霊長類研究 Supplement
第37回日本霊長類学会大会
選択された号の論文の67件中51~67を表示しています
ポスター発表
  • 藤田 志歩, 井上 英治, ンゼ・ンコグ シメーヌ, 田村 大也, 竹ノ下 祐二, 坪川 桂子, アコモ・オクエ エチエンヌ・フランソワ
    原稿種別: ポスター発表
    p. 47
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    ゴリラの社会システムは単雄複雌群を基本とするが,しばしば複雄群が観察されることが報告されている。 このような社会構造の多様性は,オスの出自群からの移出の有無や時期といった生活史パタンの変異によって生じる。本研究では,オスゴリラの生活史に変異をもたらすプロセスを明らかにすることを目的として,成長過程における内分泌動態を調べた。ガボン共和国ムカラバ—ドゥドゥ国立公園において,2011年10月から2018年3月まで断続的に調査を行った。 調査区内を遊動域とするニシローランドゴリラの群れオス(出自オスおよび核オス)および単独オス計21 個体から新鮮便を採集し,コルチゾル濃度およびテストステロン濃度を測定した。また,対照として,メス10個体についてもコルチゾル濃度を測定した。糞便試料はDNA解析により個体識別を行った。解析の結果,オスではブラックバック(11〜14歳)のコルチゾル濃度は,コドモ(4〜7.5歳),サブアダルト(7.5〜11歳),ヤングシルバーバック(14〜18歳)およびシルバーバック(18歳以上)より高かった。 また,コルチゾル濃度が上昇する時期は,対象群においてオスが出自群から移出する年齢(平均14歳)とほぼ一致した。いっぽう,メスでは成長に伴う変化はみとめられなかった。したがって,オスでは性成熟にともなって繁殖をめぐる父子間の葛藤が生じ、これにより出自群からの移出が促進される可能性があると考えられる。発表では,テストステロン濃度の変化についても報告し,オスの性成熟のタイミングとの関連についても考察する。

  • 山梨 裕美, 鵜殿 俊史, 平田 聡
    原稿種別: ポスター発表
    p. 48
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    長期的なストレスは、動物の心身の健康に影響を与えると言われている。飼育下の大型類人猿は心疾患などで、比較的若い段階で死亡する例もあり、ストレスと関連があるのではないかと推察されている。しかしそれについて定量的な検討は行われていない。 そこで今回、京都大学野生動物研究センター熊本サンクチュアリのチンパンジーを対象として2012年から2018年の健康診断と2013年から2015年に測定した体毛中コルチゾル濃度のデータを用いて、ストレスとチンパンジーの心疾患(リスク要因も含む)や健康状態の関連を調べた。今回ストレス指標としては、体毛中コルチゾル(長期的ストレス)とアロスタティックロード(グルココルチコイド以外のバイオマーカーもあわせて評価した指標)を用いた。ひとつめの分析として、体毛中コルチゾル濃度(2013‐2015年の平均)と2013年から2018年の健康診断時に採取した心疾患のリスク要因及び心疾患マーカー(NT-proBNP及び体重に対する心臓サイズ)の関連を調べた(N=50)。しかし心疾患リスク及び心不全の発症との関連はみられなかった。次に、チンパンジーの死亡や肝炎ウィルスとストレスの関連を調べた。体毛中コルチゾル及び健康診断のデータがある個体のうち、 2020年までにチンパンジー10個体が死亡したが、体毛中コルチゾルまたはアロスタティックロードは生存個体より高いということはなかった。肝炎ウィルスのキャリア個体は、アロスタティックロードが高い傾向にはあったが、統計的に有意ではなかった。ただし、コレステロールなどいくつかのバイオマーカーが高齢期には高くなる傾向にはあった。以上の結果から、長期的なストレスが直接的に心疾患や死亡などの直接的に影響を与えている証拠は得られなかった。ただし、個体数も少ないので、ストレスの影響については今後も引き続き注意していく必要はあるだろう。

