海岸工学論文集
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51 巻
選択された号の論文の290件中201~250を表示しています
  • 呉 海鍾, 磯部 雅彦, 鯉渕 幸生, 佐藤 愼司, 渡辺 晃
    2004 年 51 巻 p. 1001-1005
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年, 三番瀬では, 環境再生が大きな社会的関心事となっている.その際, 地形・底質の変化を正確に把握することは, 再生の基礎として重要であるために, 海底表層や柱状コア試料を合計43地点で採取し, 粒度分布や, 炭素量, 電気伝導度測定などの底質分析, ならびに放射線強度の測定を行い, 最近30年間程度の堆積過程を推定した.その結果, 浦安市埋立地近傍の猫実川河口付近のみならず, 中央付近も埋立後にシルト堆積域に変化し, 浦安市埋立地突端付近においては粗砂の堆積によって砂州が形成されており, 底質の堆積環境変化が明らかになった.特に突端付近の砂州形成は, 三番瀬に入射する波浪を減衰させて, より静穏な海域にしていると考えられる.
  • 上野 成三, 高山 百合子, 湯浅 城之
    2004 年 51 巻 p. 1006-1010
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    三番瀬干潟で10年以上に渡って蓄積されてきた底生生物のデータセットを用いて, 底生生物の出現特性と水深, 底質の有機物量, 泥分 (シルト・粘土含有率) の関係を解析した結果, 底生生物の個体数は, 水深帯はDL-2-1m, 強熱減量は2~7%, 泥分は10-40%の範囲で増大することが定量的に示された.これは, 干潟全体の生物量を増大するためには, 干潟形状として潮間帯から潮下帯直下の水深帯を広く確保すべきであること, 干潟の造成材料として, 今まで多用されてきた清浄な砂質土より, 有機物や泥分を適度に含有した底泥を使用すべきであることを示している.これらの知見は人工干潟の設計資料としての有用なものと考える.
  • 神尾 光一郎, 野村 宗弘, 中村 由行
    2004 年 51 巻 p. 1011-1015
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    盤洲干潟周辺海域において, 2001年及び2002年の8月に, クロロフィルa・栄養塩類を中心とした水質に関する集中観測を行い, 水質の岸沖方向の時空間変動特性を明らかにした.次に二枚貝の捕食と排泄を考慮した水平一次元生態系モデルを構築し, 2001年8月の観測データを再現した.計算結果は, 観測結果の水質変動特性を概ね再現しており, 盤洲干潟は沖合の懸濁物のシンクと同時に無機栄養塩のソースとして機能していることが示された.また, 干潟上で生成した無機栄養塩が沖合の一次生産を維持しており, 干潟と潮下帯を中心とした物質循環が1日という比較的短い時間スケールで回転していることが示唆された.
  • 徳永 貴久, 松永 信博, 工藤 教男, 宗 孝士
    2004 年 51 巻 p. 1016-1020
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    干潟における栄養塩の季節変化に関する定期調査と干潟と周辺海域におけるDO濃度の時間変化について現地観測を行った.その結果, 干潟上で観測された貧酸素水塊は周辺海域から輸送されているものではなく, 干潟上での酸素消費過程によって形成されると推察された.また, 和白干潟のような過栄養海域に位置する干潟では, 日中の日射量が高ければ, 6月においても赤潮が発生し, 夜間に貧酸素水塊が形成されることが示唆された.さらに, 鉛直一次元の解析を行った結果, 和白干潟上の水柱0.5mにおいて貧酸素水塊を形成させないためには, 平均的な底泥の酸素消費速度を145mg/m2/h以下に抑える必要があることが明らかとなった.
  • 矢持 進, 藤原 俊介, 和田 安彦, 平井 研, 濱田 のどか, 金子 健司, 杉野 伸義, 重松 孝昌, 小池 敏也
    2004 年 51 巻 p. 1021-1025
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では都市に近接する自然干潟について, 夏季平水時の生物生産と窒素収支を検討した.和歌川河口干潟の窒素収支は溶存無機態窒素の排出が卓越したため, 総窒素としては干潟外への排出となった.また, 生物生産を窒素の固定と考えると, 河川からの流入窒素の約32%が生物により固定され, 特にアオサ類や底生微細藻類などの基礎生産者の寄与が大きかった.一方, 外海との海水交換により流入負荷量の6%が, 和歌川排水機場での取水により60%が系外に排出されていた.これらのことから, 当干潟は自然干潟であるものの, 排水機場を通じて人為的に栄養物質が転送されることによって, 干潟の環境が保全されていることが判明した.
  • 八木 宏, 石田 大暁, 高橋 亜依, 灘岡 和夫, 田村 仁, 小谷 正幸
    2004 年 51 巻 p. 1026-1030
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, ノリ網の流体抵抗及びノリ養殖施設周辺の流動構造を現地計測により把握し, これに基づく数値実験によって有明海湾奥域におけるノリ養殖域周辺の流動構造や浮泥輸送特性の解明を試みた. その結果, ノリ網の流体抵抗係数は, 0.01-0.021の値を示しノリ量によって変化すること, ノリ養殖域1区画あたりに作用するノリ網流体抵抗は支柱の流体力や底面摩擦力と同程度の大きさであることを示し, 水面付近に発達するノリ網境界層の空間構造を現地計測と数値計算の両面からその特徴を明らかにした. さらに, 有明海湾奥部を対象とした潮流及び浮泥輸送計算によって, ノリ養殖域やその沖側前面部分で流速や浮泥濃度が低減, 抵抗が小さい船通し部で上昇するなどノリ養殖施設が潮流や浮泥輸送に与える影響を示した.
