、連合形成が見られなかった群れのアルファオスと他オスとの血縁度の関係や、地理的に隔離されている集団におけるオス間の血縁度の解釈の限界を含め、連合形成相手の選択に遺伝的要因が与える影響についての詳細を報告する。

  • 田伏 良幸
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P16
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    近年の動物の文化的行動の研究では、動物はいつ・どのように・誰から社会的に学習するのかという社会的伝達の議論が活発に行われている。発達的観点からの文化的行動の研究は、文化的行動の維持・発現要因を明らかにする点で重要である。しかし、ひとつの群内で多様な型が維持されている文化的行動である社会行動の研究は少ない。ニホンザルの文化的行動である抱擁行動は、屋久島で複数の型が見られる。本研究では、屋久島のニホンザルは、どのように多様な型の抱擁行動を学習しているのかを解明することを目的とした。 2018年8月から10月、2019年10月から12月の間に、鹿児島県屋久島西部地域の海岸域に生息するヤクシマザルのUmi-A 群を対象に、追跡個体の周囲10ⅿ以内で生じた抱擁行動について全生起サンプリングを行った。その観察された2個体間の抱擁行動の中で、抱擁行動を行ったペア、抱擁行動を開始した個体、抱きつきの方向を記録した。460事例の抱擁行動が観察された。全事例の中で、未成熟個体(4歳未満)は成熟個体(4歳以上)よりも正面同士の型で抱擁行動をする割合が多かった。さらに正面同士の型以外で行われた成熟個体と未成熟個体のペアをみると、成熟個体がイニシアティブをもって抱擁行動を行った。成熟個体の抱擁行動には緊張緩和機能があることが知られている。正面同士の型は、母子間の抱きつきと類似しており、授乳時にはオキシトシンが分泌され、母子間の絆が形成される。このことから、未成熟個体はまず正面同士の型で抱擁行動をすることを学習し、緊張緩和している可能性がある。さらに未成熟個体は、成熟個体がイニシアティブをもった抱擁行動から多様な型を学習していることが示唆された。屋久島のニホンザルは、自分の腹を相手にあてることをまず学習し、成熟個体との関わりの中で多様な型の抱擁行動を学習しているのかもしれない。

  • 蔦谷 匠, Wong Anna, Malim Peter T., Bernard Henry, 小川 奈々子, 大河内 直彦, 田島 知之, ...
    原稿種別: ポスター発表
    セッションID: P17
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/04/23
    会議録・要旨集 フリー

    森林伐採による生息地の減少などから、ボルネオオランウータン (Pongo pygmaeus) は野生での個体数を減少させており、より効果的な保全のためには、野生での採食生態の変化をより迅速にモニタリングする必要がある。本研究では、ダナムバレイ自然保護区 ( マレーシア・サバ州) に生息する野生ボルネオオランウータンの採食物と糞便を炭素・窒素安定同位体分析し、採食行動に関する先行研究の知見と照らし合わせて、分析の有用性を検討した。消費者の安定同位体比は採食物源とその摂取割合を反映するため、対象種の体組織や糞便と採食物をサンプリングし分析できればおおまかな食性が推定できる。2015−2017年の18ヶ月間に採集した糞便94サンプルと採食物の一部171点を元素分析- 安定同位体比質量分析計によって分析した。 分析の結果、採食物の安定同位体比には明確な季節性が見られず、アフリカの森林で報告されているような植物部位による有意差も見られなかった。また、おそらく採食物の安定同位体比に明確な差が見られないため、性別、年齢、フランジの有無などによる安定同位体比の有意な個体差も見られなかった。しかし、雨量が減少する4 −10月には糞便の炭素同位体比が有意に増加しており、調査地の年間平均雨量と負に相関するチンパンジーの毛の炭素安定同位体比と同様の傾向が見られた。しかし、近隣の調査地で得られた実際の雨量データを月ごとに平均し、ダナムバレイのオランウータンの糞便の炭素安定同位体比と比較しても、明確な相関関係は見られなかった。まとめると、一次林のダナムバレイでは、オランウータンの採食する植物部位の炭素・窒素安定同位体比が非常に均質であり、そのため個体や季節による差が検出できなかった。そのかわり、農作物や開けた二次林の植物など異なる安定同位体比を示す食物が摂取された場合には明確に検出できると期待される。

feedback
Top