  • 下澤 律浩, 揚山 直英, 中山 駿矢, 鯉江 洋, 保富 康宏
    原稿種別: ポスター発表
    p. 48
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    人工授精はウシやブタなどの家畜の繁殖技術として、あるいはヒトにおいても不妊治療の一つとして広く利用されている。一方でヒトと同じ霊長類であるカニクイザル、アカゲザルおよびニホンザルなどのマカク属では、子宮頸管が蛇行したような構造を持つため、経膣による子宮腔内への精子注入は容易ではない。マカク属において、いくつかの人工授精法が報告されているが、妊娠率は一貫して高くなく、排卵に関する詳細は不明である。そこで、本報告では、排卵に基づいたより効果的な人工授精について検討した。 まず排卵時期については、月経出血が確認された雌カニクイザルから採血を行い、血清中エストラジオール(E2)およびプロゲステロン(P4)を自動蛍光酵素免疫測定装置にて約30分で測定した。E2およびP4の動態から排卵直前であることを推定し、人工授精に供試した。精子については、電気採精によって得た精液から精子懸濁液を準備した。その懸濁液を超音波ガイド下で経腹的に子宮腔内へ注射針の穿刺により注入した。この処置におよそ10分間を要した。 排卵したことを確認するために、人工授精後数日間採血を行い、E2およびP4を測定した。妊娠診断はおよそ4〜5週後に実施した。排卵直前と推定された 6頭に子宮腔内精子注入を行ったところ、ホルモン動態から排卵が確認された5頭の内の4頭で妊娠が成立した。排卵が確認できなかった残りの1頭について妊娠は成立しなかった。妊娠した5例の内、一例で流産したが、残り3例で産仔が得られ、母子ともに異常は確認されなかった。我々はカニクイザルにおいて、迅速なホルモン測定によって推定された排卵直前に経腹的な子宮腔内への精子注入による処置時間が短く、安全な超音波ガイド下での人工授精法を確立した。

  • 橋戸 南美, 土田 さやか, 東野 晃典, 清野 悟, Saldivar Diana A Ramirez, Goossens Benoit, ...
    原稿種別: ポスター発表
    p. 49
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    コロブス類は葉食に特化した食性を示しており,反芻動物のような複数に分かれた胃をもつ。葉には二次代謝産物として,アルカロイドやテルペノイドなどの毒性成分やタンパク質と結合して消化を阻害するタンニンなどの難消化性成分が含まれる。コロブス類でも反芻動物のように複胃中の微生物がこれらの物質を分解することが示唆されているが,その詳細は不明である。我々は,コロブス類前胃内細菌がもつ植物二次代謝産物の分解能を明らかにすることを目的として,テングザル前胃内細菌の分離培養を行った。これまでに飼育テングザル前胃には新種の乳酸菌(Lactobacillus nasalidis)が共生していることを明らかにした(Suzuki-Hashido et al. 2021)。今回,野生個体前胃内容物の凍結乾燥試料からの細菌の分離培養を試み,新種の乳酸菌L. nasalidisを含む7種の細菌種の分離に成功した。野生,飼育どちらの個体の試料からもL.nasalidisStreptococcus gallolyticusの2種の乳酸菌が分離できたため,この2菌種について植物二次代謝物質分解能や生理生化学性状を比較した。L.nasalidisは,最も近縁な種であるL. delbrueckii subsp. indicusとは異なり,野生・飼育個体由来のどちらの株も青酸配糖体アミグダリンを含む7種類の糖に対して高い分解性を示した。また,飼育個体由来株は野生個体由来株に比べて高いNaCl抵抗性を示しており,これは飼育個体がペレットなどのNaClを多く含む食物を食べていることに起因していると考えられた。他の2種についても同様に野生個体由来株と飼育個体由来株で比較する。特に,S. gallolyticusは高いタンニン分解性を示すことが知られているため,野生・飼育下の採食植物の違いに着目して,2菌種の由来による生化学性状の違いについて議論する。

