海岸工学論文集
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50 巻
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  • 柿沼 太郎
    2003 年 50 巻 p. 1-5
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    計算機の能力が向上した現在, 変分法で用いる関数の自由度を比較的大きくとることが可能である.そこで, 変分法を用いて, 空間の各方向, または, 時間方向に積分した積分型非線形長波方程式を導いた.連続体を対象とし, 未知変数は, 連続関数で仮定した各成分に離散化し, それらを加え合わせた和として表わす.方程式系導出の際の積分操作によって, 数値計算時に, 空間の有限要素分割, または, 時間のステップ刻みを必要としない.数値解析では, 空間積分型及び時間積分型の各長波方程式を適用して, 与えられた初期水面から孤立波が発生する過程をシミュレートした.
  • 鴫原 良典, 今村 文彦
    2003 年 50 巻 p. 6-10
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    数値分散性を利用して物理分散性を表現するための差分計算方法として擬似Variable Grid Systemを提案した.まず, 線形長波理論の適用範囲について検討し, また, 浅海域における伝播問題に関して移流項から生じる数値粘性を除去することで, 浅水理論計算から非線形分散波理論計算を再現することができた.さらに2次元伝播問題への拡張により, 線形長波理論での差分計算の際に発生する数値分散の方向依存性を解消できることを確認できた. ゆえに従来の線形・非線形長波理論による数値計算によっても, 擬似Variable Grid Systemを利用することによって, 物理的な分散性を精度良く表現できる.
  • 馳 曙光, 山城 賢, 吉田 明徳, 入江 功
    2003 年 50 巻 p. 11-15
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    沖合から汀線までの広範囲にわたる波動現象を, 精度良く, 且つ, 比較的短時間で解析できる数値モデルの開発を目的に, 計算精度に優れ, 計算機の記憶容量や計算に要する時間が少ない境界要素法 (BEM) と砕波等の強非線形現象を解析できるVOF法を結合することを考えた.両手法を結合境界における流速と圧力の連続条件をもとに結合し, 基本的なアルゴリズムおよびプログラムを構築して試計算を行った.その結果, 現段階では幾つかの問題が残されているものの, 結合解析法は進行波だけでなく反射波についても両手法間で伝播可能であり, また, VOF法のみの計算に比べて格段に計算時間が短縮できることを確認し, その有用性を示した.
  • 桜庭 雅明, 樫山 和男
    2003 年 50 巻 p. 16-20
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    本論文は, 複雑な地形形状を有する自由表面流れの数値解析を安定かつ高精度に行うことを目的として, 非構造格子に対して適用可能となるLevel set法に基づく数値解析手法を提案するものである. 具体的には, 流れ場の計算には非構造格子に対して適用可能なSUPG/PSPG法に基づく安定化有限要素法, 自由表面位置の計算には移流方程式の高精度解法であるCIP法に基づくCIVA法を用いた. また, 体積の保存性を向上させるために, 体積補正手法を導入した. 数値解析例として, 二次元の移流問題, 水柱崩壊問題, および波浪変形問題を取り上げ, 理論解および実験結果等との比較を行い, 本手法の有効性を示した.
  • 後藤 仁志, 五十里 洋行, 八木 哲生, 酒井 哲郎
    2003 年 50 巻 p. 21-25
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    粒子法は, 水塊分裂を伴う激しい水理現象に対して柔軟かつ安定した解を得るために有効な手法であり, この利点を生かして, 近年, 砕波・越波に対する適用性の検討が進んでいる.巻き波型砕波では, ジェットの発生・着水・分裂, 飛沫の発生といった水塊分裂現象が支配的であり, 水塊分裂 (液滴の生成) 過程では, 表面張力の影響が重要となる.そこで, 粒子法における標準的表面張力モデルである体積力型のモデルを, 砕波・越波過程に適用する際の問題点を検討し, その改良案として, 粒子数密度の偏りを考慮した水面判定の高精度化の方法を提案する.
  • 後藤 仁志, 林 稔, 安藤 怜, 鷲見 崇, 酒井 哲郎
    2003 年 50 巻 p. 26-30
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    二流体型の粒子法は, 土砂流の水面突入など水塊分裂や水・土砂の活発な混合を伴う現象に対して有効性を発揮するが, 二流体モデル故に, 固相の振る舞いに関しては, 分級の影響や停止過程における流動特性の変化 (混合体モデルの構成則における降伏限界の存在と関連) などが表現できないといった不充分さがあった.本稿では, DEM型の粒子間干渉項を導入した固相モデルに加えて, 固相粒子を結合して任意サイズの礫を形成するマルチスケールリンクを提案し, その適用例として, 礫混じりの土砂流が水面に突入して発生する水面波を対象に数値シミュレーションを実施する.