  • 島谷 学, 佐藤 喜一郎, 中瀬 浩太, 桑江 朝比呂, 中村 由行
    2004 年 51 巻 p. 1031-1035
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    現在のところほとんど明らかにされていないコアマモ (Zostera japonica) の生育条件について, 波や流れなどの外力や底質環境といった物理環境に着目し, 現地水域を対象とした調査・観測や数値解析, 干潟実験施設での観測を通じてコアマモの生育に適した条件の評価を行った. その結果, コアマモの生育条件は地盤高や含水比, シルト分・粘土分含有率, 強熱減量といった底質環境の影響を強く受けていることが確認された. また, 物理的外力については, 著しく静穏な場所ではなく平常時においても適度な擾乱がある領域にコアマモは好んで生育していることが示唆された.
  • 島谷 学, 谷口 享, 岩本 裕之
    2004 年 51 巻 p. 1036-1040
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    不規則波及び規則波と各種底質を用いた水理実験によってアマモ種子の埋没条件を評価し, 底質や入射波の相違が種子の埋没条件に与える影響について検討を行った.さらに実験で得られた種子の埋没条件の現地適応性を種子埋没期の平均有義波を用いて検証した結果, 以下の結論を得た.(1) 不規則波作用下では規則波に比べ種子が埋没しにくいが, 種子の埋没に適した条件は等しかった.(2) 種子の埋没条件を種子のShields数で評価した場合, 底質諸元に関わらず0.03-0.07であった.(3) 底質のShields数で評価した場合, 種子の埋没条件は底質諸元に依存するが, 種子と底質の粒径を与えればその適性範囲を算定することが可能である
  • 山本 省吾, 中瀬 浩太, 山本 裕規, 羽原 浩史, 岡田 光正
    2004 年 51 巻 p. 1041-1045
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    広島県三原市地先の移植アマモ場は, 移植直後に大きく減耗したものの, 移植から2-6年が経過した現在も残存し, 種子による再生産が確認されている.本研究では当海域のアマモ場を対象として, 光条件および波・流れ条件からアマモ場物理環境を評価した.その結果,(1) 移植場所は, アマモ分布の光条件は満たすが, 周年濃密な群落を形成するには光量が不足していることが明らかになった.また, 川端 (1996) の光量によるアマモ場評価指標の適用性が確認された.(2) 航走波作用回数と潮流を考慮したアマモ群落外縁におけるシールズ数により, 底質の流動安定性の向上を示すとともに, アマモ群落限界を評価できた.
  • コンブ・フノリの増殖
    岡 貞行, 谷野 賢二, 本間 明宏, 吉田 徹, 黄木崎 清人, 鳴海 日出人
    2004 年 51 巻 p. 1046-1050
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    北海道の日本海沿岸では, 「磯焼け」の状況が継続し, 藻場の消失によるウニ・アワビなどの植食動物の餌料不足, 魚類の産卵場・稚仔魚の生育場の喪失など様々な弊害が発生している.本研究では, 海域における栄養塩, 水温, 照度とコンブ類の発生・生長の関係, 着生面の形状や材質等と藻類の発生・生長の関係について室内及び海域実験により明らかにした.実験の結果と表面基質の改良により, 藻類の着生面積が増加し, ウニ・アワビの生息空間を考慮した栄養塩溶出型の単体礁を開発した.また, 開発した基質は形状や設置水深帯 (潮間帯) を考慮することでフノリ礁としても利用可能となり, 事業化による効果を確認した.
  • 波利井 佐紀, 灘岡 和夫, 安田 仁奈, 林 原毅
    2004 年 51 巻 p. 1051-1054
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    サンゴ礁では, 波あたりの違いに対応して, 異なる形状特性を持つ造礁サンゴ類が分布しており, 複雑な地形を形成している. この地形特性はサンゴ礁上の波浪場の変形過程に影響を与え, 礁内に様々な流速振幅を生じさせている. サンゴは, 有性生殖によって幼生を分散させる. サンゴ幼生の定着には底面の境界条件が重要と考えられるが, これまでに, 波動流速に着目した研究は行われていない. 本研究では, 振動流装置を用いて, 異なる流速振幅でのサンゴ幼生の定着を調べ, 定着時の振動流環境の影響を明らかにした. その結果, サンゴ幼生の定着に及ぼす振動流環境の影響は種類により異なることがわかった. こうした幼生定着能力の差異が, 親サンゴの分布と関係していることが示唆された.
  • 三井 順, 灘岡 和夫, 鈴木 庸壱, 熊谷 航, 石神 健二, 波利井 佐紀, Enrico C. Paringit, 田村 仁, 安田 ...
    2004 年 51 巻 p. 1055-1059
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    日本最大のサンゴ礁海域である石西礁湖は, 近年様々な環境ストレスにより生態系の劣化が危惧されているが, その適切な保全策を探るための基本的情報が不足している. 本研究では, 様々な物理環境の連続観測を行うとともに, サンゴ産卵期に多点サンゴ幼生採集および漂流ブイによる表層粒子追跡を行うことで, 石西礁湖における物質・熱輸送特性を支配する海水流動特性や, 水温・濁質環境特性, サンゴ幼生の輸送特性の概要を明らかにした. さらに, 石西礁湖海域全体を対象とした海水流動数値シミュレーションを行い, この海域で卓越する潮流を概ね再現することができた.