  • 土田 さやか, 牛田 一成, 三輪 美樹, 中村 克樹
    原稿種別: ポスター発表
    p. 49
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    動物を健康に飼育するためには疾病の予防が第一であるが, 実際に疾病に罹患した場合には適切な治療を行い再発防止に努める必要がある。本研究で対象とするコモンマーモセット(Callithrix jacchus)は歯肉炎や歯周炎を好発することが知られている。口腔疾患はしばしば外科治療を必要とするが,すべて麻酔下で実施する必要があるため, 複数回集中して治療することができない。そのため, 一度罹患すると完治や再発防止は難しいとされる。本研究では, 飼育個体の歯垢や歯石, 歯肉炎症部位から歯周病関連細菌を分離し, その菌種構成と, 歯周病悪化の大きな原因となる短鎖脂肪酸(とくに酪酸)産生能, および薬剤耐性の評価を行なった。京都大学霊長類研究所で飼育されている5個体の歯科検診時に歯垢, 歯石, 歯肉炎症部位スワブを採取し, 直ちにカナマイシン含有BHI寒天培地に塗沫後, 36℃・嫌気条件下で72時間培養を行った。 約100分離株の16S rRNA遺伝子を用いた系統解析により, 検査した個体の口腔には, 歯周病に関連すると考えられる8細菌種 (Fusobacterium nucleatum subsp. polymorphum, Fusobacterium nucleatum subsp. vincentii, Streptococcus mitis, Streptococcus koreensis, Actinomyces naeslundii, Actinomyces viscosus, Aggregatibacter aphrophilus,Campylobacter showae) が存在することが明らかになった。これら歯周病原因菌のうち特にF. nucleatum subsp. polymorphumは, 高濃度の酪酸を産生する株が含まれており, 飼育個体の歯周病を悪化させる大きな原因になっていると推測された。本発表では, これら分離株の歯周病態の悪化に関わる短鎖脂肪酸産生能を評価し, 治療時に有効である薬剤選抜のための薬剤耐性についても議論する。加えて, 薬剤耐性菌を生み出さないための抗生物質以外の抗菌物質(次亜塩素酸水など)の効果も検討する。

  • 柴田 宏昭, 小野 文子, 村山 裕一, 岡本 実, 萩原 克郎, 保富 康宏
    原稿種別: ポスター発表
    p. 50
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    プリオン病は進行性の脳神経細胞変性を起こす一群のまれな致死性疾患で、代表的な疾患としては人のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)や牛海綿状脳症(狂牛病、BSE)がある。BSEは人に伝達することが分かっている(変異型CJD)。この疾患の原因は細胞内の異常なプリオンタンパク(PrPSc)の蓄積によるものと考えられているが、どのような機序で発症するのか詳しく分かっていない。現在のところ有効な治療法もない。発症機序の解明や治療法の開発には動物モデルが必要であり、齧歯類等を用いたプリオン病モデルは作出されているが、これらのモデルでは人と同様な高次脳機能障害を再現することは難しい。従って、人に近い霊長類を用いたプリオン病モデルは必要とされる。BSEを発症したウシの脳乳剤を霊長類に接種し、人と同様の症状を呈することは既に報告されている。しかしながら、脳内接種し発症するまでに2 年以上、発症期間は1年前後を要する。 また個体による潜伏期間及び発症期間の差が大きい。 そこで、本研究では、より安定的なモデルの構築を目的に、PrPSc 持続発現細胞株を3頭のカニクイザル脳内に接種した。その結果、全頭とも接種1年4,5ヶ月後に神経症状のひとつである驚愕反応等を示し、その後急速に症状が悪化した。安楽死の目安とした神経症状スコアに達したため、接種1年7ヶ月後に全頭、安楽死を行った。安楽死直後のMRI撮像により、プリオン病に見られる脳の萎縮、顕著な脳室拡張が認められた。また病理検索やウエスタンブロッティングにより脳内のPrPSc蓄積も確認した。PrPSc細胞株を用いることにより、従来モデルに比べ、潜伏期間や症状の進行が早く、且つ個体による発症経過の差が少ない安定したモデルが構築できた。実験期間の短縮は感染ザルの負担軽減にも寄与する。今後はこのモデルを利用して、プリオン病の発症機序の解明や治療法の開発等を試みる。