  • 陸田 秀実
    2003 年 50 巻 p. 31-35
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    本論文は, 海岸・海洋工学分野に関連した二相流体における自由液面挙動と弾性物体との強連成問題を直接的に取り扱うことが可能な流力弾性連成解析手法を開発したものである. 本数値解析法の支配方程式は, 一般座標系Navier-Stokes方程式と連続式, 弾性振動方程式である. また, 二相流体における砕波を伴う自由液面挙動の追跡には, Level-Set関数φの移流方程式を弔い, その解法には一般座標系CIP法を適用した. その結果, 本手法は, 自由液面を有する二相流体における剛体・弾性物体の自励振動・弾性変形が複合的に作用する連成動力学的諸問題に有効であることが明らかとなった.
  • 梅山 元彦, 野田 有一, 三野 史朗, 井上 貴子
    2003 年 50 巻 p. 36-40
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    波・流れ共存場における乱流構造とオイラー平均流速を把握するために, 循環式2次元造波水槽を用いて実験を行った. 平均流速は流れだけの場合に比べて, 波と流れとが同一方向の場合には上層部で減少, 逆方向の場合には増大した. レイノルズ応力については, 同一方向の場合に下層で正であったものが水面付近において負に変わるということ, 逆方向の場合に流れだけの場合に比べて底面付近では小さく水面付近で接近してくるということが明らかになった. また, 波と流れが共存する場での位相平均レイノルズ応力を周期性振動場に拡張した運動量輸送理論と組み合わせて平均流速式を導き, 計算と実験結果とを比較した.
  • 鈴木 智浩, 谷本 勝利, Phung Dang Hieu
    2003 年 50 巻 p. 41-45
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    潜り堰近傍における塩水層の挙動を実験とともに解析解, 数値計算を用いて検討した. 実験は水路に水深 (40cm) の半分の高さの直立潜堤を設け, 潜堤の高さの3/4まで塩水層を形成し, 周期1sと2sの波をかけたものである. その結果, 淡水の表面波高は周期によって大きな違いは認められないのに対し, 潜堤付近の塩水層の表面波高 (内部波高) は周期が2sのとき周期が1sのときの約3.5倍となった. これは潜堤付近の波動の特徴によるものであるので解析解を用いて検討した. その結果, 周期が長い波では無限級数項が効いて鉛直運動が大きくなることがわかった. これより, 直立潜堤近傍の塩水層の挙動に関しては周期の長い波に対して注意が必要であると指摘できる.
  • 有澤 秀則, 下山 敬次, 池淵 哲朗, 下土居 秀樹, 中本 幸人
    2003 年 50 巻 p. 46-50
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    海水交換型防波堤の海水交換性能の数値シミュレーションにおいて, 海水交換量を精度良く推定するためには, 数値シミュレーションでの平均水位誤差を小さく抑えることが重要である. 本研究ではまず, 従来の造波理論解を応用して, シミュレーションでの造波境界と堤体間の距離を波浪条件に応じて適切に設定することで, 平均水位誤差を抑える手法を提案した. 本手法の有効性を確かめるため, 衝立パネル式海水交換型防波堤の海水交換量推定に適用し, 従来の実験結果との比較を行った. その結果, 計算値と実験値が概ね一致し, 本手法の有効性が確かめられた.
  • 中嶋 光浩, 由比 政年, 間瀬 肇, 石田 啓
    2003 年 50 巻 p. 51-55
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    防波堤, 潜堤, 護岸などを組み合わせた複合防護施設周辺においては, 水深の急変部を含む複雑な底面地形が存在し, 波の部分反射, 砕波, 分裂, 再生, 再砕波などが混在する複雑な波浪場が形成されている. 本研究では, 複合防護施設周辺の複雑な波浪場解析に対する数値モデルを構築するために, 従来のモデルに比べ適用波数領域が格段に広い著者らの拡張型ブジネスクモデルをさらに発展させ, 砕波減衰項・任意反射境界の組込みおよび屈折・回折を考慮できる平面2次元モデルへの拡張を行った. 本モデルによる計算結果は, 従来再現が困難とされてきた斜面上の潜堤周辺の波浪変形についても, 実験値と非常によく適合することを示した.
  • 浅野 敏之, 松元 涼子, 菊池 誠治
    2003 年 50 巻 p. 56-60
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    アシ, 海藻, マングローブ等の沿岸植生は, 景観や生態系保全に対して大きな価値を有することが広く認識されている. しかし, そこでの水理現象は不明な点が多い. 本研究は, 側岸に沿岸植生が繁茂する水路やエスチュアリー内に波が伝播するときの波高変化を, 数値モデルと解析モデルによって議論したものである. 植生の密度や水路断面の形状, 入射波の性質によって, 結果の特性がどのように変化するかを検討した. また, 植生の抗力抵抗や主流部分と植生内の停滞水との運動量交換が, 全体の流れに及ぼす影響についても検討した.