  • 田村 仁, 灘岡 和夫, 熊谷 航
    2004 年 51 巻 p. 1061-1065
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    典型的な裾礁タイプのサンゴ礁域である白保海域を対象とし, そこにおける環境ストレスの分布構造解明を目的として流動・温熱環境特性に関する数値解析を行った. 温熱輸送特性解析では海底面効果を考慮した熱収支解析手法を基にモデルの導出を行っている. 数値解析の結果, 白保海域における流動及び熱的な時空間変動パターンの特徴を高精度に再現できることが示されるとともに, リーフ地形効果によって規定される循環流パターンにより, リーフ内温熱特性が各領域で大きく異なることが確認された.
  • 熊谷 航, 田村 仁, 灘岡 和夫, 波利井 佐紀, 三井 順, 鈴木 庸壱, 茅根 創
    2004 年 51 巻 p. 1066-1070
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    石垣島白保海域における局所的な水温・物理環境特性とその分布を明らかにし造礁サンゴ群集分布との関係を検討するべく詳細な現地観測を行い, ここでは水温を中心に解析を行った. その結果, 礁嶺付近では日較差が大きいが低温状態が長い, 汀線付近では高温状態が長く持続する, 礁池では水深が相対的に深く貯熱量大きいため水温変化が緩やか, など, 岸沖方向の各ゾーンでそれぞれ特徴的な水温変動パターンが見いだされた. そこで, 夏期の水温30℃以下となる継続時間で比較すると, 礁嶺付近が最も長く, ついで礁池, 汀線付近の順で短くなることがわかった. また, チャネル付近では暖水塊の滞留・移流の影響で水温の二次的な上昇があるため, 礁原南側は外洋水流入の盛んな北側に比べ全体的に温暖な環境であった. このような夏期における礁原上の局所的な水温環境特性分布は造礁サンゴ群集の高水温耐性とよく一致することが判明した.
  • 青田 徹, 綿貫 啓, 柴田 早苗, 能谷 航, 灘岡 和夫, 三井 順, 岩尾 研二, 谷口 洋基, 大森 信
    2004 年 51 巻 p. 1071-1075
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    衰退したサンゴ礁を早期に回復する手法としてサンゴの移植が行われるが, 移植適地の選定が重要となる. 本研究では, サンゴの成長に良好な物理環境を求める目的で, まずシミュレーションにより得た波高とサンゴ礁の幅の関係を整理した. 現地調査では, 慶良間列島の阿嘉島で, 波高と水温は1年間, 流速は約3週間, サンゴの成長量は約6ヶ月間観測し, 物理環境とサンゴの成長との関係を整理した. その結果, 恒常的に来襲する波高が0.8m程度, 最大波高が3.5m程度ではサンゴ礁が発達し, 水深2mの水温が夏に高く冬に低い, 背後の地形勾配が1/4以下, 潮流の平均流速と波動流速のr. m. sが小さい海岸でサンゴの成長率が高いことが示された.
  • 二瓶 泰雄, 太田 和裕介, 中村 武志, 今野 篤
    2004 年 51 巻 p. 1076-1080
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    マングローブ植物の葉が分解されたと考えられる油状の水表面浮遊物の水質環境を明らかにするために, 沖縄県石垣島吹通川マングローブ氾濫原において現地調査を行った. その結果, 水表面浮遊物に含まれるSSは, 上げ潮時初期には水中での値よりも著しく大きくなり, 表層と水中の土砂環境は大きく異なることが示された. また, 水柱全体のSS輸送量に対して水表面浮遊物の寄与が有意であり, 特に上げ潮時において顕著であった. さらに, 水表面浮遊物中の栄養塩環境についても, SSと同様に, 表層と水中での値は著しく異なり, マングローブ水域における水質環境や物質輸送に対して水表面浮遊物の影響が極めて大きいことが示唆された.
  • 山下 俊彦, 梅林 司, 本間 志歩, 山崎 真一
    2004 年 51 巻 p. 1081-1085
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    石狩湾沿岸域と広域, 石狩川河川水の現地水質調査結果を基に, 石狩湾での水質変動特性の把握と, 沿岸域への河川からの栄養塩供給量, 外洋からの栄養塩供給量の推定を行った. 河川からの栄養塩供給量については, 溶存態のものはほぼ積分流量に比例し, 懸濁態のものは洗い出し効果が大きく流量規模を考慮する必要がある. 夏期の一回の湧昇による沿岸域への栄養塩供給量の推定値は, 同時期の河川供給量と比較してPO4-Pは同程度, NO3-Nは1/10程度である. 冬期の鉛直混合による栄養塩供給量の推定値は年間の河川による栄養塩供給量とほぼ同じ程度である.
  • 中山 哲嚴, 佐伯 信哉, 足立 久美子, 齊藤 肇, 奥西 武, 八木 宏
    2004 年 51 巻 p. 1086-1090
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    鹿島灘北部に位置する那珂川沿岸域の流動・水質に及ぼす那珂川の影響を明らかにすることを目的に, 2003年の春, 夏, 秋の三期に, 調査船を用いて流速, 水質 (水温, 塩分, クロロフィル, 栄養塩類, 懸濁態), 底質を計測した存態窒素は塩分と. その結果, 溶の明確な逆相関が見られ, 河川からの栄養塩供濃度を概略推定できた. 春 (五月) の結果から, 春のブルーミングが確認され, クロロフィルが高い領域では, 逆に栄養塩が低いことがわかった. 五月の観測結果, 流量, 気象データを用いて流動・一次生産の挙動を数値計算により検討した結果, 観測結果を定性的に説明することができたの栄養塩が沿岸域の. 那珂川河川水一次生産に寄与していることがわかった.