  • 五藤 花, 大石 高生, 郷康 広, 早川 卓志
    原稿種別: ポスター発表
    p. 50
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    テナガザル科は,類人猿の1グループである。東南アジアの熱帯雨林で樹上生活をしており,長い上肢を使ったブラキエーションを行う。また,「歌」とよばれる発声行動も特徴的である。ペア型社会を営み,ペア間でデュエットを行う種も複数存在する。その特徴的な歌の遺伝基盤を探ることを最終的な目的として,本研究ではテナガザルの脳の遺伝子発現解析をおこなった。動物園で亡くなったシロテテナガザル(Hylobates lar)のオス(9歳)を対象とした。死亡後-80℃で保存されていた脳から,発声にかかわると考えられる領域を含む17領域をドライアイス上で凍結状態のまま採材し,RNA抽出に供した。さらにコントロールとして6つの臓器からも採材した。それぞれの組織からRNAを抽出し,ライブラリ作成後,イルミナシークエンサーをもちいてRNA-seqをおこなった。本個体からは先行研究でも脳の複数領域でRNA-seq がなされている(Xu et al. 2018 Genome Research)いる。そのデータとともに,遺伝子アノテーション付きのキタホオジロテナガザル(Nomascus leucogenys)のリファレンスゲノムにマッピングして,網羅的な遺伝子発現パターンを決定した。各遺伝子の発現量に基づく主成分分析の結果,以前に行われたRNA-seq結果と同じ脳領域のデータが近接したことから,再現性が確認できた。また,複数の臓器に比べ,脳の複数領域はお互いにクラスタリングし,脳特異的な遺伝子発現の傾向が見られた。今後,複数個体で同様の発現解析をおこなうとともに,領域間で発現パターンの差異がみられた遺伝子について詳しく解析する。また,聴覚にかかわる領域を追加して,総合的な解析をおこない,所期の目的である歌の遺伝基盤の解明に向けた考察をおこなう。

中高生発表
  • 小﨑 友裕, 荒尾 想太, 江副 愁人
    原稿種別: 中高生発表
    p. 54
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    ウトウトタイムは,カーテンで遮光した教室の各自の机でうつ伏せの姿勢になり,昼食後の10分間午睡をとる,2014年度から全校生徒が取り組んでいる日課表に位置付けられた時間である。睡眠不足の生徒や授業中の眠気を生じる生徒だけでなく,午後の授業や部活動に臨むうえでウトウトタイムが有効であることを実証するために,本研究では,午睡がストレスを軽減することを実証することを目的にする。まず,個人の睡眠習慣を把握するために,高校2年40人を対象に“位相”,“質”,“量”の3点を“良”,“注意”,“警戒”の3段階で評価する3次元型睡眠尺度(3 Dimensional Sleep Scale; 3DSS)を行う。睡眠習慣の異なる生徒を抽出し,被験者として実験期間中,睡眠日誌を記録して生活リズムに違いが生じないように協力してもらう。ストレスマーカーとして唾液アミラーゼに着目し,唾液アミラーゼモニター(ニプロ株式会社)を用い,介入あり(午睡あり)と介入なし(午睡なし)のそれぞれ5日間ずつ介入前後の唾液アミラーゼ活性(KIU/L)の平均値を得る単群試験を行う。 3DSSを高校2年40人対象に実施した結果,“位相”,“質”,“量”それぞれで個人の睡眠習慣を把握した。特に,3DSSの“量”に着目をし,「注意」を示した被験者において,介入前後の唾液アミラーゼ活性の平均値を有意水準5%で両側検定のt検定を行った結果,介入なし(午睡なし)では有意な変化が示されず,介入あり(午睡あり)では午睡後に有意な減少が示された。一方,「良」を示した被験者においては,午睡なしでは有意な変化が示されず,午睡ありでは午睡後に有意な増加が示された。本研究の結果から,睡眠習慣で睡眠量が不足している生徒は昼食後のストレスが高く,ウトウトタイムによってストレスを軽減することができると考えられる。今後は,3DSSの“位相”,“質”,“量”の3点とウトウトタイムによるストレスの変化の関係性を明らかにしていくことを展望としている。