  • 渡辺 一也, 田中 仁
    2003 年 50 巻 p. 61-65
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    洪水時には河口砂州などの地形的な要因が洪水をスムーズに流す際の障害となって氾濫被害を拡大させる可能性があり, 河口地形の状態を把握しておくことが治水上重要である. しかし, そのように河口地形情報が重要であるにもかかわらず, 河口部における地形測量では多くの費用と労力を要するために, 通常は一級河川においても年数回のデータ取得が行われる程度であり, 二級河川に至ってはほとんどデータが存在しない場合が多い. そこで本研究では, 他の計測に比べ容易でありさらに安価に取得できる河口水位情報に注目し, 仮想水位データおよび一級河川名取川河口において取得された河口水位データから河口地形情報を取り出す方法について検討した.
  • Suntoyo, 田中 仁, 山路 弘人
    2003 年 50 巻 p. 66-70
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    これまで正弦波を対象として, 底面せん断力特性などに関する多くの研究が行われてきた.現実の波浪は浅海域に伝搬するにつれ前傾化し, 従来の正弦波とは異なるせん断力特性を示すものと考えられるが, このような特性を扱った研究例は少ない.このため, 波動モデルにより得られる流速場の情報から砂移動量に結び付ける際の底面せん断力評価の精度が明らかになっていない.本研究では, 前傾化した波の下での底面せん断力に関する実験的検討を行い, 底面せん断力に及ぼす加速度の効果を明らかにすることを目的とする.また, 簡便な底面せん断力算定手法として2つの式を取り上げ, その精度評価を行った.
  • 渡部 靖憲, 松本 卓, 佐伯 浩
    2003 年 50 巻 p. 71-75
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    浅海域に発達する乱流境界層は海底砂の浮遊, 輸送に極めて大きな影響を与える.底面形状に依存し発達するとみられる波動境界層の三次元化によって鉛直方向に強化される乱れ及び底面せん断力の影響は, 浅海域における底質の浮遊, 輸送を考える上で不可欠なものである.この論文は, 線形並びに非線形波動下の, 振幅の異なる砂漣上に発達する三次元波動境界層流れをLESによって計算し, 境界層厚の砂漣依存性, 層内の乱流せん断力鉛直水平分布, 局所底面せん断力分布さらに境界層内平均回転流速の分布について解析を行い, それぞれのスケール流れ間の関係と相互作用に関して考察するものである.
  • 山下 裕之, 長谷 部純, 泉宮 尊司, 黄 光偉, 石橋 邦彦
    2003 年 50 巻 p. 76-80
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    本論文は, 風波下の乱れ特性について論じるものである. 風洞水槽を用いた実験結果から, 乱れ成分と波動成分を分離し, 風波下の乱れの発生, 移流, 逸散等を評価した. 砕波に伴い乱れエネルギー, 逸散率, Reynolds応力などの挙動を明らかにした. 低周波数側および高周波数側にもfの-5/3乗則に従う慣性小領域が存在していることを示し, 高風速領域における乱流相似則が成立することを明らかにした.また問題提起として, κ-εモデルを砕波に伴う吹送流の解析に適用する際の改良についても提案した.
  • 加藤 始, 信岡 尚道, 村上 晴通
    2003 年 50 巻 p. 81-85
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    風波の下での水中の乱流構造は近年広い分野で研究されているが, 従来の軌道速度と乱れの分離法では乱れはスペクトルの形でしか得られないため, 乱れに及ぼす波の位相の影響は分からない.また波のトラフ高さより上では乱れの測定例もない.著者らはPTVによる風波下の流速の測定結果に流れ関数法による軌道速度の計算結果を適用する方法を開発し, 村上ら (2001) はその処理方法を発展させた.本論文では風波の流速場に流れ関数法を適用する場合の問題点を明らかにすると共に, PTVを用いて水面ごく近傍での水中乱れ成分u', w'を波の位相の関数として測定した結果について報告する.
  • 大塚 直, 竹原 幸生, 水谷 夏樹, 辻本 剛三, 江藤 剛治, 高野 保英
    2003 年 50 巻 p. 86-90
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    風波の発達・減衰機構や大気・海洋間の物質輸送等に大きく影響を及ぼす風波のマイクロブレーキング現象を画像解析により解明することを目的としている. 風波のマイクロブレーキング現象は水表面極近傍で生じる微細な現象であり, その流れ場を画像計測するには拡大撮影し, 狭い領域を細かく計測する必要がある. しかしマイクロブレーキングは波動場の状況に大きく左右されるため同時に広く波動場全体を画像計測する必要がある. 本研究では, 複数台のビデオカメラを用いて高解像度に, しかも広い範囲を画像計測する方法を適用し, 高解像度かつ広範囲の画像計測を行った.
  • 山下 裕之, 泉宮 尊司, 長谷部 純, 黄 光偉, 石橋 邦彦
    2003 年 50 巻 p. 91-95
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    本研究では, Janssenの準線形理論を用いて海面抵抗係数が波齢の逆数および波形勾配の関数となることを理論的に示している. まず, 風洞水槽実験において風速分布および風波の諸元を測定し既存の実験データも利用して, 海面抵抗係数が波齢の逆数だけでなく, 風波の波形勾配の関数になっていることを明らかにしている. さらに, その関係を定式化し評価式を提案すると共に, その理論的な裏付けとして準線形理論を用いて数値計算を行い, 海面抵抗係数を算定したところ, 多少過大評価となるものの実測値と高い相関関係にあることが示された.