  • 桑原 久実, 寺井 稔, 畑谷 勇, 酒向 章哲
    2004 年 51 巻 p. 1091-1095
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, これまで筆者らが検討を行ってきた “磯焼け” に対する知見を整理して, ウニ漁場造成に係る事前評価手法としてまとめ, これを北海道寿都町での増殖場計画に適用し検討を行い, 問題点の抽出を行った. 餌料海藻に対するウニ食圧を制御し, 持続的に漁場利用が可能になるよう, 流動条件を満たす施設天端水深の設定を簡易な手法として整理できた. また, 従来の漁港・海岸の事業計画と同様に, 事前に施設効果を予測することが可能となった. 漁場造成に当っては, 海底地形や嵩上げ高が施設造成費用に影響するので, 計画検討の事前に適地選定を行ったうえで対象地区を決めることが非常に重要となる.
  • 明田 定満, 岩田 敏彦, 寺澤 知彦, 服部 真由子, 高木 伸雄
    2004 年 51 巻 p. 1096-1100
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    真珠養殖は宝飾品である真珠の生産が目的であるため, 真珠養殖漁場の環境評価を行う場合, 養殖漁場の流動, 水質底質, アコヤガイの成長や生残率等に加えて, 真珠の品質が重要な評価項目となる. そこで, 良質な真珠の生産には健全な母貝の成育が不可欠であることから, 先ず, 漁場環境 (水温, 塩分, 流速, 栄養塩, 餌料密度等), アコヤガイの成長と真珠品質の関係について検討し, HEP法を用いた養殖真珠の品質評価法を提案した. 次に, アコヤガイ養殖を考慮した低次生態系モデルに, 真珠養殖の品質評価法を組み込み, 長崎県対馬浅茅湾における真珠養殖漁場の漁場環境評価に適用し, その妥当性を検証した.
  • 桑原 久実, 遠藤 敬, 西洞 孝広, 本松 敬一郎
    2004 年 51 巻 p. 1101-1105
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    減少傾向にあるアワビ資源の回復のため種苗放流事業や漁場整備事業が全国的に取り組まれてきたが, 天然稚貝の発生不足によるアワビ資源の低迷が続いている. エゾアワビは初期稚貝の飢餓による減耗が非常に大きく, この時期の稚貝の生残・成長が良い環境条件を把握し, 稚貝にとって好適な環境を造成することができればアワビ資源の回復が期待される. 本研究は, エゾアワビ稚貝の発生が良好な海域に注目し, 現地調査を実施して減耗が大きな初期稚貝にとって好適な環境条件を明らかにし, アワビ稚貝育成場を造成する可能性について若干の検討を試みた.
  • 中泉 昌光, 川合 信也, 吉村 直孝, 長野 章, 渡部 弘之, 安田 淳
    2004 年 51 巻 p. 1106-1110
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    島根県浜田漁港では, 用地整備 (埋立) や防波堤建設により良好な磯浜の一部が消失することから, 波浪制御に加えて海藻等の生物生育環境の創出を目的とした潜堤付防波堤を採用した. 本研究においては, 物理・化学環境・生物環境及び生物環境に関する事前調査並びに長期のモニタリングを行い, 採用された潜堤付防波堤が藻場や付着動物, 魚類の蝟集等水産生物の生育環境創出効果を十分発揮していることを確認した. また, このような機能が発揮されるためには, 評価の尺度, 基準を事前に設定し, 施工中及び施工後において, モニタリングにより適宜フォローしていくことの重要性を示した.
  • 陸田 秀実, 市位 嘉崇, 土井 康明, 内堀 博之
    2004 年 51 巻 p. 1111-1115
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文は, 短期的な水質予測およびリアルタイムモニタリングを目的とした広島湾環境シミュレータ開発の第一段階として, 広島湾の大気海洋モデルとカキ養殖モデルを結合した水質・生態系モデルを開発し, 現地観測によってその妥当性を検証するとともに, カキ養殖が広島湾の水質・生態系に及ぼす影響を検討したものである. その結果, 養殖カキの生物活動が広島湾内の水質・生態系に及ぼす影響は, 潮流・吹送流の変化によって広範囲かつ3次元的となるため, 時間・空間的に小さいスケールの水質予測及び水環境モニタリングが重要であることが明らかとなった.
  • 重松 孝昌, 馬場 貴裕, 矢持 進
    2004 年 51 巻 p. 1116-1120
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    潮間帯を含む浅海域の生態系の機能や構造を評価するための生態系モデルを構築している. 本論文では, 潮位の時間変動からボックス間における潮流速および物質輸送量を正確に計算する手法を提案している. 開発された生態系モデルは浮游生態系と底生生態系から成る. 計算結果に基づいて, 浮游系の状態変数と底生生態系のそれとでは, 空間における変動の割合が異なることが示されている. また, 浮游生態系と底生生態系は密接な関係を有しており, 浅海域の生態系の構造を把握するためには, 潮間帯に生息する底生生物の生態に関わる情報が不可欠であることが示されている.