  • 星野 未来, 本村 美月, 阿部 友杏, 上野 古都
    原稿種別: 中高生発表
    p. 54
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    高校生は夕食後,授業の復習や予習,課題など就寝前に活動する時間が長く,眠気を解消するためにカフェインを摂取する機会が多い。一般に,カフェインは眠気を抑制し,覚醒する作用があるため,摂取する時間によっては夜間の入眠に影響を及ぼすと言われている。本研究では,夜間の睡眠の質に影響を及ぼさないカフェイン摂取方法を検証することを目的とする。 実験は,平日5日間の夜間に設定し,カフェイン120mg を含む無糖ブラック缶コーヒーを1日目は8時間前,2日目は6時間前,3日目は4時間前,4日目は2時間前,5日目は就寝直前と摂取時間を変えて摂取する計画で行う。被験者は,実験期間中,睡眠日誌を記録し,23時から6時の7時間睡眠を確保する介入調査にする。夜間の睡眠の質として,覚醒回数と入眠後最初の徐波睡眠の長さに着目をし,Smart Sleepディープスリープヘッドバンド(Philips 社)を用いて測定し,専用アプリSleep Mapperで記録する。高校2年女子4人を被験者に実験を行った結果,覚醒回数とカフェイン摂取時間に関係があることが示された。8時間前,就寝直前では覚醒回数が2回未満であったが,2時間前,4時間前では3回以上記録され,特に,2時間前では覚醒回数が4回以上記録された。入眠後最初の徐波睡眠の長さは,4時間前,2時間前,就寝直前で短くなることが確認された。本研究の結果から,就寝直前のカフェイン摂取は覚醒回数への影響は少ないものの,深睡眠である徐波睡眠の長さに影響を与え,2時間前,4時間前のカフェイン摂取は覚醒回数及び徐波睡眠の長さに影響を与えると考えられる。夜間の睡眠の質に影響が少ない方法は就寝前4時間以上のカフェイン摂取が適すると考えられる。今後は,睡眠時間や就寝時間を設定する介入調査をせず,高校生の普段の生活リズムにおけるカフェイン摂取と睡眠の質の関係性を明らかにすることが展望である。

  • 藤木 泉
    原稿種別: 中高生発表
    p. 54-55
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    マガーク効果によって音声言語の音韻知覚が視覚情報によって変化する現象が見られる。例えば、baの音声にgaの口の動きを合成するとda (融合反応)やga (視覚反応)などのように知覚される現象である。本研究では、この現象を私が制作した動画においても再現できるのかを検証した。高校生5人のbapama、の音声に、それぞれ一致した口の動きと、矛盾した口の動きの映像(gakana)を合わせた。撮影はiPhone8の内蔵カメラ、編集はスマートフォンの動画編集アプリInShotVivaVideoのいずれも無料版を使用した。高校生25(健常者 24名、聴覚障碍者 1)6つの動画の聞こえ方とその明瞭度(どの程度はっきりと聞こえたか)を評価してもらった。一致刺激に対して矛盾刺激の方がいずれも正答率(正答とは聴覚情報を回答すること)が低かったため、マガーク効果は再現されたと思われる。また、矛盾刺激に対して一致刺激の方がいずれも明瞭度が高いと回答した人が多かった。誤答については視覚情報に寄るか聴覚情報に寄るかで個人差があり、後者の方が多く見られた。これは視覚情報よりも聴覚情報に日本人は依存しやすいという先行研究に一致する。動画を制作する際にそれぞれ重視する感覚の情報を弱めれば、融合反応が多く見られると考える。加えて、同様の手法を用いて、bapamaの音声にrasayaの映像を合わせた動画を制作した。高校生17(健常者 16名、聴覚障碍者 1)に聞こえ方と明瞭度を4段階で評価してもらった。2つの実験を通して健常者と聴覚障碍者の回答を比較した。聴覚障碍者の方が視覚情報に依存しやすく、これは読唇と日常的に口元に注視する習慣が影響していると考えられる。