  • 竹原 幸生, 大塚 直, 江藤 剛治, 高野 保英, 辻本 剛三, 水谷 夏樹
    2003 年 50 巻 p. 96-100
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    風波発生時における気流と水流の相互作用を解明するために, 画像計測を用いた水表面近傍の気流・水流の同時計測を行った. 本研究では, 著者らが独自に開発した画像計測技術を用いて, 風波が生じた条件下で流れ場の計測を行った. 画像計測上問題となる移動する水表面が存在する場合でも, 水表面極近傍まで流速を計測できる粒子追跡速度計測法 (PTV) を適用した. 白波が生じない範囲で, 3つのケースについて計測を行った. 計測された流速分布図より, 渦度分布, せん断変形分布を求め, それぞれのケースにおける流れ場の特徴的な構造を明らかにした.
  • 津守 博通, 杉原 裕司, 増田 章
    2003 年 50 巻 p. 101-105
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    風波気液界面における局所的なCO2交換係数kLを評価するための風洞水槽実験を行った. ある吹送距離の気流側に検査体積を設定し, その検査体積のCO2収支を測定することによって気液界面のCO2フラックスを算定した.水中の水和CO2を正確に見積もるために, 疎水性多孔質膜チューブから成る気液平衡器を用いて溶存CO2濃度の測定を行った. 本実験で得られたある吹送距離における局所的なkLは, 従来のデータと比べて相対的に大きな値を取ることがわかった. また, バルク領域の溶存CO2濃度の時間変化から水槽全体の平均的なkLを算定した. 局所的なkLと水槽平均されたkLの差異はかなり大きいことが明らかになった.
  • 角野 昇八, 関本 武史, 日引 俊
    2003 年 50 巻 p. 106-110
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    大気中の二酸化炭素ガスの海洋への溶解の速度などについてはまだまだ未解明の点があり, 地球温暖化メカニズムの解明もその面では十分には進んでいない. 本研究では, 沿岸砕波帯での気体輸送現象の解明を目的とするが, 従来の研究におけるようには, 気体輸送速度相当の気体輸送係数で現象を評価しようとするものではなく, それに曝気面積を乗じた形の気体流量輸送係数で評価することを新たに提案するものである. 本研究ではさらに, 造波水槽内の緩斜面上での砕波から得られたデータ, および新たに得られた連行気泡特性の種々のデータに基づいてそのことの妥当性を検証し, さらに気体流量輸送係数の実用的評価法を提案する.
  • 森 信人, 今村 正裕
    2003 年 50 巻 p. 111-115
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/08/04
    ジャーナル フリー
    気泡径分布について次元解析を行い, 気泡径分布形状およびェネルギー散逸率についての推定を行った.さらに, 淡水を用い風洞水路内において砕波を含む風波実験を行った.砕波により水中に混入された直径500μm以下の気泡をPDAにより計測し, 気泡径分布のべき乗則および気泡上昇速度の鉛直分布の測定を行った.その結果, 風波砕波の気泡径分布は, 風速や水深方向に分布形状はほとんど変化せず一定であり, N (d)~d-5/2のべき乗則を持つことを明らかにした.
  • 吉岡 洋, 松本 昌幸, 芹沢 重厚, 高山 知司
    2003 年 50 巻 p. 116-120
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    超音波波高計を改良して超音波の後方散乱強度分布を計測することによって, 砕波気泡の空間的・時間的な変動を追跡し, 波浪条件との関係を調べた.気泡の動きから波による往復運動をのぞいて, 気泡の侵入深さを厳密に見積もり, ま実際に砕波している波の成分を抽出して, その有義波高と気泡侵入深さの関係を検討した.気泡侵入深さの見積もりも反射強度の鉛直分布の統計量から推算した.気泡の平均侵入深さは, うねりの有無を問わず, 砕波成分の有義値の3倍~倍になって, Tobaらが提唱したDown Bursting Boundary Layer (DBBL) の特性とよく一致した.
  • 渡部 靖憲, 山内 悠司, 佐伯 浩
    2003 年 50 巻 p. 121-125
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    沿岸域において砕波によって発生する気泡の水中への混入に起因して発達する気液混相乱流構造は, 極めて複雑であり混入気泡径分布, 気泡数密度並びに非定常乱流中でのこれらの遷移については今だ未解明な問題である. 本研究は, 砕波下における気泡個数と気泡群構造を調べるために, 実験水槽において, 砕波帯に発生する気泡の界面におけるレーザーの散乱光を高速ビデオカメラによって撮影し, 種々のフィルター操作を経由して処理及び調査が行われ, 気泡個数と気群構造の砕波遷移及び砕波形態依存性について議論するものである.