  • 山田 文則, 細山田 得三
    2004 年 51 巻 p. 1121-1125
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    日本海沿岸域では, 冬季の海象条件が厳しく防災上の理由から消波ブロックなどの海岸構造物が多数設置されている. このような構造物の形状および設置位置によっては大量のしぶきが発生し, 飛沫として内陸部へ輸送される. 本研究では, 海岸構造物周辺のしぶきによって発生する飛来塩分の発生・輸送に関する数値モデルの開発を行った. さらに, 日本海沿岸における海岸構造物の設置位置の異なる2箇所の海岸で長期的な実地観測を行った. その結果, 海岸構造物が沖側に設置してある海岸の方が内陸部へ輸送される飛来塩分量は少なくなる傾向が示された.
  • 山田 文則, 細山田 得三
    2004 年 51 巻 p. 1126-1130
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    飛来塩分の構造物への付着過程は, 鋼構造物およびコンクリート構造物の分野から海岸工学の研究者に対して, その解明が強く要請されている. 本研究では, 構造物への飛来塩分の付着過程を明らかにするために2種の形状の構造物に対して実地観測および3次元の数値解析を行い, その結果について検討を行った. その結果, 飛来塩分は構造物の壁面に一様に付着するのではなく分布を持って付着していること, 構造物の形状によってその分布が大きく異なること, 構造物への飛来塩分の付着過程は大部分が構造物の壁面近傍の気流の乱れによって生じていることが明らかになった.
  • 田中 健路, 滝川 清, 成松 明
    2004 年 51 巻 p. 1131-1135
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    干潟域における大気-陸面-海面間の物質・熱エネルギー相互作用を解明することを目的として, 熊本港北東側干潟域において観測塔を設置し, 自動気象観測を実施してきている. 本研究では, 自動気象観測で得られた気象データを基に, バルク法を用いて地表面熱収支の特性について解析を行った. 陸域や沖合の海域においては, 大気側への顕熱・潜熱輸送は日射などの放射加熱に伴う日周期変化が卓越しているが, 干潟域では日射に加えて, 干出・冠水のサイクルに伴う地表面状態の周期的変動が重大な寄与をもたらす. 特に, 冬季においては, 夜間に浸入する海水が干潟上の大気への熱源として重大な寄与をもたらすことが確かめられた.
  • 王 毅, 隅江 純也, 山崎 真一, 足立 久美子, 山下 俊彦
    2004 年 51 巻 p. 1136-1140
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    開放性の強い石狩湾全体の流動・水温変動特性及び風との影響を明らかにするために連続観測を実施した. 夏季に深海域で対馬暖流の影響で15日-20日周期の海流成分が卓越しており, この成分は水深200mまで影響している. また, 約16時間程度の慣性周期流が水深100m-300mまでの範囲内に存在している. 夏期の風及び海流による湾全体の流動特性と水温変動特性を把握した. 夏期浅海域の流れは風の影響が強く, 陸風ではエクマン効果で湾西側に, 海風では湾東側に湧昇流が発生することがわかった. 冬期では, 風速が強いにもかかわらず湾内の流速は比較的小さいことがわかった.
  • 足立 久美子, 中山 哲嚴
    2004 年 51 巻 p. 1141-1145
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    開放性砂浜域は内湾域に比べると貧栄養であるため, 基礎生産性を評価するためには栄養塩動態を解明することが重要である. そこで鹿島灘南部沿岸域における栄養塩の時空間変動特性を整理し, 海域への栄養塩供給源として河川水が果たす役割を明らかにすることを目的とした. 当沿岸海域の栄養塩供給源は海水が鉛直混合する冬季には深部の海水, 成層化する夏季には河川水が主体となると考えられ, 渇水年の夏季には広い範囲で表層水中のリン酸塩と硝酸塩が枯渇することが明らかとなった. また河川から海域へ流入した栄養塩は, その輸送過程でリン酸塩は, 硝酸塩, 珪酸塩に比べると速やかに植物プランクトン生産による消費を受け消失すると推察された.
  • 鈴木 庸壱, 灘岡 和夫, 宮澤 泰正, 波利井 佐紀, 安田 仁奈
    2004 年 51 巻 p. 1146-1150
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    サンゴ幼生やオニヒトデ幼生の広域的な輸送過程を明らかにするべく, その支配要因である広域海水流動場の解析を, JCOPE黒潮モデルと沖縄本島南西陸棚海域を対象とした現地観測および沿岸域海水流動モデルを用いた数値計算によって行った. また, これらの広域海水流動計算結果を基に表層粒子追跡計算を行うことで, サンゴ・オニヒトデ幼生の広域輸送特性の把握を試みた. その結果, 数値計算によって, 慶良間列島から沖縄本島に向けてのサンゴ幼生供給を支配する, 沖縄本島南西陸棚北側海域での東向きの流れを再現することができ, その流れの生成に, この陸棚の存在による地形効果が密接に関与していることが示された. また, 表層粒子追跡計算によって, 琉球列島沿岸域および九州地方沿岸域での幼生供給パターンが明らかになった.
  • 本田 陽一, 間木 道政, 鈴木 達雄
    2004 年 51 巻 p. 1151-1155
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    成層した海域の海底に設置された人工マウンド構造物に流れが作用することにより発生する内部波 (風下波) が鉛直混合に寄与する可能性について, 観測および数値シミュレーションによる検討を行った. 観測では構造物下流側に風下波が生じている様子をみることができ, 鉛直混合機構として内部波による水平流速の鉛直方向シアーによる拡散または内部波の砕波による混合の可能性が示された. また上層水への下層水の連行現象もみることができた. 数値シミュレーションによる再現計算を実施し, これらの鉛直混合現象を確認するとともに混合量の試算を行った.
  • 鯉渕 幸生, 磯部 雅彦, 佐々木 淳, 藤田 昌史, 五明 美智男, 栗原 明夫, 田中 真史, Mohammad Islam, 鈴木 俊 ...