  • 牧鶴 翔大
    原稿種別: 中高生発表
    p. 55
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    [目的] 同調圧力が私たちの日常にどのように作用しているかを明らかにし、これからの社会のありようについて考えることを目的とした。[方法] まずは身近な授業中の挙手に着目した。国分寺高校生143人に授業中の挙手についてのアンケートを行った。加えて生徒29人を対象にグループ討論形式の実験を行った。 [結果] 9割の人が手を挙げていないことがわかった。また、手を挙げる人は、「誰も手を挙げていないから」手を挙げ、逆に挙げない人は、「答えにくい雰囲気」があるからだとわかった。このことから、手を挙げる1割の人は、手を挙げない9割の人の圧力によって挙げていると推測できる。ここで、「答えづらい雰囲気」をなくすには、周りの人が相槌を打つことが有効ではないかと考え、実験を行った。実験では、 1グループ45人となって、「高校生はアルバイトすべきか否か」というテーマで討論を行った。特に指示せずに討論するグループと、全員に意識的に相槌を打ってもらうよう指示して討論するグループをそれぞれ3つ作った。全グループ同じように最初に自分の意見を述べてから討論を始めてもらった。結果、相槌回数が多いほど、挙手数が多くなった。このことから、相槌がグループでの話し合いに有効であることがわかった。また、どのグループも最初は意見が割れたが、全グループで最終的に全会一致となった。また、討論中、反対意見の人を強引に自分の意見に変えようとする言動は見られなかった。最初に全員の意見を述べた際に多数であった意見が、全グループで、最終的な合意意見となっていたことがわかった。これは意識せずに同調圧力が働いたことが推測できる。 [考察] 同調圧力がなぜ生じたのかは人類が社会を形成し、自然界の中で生き延びてきた歴史と関連付けて考察していかなければならない。社会を維持するために他者と共感する必要性はあるとしても、一方で自分の意見を明確にしない、できない社会を私たちはどのように変えていったらよいか考察した。

  • 木村 陽向, 井上 寧々, 岩田 悠市, 神谷 杏奈, 小森 弘貴, 永坂 知也, 古田 萌恵, 山内 虎太郎
    原稿種別: 中高生発表
    p. 55-56
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    昨年、我々は、ギニア共和国ボッソウにおけるチンパンジーのナッツ割り行動と、現代日本のヒトの子どもを対象とした実験結果との比較を行った。研究を通じ、ヒトとチンパンジーの姿勢の違いや親の関与の違いなどに関し興味深いデータを得たが、「靴を脱がせたら姿勢が変わるかもしれない」「姿勢の違いには文化的差異を考慮する必要がある」「比較実験を行うならば条件を同じにする必要がある」など、発表後に有益な指摘を複数受けた。動画視聴によるチンパンジーの行動分析には限界があり、さらにコロナ禍における制限も重なって、その後十分な研究活動を行うことはできなかったが、ヒトの子どもを対象とした実験を再度行うことによって、様々な知見を得ることができた。昨年の人の子ども対象の実験では、割りやすいように火であぶったクルミを使用したが、今回、割りにくい生のクルミをあえて使用してみたところ、我々の予想に反し、黙々と粘り強くクルミを割る子どもの姿が見られた。ナッツ割りを通じ、子どもの行動について考える貴重な機会を得たと思う。 甚だ不十分ではあるが、研究活動の中間報告を発表したい。

  • 佐藤 美奈子, 杉浦 朱李, 片山 和香, 清水 実有
    原稿種別: 中高生発表
    p. 56
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    公益財団法人日本モンキーセンターの「リスザルの島」は広さ1500 ㎡,シイ・カシ類などの常緑高木の森でボリビアリスザルが放飼されている。本研究では,「リスザルに適した環境を探ること」を目的とした。リスザルは本来中南米の熱帯雨林に生息しているため, 「気温が低いほど温度の高い日向にいる。」「太陽のある方角にいる。」また,太陽の位置が季節により変化することから,「リスザルのいる方角が季節により変化する。」と仮説を立てた。2020年9月~11月(以下秋と記す)に6 日間,2020年12月~2021年1月(以下冬と記す)に2日間,2021年3月~4月(以下春と記す)に2日間,計39時間の観察を実施した(5月以降継続中)。調査方法は,島を方位で8区間に分け,15分毎瞬間記録で,各区間の頭数,日向・日陰の頭数を記録し,同時に,日向と日陰で木板のデッキ・葉・地面の表面温度,気温を計測した。結果,放飼されている頭数に占める日向にいる頭数の割合(以下「日向頭数割合」という)は,秋が22%,冬が14%,春が35%。日陰にいる頭数の割合は秋,冬,春のいずれも35%であった。日向・日陰の気温の平均値は,秋が24.5℃・22.7℃,冬が8.1℃・5.8℃,春が19.6℃・15.9℃で,いずれも日向の気温と日陰の気温の間に1.8℃以上の差があった。気温(日向)と日向頭数割合の相関係数は,秋は-0.490,春は-0.277であった。冬は日向がないことが多かったので相関は不明である。秋には日向の気温と日向頭数割合に弱い負の相関があったが,春は相関がなく,秋の日向の平均気温(24.5℃)が春の日向の平均気温(19.6℃)より高かったことから,日向の平均気温が約20℃以上の日は,気温が下がるほど日向を利用することがわかった。また,方角について,放飼されている頭数に占める前述の各区間で目視された頭数の割合を比較したところ,秋, 冬, 春のいずれの季節も東~南~西にいることが多かった。ただし,冬は西北~北~北東の利用がやや増えた。顕著な季節変化はなかった。