  • 鷲見 浩一, 橋本 彰雄, 岩田 好一朗
    2003 年 50 巻 p. 126-130
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    本研究では, 超高速ディジタルビデオカメラを使用した水理実験を実施して, 一様傾斜面上の砕波に伴う気泡混入現象を波面上に形成されるくびれや微少凹凸乱れ等の形状パラメータと関連づけて考究した. その結果, 気泡は波前面の微少凹凸乱れ領域に形成されるくびれが, 重力波の進行方向と逆方向に波内部に向かって生じ, くびれの内面が接することによって空気を波内部に閉じこめることが明らかとなった. また, 波内部への気泡混入現象は, くびれや微少凹凸乱等の形状パラメータによって強く支配され, 入射波条件と砕波形式の変化に依して気泡混入状態が異なることが判明した.
  • 関 克己, 水口 優
    2003 年 50 巻 p. 131-135
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    近年砕波を対象とした数値波動方程式モデルが開発されているが, その多くは重複もしくは平面波浪場に素直に適用することは困難である. 本研究では, 局所的な物理量を用い, 個々波の定義を不要とする砕波モデルを提案する. 基本方程式としてBoussinesq方程式を採用し, その分散項を局所鉛直加速度を用いてコントロールして連続的に非線形長波方程式に接続するというものである. ついで遡上境界を組み込み, 孤立波および単一波群の実験結果と比較する. 特に単一波群のケースにおいては砕波帯内の長周期波の挙動についても詳細に検討を行う. さらに重複波浪場への適用を試みる.
  • 石川 忠晴, 工藤 健太郎, 中村 恭志, 苅籠 泰彦
    2003 年 50 巻 p. 136-140
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    津波・高潮等の水際境界の移動を伴う流体運動問題に対して, CIP法と有限要素法を組み合わせた新しい計算法を検討した. この手法によれば, 定型格子を用いながら, 内挿関数により水際位置を追跡しつつ運動方程式を解くことができるので, 水際線の形状が複雑化する場合でも容易に取り扱える可能性がある. 本論文では, 検討の第一段階として, この手法を一様斜面の遡上波に対して適用し, Carrier・Greenspanの理論解と比較した. その結果, 比較的大きな空間刻みの型要素であっても水際位置を正確に追跡でき, また流れ場全体も精度良く計算できることがわかった.
  • 中山 恵介, Jorg Imberger
    2003 年 50 巻 p. 141-145
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 斜面に連続的に作用する内部波により生じる残差流としての鉛直循環について検討することを目的とする.過去に行われた実験結果を利用して, CarrierとGreenspanにより提案されている弱非線形方程式である長波近似された方程式の解を砕波する際の内部波に適用し, その適用性を検討した. 理論解による残差流は, 実験との比較により良好な再現性を示していることが分かった.これにより, Bp=7~8程度の場合, 内部波の砕波は3次元的な現象ではあるが, 鉛直積分された2層流方程式を用いても, 比較的良好に内部波の斜面上での砕波による流れ場を再現できることが分かった.
  • 柴崎 誠, 宇多 高明, 芹沢 真澄, 熊田 貴之, 小林 昭男
    2003 年 50 巻 p. 146-150
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    現地海岸ではカスプ地形の凹状部分においてしばしば離岸流が観察される. 本研究では, 砕波帯近傍における凹状の窪みの形態と, 離岸流発生との関係について, 遠州海岸での実例を示した上で移動床模型実験を行うとともに, 波・流れの数値実験により検討した.リップチャネル (窪み) の形態を様々変化させて離岸流の最強流速と窪みの形状の関係を調べたところ, 窪みの形状に大きく依存せずに離岸流が発生することが分かった. 離岸流の発生範囲が窪みの形状から見てブロードバンドであることは, それに近い条件がしばしば発生する可能性を示している.
  • 出口 一郎, 荒木 進歩, 竹田 怜史, 松見 吉晴, 古河 泰典
    2003 年 50 巻 p. 151-155
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    鳥取県浦富海岸で, 係留気球からのビデオ撮影と極浅海域に設置した流速計による離岸流の実測を行った. 既設潜堤開口部背後では, 入射波高の増大に伴って顕著な地形性離岸流が観測された. このような離岸流は, ラディエーション応力を外力とする従来の海浜流予測モデルでも再現された. またビデオ撮影によっても典型的な離岸流をとらえることができたが, その多くは入射波高が1m未満の場合で, 持続時間も10分以内という非定常な流れで, 発生位置も不規則であった. このような流れは, 従来の海浜流予測モデルでは計算されず, その予測方法については, 今後に残された大きな問題点である.
  • 西隆 一郎, 萩尾 和央, 山口 博, 岩根 信也, 杉尾 毅
    2003 年 50 巻 p. 156-160
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    新海岸法では, [保全・環境・利用] が重要なキーワードとなり海域利用者の安全確保に積極的に関わる必要がある. そこで, 現地海岸での現実的な離岸流予測に関する基礎的調査を, 鹿児島大学と第十管区海上保安本部により実施した. の結果, ヘリコプターを用いた離岸流探査の有効性が示された. また, 流況を把握するために小型GPSセンサー付きフロートを作成しこのフロートを携帯することで, 遊泳者の漂流経路および漂流速度の定量化等が可能であることが示された. さらに, 今回現地観測を行った離岸流は, 地形の三次元性に起因するものであることが分かった.