    2004 年 51 巻 p. 1156-1160
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    東京湾をはじめとする内湾では, 夏季の海底での貧酸素化が湾内の水環境に悪影響を与えており, 深刻な社会問題となっている. そこで本研究では, 微細気泡発生システムの海域への適用方法や水質・底質を含む水環境の改善効果の把握を目的に, 室内実験に基づく装置の選定, 酸素溶解特性の定量化, 京浜運河における予備実験を経て, 東京湾の旧船橋航路に微細気泡システムを設置し, 約1ヶ月に及ぶ実海域現地実験を行なった. その結果, 微細気泡発生装置の周囲で溶存酸素の改善が見られ, 底泥表層の微生物群集構造にも微細気泡の効果が確認できた.
  • 田中 真史, 佐々木 淳, 柴山 知也, 磯部 雅彦
    2004 年 51 巻 p. 1161-1165
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    貧酸素水の改善技術として注目されつつある微細気泡エアレーション技術の実海域における効果や適用性の検討を目的として, 東京湾旧船橋航路の窪地において現地実験を行った. エアレーションの規模からすると底層の貧酸素水はいわば無限に存在していると見なせるため, エアレーションに伴う上昇流を誘起してしまうと改善が見込めないが, 密度躍層の存在下で気泡を高品質に保つことで上昇流を抑制できると, 成層を維持しつつ下層の貧酸素水を改善可能なことが分かった. 現地実験結果を基に酸素収支に関する簡単なボックスモデルを構築し, 一定の改善効果を得るための上昇流速の許容上限値を決定する等の定量的な検討を行い, 本技術の有効性を示した.
  • 金山 進, 佐々木 洋之, 佐々木 淳, 岡田 知也, 春谷 芳明, 城野 清治, 廣海 十朗, 中瀬 浩太
    2004 年 51 巻 p. 1166-1170
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    密度成層の発達した閉鎖性海域内の窪地状地形内の貧酸素の解消に動力を用いた鉛直混合促進装置を適用した. 底層に放流された低密度の表層水の湧昇を補う形での周辺水の引き込みによる密度成層の緩和と底層貧酸素の解消が流況, 水質調査により確認された. さらに, この状況は数値シミュレーションによって概ね再現され, 対象とする海域の条件に応じた装置の仕様, 台数, 設置位置の計画への数値シミュレーションの利用に展望が得られた. また, 底層のリン酸態リンの減少, 底泥の硫化物減少など, 本装置による底層貧酸素解消の効果を示唆する結果が得られた.
  • 石垣 衛, 上月 康則, 大谷 壮介, 西川 直仁, 宍倉 知広, 村上 仁士
    2004 年 51 巻 p. 1171-1175
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    大阪湾奥に『潮干狩りができる海』を再生することを目的に, 西宮市御前浜・香櫨園浜を対象とした現地調査を行った. 調査は, 潮干狩りで人気のあるアサリを主な指標種とし, アサリの生息に適した干潟の環境条件を求めた. まず, アサリの生息環境に支配的な底質について調査を行い, 底質条件とアサリの生息状況との関係を求めた. 次に, 底質の決定に寄与する波浪等の物理場に着目し, 物理場と底質の連関から, 物理的撹乱がアサリの生息環境におよぼす影響を評価した. その結果, 物理的撹乱による底質の移動がアサリの生息環境に影響することを導き, アサリの好適な生息場を再生するにあたり, 干潟に作用する物理場を考慮することの重要性を示した.
  • 重松 孝昌, 井川 巧, 田代 孝行, 和田 安彦, 藤原 俊介, 小池 敏也, 矢持 進
    2004 年 51 巻 p. 1176-1180
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    大阪湾近隣では希少な和歌川河口干潟を対象として, その環境構造を把握するための基礎的な調査を行った. 調査は, 航空測量の技術を用いた地形測量と, 栄養塩などの物質の動態を把握するための基礎データとなる流況調査とからなる. 地形データとして176, 695地点のデータが得られ, GISの基礎データとして整備された. ADCPや電磁流速計を用いた流況調査によれば, 和歌川河口干潟は, その上流に建設された排水機場の影響を極めて強く受けた河口干潟であることが明らかになった.
  • 高山百 合子, 上野 成三, 湯浅 城之, 前川 行幸
    2004 年 51 巻 p. 1181-1185
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    従来のアマモ移植は多大な労力を要する播種法や株植法により実施されているのに対し, 播種・株植が不要な新しいアマモ移植手法を考案し, 三重県英虞湾で現地実験を継続中である. 本移植方法は, 天然アマモの自然増殖力によりアマモを定着させたマットを移植地へ設置する簡易な方法である. 昨年度の実験では, マットへのアマモ定着は成功したものの移設後のアマモ生長が著しく低下した. そこで本年度は, マットの設置時期を変化させた現地実験を行い, 本移植方法によるアマモ移植の最適時期を定量化した. その結果, マット設置はアマモ発芽以前の6月から11月まで, マット移設はアマモ発芽以降12月から3月までが最適移植時期であることを明確にした.