  • 神田 大雅, 岸 航大, 柴﨑 壮平, 鈴木 隆太, 野田 遥希
    原稿種別: 中高生発表
    p. 56
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    高崎山自然動物園では,個体数増加に対する対策として撒き餌の量を徐々に減少させてきたが,サルの群れが山からサル寄せ場に下りて来ない日が多くなるなどの観光地としての課題に直面している。2020年8月,サルの撒き餌に対する満足度を上げるため,1日数回の餌撒きのうちの2回を,3 ㎏のコムギに替えて,同カロリーとなる5ミリ角に切られたサツマイモ4 ㎏とコムギ1 ㎏をブレンドした餌(以下,ブレンド餌と呼ぶ)に替えた。そこで,コムギ餌と比較することによって,ブレンド餌の効果を検証した。まず,サルの撒き餌に対する満足度を調べるために,餌付け餌の嗜好性調査を行った。コムギと小さく切ったイモのどちらを好んで採餌するかを調査した結果,高崎山群では,サツマイモに対して高い嗜好性を持つ個体が多いことが分かった。次に,各個体の餌付け餌の獲得量を調査するために,サルが餌撒き場に滞在する間の採餌行動を観察し,各餌撒きで獲得している餌の個数を調査した。その結果をもとに,摂取エネルギー量と採餌で頬袋に蓄えた餌の体積を推定した。その結果,ブレンド餌時は,獲得する餌の個数は減少するが,角切りイモを食べることで頬袋が大きく膨らむため,短期的には満足度を高めることができると考えた。さらに,ブレンド餌に対する長期的な満足度を推定するため,採餌時間と摂取エネルギー量から採餌効率を分析すると,上位個体の摂取エネルギー量がブレンド餌時には大きく低下していることが分かった。高崎山群では餌付け餌への依存率が高いため,ブレンド餌の回数を増やすことによって,毎年子を産む上位個体の出産率を低下させ,個体数増加を抑制させる効果があると考えた。また,1回の餌撒きに集まるサルの個体数調査では,コムギ餌よりもブレンド餌の方が個体数が減少することが分かった。撒き餌の個数が少ないブレンド餌では,上位個体に怯えながら餌を拾う下位個体は餌撒きに参加しにくいと考えた。

  • 〜熊本サンクチュアリにて〜
    三上 隆太, 町田 悠太, 井野元 隆司
    原稿種別: 中高生発表
    p. 57
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    2019年に横浜で開催されたTokyo International Conference on African Development: TICAD7関連のイベントで制圧すべき熱帯病がアフリカにはまだあることを知った。その一つであるハンセン病の原因菌はヒトのみならず, チンパンジーにも感染することを学んだ。そして, ハンセン病を克服したチンパンジーが熊本にあるサンクチュアリで暮らしていることを知り, 研修に伺った。サンクチュアリでは, 50人のチンパンジーや貴重な6人のボノボとの出会いがあり, 衝撃を受けた。サンクチュアリに暮らす個体たちには, テレビや動物園では知ることのできない各々の事情があった。Pan属のチンパンジー, ボノボともに絶滅危惧種となっているが, その歴史, 背景, 特徴について研修を受けるとともに今回, 文献研究を行い, 2種の比較を中心にまとめた。<方法>研修内容のまとめとともに, インターネットや論文検索をおこない, レポートを作成する。<結果>各々の特徴の一部を記載する。チンパンジーについて①攻撃的で男性優位社会。②多様な道具を使う。③体型がしっかりしている。④食事分配はオスが中心。⑤異なる集団で食物分配は成立しない。⑥水が怖い。一方, ボノボの特徴は①平和的で女性優位社会。②自然界では道具を使うことは少ない。③体型は細く四肢も細長く, チンパンジーより直立二足歩行が得意。④メス中心の採集スタイル。果実を分配して食べる。⑤性行為で問題解決(ホカホカなど)。⑥水が好き。⑦コンゴ民主共和国の固有種。<考察>チンパンジーとボノボとが分岐したのは約100万年前とされているが謎に包まれている点が多い。生息地や各々の特徴を獲得していった背景には環境も影響していたことが推測された。