  • 波別解析法に自由度を導入した理論解
    北野 利一, 二宮 太一, 喜岡 渉, 間瀬 肇
    2003 年 50 巻 p. 161-165
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    有義波高を代表とする1/N最大波高の統計的変動性 (誤差特性) を理論的に明らかにした. 理論構築にあたり, 個々波の標本に対する自由度という概念を新たに導入しするとともに, 波列の部分集合に対する統計量の変動特性を順序統計量の統計的特性として取り扱った. 本理論によれば, Tucker (1957) による波形の全エネルギーに対する誤差理論は, 周波数領域における波形の情報量に基づいた理論であるとみなされる. 本理論で示す有義波高の統計的変動性は, 時間領域おける波形の情報量に基づいて導かれるものである. 本理論の妥当性は, 合田 (1987) による数値シミュレーション結果との比較により確認した.
  • 堀江 岳人, 関 克己, 水口 優
    2003 年 50 巻 p. 166-170
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    長周期波は港湾副振動などの海岸災害の一要因であり, その特性を把握する事は重要である. これまでいくつかの波群性指標が提案されているが, 適切なものは何かという事では議論のある所である. 本研究では, 極浅海域における風波の特性から包絡波の特性, 長周期波の特性を算定することを試みる. その過程で波群性指標についても検討した. その結果,(1) 平均的には包絡波波高および長周期波波高は風波波高から, 包絡波周期はスペクトル幅パラメータと風波周期ら推測できる,(2) 実測長周期波の全パワーと拘束長周期波の全パワーの比は, 風波の相対水深の減少に伴い減少する, などを示した. あわせて (3) 包絡波の波高と周期を用いて波群性を簡便に表すことを提案した.
  • 吉田 明徳, 横田 雅紀, 山城 賢, 宮本 好英
    2003 年 50 巻 p. 171-175
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    波の散乱解析の結果を利用して, 周波数スペクトルおよび方向スペクトルを推定する方法を示し, Bretschnider-光易型周波数スペクトル, 光易型方向分布関数を有する不規則波を仮定して, 白島石油備蓄基地を対象に, 島周辺での周波数スペクトルおよび方向スペクトルを推定した.その結果, 反射側海域では島からの反射波が複雑に重なり合い, しかもその影響が相当遠くまでおよぶため, スペクトルには空間的な変動が大きく現れ, 入射波のスペクトルとは大きく異なること, 島の背後域では静穏域が相当遠くまでおよぶこと, また方向スペクトルの推定では分解能の良いスペクトルが容易に推定できることを示した.
  • 橋本 典明, 川口 浩二, 河合 弘泰, 松浦 邦明, 市川 雅史
    2003 年 50 巻 p. 176-180
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    1951~2000年の50年間に日本付近に来襲した台風データに基づいて確率台風モデルを改良した. 本研究では, 台風位置 (緯度, 経度) の時間変化量の偏差を2次元ARモデルにより季節別にモデル化した. 一方, 台風中心気圧・最大風速半径に関しては, 1次元ARモデルにより季節別にモデル化した. このモデルを用いて, モンテカルロシミュレーションを行った結果, 台風経路の再現性が改善され, 台風中心気圧の平面分布は概ね実データのそれと一致した. また, 過去50年間に伊勢湾に接近した台風の最大気圧降下量も, 実データは概ねシミュレーションの標偏差内に入っていることから, 本研究で改良・構築した確率台風モデルは妥当なモデルであると考えられる.
  • 小林 智尚, 座波 慎一郎, 安田 孝志
    2003 年 50 巻 p. 181-185
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    強風・風向急変場・短吹送距離である伊勢湾台風来襲時の伊勢湾を対象に湾内波浪を波浪推算モデルSWANを用いて再現を試み, 推算結果からSWANに用いられている各項の特性について検討した. その結果, 風から波へのエネルギー輸送項にJanssen (1991) のquasi-linear理論を用いるとSnyderら (1981) の理論に比べて湾内波浪のスペクトルは低周波数側に移動し代表波高も増大した. また移流項に1次の風上差分を用いるとSWAN標準の高次の半陰解法を用いた場合に比べて波浪方向スペクトルの分布形が数値誤差により広がることが確認された.
  • 橋本 典明, 川口 浩二, 松浦 邦明, 宇都宮 好博
    2003 年 50 巻 p. 186-190
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    波浪推算のデータ同化の性能向上を目的として, 第三世代波浪推算モデルWAM Cycle 5を改良し, 方向スペクトルの第1推定値を同化変数として, 評価関数に観測誤差項と背景誤差項の両方を考慮して4次元変分法 (Adjoint法) により幾つかの検討を行った. その結果, 背景誤差共分散行列の格子間相関が高いほど, また観測地点が複数で適度に離れている場合には, 同化される海域が広がることが分かった. また, 実海域を対象とした検討では, データ同化により波浪推算値は観測値に近づくように修正され, 推算精度は向上することが示された.