  • 村上 晴通, 細川 真也, 中村 由行, 石垣 衛
    2004 年 51 巻 p. 1186-1190
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    尼崎港に造成された干潟実証実験施設において, 底生生物や底質・波浪などの現地調査ならびに流動場の数値計算等の検討を行い, 物理的環境条件と二枚貝の種類や個体数の関係を整理し, 二枚貝の生息環境を考察した. その結果, イガイ科の生物量が特に多い場所では, アサリの生物量は少なくなることが分かった. これは, イガイ科のマット化によって, アサリが加入阻害, あるいは硫化物による成長阻害を受けたものと考えられる. また, 潜堤背後及び岸側の領域において二枚貝の生物量が少なかった. 潜堤背後における大きな渦度, 砕波による乱れ, あるいは冠水時間の変動が二枚貝の分布を制限しているものと考えられる.
  • 国分 秀樹, 奥村 宏征, 上野 成三, 高山 百合子, 湯浅 城之
    2004 年 51 巻 p. 1191-1195
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    三重県, 英虞湾において浚渫ヘドロを用いた6種類の実験干潟を造成し, 造成干潟周辺の定期的な環境調査をおこなった. 造成後, 定着したマクロベントスは造成前と比較すると約半年で種類数が, 約1年で個体数が回復することが確認できた. 本論文では, 造成後約3年間にわたる干潟周辺の底質, 定着したマクロベントスの変化について整理した. さらに, 浚渫ヘドロの混合割合とマクロベントスの定着状態との関係を整理し, 干潟造成材に浚渫ヘドロを利用する際の最適な浚渫ヘドロ混合率の設定方法をとりまとめた. 各実験区の有機物, 泥分が減少傾向にあることから, 干潟の泥分を維持する対策が新たな課題として残された.
  • 柳川 竜一, 矢持 進, 橘 美典
    2004 年 51 巻 p. 1196-1200
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    大都市臨海域における低未利用地での干潟や湿地の造成は, 都市型の自然再このような浅海域では生として有効な利用方法と考えられる一方, 高密度に生育するアオサの被害が報告されている. 本論では, 大阪湾湾奥域に造成された塩性湿地 (南港野鳥園) での調査結果から底質の環境悪化や底生動物とアオサ繁茂との関連を検討し, 底生生態系の修復・保全並びに付加価値の高い浅場造成に関して検討した. これより, 底生動物及び藻類は生存に適したそれぞれの好適空間を有すること, めアオサの濃密な繁茂は底質表層の貧酸素化及び底生生態系の劣化を引き起こすことが示唆された. 野鳥園では環境保全のたに, 地盤高をD. L.+0.4-0.5m程度とするのが望ましいと考えられた.
  • 滝川 清, 増田 龍哉, 田中 健路, 弥富 裕二
    2004 年 51 巻 p. 1201-1205
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    有明海の疲弊が問題化されている中, その干潟環境の改善に向けての対策法の開発を目的として, 人工干潟を創生し, その人工干潟の環境モニタリングを実施して環境変動の動態把握と変動のメカニズムについての検討を行った. 研究の対象とした人工干潟は, 底質の外部からの搬入ではなく, 埋立地の掘削により作り出された, 全国的に例の少ないものである. この人工干潟では, 地盤高, 底質など生物生息環境の多様性を人為的に創生することによって, ごく近傍の干潟では見られないような生物を含む多様な生態系が, 1年余りの期間でも出現し, マクロ的な評価法ではあるが, 生物が水・底質の浄化に寄与していることを確認できた.
  • 田中 ゆう子, 岡村 知忠, 岩本 裕之, 鈴木 秀男
    2004 年 51 巻 p. 1206-1210
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    東京湾内湾の沿岸域では干潟等の生物生息場の不足が指摘されているが, 十分な空間が確保できない場合が少なくない. 本研究では東京港内に浚渫土等を用いて小規模な泥質干潟をつくり, その生物生息場としての有効性について調査を行った. その結果, 小規模であっても多様な食性の動物が利用すること, また, 波作用等による撹乱が同干潟の底生生物の多様性向上に重要な役割を果たしていることがわかった. さらに, 泥質干潟に移植したヨシは, 2年を経て良好に生育しており, 限られた空間においてもヨシ原と連続した多様な生息空間の創出が可能である.
  • 中城湾港公有水面埋立事業における実例を基に
    赤倉 康寛, 冨田 幸晴, 浦辺 信一, 傍士 清志, 細谷 誠一
    2004 年 51 巻 p. 1211-1215
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    様々な整備事業においては, 環境影響評価を終えて実施段階に入る. この環境影響評価における環境調査は全般的なものであり, 特定分野についてより高い精度で実施される学術的調査とは掘り下げ方が異なっている. そのため, 事業実施段階において新種等が発見されることは十分に考えられることであり, 実際にそのような例も散見される. 本研究においては, 事業実施段階において, 環境影響評価の際には発見されていなかった新種や希少種が発見された場合に, 事業者がなすべき対応や, その対応策への判断について, 実際の対応例を示した上で, 事業実施と環境配慮の両面を踏まえた判断を下すため, 新たに環境影響評価の枠組みを導入する方法を提案する.
  • 矢野 真一郎, 多田 彰秀, 松山 明人, 押川 英夫, 冨安 卓滋, 赤木 洋勝, 中村 武弘, Rudolf Rajar, Milena ...
    2004 年 51 巻 p. 1216-1220
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    水俣湾内の底泥中に含まれる微量残留水銀が八代海へ流出し拡がっている. 微量残留水銀の動態を把握するため, ADCPと後方散乱光式濁度計などを夏季の47日間にわたり海底設置し, SS, 流速などの連続観測を行った. ADCPの反射強度分布からSSの鉛直分布を推定し, SS fluxを推定した. また, 観測期間中に水銀の鉛直分布の測定を行い, SS Fluxから水銀fluxの算出を試みたところ, 水俣湾から八代海へ向けて一年間に総水銀で30kg程度, メチル水銀で0.03kg程度流出していると見積もられた.