  • 村上 颯麻
    原稿種別: 中高生発表
    p. 57
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    近年, 化学物質による環境汚染が問題となっている。特に,残留性有機汚染物質(POPs)による環境汚染は深刻である。これらの物質は,食物連鎖の過程で高次生物に高濃度で蓄積する。そのため, 残留性有機汚染物質(POPs)の高次生物における残留実態を調べることにより,近年の環境汚染の度合いを知りたいと思った。 本研究では, 私が生物の中でも特に興味を持っている鳥類に焦点を絞り, 鳥類の体内にどのくらいの濃度でPOPsが蓄積しているのか, また, POPsの濃度が, 年が経つにつれてどのように変化しているか調べることを目的とした。実験方法は, 試料を採取(本研究では愛媛大学のes-BANKに冷凍保存されているトビの胸筋を使用)し, 凍結乾燥後, 抽出。ゲル浸透クロマトグラフィー{GPC にサンプルロードし,抽出液を計測する物質(POPs)と脂質に分ける操作}を行い,活性シリカゲルの後,窒素濃縮。バイアル管をGC-MS (ガスクロマトグラフ質量分析計)にセットし, POPsの分析を行った。実験結果は,まず汚染実態は測定した物質の濃度の平均を算出すると, PCBs>DDTs>CHLs>HBCDs>PBDEs>HCHsの順になった。この結果から, 有機塩素系の農薬も依然として相対的に高濃度で蓄積しているということが分かった。 また, トビは生態系の頂点に位置しているため, POPsによる暴露が顕著にあらわれていると考えられる。 次に経年変化は, PCBs・DDTs・HCHsでは有意な減少が見られたが, PBDEs・HBCDs は有意に増加した。 また, CHLsは増加も減少もほとんどなく定常状態だった。 PCBs・DDTs・HCHsの減少は, これらの物質が先進国では早い段階で使用禁止になったこと, また, PBDEs・HBCDs の増加は, これらの物質が最近まで使用されていたことが関係していると考えられる。 トビは留鳥であるため, この結果から愛媛でも近年まではPOPsが使用されており, 未だに生体内に高濃度で蓄積しているということが分かった。

  • 越智 勇成
    原稿種別: 中高生発表
    p. 57-58
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
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    年々増加しているメダカの種類の中で,最近注目されている体色が緑色のメダカ。しかしメダカに元来存在している色素胞は,黒,黄,虹,白色の4つであり,緑色の色素胞は存在していない。それなのになぜ緑色の体色が発現しているのかが不思議に思った。 また,緑色が発現するメカニズムを解明することができれば,今後の品種改良等に貢献できると考え,研究を行った。メダカに緑色の体色が発現するメカニズムを調べ,それが遺伝的要因であるのかを調べるため,緑色のメダカを作出することから始めた。青色のメダカと黄色のメダカをかけ合わせると緑色のメダカが生まれるのではないかと仮説を立て,ドラゴンブルーメダカ(青色体外光ヒカリメダカ・補足:ヒレ光)レモンスカッシュメダカ(黄半透明鱗ヒカリメダカ)を交配し,生まれたF1の体色を評価すると,茶系と青系の体色が生まれ,比は約3:1となっていた。 また,茶系の体色をした個体の一部に背中に黄緑色の光沢が発現しているメダカを確認できた。次に,黄緑色の光沢をもつ個体をかけ合わせると,それらが体全体に広がるのではないかと仮説を立て,生まれたF1の黄緑色の光沢をもつ個体を選別し,交配した。 その結果,F2の体色は10種類に分かれ,その中には,グラスグリーンという色に近い体色をもった個体も含まれていた。しかしながら,黄緑色の光沢が見られる個体は確認できなかった。これらの結果から,メダカの緑色の体色は,突然変異ではなく,青系統のメダカと,黄色系統のメダカを交配させることで生まれることが分かった。また,黄緑色の光沢は,累代しても伸びていかないが,緑色の体色は累代すると濃くなっていく可能性が高いと考えられる。

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