  • 川口 浩二, 橋本 典明, 杉本 彰
    2003 年 50 巻 p. 191-195
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    近年, 外洋を対象にしたWAMの推算精度の高さが確認され, 我が国でも実務に導入され始めている.しかし, WAMの内湾域への導入には幾つもの課題があり未だ導入が遅れているのが現状である.波浪推算による波浪情報の実務への利用価値は非常に高いが, とりわけ内湾域を対象とする場合, 静穏時も含む連続的な波浪推算 (常時波浪推算) が必要となる.本研究では, 内湾域におけるWAMの推算精度向上を目的とした改良を行い, 局地気象モデルによる内湾海上風を用いて東京湾を対象に2年間の波浪推算を実施した.その結果, WAMで考慮するスペクトルの周波数範囲を高周波数側へ拡張することで, 内湾域でも精度の良い常時波浪推算が可能となった.
  • 小林 智尚, 樋口 喬士, 大澤 輝夫, 安田 孝志
    2003 年 50 巻 p. 196-200
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    波浪推算モデルSWANを伊勢湾内の冬期常時波浪に適用し, 中部国際空港人工島周辺域波浪場の再現性と常時波浪に対するSWANの特性を検討した.海上風データにはMM5による予報値を用いた.その結果, 移流項に高次の半陰解法差分スキームを用いているSWANでは計算格子間隔を数100m程度にすることができ, 人工島による波浪遮蔽域や周辺の浅瀬による浅水砕波域も精度良く再現できた.また風から波へのエネルギー輸送項にSnyderら (1981) の理論を用いた場合, 湾内の常時波浪では適切な推算結果を示したが, Janssen (1991) のquasi-linear理論では有義波高0.1m程度の低波浪時に波高を過小評価する傾向が見られた.
  • 中平 順一, 吉田 武司, 高山 知司, 間瀬 肇
    2003 年 50 巻 p. 201-205
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    台風の接近に伴う高潮と高波の発生・発達を予測するためには, 対象海域の特性を踏まえて高潮と高波の推算モデルを適切に選定するとともに, それらを組み合わせた予測システムを構築することが不可欠である.本研究では, 潮汐の干満差が大きく従来から高潮の被害が起きている有明海を対象海域とし, 気象庁発表の台風情報をもとにパソコンにより数分程度の短時間で予測計算が行える簡易的なリアルタイム予測システムを構築するとともに, その運用面についての検証を行った.本簡易予測システムは, 海岸防災における水門操作や, 高潮警戒地域の特定などを的確かつ迅速に行うための役割を担うためのものである.
  • 森 信人, 平口 博丸
    2003 年 50 巻 p. 206-210
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    気象庁の週間アンサンブル予報資料を用いて予測時間4日のアンサンブル波浪予測を実施した.予測計算結果より, アンサンブル波浪予測の誤差や予測精度に関する検証を行い, アンサンブル波浪予測システムの特徴や有効性を調べた.その結果, H1/3のアンサンブル平均値とアンサンブルメンバー間のばらつきを示すspreadは, 海上風U10同様に高い相関を持ち, 予測時間が長くなるとspreadの値は大きくなることを明らかにした.
  • 北野 利一
    2003 年 50 巻 p. 211-215
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    期間最大波高に対する極値の漸近理論に基づけば, Gumbelプロットにおける確率点曲線の勾配が一般化極値分布の尺度母数となり, 裾長度パラメータが尺度母数の汎用指標としての意義をもつことを示した.さらに, 確率点曲線の曲率を用いて, 形状母数の汎用指標を新たに提案した.Weibull分布に対するその指標の値を検討した結果, 極値III型分布を母分布の候補としない従来の母分布推定法は, Weibull分布を母分布に含めるため, 実際には極値III型分布に類似した確率分布を間接的に含めた検討になっていることを示した.
  • 野中 浩一, 山口 正隆, 畑田 佳男, 大福 学
    2003 年 50 巻 p. 216-220
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    北西太平洋領域における台風あるいは低気圧の確率的発生モデルを利用した超長期の波浪シミュレーション資料に対する極値統計解析に基づいて, 台風時・低気圧時波高極値の母分布を別々に推定した.台風の場合には, 母分布を表すWeibull分布の形状母数は沖縄本島周辺海域の5を中心に周囲の海域に向けて2から1.4に減少し, 裾長度パラメータはこれにほぼ連動して1.16から1.35~1.45に増加する.また, 低気圧の場合には, Weibull分布の形状母数は海域東端の2を中心に三方に向けて1.4程度に減少するとともに, 日本周辺海域では母分布はGumbel分布をとり, 裾長度パラメータは逆に海域東端の1.16から1.25程度に増加する.