  • 下野 隆司, 仲井 圭二, 永井 春生, 松本 英雄, 渡邉 和重, 磯部 雅彦
    2004 年 51 巻 p. 1221-1225
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    気圧の季節変動を考慮した新たな気圧補正方法を用いて異常潮位を算出し, 全国沿岸域の異常潮位の出現特性を調べた. 11の海域毎に, 出現回数, 継続時間, 大きさ (偏差) の統計処理を行い, 海域毎の違いを明らかにした. また, 2001年1年間の太平洋側, 日本海側の異常潮位の時系列データを用いてCEOF解析を行い, 異常潮位の時空間的変動特性を調べた. 両海域とも, 第1モードは空間的に伝播しない変動, 第2モードは岸を右に見る形で伝播する変動が解析された. 伝播する変動については, 西日本の方が, 東日本よりも伝播速度が大きかった.
  • 中野 晋, 片岡 孝一
    2004 年 51 巻 p. 1226-1230
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    純粋な海面上昇速度を評価するために電子基準点データを用いて地殻変動速度を求めた.これによる地殻変動速度は加藤・津村 (1979) の方法による値と最大7mm/yの差異があった.地殻変動の影響を除くと1970年以降の33年平均では日本沿岸全域で海面は低下傾向であったが, 海水温の上昇が顕著となった1985年以降は, 北部太平洋沿岸の一部を除いて最大1.2mm/yの海面上昇が生じている. 月別の朔望満潮位は9月が最高となり, H. W. Lに比べても10-20cm高い. また9月の朔望満潮位の経年変化は平均海面と同様, 1985年以降上昇傾向となり, 西日本沿岸でその傾向が強い.
  • 板橋 直樹, 日比野 忠史
    2004 年 51 巻 p. 1231-1235
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    日本沿岸の水位変動には, アリューシャン低気圧の発達と黒潮流路の影響が強いことが予想される. そこで本研究では, アリューシャン低気圧の変動が黒潮流路へ, 黒潮流路の変動が日本沿岸の水位変動へと与える影響それぞれを把握することを目的とした. そして, アリューシャン低気圧および黒潮流路の時空間的な変動特性, 日本沿岸部の水位変動について調べるとともに, それぞれの間の関連性について解析を行った. その結果, アリューシャン低気圧の強さ・発達位置が黒潮流路の変動に影響を及ぼしており, 黒潮流路が変動した結果, 日本沿岸の水位もその影響を受けて変動することを示し, これらは相互に関連していることを定性的に示した.
  • 八木 宏, 石田 大暁, 山口 肇, 木内 豪, 樋田 史郎, 石井 光廣
    2004 年 51 巻 p. 1236-1240
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 複数の環境計測データを組み合わせることによって, 東京湾及び周辺水域の長期的な水温変化の傾向とその原因を明らかにすることを試みた. その結果, 東京湾では冬季を中心として水温上昇傾向にあり, 東京湾に流入する河川にも冬季に水温上昇の傾向が見られること, 一方, 同じ閉鎖性水域でも伊勢湾, 大阪湾では水温変化の傾向が東京湾ほど顕著でないことがわかった. さらに, 1966-1975年及び1993-2003年のそれぞれ10年間の月平均水温から東京湾全体の貯熱量年間変動特性の長期変化を調べた結果, 貯熱量は10-3月の期間において近年大きくなっており8×104TJ程度増加 (湾全体平均で1.7℃の水温上昇) していること, また, 貯熱量の増加とともに高塩分化の傾向があり, 東京湾の水温上昇は外海域からの熱供給の増加が主要な原因の一つであると考えられる.
  • 山下 隆男, 西口 英利, 金 庚玉, 玉田 崇
    2004 年 51 巻 p. 1241-1245
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    台風は, 環境への大きなインパクト, 災害の外力となる気象現象であり, これにより発生する局地的で強い風域場, 降雨場の再現は海岸工学上, 極めて重要な外力シミュレーションである. 本研究では, 簡易台風モデル (光田・藤井モデル) とMASCONモデル, さらにメソ気象モデル (MM5) による風域場の比較を行う. 次いで, 洪水や集中豪雨による河川・海岸系での土砂輸送問題に必要な, 豪雨のシミュレーションが, MM5でどの程度再現できるかを検討する. 台風に伴う強風場の再現性の評価は, 台風9918号による周防灘での高潮シミュレーション結果により行った. 一方, MM5による豪雨解析では, 台風0215号により発生した韓国東海岸で総雨量900mm以上の降雨場の再現計算を行った.
  • 今村 正裕, 立田 穣
    2004 年 51 巻 p. 1246-1250
    発行日: 2004/10/08
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    マングローブ等熱帯沿岸生態系の保全・修復による温暖化ガス吸収・放出抑制技術を, 東南アジアとのクリーン開発メカニズム事業のオプションとするためには, CO2だけでなくGWP値の高い微量温暖化ガス (CH4, N2O) も考慮した温暖ガス吸収・放出抑制量評価技術の開発が必要である.著者らはこれまで, 自然林におけるN2O発生量評価方法について検討してきた. 本研究では植林されたマングローブ域を対象に, 植林域前面の河川・沿岸海域におけるN2Oの挙動に関した調査をした. その結果, 植林マングローブ流域からも自然林同等のN2O流出 (特に雨季) が低くない可能性が示された.
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