  • 泉宮 尊司, 吉田 淳
    2003 年 50 巻 p. 221-225
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    本研究では, 極値データに観測誤差等が含まれる場合における推定された再現確率値の信頼性について, 理論的解析とモンテカルロシミュレーション法により検討したものである.まず, 誤差が含まれる場合の確率分布関数について理論的検討がなされている.極値分布関数として, FT-I型分布およびWeibull分布を採用し, それらの極値分布に従うデータにGauss分布に従う誤差を加えたデータを用いて再現確率値を従来の最小二乗法と重み付最小二乗法により算定している.その結果, 誤差が含まれる場合には, 数%程度の正のバイアスが生じることや再現確率値の標準偏差が誤差の分散に関係して増加することなどが明かとなった.
  • 畑田 佳男, 山口 正隆, 大福 学, 野中 浩一
    2003 年 50 巻 p. 226-230
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/08/04
    ジャーナル フリー
    波浪の長期推算に利用できる代表的な表面風 (再) 解析値資料であるECMWFあるいはNCEP/NCAR (NCEP) による風資料を入力条件として波浪推算を行った場合, 用いる風資料によってわが国沿岸での波浪の長期推算資料の精度がどう変わるかを調べた.このため, 各風資料を入力条件とする1点浅海モデルを用いた日本沿岸の45波浪観測地点における20年間 (1979~1998年) の推算波浪資料を波候と波高の傾向変動の観点から観測資料と比較した.そして, 波候に対しては空間解像度で優るECMWF風資料を使用する波資料の精度が, 波高の傾向変動に対しては等質性で優るNCEP風資料を使用する波資料の精度がより高いことを明らかにした.
  • Asur Baris DERUN, 柿沼 太郎, 磯部 雅彦
    2003 年 50 巻 p. 231-235
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    種々の港湾形状が湾水振動に与える影響について検討するための数値解析モデルを提案する.対象領域を領域分割してADI法を適用することにより, 基礎方程式である非線形緩勾配方程式を解く.線境界入射法, スポンジ・レイヤ及びSommerfeldの放射条件を組み合わせて, 効果的な無反射入射波境界を開発した.規則波, または, 不規則波を造波し, 非線形干渉によって生じた長周期波が港湾内で選択的に増幅され, 更に, 港外に出て造波境界で吸収される現象をシミュレートした.I型, L型, F型, T型, そして, Y型の各形状を有する港湾を対象として, 水面変動の周波数スペクトルの比の平方根によって定義した港内の増幅率を算出し, 比較・検討を行なった.
  • 西井 康浩, 高瀬 和博, 大岡 弘樹, 鵜崎 賢一, 松永 信博
    2003 年 50 巻 p. 236-240
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/08/04
    ジャーナル フリー
    全国各地の港では係留船舶の長周期動揺による荷役障害が発生しており, その原因の究明と有効な対策が求められている.本研究は, 現地観測と数値シミュレーションによって鹿児島県志布志港における長周期動揺の原因を特定することを目的としている.船舶動揺の画像解析と長期間の波浪観測から, 東シナ海を低気圧が通過中に港内において係留船舶が周期1~2分程度で動揺すること, ならびに同程度の周期の長周期波が湾口から港内に伝播してきていることがわかった.また数値シミュレーションから, 港内に伝播した長周期波が埠頭の周辺で重複波を形成している様子が明らかとなった.
  • 大橋 正臣, 濱中 建一郎
    2003 年 50 巻 p. 241-245
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    ステップ状海底地形を通過する際, 波の非線形性により高次の自由波が発生する.入射波として周波数のわずかに異なる2成分を考えれば, 周波数の差の成分から長周期自由波が発生する.しかしながら, ステップ前後の解を減衰定在波を含めた級数解で与えると, 選点上では解は厳密に連続になるが, 選点間ではGibbsの現象により解は不連続となる.このことから本研究では, ステップを内部に含む部分領域を考え, そこでは境界要素法を, その前後ではこれまでと同様級数解を仮定し連続させる方法を提案する.解析精度を上げるために, 水面での1次波の微係数はスプライン関数法で, セグメント上の特異関数の積分はLegendre-Gauss法で求めた.
  • 喜岡 渉, 武藤 一平, 林 直正, 北野 利一
    2003 年 50 巻 p. 246-250
    発行日: 2003/10/10
    公開日: 2010/08/04
    ジャーナル フリー
    勾配1/30の一様斜面上を伝播する種々のスペクトル形状をもつ波群の変形を, 系統的な水理実験により調べ, 特に個々波の波形勾配が大きく非線形性の強い波群の相対水深kh>1.36からkh<1.36の浅海領域に至る伝播変形特性を明らかにしようとした.高波浪時の波群を想定し, 波群中の最大振幅aについての波形勾配kaが0.2以上となるような入射波群を用いた.入射波群の波形勾配およびスペクトル形状による変形特性の違いについて検討するとともに, 3次オーダーのZakharov方程式を用いた数値計算を行い, 斜面上を伝播する波群変形に対する非線形波動モデルの適用性についても調べた.
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